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2010年9月

2010年9月30日 (木)

グリフィンの年(上)(下)

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:浅羽莢子
出版社:東京創元社
出版日:2007年11月30日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「ダークホルムの闇の君」の続編。前作では、魔法使いはもちろんエルフやドワーフやグリフィンといったファンタジーの王道をゆく種族や生き物を配してはいながら、実はみんな観光旅行用にそれぞれの役割に応じて、善と悪の戦いなんかを演じている、という王道からはかなり外れたひねりの効いた設定だった。
 本書はそれから8年後の物語。続編には違いないが、前作とのつながりはあまりない。登場人物と舞台の設定を共通にした別の物語。主人公も前作ではダークという名の魔術師だったが、本書はその末の娘のエルダで、前作ではまだ十歳であまり重要な役ではなかったように思う。

 そのエルダが18歳になり、魔術師大学に入学する。同じ教授の指導を受けることになったエルダを含めて6人の学園生活が主な舞台。そのクラスメイトが、北の王国の皇太子、南の皇帝の異母妹、ドワーフ、後の二人は身分を隠していて、どうも訳ありらしい。
 魔術師学校の学園生活、といえばハリーポッターシリーズを思い出すが、だいぶ趣が違う。何と言うかこちらの方はハチャメチャ度がかなり高い。物語前半は小さなヤマをいくつかくり返し、後半に大きなヤマを持って来て一気に大団円。著者のお得意のパターンながら、これが読んでいて気持ちいい。

 登場人物の多さにちょっと戸惑うが、エルダのクラスメイトだけを押さえておけば大丈夫。上にも書いたように続編と言っても別の物語、こちらだけ読んでも楽しめる。

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2010年9月25日 (土)

上手に人を殺すには

著  者:マーガレット・デュマス 訳:島村浩子
出版社:東京創元社
出版日:2010年8月27日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 おだやかでないタイトルだけれど、殺人のハウツー本では、もちろんない。セレブ探偵が活躍するミステリーで、著者のデビュー作「何か文句があるかしら」の続編、シリーズ第2弾。ちなみにタイトルは「How to Succeed in Business Without Really Trying(努力しないで出世する方法)」というブロードウェイミュージカルをもじったもの。このミュージカルのタイトルは本書のストーリーとも少し関係がある。

 主人公のチャーリーは、前作では「小国の財政がまかなえるほどの」と紹介されているお金持ちの女性。本書では「人生を数回生きても使いきれない」と形容されている。しかもゴージャスな美人らしい。恵まれすぎていて、いっそ清々しいぐらいで妬む気にもならない。
 そのチャーリーが、新婚の愛する旦那様のジャックの取引先のIT企業の重役の殺人事件に挑む。いや、やめとけと言われているのに首を突っ込む。ダメだと言われたのになしくずし的に仲間と一緒に潜入捜査をすることになる。
 命を狙われるような危険も何度かあるのだけれど、全体的にはカラッと乾いたノリで事件の核心に近づいていく。(どうやら銃弾もお金持ちは避けて飛ぶらしい)登場人物がみんな個性的なのも、物語を楽しくしている。今回は、「胸板が厚すぎて腕が組めない」というマッチョなボディーガードのフランクに特に注目。

 前作のレビューにも書いたけれど、「セレブ探偵」なんて言うと薄っぺらい「主婦探偵」ものを想像する。でもこのシリーズは「薄い」じゃなくて「軽い」。ノリとテンポの良さが最後まで途切れない。アメリカン・ライト・ミステリー&コメディ。

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2010年9月22日 (水)

仏果を得ず

著  者:三浦しをん
出版社:双葉社
出版日:2007年11月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 私が聞き知った範囲では、とても評判が高い三浦しをん作品。文楽の道を究めんと精進中の若手大夫の笹本健大夫(たけるだゆう)。「若手」と言っても30歳になる。高校卒業後に文楽の道を志して今年で12年。思うに普通の会社員でも、10年を越えたあたりは実績も自信もついて勢いがある時期だ。しかし同時に壁もある。自分はこのままでいいのか?どこまでいけるのだろうか?

 ただし健はこんな壁をはっきりと意識しているわけではない。何といっても師匠の銀大夫は80歳。文楽の家に生まれれば幼いころから手習いを始めるのでこの道70年ぐらいにはなる。目指す高みは遥かに遠い、12年目なんてまだまだ必死に修行を重ねるしかない時期なのだ。
 とは言え、成長するためには目標や越えるべき壁も必要というわけで、銀大夫は健に、兎一郎という三味線弾きと組むように言い渡す。兎一郎は特定の大夫とは組まない「芸の鬼」。そして、これは銀大夫が健に課した試練の先触れにすぎなかった。

 健は「今ドキの若者」(と言うには歳をくっているが)らしく、どことなく必死さが感じられない。でも、彼にはしなやかな芯の強さが感じられる。文楽に20代を使い果たし、芸について悩み、恋について悩み、厳しい稽古に耐え、一見理不尽な師匠に仕える。それでもただの一度も文楽の道から気持ちが逸れない。
 だからだろう。健はあらゆるものから気づきを得て、芸を一段押し上げる。小学生のミラちゃんの何気ない一言で、近松門左衛門の「女殺油地獄」の神髄を悟る。そうそう、このミラちゃんが本書の個性派揃いの登場人物の中で、小気味良い存在感を放っている。健に対して「おじいさん(銀大夫)に怒られて楽しそうやったねぇ」などと言って、何でもお見通し、というより、本人よりよくわかっているのだ。

 本書を読むのに、知っているに越したことはないが、文楽の知識は必須ではない。読んでいくうちに必要な事柄は分かってくる。思い返せば「風が強く吹いている」を読んだ時には、箱根駅伝に俄然興味が湧いた。本書を読むと、文楽の公演を一度は生で見てみたい、と思うこと必至だ。

(2011.10.23 追記)
三浦しをんさんが文楽の楽屋を取材したエッセイ「あやつられ文楽鑑賞」の記事を書きました。本書と合わせて読むといいと思います。

 この本は、本よみうり堂「書店員のオススメ読書日記」でも紹介されています。

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2010年9月19日 (日)

ザ・万歩計

著  者:万城目学
出版社:文藝春秋
出版日:2010年7月10日 第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「鹿男あをによし」「鴨川ホルモー」「プリンセス・トヨトミ」そして「かの子ちゃんとマドレーヌ夫人」。奇抜な着想で、ドラマ化・映画化されるベストセラーを連発する著者。その暮らしはやっぱり少し変だった。本書はBoiled Eggs Onlineの他、様々な雑誌に掲載されたエッセイ31編をまとめた初エッセイ集。

 男子校に通った中学生時代から学生時代を経て、工場勤務の会社員時代、デビューまでの雌伏の無職期間、そしてデビュー後と、飄々とした著者の周りでは度々「面白いこと」が起きた。特に中学時代のエピソード「木曜五限 地理公民」には笑った。文庫本になったからと言って、本書を人前で、特に電車の中でなんかで読まない方がいい。絶対に笑いを堪えられないから。

 それから著者のこの行動力の源は何なのだろう?私も学生時代には、好奇心に任せて方々に旅に出かけた。ちょうど流行っていたので、バックパックでヨーロッパや中国にも。でも著者が出かけた、気温摂氏52度の灼熱のドバイにも、ウランバートルから車で3日+馬で2日というモンゴルの山奥にも行こうなんて思いもしなかった。
 また、そこに行った理由が、「砂漠を一度見てみたい」とか「モンゴル人になりたかった」というのだから驚きだ。「好奇心」には違いないが、旅の過酷さと比べるとあまりに軽い。そう、著者の周りで「面白いこと」が起きたのは事実だが、それを捉える感性が優れているし、何よりも著者の行動そのものが「面白いこと」を引き寄せている。

 初出が様々だからなのか、「面白い話」の中に「いい話」が混じって現れる。不意を突かれて涙ぐんだり笑ったり。緩急自在のエッセイ。オススメです。繰り返しますが、人前で読まない方がいい。万一読む場合はご注意を。

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2010年9月16日 (木)

テレビの大罪

著  者:和田秀樹
出版社:新潮社
出版日:2010年8月20日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は精神科医を本業とし、評論家、受験アドバイザーとしても活躍されている。時事問題や受験関係の著書も多数。本書によると、テレビにも時々出演されていたそうで、裏表紙の写真を拝見すると、なるほど見覚えがある。ただ名前は知らなかった。

 タイトルから想像する通りの、テレビのアレコレを断罪する本。「ウェスト58cm」が象徴する「やせ礼賛」の罪、「悪人」とレッテルを貼られた人に対するバッシング、医療崩壊の原因となった「医療報道」などなど。時に、精神科医としての知見からも的確な指摘をしている。

 中には、賛同できないこともあった。例えば「画面の中に「地方」は存在しない」という章。テレビ番組が「東京目線」で制作されているという指摘自体に異論はない。その中で飲酒運転に対する報道に触れ、「地方で飲酒運転死亡事故が減った件数と(経営が成り立たなくなった)飲食店経営者の自殺とを比べたら..」というくだりはどうだろう。
 確かに、地方では車が生活の足、通勤の足なので、飲酒運転厳罰化の飲食店に対する影響は、都市部よりはるかに大きいだろう。しかし、この飲酒運転死亡事故と飲食店経営者の自殺を秤にかけた部分は、データがないこともあって、非常に無責任な放言に聞こえた。

 最後に、著者自身が「丸ごと1冊、テレビについて攻撃しつづけるという本を書いてしまいました。」と、「おわりに」の冒頭に書いて本書を締めている。読んでいてテレビに対する敵意すら感じる執拗な内容なのだが、冒頭の一文に続く「この本を書いた真意」に至る文章が、そうした執拗さを救う。本書の内容もそれに対する批判もひっくるめて、すべてを客観的に見るその視点が、著者の「賢さ」を物語っている。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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2010年9月11日 (土)

絶対製造工場

著  者:カレル・チャペック 訳:飯島周
出版社:平凡社
出版日:2010年8月10日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 オンライン書店ビーケーワンを通して、出版社の平凡社さまから献本いただきました。感謝。

 著者は、20世紀初めのチェコの作家。著者のことは、「R.U.R(Rossum's Universal Robots)」という作品で「ロボット」という言葉を世に送り出した作家として記憶されている方も多いだろう。この作品は、1921年の「R.U.R」の発表の直後から翌年にかけて「人民新聞」に連載されたもの。つまり実に90年も前の作品なのだ。

 ある優秀な技師が、物質の原子エネルギーを完全に消費する装置「カルブラートル」を発明した。その装置では、1キログラムの石炭で工場を数百時間稼動させることができるという。「夢のエネルギー機関」であるこの装置は、瞬く間に世界中の工場、輸送機関、発電所などに導入される。
 しかし、この装置では燃料である石炭が完全に消滅すると同時に、物質に閉じ込められていたあるものが顕現するという。それが「絶対」。それで、タイトルが「絶対製造工場」というわけだ。そして「絶対」とは「神」に近しいもので、「絶対」に触れた者には宗教的な無私の心が宿り、ある者は預言を行い、ある者は奇跡さえ起こす。至るところに「神」が降臨した形になった。

 この後に起きたことは何か?世界にたくさんの「神」が現れるとどうなるか?あまり詳しくは言えないけれど「神の国」のような平和が訪れたわけではない。「カルブラートル」とそれが生み出す「絶対」は、我々人類の手に負えるものではなかったようだ。

 本書の「カルブラートル」を原子力機関と重ねて見ることで、核兵器や原子力事故の悲劇を予見したものとして「今も色あせない」と評することはできる。しかし、著者の意図はそこではなかったようだ。著者は、未来の予見ではなく不変の「人間の性(さが)」を描いたのだった。それは90年後の今も変わらない。その意味では「今も色あせない」と言える。

※中止にはなったけれど、本日9月11日に他の宗教の聖典を焼く、などというニュースがあったが、この本を読めば、それがいかに愚かな行為であるか気が付くだろう。

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「絶対製造工場」 固定URL | 2.小説 | コメント (2) | トラックバック (0)

2010年9月 8日 (水)

「優柔決断」のすすめ

著  者:古田敦也
出版社:PHP研究所
出版日:2009年10月30日 第1刷 11月13日 第2刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者のことは紹介するまでもないと思うが、元東京ヤクルトスワローズ選手兼任監督だ。1990年代から2000年初頭にかけてリーグ優勝5回、日本一4回の立役者。野村克也氏の「ID野球の申し子」とも言われる。
 私がいつも拝見しているブログ「シャンとしよっ!」の、元フジテレビアナウンサーの松田朋恵さんが、司会を務めておられるテレビ番組「テレビ寺子屋」で、著者がお話をされていたのを見て、興味が湧いたので読んでみた。

 「自己啓発も向上心もいいけれど、アクセクしてばかりじゃ疲れてしまう。世の中シロクロ決められることばかりじゃない。「優柔不断」で結構!」、という本ではない。優柔「不断」ではなく優柔「決断」。「柔軟に情報を取り入れ、最後は自分の責任において決断する」という意味の著者の造語だ。ちなみに「優柔」も「ものごとに煮え切らないこと」ではなく「優れた柔軟さ」と解釈する。

 造語のセンスは良いが、言っていることはごく普通のことかもしれない。あえて単純化すれば「情報を入力して判断して結果を出力する」何の変哲もない。ところが、これを私が言うのと著者が言うのとでは決定的な違いがある。著者の野球のポジションはキャッチャー。「ピッチャーが投げないと試合は始まらない、と言うことがあるけれど、私らからすれば、キャッチャーがサインを出さないと試合は始まらない」ということを、番組でおっしゃっていた。
 年間約140試合、1試合で平均して130球ぐらい、そのすべてに15秒から20秒で決断してサインを出す、それを15年以上。アマチュア時代から考えればもっと長期間、もっと数多くの決断をしてきた。もちろん、監督となってからは、チームの采配のための決断もしなくてはならない。著者の人生は「決断」とともにあったのだ。これが、私を含め他の人が言うのとの決定的な違いだ。

 野球のサインなんか、思い付きで出してるんじゃないの?というのは、ほぼ不正解。著者の場合は、膨大なデータのインプットと事前のシミュレーションから、次の一球を決めているそうだ。しかし、その著者をしても「もう、これでいってしまえ」ということはあるらしい。だから「ほぼ」不正解。ただ、「もう、これでいってしまえ」も「決断」であることには違いない。

 これ以外にも、最近の若い選手たちのことや、野村克也氏のこと、「コミュニケーション」や「組織」や「プロとしての心構え」などをテーマを、読者に柔らかく軽やかな口調で語りかける。著者やスワローズのファンでなくても、一読の価値アリ。

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2010年9月 4日 (土)

鹿男あをによし

著  者:万城目学
出版社:幻冬舎
出版日:2007年4月10日 第1刷 5月2日 第4刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 好きな作家は?という質問に、他の作家さんとともに著者の名前を挙げているのに、テレビドラマにもなって著者の出世作、代表作である本書をまだ読んでいなかった。先日、図書館に行った折りに、本棚にあるこの本の赤と黒の文字の背表紙が目の端に留まった。時々こういうことがあるのだが「本に呼ばれた」という感じ。「あんた、俺をまだ読んでないでしょ!」って。

 物語の舞台は奈良。主人公は「おれ」。大学の研究室にいたが、訳あって奈良女学館という女子高の理科の教師として二学期だけという短期間赴任した28歳。胃腸に弱点があり、不安や緊張が高まるとお腹が痛くなる。理由は他にあるのだが、研究室でつけられたあだ名は「神経衰弱」。
 その「おれ」が、赴任の初日から生徒にからかわれる、という前途多難な短い教師生活をスタートさせる。その後、京都と大阪の姉妹高との対抗戦に向けて、剣道部の顧問をすることになったり、鹿に話しかけられたり...!?神経の細い人にはかなり過酷な体験だ。

 面白かった。一番だと思っていた「鴨川ホルモー」よりも面白いと思う。綴られているのは、ヤル気がない訳ではないが熱血でもない教師の、周囲に流されるがままの暮らし。しかし、そこここに笑いあり感動ありのエピソードが配置され、さらにその背景には1800年の歴史がある壮大な物語があった。
 「鴨川ホルモー」も「プリンセス・トヨトミ」も、奇抜な着想が作品を引っ張った感がある。もちろん本書の設定もかなり奇抜だけれど、個々のエピソードとそれを積み重ねた物語の組み立て方が上手く、それが「面白さ」につながっている。そんなわけで、いまさらですが、この本はオススメです。

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2010年9月 2日 (木)

ラジオドラマ「神去なあなあ日常」放送決定

 以前に「有頂天家族」を放送した、NHK FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」で、今度は三浦しをんさんの傑作青春小説「神去なあなあ日常」を放送する予定です。9月20日(月)~10月1日(金)までの月~金の10回、22:45~23:00の放送です。

 「神去なあなあ日常」は、半年ほど前に読んで、ものすごく面白かった作品です。私が読んだ後に娘と妻が順番に読んで、家族で楽しみました。ラジオドラマも今から楽しみです。

 「神去なあなあ日常」のレビュー

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2010年9月 1日 (水)

コッペリア

著  者:加納朋子
出版社:講談社
出版日:2003年7月7日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の作品を読むのはこれで7作目。これまでは連作短編か短編集だったが、本書は長編作品。また、「日常に潜む謎」を描いたこれまでとは違って、本書が描くのは日常から薄いヴェールで隔てられたような非日常。タイトルの「コッペリア」は、からくりで動く人形とそれに恋する青年が登場するバレエ作品の名前。本書も人形の存在が物語の大きな位置を占め、人形に恋した(執着した?)男性が登場する。

 主な登場人物は、人形に心を奪われてしまった青年の了、その人形を作った人形師のまゆら、まゆらのパトロンである創也、まゆらが作った人形にそっくりな劇団女優の聖、の4人。物語は、了と聖を1人称とした章が交互にあり、その間にまゆらと創也について語る3人称の章が挟まる形で進む。

 人形というのは、人の心をざわつかせる。しかもまゆらがつくる人形は、人肌そっくりの艶かしい質感とガラスの目を持った人形。それが、家の裏手に打ち捨てられてあったのだから、了がその人形に心を奪われたのもムリはない。
 そして、了がその人形と瓜二つの聖と出会い、創也も聖と出会い、聖はまゆらの個展に行って自分そっくりな人形と出会い、といくつもの遭遇が重なって、物語は複雑に進展していく。さらに著者は、ミステリ作家らしい仕掛けを施している。私は、人形が放つ妖しさに気を取られていて、まんまと騙されてしまった。

 余談であるが、私は学生のころマネキン会社の倉庫で短期バイトをしたことがある。けっこうリアルなマネキンで、至るところにその頭部、手足、胴体が積んであった。1日中その中にいると、生身の人間の一部と錯覚するようなこともあって、妙な昂ぶりを感じたことを覚えている。

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