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2010年5月

2010年5月31日 (月)

蝦蟇倉市事件1

著  者:伊坂幸太郎、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一、道尾秀介
出版社:東京創元社
出版日:2010年1月29日 初版
評  価:☆☆☆(説明)

 1970年代生まれの作家陣による珠玉の競作アンソロジー第1弾。伊坂幸太郎、道尾秀介、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一の5人が筆を執っている。すでに第2弾 も出ていて、そちらは6人の作家さんが名を連ねる。合わせて11人の個性が楽しめる企画だ。
 企画と言えば、本書はただ5人の短編を1冊にしただけではない。「蝦蟇倉市」という架空の街で起きた事件という共通の設定で、それぞれが自由に描いた書き下ろし。ご丁寧に蝦蟇倉市の地図まであって、面白そうな企画なのだ。

 読んでいて「これは楽しんで書いてるな」という感じがした。例えば、他の作品の登場人物や事件がちょっとだけ顔を出す、といった伊坂作品の作品間リンクのような遊びがいい感じで含まれている。「楽しんでるな」という私の感じ方は外れではない証拠に、巻末の執筆者コメントには、「仲間に入れてもらうために急いで書きました」とか、「お祭りみたいだとわくわくした」という言葉が並んでいる。

 伊坂さん、道尾さんは単行本を読んだことがある、福田さんは「Re-Born はじまりの一歩」というアンソロジーで短編を読んだ、その他の方の作品は初めてだ。そのためだけではないと思うが、面白かったのはこの3人の作品。中では福田さんの「大黒天」が、短い物語なのによく練られた作品だった。
 率直に言って、犯罪の動機だとか方法だとかに不自然さは否めない。本格的なミステリファンには評価されないだろう。しかし、プロの作家さんの作品に対して失礼な言い草だけれど、これは「お祭り」だと思えばいいのかも。街のお祭りの出し物にちょっとアラが見えても、つべこべ言わずに楽しんだ方が良いように。

 道尾さんの作品「弓投げの崖をみてはいけない」は、叙述トリックたっぷりの「らしい作品(道尾作品はまだそんなに読んでないんですが)」だった。また、わざと謎が残してあって、執筆者コメントにそのヒントがある。ただ、初版には誤植があって、この謎が台無しになっている。これから読まれる方はご注意を。
出版社によるお詫びと訂正のページ http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488017354/

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2010年5月26日 (水)

フォーリン・アフェアーズ リポート 2010年5月号

編  集:フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
発  行:フォーリン・アフェアーズ・ジャパン
出版日:2010年5月10日 発売 
評  価:☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 本誌は、米外交問題評議会(CFR:The Council on Foreign Relations)が発行する国際政治経済ジャーナルの日本語版。CFRは非営利の外交問題のシンクタンクで、米国内でどのような位置付けにある組織・雑誌であるのか私は分からないのだが、日本語の公式サイトを見ると、米国の政治経済のリーダーたちがボードメンバーになっている。表紙ウラに本誌について書かれている「最も影響力がある(#1 IN INFLUENCE)」という言葉も誇張ではないのだろう。

 掲載されている記事は、例えば「アジアの大学は世界のトップを目指す」とか「ソ連崩壊20年、冷戦を再検証する」「暫定合意でパレスチナ国家の樹立を」といった論文や、「欧米経済ブロックの形成を」とか「温暖化対策の切り札としての地球工学オプション」といった座談やインタビュー記事。執筆人は、大学の学長や教授、元大使や国家安全保障会議の元メンバーなど、錚々たるエスタブリッシュメントばかりだ。
 そしてその内容は、とにかく「硬い話」ばかりだ。巻末のクイズとかクロスワードとかいった、読者に媚を売るようなものはない、広告さえない。つまり本誌が対象とする読者は、本誌に対してそんな息抜きは求めていないということだ、100%ビジネスモード。政治やグローバルビジネスに直接関わるような人々に向けられた雑誌だ。

 個々の記事の内容については、高度に専門的で私が論評できるようなものではなく「とても勉強になった」としか言えないので、通して読み終えた感想を述べさせてもらう。それは、アメリカという国は、自らにどんなに大きな使命または期待を持たせようとしているのか?ということ。
 本誌が外交の専門誌だから、グローバルに話題が広がっているのは当然なのだが、そのにしても世界の隅々まで目を光らせ、紛争は起きていないか、人権は侵害されていないかと関心を持つ姿はやはり特別だ。例えば「世界は人権侵害であふれている」という論文では、「オバマ大統領は、独裁化を強めるルワンダやエチオピアに、統治を改めるように一貫して働きかけていない」と批判している。日本の首相にそのような批判を投げかける人もいなければ、首相の側にも受ける準備もないだろう。

興味がある方は、日本語のサイトで記事の立ち読みができるのでご覧になるといいだろう。
「FOREIGN AFFAIRS JAPAN」 http://www.foreignaffairsj.co.jp/

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2010年5月25日 (火)

伊坂幸太郎さん、森見登美彦さん、Web文芸誌に執筆

 「ニュース記事を運ぶジェイムズ鉄道」のジェイムズ鉄道さんからトラックバックで、とても有用な情報をいただきました。ジェイムズ鉄道さんに感謝。

 出版社のイースト・プレスが、Amazon.co.jpと連動したWeb文芸誌「マトグロッソ(MATOGROSSO)」を、5月24日に公開しました。サイトの紹介文によると「何かに気がついた時、また何かを感じ取ったとき、それを言葉にして伝えたくなる。そんな書き手の方たちにのびのびと筆をふるっていただく場」として誕生したとのことです。

 現在は「読みもの」と「今日、なに読んだ?」の2本建て。「読みもの」は、森見登美彦さん、内田樹さん、萩尾望都さんらの連載などが読めます。「今日、なに読んだ?」は、伊坂幸太郎さん、高橋源一郎さんの読書/音楽日記です。なんと豪華な顔ぶれでしょう。ネットの楽しみがまた1つ増えました。

※「マトグロッソ」はAmazon.co.jpの「文芸・評論」「和書」ストアなどのバナーからアクセスできます。

 
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2010年5月23日 (日)

王国の鍵3 海に沈んだ水曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年12月20日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「王国の鍵」シリーズ第3弾。主人公アーサーの相手は、これまでにマンデー、チューズデーと来て、今回はウェンズデー。そう、水曜日のウェンズデー。創造主が造った世界の中心にある「ハウス」は7つの部分に分かれていて、それぞれに管財人がいる。ウェンズデーは「果ての海」と呼ばれる場所の管財人だ。

 前作の最後で、普通の人間でいることと引き替えに足を折ったアーサーは、その治療のため入院していた。そこにウェンズデーからの昼食会への招待状が届き、次いで病室に大波が押し寄せ、ベッドごと嵐の海に押し流されてしまう。まさに急転直下、アッと言う間にアーサーの波乱に満ちた冒険が始まる。
 例によって、要所要所では協力者が力を貸してくれるのだけれど、基本的にはアーサーの頑張りと幸運が頼りだ。ベッドで漂流したり、大クジラに呑みこまれたり、海賊に追い回されたりと、最後まで息つく暇もない。ぜんそく持ちのアーサーが気の毒でならない。

 管財人の名前などから、7人の敵が順々に現れることは容易に予想できる。格闘系の少年マンガのように、だんだんと強くなっていくのだろう、という想像もできる。これまでに2冊読んでいて、あと5回この繰り返しかと思うと、正直に言うと退屈な感じがしていた。(偉大なマンネリというものもあるけれど)
 ところが、今回はウェンズデーだけが相手ではないらしい。ついでに言えば、7人の管財人の間にもいろいろな確執があることが少しだけ垣間見える。また、前作までは端役だったアーサーの友達の少女のリーフも、今回はこの冒険に巻き込まれて、重要な役回りを演じる。このシリーズにはマンネリ批判は当たらない。物語は様々な要素が加わって複雑になって来ている。

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2010年5月20日 (木)

ラジオドラマ「有頂天家族」放送決定

 先日のアニメ「四畳半神話大系」続報に続いて、森見登美彦情報が入ってきました。NHK FMのラジオドラマ「青春アドベンチャー」で、森見さんの最高娯楽作品「有頂天家族」を放送する予定です。6月21日(月)~7月2日(金)までの月~金の10回、22:45~23:00の放送です。

 これは2008年に放送されたものの再放送なんです。このラジオドラマがあったことを、放送後にどなたかに教えていただいて知って、とても残念に思ったことを覚えています。なにしろ「有頂天家族」は、私としては今でも森見作品の中の(「宵山万華鏡」も良かったけれど、僅差で)ナンバー1ですから。

 実は先日、加納朋子さんの「モノレールねこ」の中の短編、「バルタン最後の日」の朗読が、NHK第一の「ラジオ文芸館」でありました。知ったのが当日の夕方だったので、ブログで紹介するタイミングがなかったのですが、その時に家のコンポでラジオの録音予約ができることが分かったので、今回も録音して聞くつもりです。しばらくはラジオがプチマイブームになるかも?

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2010年5月19日 (水)

ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言

著  者:中川淳一郎
出版社:光文社
出版日:2009年4月20日 初版1刷発行 2009年8月5日 6刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は博報堂で企業のPR業務に携わり、退社後しばらくして雑誌編集長などを経て、2006年からインターネット上のニュースサイトの編集者をしている。本書でそのニュースサイトでの出来事が多く語られているので支障があると考えたのか、著者紹介ではどこのサイトかは明示していない。まぁ、ちょっと探せばスグに分かるのだけれど、著者の意向に沿ってここでも紹介しないことにする。

 本人もおっしゃっているが、著者は職業柄ネット漬けの毎日を送っている。その著者が「ネットの世界は気持ち悪すぎる」と思い、その想いが本書執筆のきっかけになったようだ。私もコンピュータ関連の仕事をしていてブログも書いているので、ネット接触時間は長い方だと思う。そして私は「気持ち悪い」とはあまり思わないが、うんざりすることは度々ある。
 しかし著者の「気持ち悪い」と私の「うんざり」は、どうもネットの同じ部分についての感想らしい。つまり、人を貶める書き込みが多いこと、まじめな議論をするとちゃかされること、真偽不明の情報が氾濫していることなど。そして、異なる意見を絶対に受け入れないばかりか、徹底的に叩くようなことが日々繰り返されていることも。

 そして、本書の大半はこうした「うんざり」な事例の紹介に割かれているのだが、教訓も引き出している。ネットで叩かれやすい10項目として「上からものを言う、主張が見える」「頑張っている人をおちょくる、特定個人をバカにする」「誰かが好きなものを批判・酷評する」「反日的な発言をする」などが挙げられている。字面を見ると「そりゃ当然だろう」と思われるものもあるが、著者が具体的にあげている事例は、確かに著者に同情したくもなるようなことが多い。
 また、ネットでウケるものもいくつか挙げている。「話題にしたい部分があるもの、突っ込みどころがあるもの」「身近であるもの(含む、B級感があるもの)」「テレビで人気があるもの」「芸能人関係のもの」「エロ」「美人」などだ。

 全編で著者が叫んでいるように感じる本なのだが、それはウェブについて明るい未来を語る本や論調に対する違和感やあせりからくるものなのだろう。「ウェブ進化論」という本が数年前にベストセラーになったが、それ以降「人々の知識が結集した「集合知」によって、不可能が可能となり未来が開ける」といった論調が一方であったことは事実。著者はそれに対してネットの現場から「そうじゃないんだよ」と言おうとしているわけだ。少し叫ぶくらいの声でないとかき消されてしまう危機感を持って。
 現場からの真実の声を伝えようとした、その意気や良しだ。しかし「もう、過度な幻想を持つのやめよう」と、悲観的な未来を描こうとするのは同意できない。確かに「ネットが実現する明るい未来」に比べると現実は確かにクズのようなものかもしれない。けれども多くの人はそんな未来を信じちゃいないと思う。もっと小さな幸せを喜べる感性をちゃんと持っている。だから、そんな未来と比べて現実を悲観する必要なんかないのだ。それが見えてないとすると、著者もネットに囚われて視野が狭くなってしまっているのかもしれない。

 この後は書評ではなく、私が思ったことを書いています。興味がある方はどうぞ。

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2010年5月18日 (火)

アニメ「四畳半神話大系」続報

 以前に「「四畳半神話大系」アニメ化決定!」という記事で紹介したとおり、森見登美彦さんの小説「四畳半神話大系」が、フジテレビのノイタミナでアニメ化され、4月から放送されています。セリフ回しがすごく速いのですが、原作の腐れ大学生のグダグダ感をしっかり感じられる。奇跡のようです。早口のセリフをよく聞くと、ほとんど意味がないんです。何という巧みな演出でしょう。

 それから、リンクを貼っていただいているchaiさんのブログ「chaiの細道」に、アニメ「四畳半神話大系」の情報が紹介されていました。登場人物の黒髪の乙女「明石さん」が着ているシャツを、京都の「モリカゲシャツ」さんが再現して販売するそうです。
 センスも質もいいシャツを作られている、有名なお店なんだそうです。980~1980円のシャツばかりを着回している身にはちょっとお高いように感じますが、そんな私でも「素敵だな」とか「カッコいいなぁ」と思うシャツがウェブサイトの画面に並んでいます。

 追加情報をもう一つ。森見さんとアニメの脚本を担当された上田誠さんが「はてなブックマークニュース」で対談されています。アニメ化のウラ話などがあって、面白いですよ。

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2010年5月16日 (日)

七王国の玉座 氷と炎の歌1(上)(下)

著  者:ジョージ・R・R・マーティン 訳:岡部宏之
出版社:早川書房
出版日:2002年11月15日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は上下巻それぞれ450ページあり、色使いが鮮やかなこともあって、書棚に並んでいると背表紙だけでも存在感がある。それで手にとってみたのだけれど、開いてみて紙面が通常より一回り小さい文字の2段組であることに気付き、さらに圧倒される。これを読み通すことができるのだろうか?不安を感じながら、不思議な魅力に抗し難く読み始めた。
 結果的には、さしたる苦痛もなく読み終えた。それどころか「これはスゴイ物語に出会った。」と、上巻の途中で予感し、下巻を読み終わって確信した。もちろん読むのに時間はかかった。その意味では、この前にレビューを書いた「知らないと恥をかく世界の大問題」のように、「○時間で分かる」と「お手軽さ」を謳ったものとは対極にある。

 舞台も時代も架空の世界。しかし大陸から海を隔てた南北に長い島、王族や貴族や騎士が数多く登場するので、中世の英国をイメージさせる。特定の主人公はいないのだが、最北の地域の領主であるスターク家が軸にはなっている。
 このスターク家の王のエダート、王妃のケイトリン、子どもたちのジョン、サンサ、アリア、ブラン、敵対するラニスター家の次男のティリオン、そして以前に王位を追われたターガリエン家の娘のデーナリスの8人の視点が章ごとに入れ替わる。
 この8人が遠く離れている場合はもちろん、近くや同じ場所にいてもそれぞれの物語を生きている。ページ数・文字数が必要なのはこのせいだ。物語が「長い」というよりも「多い」。著者は起きていることはすべて重要で、余さずに記そうと考えたらしい。そしてバラバラになりそうなこの8通りの物語を有機的に縒り合わせて、冒険と波乱に満ちた1つの物語にすることに成功している。

 織り込まれている内容は、王位継承や貴族同士の確執、陰謀、忠誠と裏切り、家族愛等々。分量のこともそうだが、内容的にも本書は最初から大人向けに書かれた本だと思う。登場人物が多く、貴族間の婚姻などによる人間関係が複雑(これには、巻末の人物紹介が役立った)、そして部分的にではあるが性的な描写が直截でドギマギしてしまう。(娘が後ろから覗き込んできたときには、思わず本を閉じてしまった)
 そして実は、この上下巻で物語は終わっていない。勃発した問題には決着が付いていないし、まだ語られていない物語が多く暗示されたままになっている。情報によると、本書が第1部として第4部まで出ているがまだ完結していないらしい。これはスゴイ物語に出会った。

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2010年5月12日 (水)

知らないと恥をかく世界の大問題

著  者:池上彰
出版社:角川SSコミュニケーションズ
出版日:2009年11月25日 第1刷発行 2010年5月4日 第15刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1年弱前に読んだ「14歳からの世界金融危機。」の著者の新書。書店で新書ランキングの上位になっていた。新書の場合は、売れている(という噂の)本がさらに売れる、という傾向があって、ランキングが中身の良し悪しを反映しないと思っているので、それだけであれば手を出さないのだけれど、「14歳からの~」が思いのほか良かった覚えがあったので読んでみた。

 内容は、世界の勢力地図、アメリカの覇権の崩壊とパワーシフト、世界の問題点、日本の問題点、と今の世界を網羅的に説明している。歴史的な流れを踏まえた考察やウラ話的なものも交えてあり、新聞記事より奥行きがある情報が得られる。
 「はじめに」で世界金融危機のことに触れ、「ブッシュ大統領以外の世界の指導者たちは、歴史に学んでいました」と書いているように、ブッシュ政権(あるいはブッシュ元大統領個人)には大変厳しい眼を向ける。今世界が抱えている問題のいくつかは、ブッシュ政権の失策が原因だとも読める。(「世の中の悪いこと全部が、自分たちのせいにされる。アメリカみたいだ」(伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」より)という言葉を思い出した。)
 その反動もあってか、日米の民主党に対しては肯定的な意見が多い。本書の発行は2009年11月、オバマ政権発足から10ヶ月、鳩山政権からはわずか2ヶ月だ。著者も、新政権には期待を持っていたのだろう。今なら、違うことを書かなくてはならないと思うが。

 「知らないと恥をかく~」というタイトルは、見栄っ張りのビジネスパーソンに効きそうな殺し文句。まぁ、知らなくても恥をかくことはないが、どこかで披露するとちょっと得意になれるような話題が詰まっているので、話のネタを仕入れるつもりで買うのなら760円の価値はあると思う。
 しかし「上っ面をなでました」というスカスカした印象はぬぐえない。本書の帯に「世界のニュースが2時間でわかる!」とある。「14歳からの世界金融危機。」は「45分で分かる!」というシリーズ。どちらも「お手軽さ」を謳ったことは共通だが、テーマを世界金融危機1つに絞った45分は意外に充実したものだったが、いくつもの問題を扱っての2時間ではそれはムリだった、ということだ。私としては、年金や教育や地方分権など、本書で取り上げた「日本の問題」について、著者の意見をもう少しじっくりと聞いてみたい。

 それにしても著者のテレビでの人気ぶりはスゴイ。調べてみたら、古巣のNHKを除いて在京キー局のすべてが、今年になってからバラエティ番組などで、ニュース解説に著者を起用している。テレビ局は「ニュースを国民に分かりやすく伝える」という機能を、自前では賄えなくなっているのかもしれない。

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2010年5月 7日 (金)

戦国武将ゆかりめぐり旅 政宗公と幸村公

著  者:プロジェ・ド・ランディ
出版社:双葉社
出版日:2010年4月11日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 本書を何と紹介すれば良いのか、帯には「武将視点の旅行案内」と書いてあるので、旅行ガイドブックなのだろう。旅行ガイドブックに求めるものを「旅行に必要な情報が過不足なく、分かりやすく掲載されていること」とすると、本書はあまり良い本ではない。観光情報としては、施設の連絡先や交通など最低限の情報が小さい字で記されているだけ、イラスト風の地図には縮尺さえない。

 であるにも関わらず、私は本書を最後まで飽きることなく読み通した。実は本書の大半は物語なのだ。真田幸村と伊達政宗という、二人の戦国武将の華麗にして力強い人生という「物語」を語っている。そしてその物語の舞台となる名跡をごくあっさりと紹介する。その場に立ってみたいと思わずにはいられない。「行ってみたいと思わせること」を旅行ガイドブックに求めるとすると、本書の評価は格段に上がる。(良い本だと思うので、なおさら字の大きさやレイアウトにもう少し工夫が欲しかった。)

 私は真田のファンで、紹介されている物語はよく知っているし、場所も幾つかは行ったことがある(飽きることなく読み通したのには、そういう理由もある)。それでも、いやだからこそ行っていない場所には無性に行ってみたくなった。さらに、伊達政宗とカップリングした著者の慧眼に脱帽する。おそらくは本書の肝だろうと思うのであえて説明しないが、歴史ブーム、歴女ブームの火付け役となったゲーム「戦国BASARA」の人気武将トップ2を揃えただけではないことは確か。このカップリングにも「物語」がある。

 今日5月7日は真田幸村の命日。幸村は1615年の今日、大坂夏の陣で徳川家康の本陣に迫る奮戦を見せたが、志叶わず討ち死にしている。その日にこの本を読んだことに何かの縁を感じる。

 この後は、書評ではなく、真田幸村について語っています。すごく長いですがお付き合いいただける方はどうぞ

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2010年5月 6日 (木)

武田双雲にダマされろ 人生が一瞬で楽しくなる77の方法

著  者:武田双雲
出版社:主婦の友社
出版日:2010年5月31日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 出版社の主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 著者は書道家。3年間の会社員経験の後、同じく書道家である母の影響でこの道を志したそうだ。著名なテレビドラマや映画やイベントの題字を手がけ、アーチストとのコラボレーションも多く、目下大活躍だそうだ。「~そうだ」と伝聞が続いて恐縮だが、私は寡聞にして著者のことを全く知らなかった。
 書道家である著者がどうして「自己啓発本」を?という疑問については、まえがきでこう答えている。「書と向き合うことは「人間の概念を書きつける」こと。あらゆる概念の中でも、特に「どうやったら人類がもっともっと楽しい人生になるのか」ということを考え、伝えたい」。そのために、自分で実践して効果があった「生き方の法則」を本書にしたためたわけだ。

 内容は「ありがとう」の連発で幸せに」といった具体的な方法が、サブタイトルのとおり77個、それが10章に分けて紹介されている。一貫しているのは、ポジティブシンキングと相互作用、そして言葉の力の3つ。ネガティブな言葉よりポジティブな言葉を使っていこう、他人の態度はこちらの態度の合わせ鏡、相手を変えることは容易ではないから自分の態度を変えてみよう、そしてそれらを言葉にして声に出してみよう、ということ。「ありがとう」の連発は、3つの要素が配合されたいい例だ。
 まぁ、突き詰めればこの3つ+αのことしか書かれていないわけで、77もの例を挙げなくてもよさそうなのだが、例がたくさんあって具体的なことにも意味がある。様々な角度から見て言い替えれば、自分に合う言葉が見つかる可能性が高くなる。抽象化された言葉は心に響きにくい、ということは確かにある。私に響いた言葉は72番の「「0」と「1」の差」だった。

 最後に1つ苦言を呈したい。言葉の扱いが雑なのだ。「人生が一瞬で...」というサブタイトルは中身を正確に表していない。でもこれはキャッチコピーだから良しとしよう。中身の文章に擬音や遊びが多いのも、私は気に障ったが親しみやすさを演出する工夫だと認めよう。
 しかし、文章の前後がズレている箇所がいくつもあることは見過ごせない。これは「誤り」だからだ。例えば上に書いたまえがきの文章。「人類が..楽しい人生になる」ではおかしい。「人類が(それぞれorみんな)..楽しい人生を送れる」「人々の人生が..楽しい人生になる」とするのが妥当だろう。
 話言葉ではありがちな誤りで、そう神経質になることもないが、文字にする以上これぐらいの厳密さは必要だろう。著者は、書道家として言葉を厳しく重要視しているそうだが、そういったことは残念ながら本書からは見て取れない。また出版社は、校正の段階で気が付かなかったのだろうか?

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2010年5月 3日 (月)

片眼の猿 One-eyed monkeys

著  者:道尾秀介
出版社:新潮社
出版日:2007年2月25日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書はブログに時々コメントさせていただいている、元フジテレビアナウンサーの松田朋恵さんから「怖いのが苦手で道尾作品を読むなら」ということで紹介していただきました。たいへん面白く読めました。松田さんに感謝。

 著者の作品は「Story Seller」というアンソロジーに収録されていた「光の箱」という短編を読んだことがある。ミステリアスな雰囲気がありながら、全体に優しさが感じられる作品だった。それで他の作品を読んでみたいと思った次第だ。

 主人公は三梨幸一郎、盗聴専門の私立探偵だ。彼は産業スパイ絡みの案件で、ある楽器メーカーを盗聴していて、偶然に別の事件に遭遇してしまう。目撃者ならぬ"耳"撃者?となったわけだが、私立探偵と警察は相性が悪い。警察に言わないでいる間に、事件は三梨自身を絡め捕るように迫ってくる。
 犬の嗅覚と鼻が大きいことの因果関係は分からないが、三梨が盗聴専門の探偵業をやっているのは、彼の身体的特徴つまり耳と関わりがある。その異様さ故に子どものころに心ないイジメにもあった彼は、その耳で向かいのビルの中の会話を聞くことができるのだ。

 著者の作品の特長は、読者を気持ちよく騙すミスリードにある。見えているものがその通りのものだとは限らない。読んでいて思い浮かべる情景は、後になって次々と覆されることになる。上に書いたこともウソはないが、読み終わる頃には全く違って見えるはずだ。そういった「騙される快感」を楽しんでもらいたい。

松田朋恵さんのブログ「シャンとしよっ!

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