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2010年4月 2日 (金)

500年のトンネル(上)(下)

著  者:スーザン・プライス 訳:金原瑞人・中村浩美
出版社:東京創元社
出版日:2003年6月27日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 巻末の解説によると、英国の児童文学の二大タイトルである、カーネギー賞、ガーディアン賞の両方にノミネートされ、「ハリーポッターと秘密の部屋」「肩甲骨は翼のなごり」など、並みいる強豪を抑えてのガーディアン賞(1999年)を受賞した作品。
 「児童文学」というと、小学生(12歳)ぐらいまでの子どもたち向けの物語を思い浮かべるが、殺戮シーンや「大人の会話」もあり、本書はそういった読者を対象としたものではないと思う。解説に「昨今のティーンエイジャー向け書籍は..」と書かれているが、まぁハイティーン以上ぐらいと思った方がいい。

 舞台は、イングランドとスコットランドの境界あたりの街。時代は..21世紀と16世紀だ。タイトルの「500年のトンネル」とは、この2つの時代を行き来することができるタイムマシン(物語の中では「タイムチューブ」と呼ばれている)のことを指している。
 21世紀のハイテク企業が、次元の違うパラレルワールド間をつなぐ技術を開発し、16世紀で資源開発や観光事業を起こして大儲けしようと考えた。しかし16世紀側のこの地域は、多くの氏族が割拠する無法地帯。最も勢力が大きいスターカーム一族に、アスピリンを「エルフの白い小さな薬」として供給したりして、何とか事業のベースとなる平和を実現しようとしていた。

 しかし、21世紀のハイテク企業のあさましい目論見は簡単には実現しない。16世紀のスコットランドの長官が「スターカームとは決して握手をかわさぬことです」と忠告する。彼らは彼らの行動原理にのみ従い、他との約束を尊重する思考は持っていない。原題の「The Sterkarm Handshake」とは、ここでは「守られない約束」の意味なのだ。
 主人公は、21世紀から16世紀に派遣された女性人類学者のアンドリアと、スターカームの族長の息子であるピーアの2人。お互いに魅かれあい、この物語は2人のラブロマンスでもあるのだが、とにかく拠って立つ文化が違いすぎる。「殺られたら倍にして殺り返す」が当たり前だと思うピーアを前にして、アンドリアは葛藤の連続だ。「いい加減に気がついて21世紀に帰ったらどうなの?」と何度も私は思った。そして、物語は混迷の度合いを深めていく。

※右上のAmazonのリンクによると上巻は新品の在庫がないようです(2010.4.2現在)。他のネット書店も同様の状況でした。でも、出版社のサイトからは購入でき、表示される表紙の絵が変わっているので、改版による一時的な在庫切れかと思われます。
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» 角田光代 八日目の蝉 [イヴの総て]
今、こんなことが・・・・・・・・・びっくりです。ふむふむ、そうなんだぁ~~~。また ひとつ 賢くなりました!!500年のトンネル(上)(下): 本読みな暮らし おとなの読書感想文・書評/乱読生活の記録. 「八日目の蝉」にアクセスが集中 | トップページ. 2010年4月 2日 (金). 500年のトンネル(上)(下). 著 者:スーザン・プライス 訳:金原瑞人・中村浩美出版社:東京創元社出版日:2003年6月27日初版評 ...(続きを読む) 超ポジティブな元気いっぱいの女性の話♪... [続きを読む]

受信: 2010年4月 2日 (金) 19時40分

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