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2010年4月10日 (土)

オー!ファーザー

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2010年3月25日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は2006年から2007年にかけて、いくつかの地方新聞に掲載された、いわゆる「新聞小説」に加筆修正したもの。発表の時期的には「ゴールデンスランバー」の直前。著者自身のあとがきによると、「あまり好きな表現ではない」と断りながら、「ゴールデンスランバー」以降が第二期と呼べるかもしれない、とある。つまり本書は、著者の第一期最後の作品なのだ。
 このブログで度々触れているが、気の利いた会話や愛すべきキャラクター、そして巧みな伏線が著者の作品の人気の理由だと思う。そしてそれは著者がいう第一期の作品に色濃く出ていた。当然、第一期最後の作品である本書にもその特長が強く出ている。

 主人公は高校2年生男子の由紀夫。成績は優秀、バスケの選手でスポーツ万能、どうやら腕っぷしも強いらしい。女の子の扱いも上手くて、まるで昔の少女マンガの「あこがれの先輩」みたいな人物造形だけれど、なぜかイヤミがない。読んでいて不思議なことに「普通の男の子」に感じられる。
 普通でないのは由紀夫の家族だ。彼には父親が4人いる。大学教授の悟、中学の熱血体育教師の勲、ギャンブラーの鷹、元ホストの葵、の4人だ。詳しい事情は省いて、とにかくこの4人の父親と母親と由紀夫の6人で暮らしている。
 子は親に似ると言われるが、由紀夫はこの4人の父親のそれぞれに似たのだ。その結果が上に書いた人物造形なのだ。イヤミがないのは、もったいぶったところのない鷹に似たからだろうか。いや、もったいぶったところがないのは4人ともかもしれない。

 正直に言って読み終わった直後は、すごく面白いとは思わなかった。私が大好きな「伏線」は、方々に配置してあって堪能したけれど、もう少し何かが欲しかった。リアリティには欠けるかもしれないが、「面白ければOK」だと思う私はそれは求めてはいない。強いて言えば期待が大きすぎたかも。出会う人、横を通る車、それら全部を「伏線かもしれない」と思って記憶しておこうとしたのがいけなかった。
 読み終わってしばらくして本書を眺め直すと、これはやっぱり面白かった。そしてこれは理想の父親を描いた作品だった。由紀夫は、優しく素直な性格故に、大小さまざまな事件に巻き込まれるのだけれど、心強いことに彼には頼りになる父親が、それも4人もいる。(いや、4人いてやっと「理想の父親」が完成ともいえる)。
 「オー!ファーザー」には、いろいろなニュアンスが込められているが、ピンチの時に現れた父親への「あぁ父さん」という安堵と喜びの言葉でもある。

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コメント

どうもー

伊坂さんってどうしても
”期待のハードル”高くなっちゃいますよね
もうちょっと気楽に読めたらなーなんて思いました。
とはいえ、
やっぱ、次、楽しみにしてしまいます(笑)

投稿: じゅん | 2010年4月15日 (木) 18時24分

じゅんさん、コメントありがとうございます。

期待のハードルが高くなるって、まったくその通りですね。
特に私は、早い時期に「ゴールデンスランバー」を読んでしまって
そのあとしばらくは、どうしても較べてしまって困りました。

どの作品も楽しんだんですけれどね。
 

投稿: YO-SHI | 2010年4月16日 (金) 00時19分

YO-SHIさん、こんにちは。
私は最近の混沌とした伊坂さんの作品も実は好きなんです^^

「オー!ファーザー」は、伊坂さんお得意の分野だったので
伸び伸びと描きすぎちゃったのかな?
面白いけれど、物足りないですね^^;

いつまでも同じタイプの小説では読者にも飽きられてしまうし
きっと本人も納得しないでしょう。。
そういう意味で、「表現する仕事」というのは大変ですね;;

投稿: つぐみ | 2010年4月17日 (土) 10時20分

つぐみさん、コメントありがとうございました。

伸び伸びと描いた、って感じが確かにしますね。
4人のお父さんのキャラなんて、楽しんで書いているのが
伝わってくるようです。

伊坂さんの最近のインタビューなどを読むと、
「変えよう」という意識がとても強いように思います。
「SOSの猿」で、やりたいことができたようなことを
おっしゃっていたので、これから楽しみです。
 

投稿: YO-SHI | 2010年4月17日 (土) 16時33分

YO-SHIさん こんばんは。
親は子に似るといいますが、これは大変ですよね…(^_^;)
親にかまわれる時間も多くて、勉強する時間がなかったりして。
でも、それでいていいバランスがとれていますよね。
その書き方が伊坂さんのうまいところだったと思います。
ほんと、楽しかった1冊でした。

投稿: たかこ | 2010年9月23日 (木) 19時17分

たかこさん、コメントありがとうございます。

親にかまわれる時間も多くて..というのはその通りですね。
私も子ども2人の父親ですが、毎日一定時間子どもをかまってますね。
(かまわせてもらってる?)あの時間が4倍になったらたいへんかも。

楽しい1冊でした。たかこさんのブログへのコメントにも書きましたが
伊坂さんには、もっとこういった物語を書いて欲しいです。
 

投稿: YO-SHI | 2010年9月24日 (金) 01時09分

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