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2010年2月12日 (金)

逃亡くそたわけ

著  者:絲山秋子
出版社:中央公論新社
出版日:2005年2月25日 初版発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 始めて著者の作品を読んだ。2005年の直木賞候補作。記憶が定かではないのだけれど、たしか書評コンクールの課題図書になっていたのと、翌年に著者が「沖で待つ」で芥川賞を受賞したこともあって気になっていた。図書館の書棚を物色中に目に留まりてに取ってみた。170ページと思いのほか薄い本だった。

 とにかく驚いた。物語の初めからどうなるのか心配でならない物語なのだ。主人公は躁状態で入院した21才の博多女の「花ちゃん」。彼女が、うつ病で入院していた名古屋生まれの男24才の「なごやん」と一緒に走っている。どうして走っているのか?病院を脱走したのだ。
 準備万端の脱走ではなくて、その日の朝思いついたもので、花ちゃんがそのためにやった準備は「サンダルではなくて靴を履いた」ことだけ。なごやんを道連れにしたのは、そこに彼がたまたま居たから誘っただけだ。「ね、一緒に逃げよう」と言って。

 その後もこの逃亡劇は続いて、ロードムービーの体なのだけれど、これがとにかく行き当たりばったり。当初心配された見つかって連れ戻されることより、もっと重大な事件が起きそうで(いや起きてるんだけど)、私の心配は増すばかりだ。花ちゃんなんて車の免許ないのに運転してるし。
 私のハラハラ感と対照的な、逃亡中の2人の実にカラッとした感じがこの本の持ち味。2人が言いたいことを言い合う(いや言いたいこと言ってたのは花ちゃんか)会話が小気味いい。博多言葉がこの小気味よさに一役買っているのはもちろんだ。

 実は昨年の春に、大分-別府温泉-阿蘇-高千穂-熊本をレンタカーで走ったことがある。花ちゃんの逃亡コースに一部重なっているので、雰囲気というか車窓の描写をうまく思い浮かべることができて楽しかった。とにかく広かった。阿蘇に向かう道なんて遮る物なく、遥か向こうまで道が続いている感じだった。「どこまでも逃げる」という思いに相応しい情景だ。

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