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2010年2月

2010年2月28日 (日)

大金星

著  者:水野敬也
出版社:小学館
出版日:2008年12月13日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 発売から約1年半の昨年の春ごろに170万部突破したベストセラー「夢をかなえるゾウ」の著者の近刊(1年あまり前の発行)。「夢をかなえるゾウ」のテーマは「変わりたい」「成功したい」という多くの人に共通の「夢」。それをかなえるための課題を、面白おかしく提示して人気を博した。そして今回のテーマは、冴えない男子の夢「彼女が欲しい」だ。

 主人公は御手洗という名の大学生。高校生の時、アーケードゲームの「鉄拳」の全国大会を制したことがある。なかなかスゴイ経歴だけれど、その他のことはサッパリ。特に女子に対してはまともに話もできない。もちろん、生まれてこの方彼女はいない。
 彼が、渋谷の街で高校時代の同級生の笠原に会う。御手洗のことを「オテアライ」と呼び、使いっ走りとしてアゴで使ってきたモテ男、まぁ田舎から上京して来て一番会いたくない「友だち」だ。そして次に会ったのが花村春男。花村家一子相伝の恋愛極意を修得した達人(らしい)。彼が御手洗に恋愛極意を指南する、というストーリーだ。

 それで..まぁ..「これを読めば僕にも彼女が!」と期待する悩める青少年がいたとすれば、そんな期待はきれいに忘れた方がいい(笑)。春男が指南するのは「ナンパ」と「合コン」の心得と立ち振る舞い。でもきっと活用できないだろう。良く言えば、これは達人の技なので厳しい修行でしか修得できない。悪くそして正直に言えば「こんなことできないよぉ」だ。
 「彼女が欲しい」という現実的な目的さえ脇に置けば、この本は面白い。いろんなことに恵まれない男子が少しづつ何かを克服し前進していく姿は勇気付けられもする。古今の文人偉人の言葉を多用する春男が話す、一見?な極意にも一面の真理はある。バカバカしい青春物語として肩の力を抜いて読む分には可だ。

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2010年2月25日 (木)

Re-born はじまりの一歩

著  者:伊坂幸太郎、瀬尾まいこ、豊島ミホ、中島京子ほか
出版社:実業之日本社
出版日:2008年3月25日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 先日の「Story Seller2」に続いてのアンソロジー。こちらにも伊坂幸太郎さんの短編が収録されている。その他には、瀬尾まいこ、豊島ミホ、中島京子、平山瑞穂、福田栄一、宮下奈都の6人の作家さんが名を連ねている。不勉強のため、中島京子さん以外の作家さんはお名前も知らなかった。
 タイトルの「Re-born」について。英語の「reborn」は「生まれ変わった」「再生した」という意味の形容詞。収録された7編の作品はどれも、再生・再出発の物語だ。サブタイトルの「はじまりの一歩」は、今まさに再生・再出発の瞬間であることを表している。読者は、それぞれの作品の終わりにその瞬間に立ち会う、という趣向だ。

 宮下さんの作品「よろこびの歌」と、瀬尾さんの作品「ゴーストライター」、豊島さんの作品「瞬間、金色」は高校生の物語。才能に恵まれていても平凡でも、裕福でも貧しくても、ハイティーンは悩み多い年頃だ。人生ではじめての挫折を経験するのもこの頃だろう。若い世代の悩みや挫折からの「再生・回復の"reborn"」の物語。
 それに対して、福田さんの作品「あの日の二十メートル」と、平山さんの作品「会ったことがない女」は、人生の終盤を迎えた男性の物語。それなりに幸せな人生を送ってきたけれど、若いころに悔いが残る出来事がある。こちらは人生を全うするための「やり直しの"reborn"」。
 伊坂さんの作品「残り全部バケーション」と、中島さんの作品「コワーリョフの鼻」は、夫婦についての物語。一緒に暮らしていても心に距離や壁ができる。関係を解消するにしても続けるにしても、このままではいられない、その時のリセット。人生半ばの物語は「再出発の"reborn"」

 収録されている7作品のうちの5作品が、「月刊ジェイ・ノベル」というエンタテイメント作品の文芸誌に掲載された作品。掲載作品から「reborn」というテーマにあったものをピックアップしたのだろう。まぁ、よく言えば落ち着いた、悪く言えば平板な感じがする作品が多いのだが、「reborn」をテーマにした編集のアイデア勝ちだ。収録作品を見渡すとわかるように、どの世代も「reborn」を望む気持ちを心のどこかに抱えているのだから。

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2010年2月23日 (火)

「四畳半神話大系」アニメ化決定!

 ネットを回遊していたら「四畳半神話大系」アニメ化決定!、という文字が飛び込んできました。フジテレビノイタミナで4月から放送だそうです。正直に言って最初は冗談だと思いました。コミック化や舞台化などのメディアミックスの実績がある森見登美彦作品ですが、よりによって最も男汁が濃いと思われる腐れ大学生が、テレビでお茶の間に登場するなんて...

 アニメ化なら森見作品にはもっと向いたいい作品があります。「有頂天家族」なんて最高にアニメ向けです。「宵山万華鏡」なら、妖しくも幻想的な雰囲気がアニメにはまりそうです。「夜は短し歩けよ乙女」でもいいです。公式ページを見ると、キャラクター原案は「夜は短し~」の表紙イラストを描いた中村佑介さんだというじゃないですか。

 ノイタミナと言えば、木曜24時45分からという深夜枠ながら「図書館戦争」や「のだめカンタービレ」などの話題のヒット作も多いです。あまりの衝撃にうろたえて文句を並べてしまいましたが、実はとても楽しみです。きっと予約録画して見ます(笑)

ノイタミナ「四畳半神話大系」公式ホームページ
本読みな暮らし:四畳半神話大系
本読みな暮らし:有頂天家族
本読みな暮らし:宵山万華鏡
本読みな暮らし:夜は短し歩けよ乙女
本読みな暮らし:図書館戦争

(2010.4.23 追記)
録画し忘れました(泣)。フジテレビはケーブルテレビの再送信で観ているので、録画予約がちょっと面倒で、後回しにしておいたのがいけなかった。5月8日深夜からBSフジでも放送されるので、そっちに回ります。

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2010年2月22日 (月)

Story Seller2(ストーリーセラー2)

編  者:新潮社ストーリーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2010年2月1日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、月刊の文芸誌の「小説新潮」2009年5月号の別冊として発売された雑誌を文庫化したもの。「Story Seller」という本がちょうど1年前に出ているので、これから毎年こうした形のアンソロジーが出るのだろうか。だとしたら、それはとても楽しみなことだ。
 今回は、沢木耕太郎さん、伊坂幸太郎さん、近藤史恵さん、有川浩さん、米澤穂信さん、佐藤友哉さん、本多孝好さんの7人の書き下ろし短編が収録されている。伊坂さん、近藤さん、有川さんは、大好きな作家さん。裏表紙の紹介文に「日本作家界のドリームチームが再び競演」とあるが、缶コーヒーのコマーシャルのように「贅沢だぁ!」と言いたい気分だ。

 伊坂さんの作品「合コンの話」は、男3人女3人の社会人の合コンが舞台。何度か主人公や視点が代わりながら、六者六様に秘められた物語が徐々に明らかにされる。「合コンは3対3がベスト」とか「おしぼりサイン」とかの豆知識を交えながらの展開や会話が気持ちいい。ラストのサプライズも含めて「私が読みたい伊坂作品」だった。
 近藤さんの作品「レミング」は、「サクリファイス」の前日譚で、「Story Seller」に収録されていた「プロトンの中の孤独」の翌年ぐらいだろうか。この作品の中のセリフ「おまえにはわかるのか?一生ゴールを目指さずに走り続ける選手の気持ちが」が、この一連の自転車ロードレースを題材にした物語のテーマだ。そしてそこにドラマが起きる。
 有川さんの作品「ヒトモドキ」。もし小学校六年生の女の子に、倹約家で人目をはばからない叔母がいて、突然同居することになったら?という物語。伊坂さんの作品とは違って、これは「できれば読みたくない有川作品」だった。胸がむかつくというか、何とも気が滅入るというか、読み終わってしばし沈黙してしまった。主人公の家族の結束が固いことが救いだったけれど。

 他の4人の作家さんの話もそれなりに面白かった。沢木さんの作品「マリーとメアリー」は小説ではなくてエッセイ。

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2010年2月17日 (水)

一角獣の殺人

著  者:カーター・ディクソン 訳:田中潤司
出版社:東京創元社
出版日:2009年12月25日第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 不勉強のため知らなかったのだけれど、著者は本書のカーター・ディクスンの他、本名のジョン・ディクスン・カーなどの名義で、1930年から70年代にかけて実に80作余り、特に30年代には年に4作も5作もを発表している。つまりは超売れっ子作家であったわけだ。本書はその全盛期とも言える1935年の作品。

 主人公は元英国情報部員のケンウッド・ブレイク。彼が元情報部員というだけでなく、この物語は英仏の国境を越えた、英国情報部の極秘任務という、まさに007ジェームズ・ボンドの映画の世界。発表年から心配される「古くささ」を全く感じることなく楽しめた。
 舞台はフランスの古城。嵐の中近くにマルセイユからパリに向かう飛行機の定期便が不時着した。乗客の中には神出鬼没の怪盗と名探偵の警部が、それぞれ正体を隠して潜んでいるらしい。怪盗の狙いは「一角獣」、これまた正体不明なのだがどうやらロンドンへ輸送中のお宝らしい。
 主人公のケンウッドは、旧知の美女の情報部員となんと英国情報部長と共に、この古城に乗客らと共に避難して来た。(この英国情報部長のヘンリー・メリヴェール卿が、どうやら著者の作品の主役キャラクターらしい)

 城の主や下働きの者を含めて十数人が滞在する城で、誰が怪盗なのか警部なのか分からないまま、殺人事件が起きる。頭を長い円錐状のもので突き刺した跡がある死体が、階段の踊り場に残された。階段の上にも下にも人がいる中での凶行だが、犯人はおろか凶器さえ見つからない。やはりタイトルの通り「一角獣」の仕業なのか?
 著者は「密室の王者」という異名を持つそうだが、今回は密室どころか階段という完全なオープンスペースでの犯罪。だが、不可能犯罪としては密室以上と言える。「どうしたってこれはムリでしょう」という感じなのだが、ちゃんと謎解きもある。
 美女の情報部員が早々に登場した時に、主人公とどうにかなるのだろうなぁ、と思ったのは、007の映画のせいだろうか?

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2010年2月15日 (月)

デパートへ行こう!

著  者:真保裕一
出版社:講談社
出版日:2009年8月25日 第1刷 9月15日 第2刷 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 これは楽しい作品だった。著者のことは硬派のミステリー作家だと思っていた(実際にそうなのかもしれないけれど)。でもこの作品はコメディだ。いや怪しげな登場人物たちの物語が複雑に交錯し、徐々にナゾが明らかになる展開はミステリーに違いない。でも、登場人物たちが誰一人として面白いことをしようとしているのではなくて、それぞれの事情から必死なんだけれど、その必死さが絡み合うと何故か可笑しくなってしまうのだ。

 舞台は鈴膳という創業100年を迎える老舗デパート。その閉店間際から翌朝までの半日の物語。つまりほとんどが閉店後の、本来なら人がいない時間帯のデパートでの一夜の出来事。そこに、リストラされたサラリーマン、ヤクザに追われる元警察官、家出してきた未成年のカップル、鈴膳の社長、ゼネラル・マネージャー、従業員のOLらが徘徊する。これに、深夜のデパートにいて当然の警備員たちが絡んで、照明が落ちた今夜の鈴膳はやたらと賑やかだ。
 地下1階、地上7階に屋上まであるデパートは広く、暗闇の中でに侵入者たちが身を潜ませる場所はいくらでもある。しかし、ある者は目的を持って動き、別の者は空腹を満たすために動きしているうちに、あちこちでニアミスや鉢合わせが起きる。お互いに「自分しかいない」と思っている暗闇での遭遇だから、面白い反応が起きる。みんな手探りで動くので、全体的にスローテンポなんだけれど、まぁ読んでいて飽きない。

 物語の背景には、時代の変化にもがく百貨店業界の苦境や、社内の派閥争い、贈収賄事件などが見え隠れするが、社長をはじめとする社員を除けば、人々がここに来たことは偶然のように思える。しかし、登場人物のほぼ全員に隠された物語がある。それが明らかになってくる後半は加速度的に面白くなってくる。この人にまでこんな物語が!と最後の数ページでは脱帽。

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2010年2月12日 (金)

逃亡くそたわけ

著  者:絲山秋子
出版社:中央公論新社
出版日:2005年2月25日 初版発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 始めて著者の作品を読んだ。2005年の直木賞候補作。記憶が定かではないのだけれど、たしか書評コンクールの課題図書になっていたのと、翌年に著者が「沖で待つ」で芥川賞を受賞したこともあって気になっていた。図書館の書棚を物色中に目に留まりてに取ってみた。170ページと思いのほか薄い本だった。

 とにかく驚いた。物語の初めからどうなるのか心配でならない物語なのだ。主人公は躁状態で入院した21才の博多女の「花ちゃん」。彼女が、うつ病で入院していた名古屋生まれの男24才の「なごやん」と一緒に走っている。どうして走っているのか?病院を脱走したのだ。
 準備万端の脱走ではなくて、その日の朝思いついたもので、花ちゃんがそのためにやった準備は「サンダルではなくて靴を履いた」ことだけ。なごやんを道連れにしたのは、そこに彼がたまたま居たから誘っただけだ。「ね、一緒に逃げよう」と言って。

 その後もこの逃亡劇は続いて、ロードムービーの体なのだけれど、これがとにかく行き当たりばったり。当初心配された見つかって連れ戻されることより、もっと重大な事件が起きそうで(いや起きてるんだけど)、私の心配は増すばかりだ。花ちゃんなんて車の免許ないのに運転してるし。
 私のハラハラ感と対照的な、逃亡中の2人の実にカラッとした感じがこの本の持ち味。2人が言いたいことを言い合う(いや言いたいこと言ってたのは花ちゃんか)会話が小気味いい。博多言葉がこの小気味よさに一役買っているのはもちろんだ。

 実は昨年の春に、大分-別府温泉-阿蘇-高千穂-熊本をレンタカーで走ったことがある。花ちゃんの逃亡コースに一部重なっているので、雰囲気というか車窓の描写をうまく思い浮かべることができて楽しかった。とにかく広かった。阿蘇に向かう道なんて遮る物なく、遥か向こうまで道が続いている感じだった。「どこまでも逃げる」という思いに相応しい情景だ。

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2010年2月10日 (水)

キケン

著  者:有川浩
出版社:新潮社
出版日:2010年1月20日 発行 
評  価:☆☆☆☆(説明)

 様々なところの紹介文に「理系男子」とあるが、より正確には「工学男子」の熱血青春物語だ。成南電気工科大学の部活「機械制御研究部」略して「キケン」の1回生と2回生の部員が巻き起こす、ぶっ飛んだ危険な騒動の数々が、キラキラした結晶のような輝きを持って語られる。

 主な登場人物は、2回生で部長の上野直也、副部長の大神宏明、1回生の元山高彦と池谷悟、その他の「キケン」部員の面々。そして最も危険なのが部長の上野。彼は「火薬」という漢字が書けない頃から火薬で遊んでいた強者だ。ついた渾名が「成南のユナ・ボマー」
 彼らの、新入生勧誘や学園祭やロボット相撲大会という学園生活を通しての、ハチャメチャだけれども全力投球のエピソードが本当に楽しい。工学男子はモノが造れるのがうらやましい。学園祭のレベルを遥かに超えるラーメン屋の屋台でも、出前用の岡持ち付きの自転車でも自分たちで作ってしまう。そして爆弾でも鉄砲でも..造ろうと思えば..

 本書は元山が自分の妻に思い出を話す昔語りの形式になっている。最初は、どうして昔語り?と思ったのだけれど、読み終わった今となっては、これには著者の計算があったと思っている。思い出として語ることでキラキラとして見えてくるし、「"元"男の子」であるはずの世の大人の男性は、自分が「男の子」であった頃を思い出さずにはいられないからだ。
 「部室」という言葉を見れば、私は高校の部活(軟式テニス部でした)の雑然とした汗臭い部屋が目に浮かぶ。工学男子ではないけれど、私は今に至るまで工作が好きだし、火も好きだ(ちょっと危ない表現だけれど)。さらに著者は、そんな「"元"男の子」の気持ちを激しく揺さぶる仕掛けを最後に用意していた。私もこれに完全にやられてしまった。

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2010年2月 6日 (土)

SOSの猿

著  者:伊坂幸太郎
出版社:中央公論新社
出版日:2009年11月25日 初版発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 「伏線を回収して最後に全部かっちり収まる、バランスの良いもの」。これは、本書の出版に当たって出版社の特設ホームページに掲載されたインタービューで語った、著者自身が持っている自らの作品のイメージだ。付け加えるとすれば「気の利いた会話や、突き抜けた愛すべきキャラクター」などがあげられるが、私もその通りだと思うし、そのような作品を読みたいと思う。
 しかし著者は、同じインタビューの中で「どこか破綻しているもの、ちゃんと解決しない部分があったり、不可解な部分があるほうが好きなんですよ」と言い、「あるキング」からは意図的に変えて、バランスの崩し方を手探りしていたらしい。そして本書は「最近のやりたいことが一番よくできた「理想型」」という評価をしている。

 その本書について。物語は主人公の遠藤が、知り合いの女性からひきこもり中の息子の眞人のことで、相談というかお願いを受けるところから始まる。女性は遠藤のことを「訪問カウンセラー」だと聞いてきたようだが、彼はイタリアで「悪魔祓い(エクソシスト)」のトレーニングを受け、帰国後も依頼に応じてそうしたことをやっているのだった。
 「エクソシスト」がどの程度本当に「悪魔」を祓う仕事なのかはわからないが、「悪魔が憑いた」としか言いようのない状況を見せる人々を救う仕事をしている人は実際にいるのだそうだ。遠藤はそうしたエクソシストの一人に付いてアシスタントをしていた。
 精神的な疾患ならば、それを治すのは専門医の仕事であって、遠藤の分野ではない。彼もそう思いながらも、断ることができずに女性の家を訪ねる。そして..めまいに似た感覚や遠藤が見た眞人の様子は、これが「遠藤の分野」のことであることを示していた..。
 この遠藤の視点の「私の話」と、「猿の話」というシステム開発の品質管理を仕事とする五十嵐の話が、交互に語られる。そして株の誤発注や、監禁虐待事件、夜のコンビニの駐車場で合唱するコーラス隊などがストーリーに絡む。この辺りで「気の利いた会話や~」は健在で、これまでと変わりなく味わえる。

 話は戻るが、著者が「あるキング」からは意図的に変えようとしたと聞けば、大方の伊坂ファンは「あぁやっぱり」と思うだろう。そのぐらい「あるキング」はそれまでの作品と違っていた。確かにバランスが崩れていた。本書はそれほどでもないが少し据わりが悪い。
 まぁ著者の意図だから当然だし、私も嫌いではないのでお付き合いさせていただく。しかし、どうか程良いバランスの崩し方に留まって欲しい。そして「気の利いた会話や~」まで失うようなことのないようにして欲しい。

 コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
 「伊坂幸太郎」カテゴリー

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2010年2月 3日 (水)

めくらやなぎと眠る女

著  者:村上春樹
出版社:新潮社
出版日:2009年11月25日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 村上春樹さんの短篇集。「象の消滅」と同様に、米国で編集され英語で出版された自選短篇集と同じ作品構成という企画だ。日本での出版が古いものでは1983年の短篇集「カンガルー日和」から「カンガルー日和」や「スパゲティーの年に」他、新しいものでは2005年の「東京奇譚集」から「ハナレイ・ベイ」や「品川猿」他の全部で24編もの短編が収録されている。
 著者のデビュー作「風の歌を聴け」は1979年の作品だから、本書はデビュー直後から最近までの著者の短編のショウケースのような趣がある。「英語圏の読者に向けて」という注釈は付くが、著者自らが選択した作品を24作品もまとめて読めるのだから、ファンにとってはうれしい一冊だと思う。

 一部を除いて(私が見たところ3つ)、既出の短篇集に収められた作品ばかりなので「これほとんど一回読んだやつなんだよなぁ」という心配はあった。でもそれは結果的には杞憂だった。以前に読んだことがある(はずな)のだけれど、全く覚えていなかったり、展開に驚いたりと面白かった。覚えている作品でさえ、著者らしい言い回しやストーリーを楽しめた。
 ただ、本書が多くの人に受け入れられるかどうかは正直言って微妙なところだ。特に前半に収録されている作品は、フワフワしていてつかみ所がない上に、フッっと音も立てずに終わってしまう感じ。それでいて、「あぁこれは村上春樹らしいなぁ」と感じる物語の小片になっている。でも「村上春樹らしい」という感覚が元々無ければ「訳が分からない」という気持ちが残るだけではないだろうか。
 しかし、後半の作品は少し骨組みや肉付けが感じられる。収録順は「東京奇譚集」の収録作品が最後になっていて、ゆるやかには年代順になっているようなのだが、何の順で並んでいるのか分からない。思うに、本書を通して少しずつ「村上春樹作品」なるものの形が見えてくるような趣向なのではないだろうか。

 本書冒頭に「Blind Willow, Sleeping Womanのためのイントロダクション」という6ページの著者からのメッセージが載っている。著者にとっての長編小説を書くこととは何か、短編小説を書くこととは何か?ということが綴られている。著者の肉声に接したような気がした。

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2010年2月 1日 (月)

2009年「今年読んだ本ランキング」投票結果

投票結果 昨年末に2009年の「今年読んだ本ランキング」を発表して、1月末まで右のサイドバーで皆さんに人気投票していただきました。 投票総数は48人でした。投票いただいた方、どうもありがとうございました。

 下に、投票結果を発表します。1位は私の順位と一致していて、「獣の奏者 3.探求編、4.完結編」です、上橋さんの人気は固いですね。3位の「陽気なギャングが地球を回す」は2003年の作品ですが、伊坂ファンからの支持があったのでしょう。
 その点、有川作品2作は有川ファンの票が割れたと思われるものの、2位と5位と共に上位に入ったのはスゴイことかもしれません。翻訳モノのファンタジーは支持を得られず、下位となりました。

順位 私の
順位
タイトル/著者 得票数 Amazonリンク
 獣の奏者 3.探求編、4.完結編 / 上橋菜穂子 12 Amazon
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 植物図鑑 / 有川浩 11 Amazon
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 陽気なギャングが地球を回す / 伊坂幸太郎 Amazon
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 宵山万華鏡 / 森見登美彦 Amazon
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 シアター! / 有川浩 Amazon
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 サクリファイス / 近藤史恵 Amazon
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 流星の絆 / 東野圭吾 Amazon
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 茨文字の魔法 / パトリシア・A・マキリップ Amazon
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10  駆け出し魔法使いと海の呪文 / ダイアン・デュエイン Amazon
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10  魔法の使徒(上)(下) / マーセデス・ラッキー Amazon
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