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2009年12月21日 (月)

魔法の使徒(上)(下)

著  者:マーセデス・ラッキー 訳:細美瑤子
出版社:東京創元社
出版日:2009年11月20日第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 主人公ヴァニエルは16歳の少年。武人の家であるアシュケヴロン家の長男。長い鼻の面貌が特徴の家系だが、ヴァニエルは飛びぬけた美少年。そして武術よりも音楽の才能があり学問を好む。「自分のような跡取り」を望む父からは疎まれ蔑まれ、ひずんだ性格の少年に育ってしまっていた。
 そして彼は、魔法使者である伯母のサヴィルのところに、教育を受けるために半ば厄介払いの形で送られる。そこでも彼は孤立を深めるのだが、ついに「生涯の絆」で結ばれたタイレンデルと出会い、やがて二人は愛し合うようになり心の平安を得るが..。(ちなみにタイレンデルは男。つまり二人の愛情は同性愛。ちょっと身構えてしまうかもしれないが、登場人物たちの多くは頓着しない。読者も同じ心構えで臨もう)

 16歳とは言えまだ少年のヴァニエルが痛々しい。父からも母からも普通に得られるはずの愛を受けられず、家臣である武術指南には一方的になぶり倒される。そして大きな心の負担となる悲劇が、彼の秘められた天恵(そしつ)を開かせるという皮肉。
 物語の舞台となる場所が何度が変わるのだが、そのたびに「あるべき場所」に近づき、ヴァニエル自身も「あるべき姿」に近づいていく「前に進んでいる」感が読者には心地よい。異世界ファンタジーの秀作と言える。ファンタジー好きにはオススメだ。

 ところで、本書は「ヴァルデマール年代記」と呼ばれる著者の一連の作品群の1つ「最後の魔法使者」三部作の1つ目にあたる。「ヴァルデマール年代記」は、ヴァルデマール国建国の1000年前から建国後1376年までの、実に約2400年間の出来事を綴る時代と主人公を変えた、6つの三部作を含む20数作品が発行されている。
 本書は建国後750年あたりの時代で、主人公ヴァニエルは後の時代の作品で「伝説の魔法使徒」として言及される形で登場しているらしい。現在10作品ほどが日本語訳されているので、その読者は本書の発行によって「あのヴァニエルの少年時代」を楽しめる趣向となっているわけだ。

 どうらや海外には大人向けのファンタジー作品の豊かな鉱脈があるようだ(本書は色々な意味で「大人向け」だ)。今回はその鉱脈の1つに行き当たったような感触がある。しかし、日本語訳されている作品は、その多くが上下二分冊ですでに10作を超える。未邦訳作品はその倍以上ある。この鉱脈は奥が深い、さてどうするか?

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コメント

本当にいろんな意味で大人向けでしたね。
ちょっと苦手な分野ではありますが(笑)。

投稿: 風竜胆 | 2009年12月21日 (月) 19時47分

風竜胆さん、コメントありがとうございました。

そうですね。私も最初は目を疑いました。
「本が好き!」の事務局にも注意した方がいいんじゃないかと
思ったぐらいで...こんな本だとは思わなかった..とか。(笑)

読んでしまえば何てことなかったですけどね。私の場合は。
 

投稿: YO-SHI | 2009年12月22日 (火) 14時16分

ブログを読ませていただきありがとうございます。
来年も良い年になりますように。

投稿: 出会いを忘れない | 2009年12月22日 (火) 16時37分

出会いを忘れないさん、コメントありがとうございます。

こちらこそ、ブログを読んでいただいてありがとうございます。
来年も良い年になりますように。

投稿: YO-SHI | 2009年12月23日 (水) 09時52分

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