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2009年10月 8日 (木)

獣の奏者 3.探求編、4.完結編

著  者:上橋菜穂子
出版社:講談社
出版日:2009年8月10日第1刷 9月10日第5刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書に先立つ2冊「獣の奏者 1.闘蛇編、2.王獣編」を読んでから2年。待望の続編というか完結編を読むことができてうれしい。2年前のレビューには、「色々なことが着地しないまま物語は終わってしまう。続編がないのなら、これはいただけない。」と、偉そうに書いているぐらいだ。

 前2冊で物語が完結しているかどうかという点では、私と違う意見の方も多くいるようだ。その筆頭は著者自身で、あとがきに「「獣の奏者」は、<闘蛇編><王獣編>で完結した物語でした。」と、また「きれいな球体のように閉じた物語」ともおっしゃっている。
 その著者がなぜ続編を?ということは、あとがきに記されているのでここでは置くとする。ただ、前2冊の物語の中に、これだけの壮大な物語の種が潜んでいたのだから、完結していなかった、ということなのだと思う。著者さえもこの物語の種には当初は気が付かなかったのだと。(「私は気が付いていた」と言いたいのではないので、誤解のなきよう。)

 物語は「王獣編」のラストの「降臨の野」の出来事から11年後、主人公エリンが闘蛇衆の村を訪ねるシーンから始まる。王獣の医術師を目指していたエリンが、なぜ故郷に近い闘蛇衆の村に?と思うが、これは大公シュナンの命で闘蛇の大量死事件の調査に赴いたのだった。
 闘蛇の大量死と言えば、エリンの母ソヨンが死罪に問われた事件を思い出す。エリンにとっては、この調査は母の事件の調査でもあり、過去へ遡る探求の道でもあるのだ。この調査が象徴するかのように「探求編」はもちろん「完結編」も、エリンによる過去のそして真実の探求を描いている。この国の誕生前に神々の山脈の向こうで起きた事件の真実は?

 本書は完結するための2冊だから、あいまいさを残したままでは終われない。様々なことに決着をつけなければならない。もう初々しい若者ではないエリンやシュナンや真王セィミヤは、それぞれに決断をしその結果に責任を負わなくてはいけない。その決断の結果は過酷であり、「もう少し良い方法はないのか」と何の責任も持たない私は思うが、恐らくこれ以外にはないのだ。母とは違う道を選んだエリンのしなやかな強さが印象に残った。ファンタジーの大河ドラマがここに完結した。

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コメント

獣の奏者、最近NHKのTV番組でアニメ(かな?)を放送しているようですね。
私は「何故続編が!?」とビックリしたクチです(汗)が、
「若者ではないエリン」が物語を終わらせるということに、なるほど…と思いました。

最近はファンタジーから遠ざかっているのですが、
YO-SHIさんのブログでトールキンやゲド戦記の文字を見て、
また沸々と読みたい気分が湧いてきました。
…小野不由美さんの十二国記も続きが読みたい作品なのですが。。。

リンク、ありがとうございます!嬉しいです♪
私もリンクさせていただきたく思います。それでは。。。

投稿: ミーシカ | 2009年10月11日 (日) 02時51分

こんにちは、「獣の奏者」って、上橋菜穂子なんですね。
YO-SHIさんの記事を読んで初めて、こんな作品もあることを知りました。
興味はありますが、目下積読中のものを片づけるが最優先課題なので、少し落ち着いたら、書店で探してみたいですね。

投稿: 風竜胆 | 2009年10月11日 (日) 10時41分

ミーシカさん、コメントありがとうございます。

実は私、NHKのアニメも録画して観てるんです。
夜中におじさんがアニメ観てるってどうよ、って
うちの奥さんに言われたことがあります。

十二国記の評判は、方々でお伺いするのですが、
まだ読んでないんです。
もう何冊にもなっているので、ちょっと手が
出しづらいって思ってるんですが....

------

風竜胆さん、コメントありがとうございます。

「獣の奏者」は、時期的には守り人シリーズの
終盤に並行して出版された作品のようです。
「完結編」までの4冊で、なかなか読み応えのある
作品だと思いますので、機会があれば是非どうぞ。
 

投稿: YO-SHI | 2009年10月12日 (月) 11時18分

こんにちは。はじめまして。
私は前の2冊を面白く読み、一応完結してるなあと思っていたので、
今回続きが出たのにはちょっとびっくりしました。
いま図書館に予約中です。
いつまわってくるだろうか。。。

ちなみにアニメは観ていません。

投稿: 木曽のあばら屋 | 2009年10月12日 (月) 13時44分

木曽のあばら屋さん、コメントありがとうございます。

続きがでてびっくりしたっておっしゃる方が結構たくさん
いらっしゃるんですね。
私は、まだまだ明らかになって欲しいことがあって、
これで終わりではないでしょう?と思ったんです。

もし「探求編」「完結編」を読まれたら、感想などを
お聞かせくださるとうれしいです。
 

投稿: YO-SHI | 2009年10月12日 (月) 18時18分

ご無沙汰しております。(といいつつも、ご記憶にないぐらいご無沙汰です。ごめんなさい)
「獣の奏者」は、少し前に感激しなからぬさぼるように読んだ本です。完結していると思っていたのですが。。。
ご紹介いただいて、なるほどと思う点多々ありました。ぜひこちらの方も拝読したいと思います。
そのうち、感想も書きますので、見に来てください。

投稿: ピッピ | 2009年10月16日 (金) 15時17分

ピッピさん、コメントありがとうございました。

お名前は覚えていましたよ。いつ頃どの本にコメントをいただいたか
までは、さすがに思い出せませんでしたが(笑)
前2巻を感激しながら読まれたのなら、この2巻も楽しめると思います。
王獣編の終わりから時間が経って、その間にいろいろなことが起きて
いるので「えっ、そうなの?」と、最初は戸惑うかもしれませんが。

ピッピさんの「著者・ネコ」のブログも拝見しました。時々覗かせて
いただきます。右のリンクリストに追加させていただきました。
 

投稿: YO-SHI | 2009年10月17日 (土) 10時11分

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