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2009年8月16日 (日)

中学生が考える-私たちのケータイ、ネットとのつきあい方

著  者:大山圭湖
出版社:清流出版
出版日:2009年7月27日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

  東京の区立中学校の先生である著者が、2005年からの3年間に受け持った子どもたちと、昨年に1年生で受け持った子どもたちとの「ケータイ、ネット」に対する取り組みをつづった本。現場の先生の報告として、あまたある教育評論家のご高説よりも一読の価値あり、だと思う。

 何年か前に子どもたちの様子がヘンだ、と気が付いたのが事のきっかけだ。著者によると、毎日居眠りしたりぼんやりしたりしている子が何人かいるそうだ。それ自体は別にヘンなことはない、昔から成長期の中学生は眠いのだ。ヘンなのは、授業中以外も体調不良を訴え、いくら注意しても改善せず、同じことの繰り返しなことだそうだ。
 つまり、体調不良は夜更かしによる睡眠不足が原因、体調不良にまでなれば本人も「これはマズイ」と思うので、以前はそんな状態が長く続くことはなかった、ということなのだ。それで、養護教諭などの話から分かった原因はメール。夜中まで、時には明け方までメールを友達としているそうなのだ。本を読んだりテレビやゲームなら、自分がマズイと思えば止められるが、メールが相手があることなので、止めようにも止められない、ということらしい。

 「まったく、最近の中学生は何をやってるんだ(怒)。中学生にケータイなんぞ与えるからロクなことにならんのだ!取り上げればいいんだ。」という方もいるだろう。私の職場でも「子どもと携帯電話」という講座を公民館や学校でやっていて、そのアンケートを見ると中高年の男性にそういう方が多い。
 もちろん「取り上げればいい」なんて、そんな簡単な事ではない。(青少年育成関係の方で「簡単なことだ」と思っている方がいらっしゃったら、この本を読んで考え直してみることをオススメする。)そこで、普通の人は「子どもたちにケータイの危険性を指導しよう」となるだろう。著者のやったことはそれとも違う。「子どもたち自身に考えてもらった」のだ。
 これは手間のかかることだ。「指導」なら1~2時間ぐらい話して聞かせればできるだろう。しかし、効果のほどはあまり期待できない、残念だけれど。子どもたちが自分で考えるとなると時間も必要だし、話の方向がどこを向くか分からない。しかし、子どもたちはちゃんとゴールを見出したのだ。著者があとがきに曰く「<中学生って、大したものだ>と何度も思ってきましたが、今回は、今までで一番そう感じています」ここには信頼がある。そして、この本には全国の同様の取り組みへのヒントがある。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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 本文でも書いたように、私の職場では「子どもと携帯電話」という講座をやっていて、こうした問題については、よく考えよく知っているつもりでした。しかし、本書のある部分にアッと思いました。

 それは、「メールでなら本音が言える。」という部分です。よく聞く言葉です。恥ずかしくて言えない言葉、言おうと思っていたけれど言い出せないでいた言葉、そういう言葉をメールでなら言える、ということです。私も言い出せない謝罪や励ましの言葉や、あなたのことは信頼しているから..などという口に出すには気恥ずかしい言葉をメールで送ったことがあります。
 しかし、子どもたちの考えは違ったものでした。彼らの「本音を言う」場合の多くは、誰かの悪口だというのです。自分たち以外の誰かのことだったり、本人に直接ぶつけたりすることもあるようですが、とにかく人の欠点や、「ウザイ」などの負の感情のことが「本音」なんだそうです。こんな「本音」は容易に「いじめ」につながってしまいます。
 「いけない」と言われているから、叱られるから言えない「本音」。だから、他人の目がないメールでなら言えるのです。本当はそうではなくて、誰かを傷つけるから言ってはいけないんです。そう考えたかどうかは不明ですが、「顔を見て言えない「本音」はメールでも言っちゃダメなんだ。」中学生たちが話し合って出した答えはこれでした。

 ケータイやネットが拠りどころとなって、なんとか心身のバランスを保っている子どもは確かにいます。だからこそ「取り上げればいい」なんて簡単な話ではないのですが、「本音が言える場所が必要」という話をするのは、これからは少し考えなければならないと思いました。
 

 
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