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2009年8月

2009年8月31日 (月)

「スカイ・クロラ」シリーズの謎解きに挑戦(1/3)

 「スカイ・クロラ」シリーズの謎解きに挑戦します。昨年読んだ時には「謎は謎として楽しもう」なんて言っていました。でも「本カフェ」のコミュ二ティをきっかけに再読して、やっぱり「知りたく」なってしまいました。できる限り読み解いて、自分なりの決着をつけないと先に進めない感じです。それで、シリーズ6冊を精読して得た考察を3回に分けて披露します。
 ある程度の自信を持ってお伝えしますが、見落としなどの可能性は大いにあります。気が付いたことなどがあれば、お手やわらかにお伝えくだされば幸いです。

 まず、シリーズ6冊の時系列を追いました。下の表がそれです。「時間」は物語の中の時間や季節の記載から考えました。グレーの部分は作品と作品の間などで、物語では語られていない部分です。「出来事」は本の内容を思い出せる程度の出来事(グレーの部分は時間を考えるのに参考になる記述)を書いています。

時間 出来事 作品名
1年 クサナギ入隊
クサナギ、僚機が敵機に体当たり、病院でカイに会う ハート・ドレイン
クサナギ、転属。カイも転勤
1か月半 クサナギ、ササクラと一緒にティーチャのいる基地に転属。キャリアは1年 ナ・バ・テア
クリタとヒガサワが基地に転属
5か月~ クサナギ、妊娠。子どもはティーチャが引き取る
ティーチャ退職
 7ヶ月+
ティーチャ、モナミと子どもを育てる ナイン・ライブズ
クサナギ、撃墜した敵に撃たれる→入院 ダウン・ツ・ヘヴン
クサナギ、病院や研修会でカンナミと会う
クサナギ、ティーチャとの市街戦
 
クサナギ、指揮官補佐になる ジャイロスコープ
クサナギ、カイらの指示で写真撮影
「フラッタ~」でクリタが、「クサナギと1年以上飛んでいる」
半年? クサナギ、クリタ、ササクラと共に転属。指揮官(小隊長)に フラッタ・リンツ・ライフ
クリタ、クサナギの母の葬儀でミズキと会う
クリタ、サガラに撃たれ入院、転属
 
  クサナギ、ミズキを連れてクリタを捜す。撃つ。 ドール・グローリィ
 
  クサナギ、大戦で死亡とされる クレィドゥ・ザ・スカイ
5か月? ○○○が、ソマナカの話を聞いて「半年まえ?」と思う 
  ○○○、病院でサガラに会う。注射と電話番号を受ける
1か月 ソマナカ、サガラに「1か月ほどまえに病院へ行かれましたね」
1週間 ○○○、病院を抜け出し、フーコと逃げる
○○○、サガラの元へ
○○○、20分で4機を墜とす
半年 エピローグで「半年前の戦闘」とある
  カンナミ、この基地に来て半年、ソマナカに会う。
4年半 「クレィドゥ~」エピローグで新人のカンナミが基地に来て半年
「スカイ・クロラ」でカンナミが「飛行機に乗って5年」
3か月~ カンナミ、クサナギの基地に転属 スカイ・クロラ
クリタが来たのは7か月前、死んだのは1週間前
カンナミ、クサナギを撃つ
10年?  
フーコ、クサナギから金をもらい店を辞める アース・ボーン
10才ぐらいだったミズキが「ドール・グローリィ」で就職している
10か月? カンナミ、前に1度転院。もう何年もここにいる ドール・グローリィ
ミズキ、就職。音楽の先生
ミズキ、カンナミに「お姉さまのために編んだ」セーターを贈る
 
  ○○○、十字を切る女、ネオンの光の中の男を撃つ記憶 スカイ・アッシュ
○○○、もうひとり撃った。「あれは、僕だ」
○○○、フーコに会う。

 この表から、クサナギが入隊してから「スカイ・クロラ」に至るまでに、最低でも8年の月日が流れていることが分かります。 もちろん期間不明の空白があり、特に「フラッタ・リンツ・ライフ」と「クレィドゥ・ザ・スカイ」の間の時間の手がかりがなく、長期間にわたる可能性もあることから、実際にはもっと長くなるはずです。
 なお、「スカイ・イクリプス」に収められている「ワニング・ムーン」と「スピッツ・ファイア」の2編は、この時系列に入れるための手がかりが見つけられなかったので入れていません。

 次回は、「クレィドゥ・ザ・スカイ」の「僕」はだれか?などの謎を追っていきたいと思います。

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2009年8月27日 (木)

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業

著  者:夏野剛
出版社:幻冬舎
出版日:2009年7月30日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 著者は怒っている。己の実力を顧みずにウェブビジネスを始めた企業に。また、店頭販売への悪影響を気にしてウェブの価格をそれ以上に安くしない企業に。さらに、ウェブ広告の方が効果があるのにマス広告を出す企業に。その他にもうまくウェブを使いこなしていないあれこれに対して。そして、こんなことも分からない経済界や政界のリーダーたちに対して怒り、最後には、50代以上の経営者らリーダーは「早く退くこと」が唯一の処方箋だし最大の貢献だ、と言う。(「50代でも先進的な方もいる」と後で補足はしているが)

 著者はNTTドコモでi-modeやおさいふケータイの事業を立ち上げて成功させた立役者だそうだ。まぁ、自分が一人で全部やったとでも言うかの物言いはどうかと思う。でも現代は「プレゼンテーション時代」、このくらいの自己PRができなくては頭角を現せないとして認めるとしよう。
 確かに、現在の企業のウェブへの取り組みは中途半端なものが多く、単独のビジネスとして成り立っているものは少ないのだろう。MBAを持っていてマーケティングの専門家である著者にしてみれば苛立ちがあるのは分かる。しかし、著者がそれだけの成功の仕掛け人であるならば、もう少し独自の切り口からの分析なり提言なりが欲しかったと思う。どこかで他の誰かも言っているような話が多く、オリジナリティが感じられるのは、上に書いた「早く退くこと」という提言ぐらいだった。

 このように書くと悪い印象しか残らないかもしれない。確かに期待したものと違ったし私には合わなかった。しかし言い換えれば、本書の内容は教科書にしたいぐらいのスタンダードなウェブビジネスの分析だ。タイトルから感じられる剣呑な雰囲気そのままの本だけれど、ウェブビジネスがうまく行かない理由が知りたい方には参考になるかも。

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2009年8月23日 (日)

誇りと復讐(上)(下)

著  者:ジェフリー・アーチャー 訳:永井淳
出版社:新潮社
出版日:2009年6月1日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 1年ぶりのジェフリー・アーチャー。今年6月に発行された新作。1年前にも書いたが、10年ほど前までは次から次へ貪るように読んで、新潮文庫の著者の小説は全部読んでしまった。1年前の「ゴッホは欺く」が、正直言って少し期待ハズレだったこともあって、6月に出たのは知っていたのだけれど、ちょっと静観していた。

 それで、本書は面白かった。「ゴッホは欺く」と比べて随分と楽しめた。著者の作品の特長は、逆境や絶体絶命の状況にある主人公が、相手にトリックをしかけて見事に逆転する「騙しのテクニック」にある。相手だけでなく読者まで騙してくれる。「もっとうまく騙して欲しかった」というのが前作の感想だが、今回はうまく騙してくれた。

 主人公はダニー。ロンドンのイーストエンド、いわゆる下町の自動車修理工だ。彼が幼なじみで恋人のベスと結婚を約束したその夜に、ベスの兄のバーニーを殺した容疑者にされてしまう。容疑者としてまた裁判の証人として真実を話すダニーとベスだが、陪審員にはその声はなかなか届かない。真犯人は新進気鋭の法廷弁護士、敵のホームグランドで戦っているようなものなのだ。

 目次を見ると「裁判」「刑務所」「自由」「復讐」..と、物語のほとんどが分かってしまう感じがする。無実の罪を着せられた主人公が、真犯人に迫る物語。解説にも「古今東西..軽く数千のオーダーはあろうか」とある。数千はさすがにムリだけれど、小説やドラマ・映画でいくつかは思いうかぶ。
 しかし、本書はそんな中で頭抜けて巧みなストーリーだ。その一端は著者の経験によるものだろう。著者はが詐欺事件の被害者であるだけでなく、偽証罪の有罪判決を受けた経験まで持つ。本書の前半の舞台である「ベルマーシュ刑務所」は、なんと著者自身が収監されていた刑務所なのだ。
 ダニーの周囲に善意の人が多く、少し幸運すぎる感じがしないでもないが、ヒーローに幸運はつきものだ。サスペンスと法廷劇がたっぷりと楽しめる。オススメ。

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2009年8月19日 (水)

天地のはざま

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2001年3月26日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」「地の掟 月のまなざし」に続く連作ファンタジーの3冊目。前作で再会を果たした縄文のムラのポイシュマと弥生のクニのワカヒコの少年2人が、さらに過酷な運命に立ち向かう。

 シリーズを通して、縄文と弥生の文化の衝突と、それを通しての現代の社会や文明への疑問を投げかけてきた。自然や動物を神として崇める気持ちを失ったことや、「所有」の概念が生んでしまった身分制度や陰謀などなど。
 そして今回物語の俎上に上がったのは「交渉」。弥生の悪しき習慣を一身に体現するホムタという男がいるのだが、彼が別のムラとの産物の交換の場でこう言う「すこしでも得な交換をするのが、おれたちの役目」このあとホムタは「なんていやしいやつだ」とか言われて足蹴にされてしまう。
 「交渉」が「いやしい」とは..。身分制度や陰謀という言葉に感じる負のイメージは「交渉」にはない。だいいち仕事でも生活でも、誰かに何かを頼んだり頼まれたり、どこを向いても交渉だらけなのだ。(関西人だし。過度な交渉は自粛しているけれど)..でも、本書を読んでいると確かに「いやしい」と思えてしまう。

 話を本書に戻すと、これまでの縄文のムラと弥生のクニに加えて、さらに強大なクニが物語に絡んでくる。そして、ポイシュマが大化けする。物語がスケールアップして、いよいよ佳境にはいる予感を残して終わる。次が最終巻。読むのが楽しみだ。

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2009年8月16日 (日)

中学生が考える-私たちのケータイ、ネットとのつきあい方

著  者:大山圭湖
出版社:清流出版
出版日:2009年7月27日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

  東京の区立中学校の先生である著者が、2005年からの3年間に受け持った子どもたちと、昨年に1年生で受け持った子どもたちとの「ケータイ、ネット」に対する取り組みをつづった本。現場の先生の報告として、あまたある教育評論家のご高説よりも一読の価値あり、だと思う。

 何年か前に子どもたちの様子がヘンだ、と気が付いたのが事のきっかけだ。著者によると、毎日居眠りしたりぼんやりしたりしている子が何人かいるそうだ。それ自体は別にヘンなことはない、昔から成長期の中学生は眠いのだ。ヘンなのは、授業中以外も体調不良を訴え、いくら注意しても改善せず、同じことの繰り返しなことだそうだ。
 つまり、体調不良は夜更かしによる睡眠不足が原因、体調不良にまでなれば本人も「これはマズイ」と思うので、以前はそんな状態が長く続くことはなかった、ということなのだ。それで、養護教諭などの話から分かった原因はメール。夜中まで、時には明け方までメールを友達としているそうなのだ。本を読んだりテレビやゲームなら、自分がマズイと思えば止められるが、メールが相手があることなので、止めようにも止められない、ということらしい。

 「まったく、最近の中学生は何をやってるんだ(怒)。中学生にケータイなんぞ与えるからロクなことにならんのだ!取り上げればいいんだ。」という方もいるだろう。私の職場でも「子どもと携帯電話」という講座を公民館や学校でやっていて、そのアンケートを見ると中高年の男性にそういう方が多い。
 もちろん「取り上げればいい」なんて、そんな簡単な事ではない。(青少年育成関係の方で「簡単なことだ」と思っている方がいらっしゃったら、この本を読んで考え直してみることをオススメする。)そこで、普通の人は「子どもたちにケータイの危険性を指導しよう」となるだろう。著者のやったことはそれとも違う。「子どもたち自身に考えてもらった」のだ。
 これは手間のかかることだ。「指導」なら1~2時間ぐらい話して聞かせればできるだろう。しかし、効果のほどはあまり期待できない、残念だけれど。子どもたちが自分で考えるとなると時間も必要だし、話の方向がどこを向くか分からない。しかし、子どもたちはちゃんとゴールを見出したのだ。著者があとがきに曰く「<中学生って、大したものだ>と何度も思ってきましたが、今回は、今までで一番そう感じています」ここには信頼がある。そして、この本には全国の同様の取り組みへのヒントがある。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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2009年8月13日 (木)

地の掟 月のまなざし

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2000年1月28日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」に続くシリーズ2冊目。前回、縄文のムラと弥生のクニの敵同士として出会い、心のわだかまりがすっかり晴れたとは言えないまでも、「次に会う時は友に」と別れたポイシュマとワカヒコの2人の少年のその後を描く。

 少年たちを待っていたのは、大人の理屈の世界と言える。心根の真っ直ぐな縄文のムラの人々でさえ、災いを背負うと言われる星の息子であるポイシュマをすぐに受け入れることはできない。少年がそこを出て行けば、1人で生きてはいけないだろうことは分かっていてもだ。
 弥生のクニに帰還したワカヒコの運命はさらに厳しいものだった。ムラとは違って身分制度があるクニでは、人々は謀(はかりごと)を覚えてしまった。女王ともいえるヒメカの甥という身分は、ワカヒコの安全を保証するどころか、謀略の対象となる原因となってしまった。

 稲作を覚え、周囲を柵で囲って定住する弥生文化は、その前の狩猟採集生活の縄文文化より優れていると考えられがちだ。技術の観点からは断絶がないかぎり、前の時代の上に積み重ねていける以上、後の時代のものが前の時代のものより優れていると言うこともできる。しかし、社会制度は新しいものが必ず優れているとは言えない。
 「所有」の概念が身分制度を作ったとはよく指摘されるが、身分制度が謀を生み出したとも言えるのではないか、と思う。前作では自然や動物の神性を見ることができるかどうかという違いであったが、本書では悪しき概念(謀、裏切りなど)までが弥生のクニでは生まれている。その差がポイシュマを救いワカヒコには厳しく覆いかかる。
 あえて理屈を付ければこんな感想が言えるが、運命を背負った2人の少年の物語が、起伏にとんだストーリーで進む。それだけを楽しんで読む方が素直な読み方かもしれない。

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2009年8月11日 (火)

しがみつかない生き方

著  者:香山リカ
出版社:幻冬舎
出版日:2009年7月30日
評  価:☆☆☆(説明)

 新聞広告で見た本書の最終章のタイトル「<勝間和代>を目指さない」に目を奪われて即日に購入してしまった。勝間和代さんの「断る力」を読んだ時の私の思いにとても近い言葉だったからだ。その後、例によって同じ本を読んだ方を探すうちに、「勝間さんの本に出会って人生が変わりました!」という方のブログを幾つか見た。生活にハリがあってうらやましく思った。
 しかし「断る力」のレビューにも書いたとおり、「リターン・マキシマイズ」な勝間さんの生き方は、万人にとっての最上の生き方ではない、と思う。本書では著者はさらに一歩踏み込んで、多くの人が同じような成功を求めることの危険を、勝間さん自身の努力や成功を認める一方で鋭く指摘している。

 その他には「恋愛にすべてを捧げない」「仕事に夢をもとめない」「生まれた意味を問わない」といった章もある。「私は基本的にはパンのために、つまり衣食住のために働いている」という告白もあって、なんとも醒めた印象を受ける。また、大人たちが子どもや若者に盛んに発しているメッセージと相反する。
 しかし、著者は奇を衒ってこんなことを言っているのではない。1つにはこれまであまりに前向きなメッセージばかりが発せられ、その結果の閉塞感への風通しの意味がある。実際のところ、肩の力の抜けた著者のメッセージに、多くの人が実はホッとするのではないかと思う。
 もう1つは、精神科の診察室という著者の日常が大きく影響している。そこは問題を抱えた人と相対する空間であり、本人も認めているように、一般的な経験と比べてかなり偏りがある。そこでは本当に本書にあるようなメッセージが必要とされているのだろう。所々に「それは気にしすぎでは?」と思える箇所があるのは、私と著者の日常が違うからなのだ。

 著者の場合は「いまの社会を精神科医として見渡して思いついたことを、何とかして人に伝えたい。せっかくだからこれをみんなに言ってみようかな」というのが、本を書くときの動機の大半だそうだ。だから、自分とは違った知識と経験を持った人の話を聞くような気持ちで、本書を読んだらどうだろうか?きっと何かを感じられると思う。

 この後は書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。長いですが、お付き合いいただける方はどうぞ

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「しがみつかない生き方」 固定URL | 7.オピニオン, 71.香山リカ | コメント (9) | トラックバック (4)

2009年8月 6日 (木)

何か文句があるかしら

著  者:マーガレット・デュマス 訳:島村浩子
出版社:東京創元社
出版日:2009年6月30日 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 著者のデビュー作。2003年の英国推理作家協会のデビュー・ダガー賞にノミネートされた作品。デビュー・ダガー賞というのは公募の未発表作品に対する賞。要するに新人作家の登竜門のような位置付けなのだろうと思う。
 ノミネート作品であって受賞作ではないし、「セレブ探偵と旦那様の華麗なる(?)活躍」という帯の惹句からは、何だか薄っぺらい「主婦探偵モノ」が想像されたのだが..、これは面白かった。

 主人公チャーリーは「小国の財政をまかなえるほど」のサンフランシスコに住むお金持ち。「それなのに」と言うか「それなので」というか、「西半球でいちばん恋愛が困難な女」と言われ、結婚なんてしないと思われていた。その彼女が知り合って6週間のジャックと、ロンドンで電撃結婚して帰国する飛行機が冒頭のシーン。
 それで帰国して泊まったホテルの浴槽に女性の死体があったり、従姉妹が誘拐されたり、出資する劇団にトラブルがあったり、と事件が次々と起きる。それを、チャーリーが持ち前の行動力と機転で次々と見事に解決...、という話ではない。それでは薄っぺらい「主婦探偵モノ」だ。(それでも、その主婦がゴージャスな女性というだけで、テレビではウケそうだけれど)

 ではどういう話か、を言ってしまっては、読む楽しみが半減してしまう。サイコ殺人と007シリーズをミックスして、米国流のジョークをまぶして、カラっと揚げたような作品とだけ紹介しておく。
 ところで、原題は「Speak Now」キリスト教式の結婚式で読みあげられる「この結婚に異議のあるものは、いますぐ申し出なさい」という意味の言葉。知っているとより物語が楽しめるかも。

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2009年8月 4日 (火)

「場回し」の技術

著  者:高橋学
出版社:光文社
出版日:2009年7月25日
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の高橋学さんからいただきました。高橋さん、どうもありがとうございました。

 著者は「やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている」の共著者でもある、この本はその前の「結局「仕組み」を作った人が勝っている」と合わせて7万部というから、ベストセラーと言っていいだろう。
 テーマを設けて多くの取材を行い、それに考察を加えて読者に届ける姿勢は、とても誠実だ。公式サイトの著者紹介によると、著者の肩書は「ビジネススキル発掘ライター」。ご自分の立ち位置が明確な良いネーミングだ。

 今回のテーマとなっている「場回し」とは、テレビ業界で使われる用語だそうだ。「場回しがうまい」とは「うまく仕切る」こと。トーク番組などの司会者の仕事ぶりを評するときに使われる。
 これをビジネスの場などに転用して、「3人以上」が集まる場で「全員」が1つの目的・目標に向かって「ポジティブ」に参加している状態、をつくる技術を紹介している。「場回し名人」と呼ばれる達人からの取材で得た技は27個。使える場面は「会議」「セミナー」「チーム」「飲み会」と大変幅広い。

 書かれているものの多くは「場回し」ならぬ「気回し」の技だ。例えば、表情やしぐさを見て付いて来ていないと思ったら重点的に質問する「ピンポイントケア」、気の合いそうな者同士を近くに座らせる「プロファイリング席次」。「目配り・気配り」なんて「気回し」そのものの名前の技もある。
 「こんなの思いもよらなかった」という技は多くないが、大事なのは目新しい知識を仕入れることではなく、自分で使ってみることだ。私も講演やセミナーの講師をするし、小さいながらも施設の責任者に収まっているので、まずはチームワークに大切な「アクティビティ」あたりから使ってみようと思う。

 使ってみる、という意味では、著者は「場回し名人」からの直伝の技を実際に使い、それをレポートしている。その結果、この道をきわめつつあるそうだ。新しいスキルを身につけてさらに有益なビジネススキルを発掘して欲しい。期待してますよ、高橋さん。

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2009年8月 1日 (土)

レビュー記事が300本になりました。

 レビュー記事が先日の「王国の鍵2 地の底の火曜日」でちょうど300本になりました。
 ちょっと前に試しに数えてみたら297本で「おっもうすぐ300本だ」と思い...思っただけで特に何もしませんでした(笑)。
 2002年の9月の「海底ニ万海里」から始まって、約7年かけての300本。平均すると年40本あまり。ですが、始めて数年は年30~40本ぐらいなのですが、昨年に突然92本に跳ね上がります。今年も既に52本と昨年並みのペース。

 たくさんの方と読書を通して交流したいと始めたブログですが、初めの頃は記事を書いていても、誰かに読んでもらえているのか、正直よく分かりませんでした。そしてある時「コメント回り」という言葉を知り、気が付いたのです。読んで感想まで聞かせてもらいたいなら、こちらから話しかけなければ。(娘が持っていた「友達づくり大作戦」みたいな通信教育についてきた小冊子に書いてあることと同じです。)

 それで、他の方のブログにお邪魔して「私もその本読みました」というコメントを残し始めたのが、2007年の終わりごろ。その成果なのか、コメントやTBをいただけるようになったのが2008年。記事の本数と考え合わせると、誰かに読んでもらえるという思いが、私の読書とブログへの記事投稿に与えた影響は明白ですね。これまでにコメントやTBをいただいた皆様に感謝です。
 

 
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