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2009年7月

2009年7月30日 (木)

王国の鍵2 地の底の火曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年8月31日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 「王国の鍵」シリーズの第2弾。前作「アーサーの月曜日」で偶然に創造主の後継者として選ばれた主人公のアーサー。異世界である「ハウス」の支配者の一人「マンデー」との闘いの末、第一の鍵を手に入れて現実世界に戻って、恐ろしい伝染病から街を救った。しかし、ホッとしたのもつかの間で、すぐに「チューズデー」の挑戦を受けることになった。
 もうお分かりのように、闘うべき相手は「マンデー」から「サンデー」までの7人いて、手に入れるべき鍵も7つある。マンデーが現実世界に手を出せるのは月曜日だけ、チューズデーは火曜日だけ..という決まりがある。一見すると何とか1日しのげば攻撃をかわせそうに思うがそうではない。次の日の相手が手ぐすねを引いて待っているからだ。アーサーの戦いは日替わりで相手を変えて続く。なんと過酷なことか。

 今回の相手のチューズデーは冷酷で筋骨逞しい大男。「ハウス」の「地底界」のさらに下で、労働者たちに採掘の重労働を強いている。そして部下のグロテスク兄弟(なんという名前だ)に命じて現実世界の経済を大混乱させて、第一の鍵を渡さなければアーサーの家族を破滅させる、と脅しをかけてきた。
 第一の鍵のおかげで少しは魔力が備わったとは言え、アーサーは普通の少年。端っから勝てそうにないし、実際何度も絶望的な状況に陥る。でも要所要所で協力者に恵まれて(冷酷なチューズデーは人気がないのだ)...というストーリー。

 都合が良すぎる展開、と言ってしまうこともできる。でも、敵役も含めて多彩なキャラクターと起伏のあるストーリーは楽しかった。そしてアーサーは、偶然に選ばれただけの運命なのにそれを受け止めたばかりでなく、普通の人間でありたいと思いある決断をする。アーサーしてみれば「都合が良すぎる」なんてとんでもないのだ。

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2009年7月28日 (火)

魔法の館にやとわれて 大魔法使いクレストマンシー

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田中薫子
出版社:徳間書店
出版日:2009年5月31日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 久しぶりのダイアナ・ウィン・ジョーンズ、しかもクレストマンシーシリーズの最新刊。シリーズものだから世界観は変わらない。並行世界が12の系列に別れ、そのそれぞれに原則として9つの異世界がある。この世界観がストーリーの源となっているのか、今回もユーモアたっぷりの楽しい作品だった。

 「クレストマンシー」というのは、全部の世界について魔法の使われ方を監視する役職の名前だ。今回の準主人公のクリストファーは、次のクレストマンシーになることが決まっている魔法使い、でもまだ修行中の10代半ばの少年だ。そして、主人公のコンラッドは12歳。2人とも、お金持ちの館に従僕として働きに来た、そしてそれぞれここへは隠された目的があって来ている。
 物語は、高慢な主人一家や執事たちにこき使われながら、従僕として過ごす2人の生活がドタバタと描かれている。いつものように大人たちはみんな1クセも2クセもあるし、若干類型的とは言えユーモアたっぷりのキャラクターたちとの絡みも楽しい。

今回の作品には、終盤にちょっとした大団円は用意されてはいるが、大きな見せ場はない。でも、心配はない「ギリギリでセーフ」を繰り返す2人の少年の行動による起伏と、徐々に新しいことが分かる期待感で充分に読ませるからだ。
 この作品はきっと、後のクレストマンシーであるクリストファー・チャントの人物造型のために、その生い立ちとして少年時代を描きたかったものなのだ。さらに幼いころを描いた「クリストファー魔法の旅」を初めとするシリーズを何作か読んでおいた方が楽しめると思う。いや「クリストファー魔法の旅」を読んだ人には是非読んでもらいたい。彼の成長を楽しめるはずだから。

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2009年7月25日 (土)

読書感想文の宿題に思うこと

 このブログのアクセス記録を何気なく見ていたら「夢をかなえるゾウ」の記事の固定URLを検索語にしたアクセスが2件ありました。不思議に思って調べると「読書感想文の書き方 パクリと文例 中学生編」というサイトに行きあたりました。まぁ、そこの「夢をかなえるゾウの読書感想文の例」という記事で、このブログのURLが紹介されていた、というのが不思議の種だったようです。
 アクセス記録を調べると、「夢をかなえるゾウ」は1年半近く前の記事にも関わらず、ここ1週間ではトップページを除くと4位のアクセス数を稼いでいます。過去4カ月まで期間を広げると53位ですから、ここ最近で急にアクセスが増えたことが分かります。さらに調べていくと、ここ1週間の検索ワードは「読書感想文」がダントツの1位。2位の「書評」の5割増し以上あります。

 読書感想文を書くのにネットで検索してみる人が多くいることが分かります。「パクリ」は論外ですが、良くないことだ分かっているでしょうから、逆に害はないかもしれません。それよりも気になるのは、ネットで他人の感想を読んでから感想文を書くこと。なぜなら、そうして書いた感想や意見は、自分のものなのか他人のものなのか曖昧になってしまいます。にも関わらず当人は「自分の意見・感想」だと思い込んでしまうのは危険ではないでしょうか?
 かく言う私もレビューを書く時にネットで検索します。出版データや著者の発言などの事実関係を確認するためなのですが、結果的に他人の感想を読むことにもなります。それである時から、感想の部分を書いてから調べるようにしています。

 宿題の読書感想文については「指導もなく」「強制的に」書かせて「評価する」ことに異議を唱える方がいらっしゃることは承知しています。特に「評価する」に対する異議は、私も共感する部分がなくもないです。
 しかし、問題はあるにしても、子どもたちが本を読んで「自分はどう思ったのか」を改めて考えて、自分と向き合う機会を持つのは良いことだと思います。なぜなら、将来のいつかは「自分はどう思うのか?どうしたいのか?」を考えなければならないことがあるでしょう。その時には検索をしても答えのページは見つからないのですから。

 
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2009年7月23日 (木)

月神の統べる森で

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:1998年12月11日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」のファンタジーのコミュニティで話題になっていたシリーズの1巻目。実は半年ほど前に小学生だった娘が読んでいたシリーズ。小学校の図書館にあったのだから小学生向きの本なんでしょう。でも、子供向けの本でも大人が読んで面白い場合が2つある。1つは子どもに頃に戻ったように楽しめるもの、もう1つは大人なりの読み方で考えさせられるもの。本書はその両方、どちらかと言えば後者。

 舞台は縄文時代のムラ。弥生文化に接触する時代のことらしい。彼らは、月や太陽を神と崇め、川にも木にも動物にも、家の戸口にまでカムイという神的な存在を感じ、お願いをしたり感謝したりして暮らしている。時にはその姿を目にしたり、その声を聞いたりすることもある。
 そして、彼らが暮らしていた土地に、海を越えて言葉も服装も習慣も違う「ヒメカの民」が移り住む。月と太陽は神として崇めているが、自然には敬意を払わない。山菜を根こそぎ採ってしまうし、魚も動物も一網打尽という具合。やがて衝突が起きる、これが物語の発端。

 その後、それぞれの部族の少年である、ポイシュマとワカヒコを中心にして、物語は展開していく。少年ながら背負ったものがあって泣かせるシーンや、部族同士の抗争にハラハラするところもあって、この辺りが「楽しめる」部分。
 「考えさせられる部分」は..。1つは、川や木や動物に神的なものを感じて見る、ということが、縄文の人々にはできて私たちにはできなくなっているのではないか?ということ。深海の生物の目が退化するように。
 もう1つは文明について。「ヒメカの民」は土地を囲いイネを育てて暮らす。狩りや採集による暮らしと比べれば安定しているし、文明が1段階進んだと言える。そして、その段階を何段も進んだ先にあるのが私たちの社会。本書の限りでは「ヒメカの民」は無礼で知恵の足りない悪役だ。だとすればその先にある私たちは...?

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2009年7月19日 (日)

魔王

著  者:伊坂幸太郎
出版社:講談社
出版日:2008年9月26日 第2刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「モダンタイムス」から遡ること約50年。本書の初出の2004~2005年とほぼ同年代、つまり現代が舞台。正確に言えば本書が先にあって、「モダンタイムス」がこれに続く作品。この順で読むほうが良いのだろう。私は、読む順番が逆になってしまったけれど、「モダンタイムス」に出てきた登場人物や、その口から語られるエピソードなどが本書に登場していて、これはこれで楽しめた。

 「魔王」と「呼吸」の2編の中編が収められている。2編の間には5年の歳月があって、主人公も違うのだがひと続きの物語になっている。「魔王」の主人公は安藤、システム開発の会社に勤めている。ある日、自分には不思議な能力があることに気が付く。自分が念じた言葉を、誰かに話させることができるのだ。
 時代は不穏な時代だった。景気は回復せず、中東の紛争が長引き、中国との関係はギクシャクし、米国には頭が上がらない。失業率が史上最悪を更新、与党の支持率が低下、そして衆議院が解散、野党に国民の期待が集中する...これはいつのこと?もしかして今?...そんなはずはない、上に書いたように本書の初出は2004年だ。
 しかし、読み進めれば読み進めるほど、現在のことを言っているのではないかと思ってしまう。分かりやすい言葉と「世論」という洪水に乗せられて、国民が一つの方向になびいてしまう。「考えろ」が身上の安藤は、そんな世の中に不安を感じて、衝き動かされるように行動を開始する。

 これは、面白かった。著者の他の作品とは何か違うものを感じた。村上春樹氏の「コミットメント」という言葉が連想される。著者はあとがきで「(政治的な)特定のメッセージを含んでいない」と断ってある。これは、何かのメッセージが読み取れてしまうからこそ、こういった断り書きが必要になったのだろう。「考えろ」。これは、安藤の口から再三発せられるほか、「呼吸」では思わぬ人物が熱を込めて語る言葉だ。
 タイトルの「魔王」はシューベルトの歌曲の名から取られている。薄学な私は知らなかったが、子どもが「魔王がいる」と訴えているのに、父親は気付くことができず「あれは柳の木だ」とか都合の良いように解釈しているうちに、子どもの魂は魔王に連れて行かれて息絶えてしまった、という悲劇だ。

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2009年7月15日 (水)

リリス

著  者:ジョージ・マクドナルド 訳:荒俣宏
出版社:筑摩書房
出版日:1986年10月28日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書はなんと1895年に英国で出版されたもの。100年以上前だ。「アリス」のルイス・キャロルや「指輪物語」のトールキンに大きな影響を与えた、と裏表紙の紹介に書かれている。トールキンをして「ファンタジーの祖」という言い方をする方もいるが(私もどこかでそう言ったかもしれない)、さらに遡る先祖がいるということだ。
 実はこの本、20年ぐらい前に家族が買ったものなのだが、私が入っている「本カフェ」というSNSで友達に「読みましたか?」って聞かれたことから手に取ったもの。何度かの引っ越しや本棚の整理をくぐり抜けて、20年も眠り続けた本。それを読むことになったのは何かの縁だと思う。

 主人公ヴェインは、先祖代々続く屋敷を相続し、その図書室で出会った不思議な老人の導きで異世界へ足を踏み入れる。そこでは、荒涼とした大地に魔物が潜み、死者が眠る部屋がある、寒々しい世界。かと思えば、川が流れ、リンゴの実がなり、大人にならない子どもたちが暮らしてもいる。
 解説による後付けの知識を言えば、「リリス」はヘブライの伝承に出てくるアダムの最初の妻の名。異世界の人々や出来事の多くは、創世記の時代の登場人物や出来事と関連があるらしい。生と死の問題を扱うことも含めて、宗教的な意味合いを持った物語だと言える。

 しかし、そうした宗教的な含みを除いても本書の鑑賞はできる。この物語は「夏の夜の夢」のようなのだ。シェイクスピアのそれではなくて、夢の中の出来事がきっかけで醒めてしまうような浅い眠りの夢。異世界で、逃げ出そうとドアを開けたり、穴に落ちたりすると、夢から醒めるように元の世界に戻ってしまう。
 それに、ミミズを放り投げると蝶に変身したり、地面が盛り上がって魔物の姿になったりは、夢らしいイマジネーションの世界だ。英語の「Fantasy」に「幻想文学」という言葉を充てることがあるが、本書はまさに「幻想」そのもの。奔放なイメージが楽しめれば本書は魅力ある作品となるだろう。

この後は、書評ではなく、読んでいて思い出した本について書いています。興味のある方はどうぞ

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2009年7月13日 (月)

英国太平記 セントアンドリューズの歌

著  者:小林正典
出版社:早川書房
出版日:2009年5月25日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 日本人の著者が書いた、英国の歴史物語。今から700年前の1286年から1329年の40年余りのスコットランドを舞台とした戦乱の時代を描いたものだ。日本の南北朝時代の戦乱を描いた「太平記」と時代も内容も類似している。「英国太平記」というタイトルは、なかなか的を射ている。

 物語の当時の英国は1つの国ではなく、イングランド、スコットランドに分かれ、それぞれに王家を戴きながらも、実質的には有力な諸侯が領地を治めていた。そして、事故でスコットランド王アレクサンダー三世が亡くなってしまう。王の血を引くのは、ノルウェー王に嫁いだ娘が生んだ3歳の幼女のみ。これが物語の始まり。
 隣国イングランドの侵攻とスコットランドの防衛を中心に、スコットランド内の諸侯の駆け引き、当時は当たり前にあった政略結婚による、複雑な家族・人間関係が、これが処女作とは思えない筆致で描かれる。いくつかの戦闘では、戦術と推移が手に取るように分かるのも素晴らしい。

 そして、本書が実に活き活きとした歴史物語となっているのは、第一にはもちろん著者の力によるものだが、これに加えるべきは、描かれている出来事そのものの魅力だ。私が英国史はおろか西欧史にも明るくないだけだと言えばそれまでだが、こんなドラマティックな物語があったのかと、うれしい驚きの経験だった。
 最後にひとつ。戦乱の物語の常で、主要な登場人物は全て男性。男たちがある者は上を目指し、あるものは情のために、別の者は保身のために動く。それに対して、女性たちは戦いには出ないが、それぞれの信念で動く。女性を主人公に据えた日本の戦国時代の物語があるように、「英国女太平記」というのも面白いかもしれない。

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2009年7月 8日 (水)

聞き手を熱狂させる!戦略的話術

著  者:二階堂忠春 田中千尋
出版社:廣済堂あかつき
出版日:2009年6月17日 第1版第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の二階堂忠春さんから献本いただきました。感謝。

 本書は、NLPというコミュニケーション心理学をベースに、米国のオバマ大統領の演説を分析しそれを例として、聞き手の心をつかむための7つのテクニックを紹介したものだ。NLPというのは、Neuro(神経)、Linguisitic(言語)、Programming(プログラム)の頭文字をとったもの。五感による自分や他人の世界の知覚(N)、言語による意味付けや行動と思考に与える影響(L)、行動に至る内面の思考プロセス(P)を理解して、コミュニケーション技術の向上を目的とした方法論の研究、と私は理解した。

 優れて実用的な本だと思う。7つのテクニックとして書いてある「目的を定める」「(相手に)近づく」「ストーリーを語る」等々は、知っていることが多く目新しいことはほとんどない。しかし、コミュニケーションというものは、日々多くの人が行っているので、皆が体験に知っている。本書はそれをテーマとしているのだから、目新しいものがあまりないのは当たり前で、仕方がないことだ。
 問題は「知っている」のに「できない」ことを、どうやって「できるようになる」かなのだ。その点、本書はオバマ演説という教材を使って例示しながら、要所で書き込み式のワークシートを用意して「できるようになる」ことへの誠実なこだわりを感じさせる。だから実用的だと思うのだ。

 現代は一面として「プレゼンテーション社会」だと思う。職を得るための面接。上司や同僚、部下、顧客を相手にした説得や交渉。ご近所付き合いも買い物も然り。自分の言いたいことを効果的にアピール(プレゼン)できないと生きづらい世の中になっている。(「不器用っすから」なんて言っている寡黙な健さんは、就職できないのだ。)
 個人的には、アピールが下手でも弾かれない社会の方が余裕があって良いと思うのだけれど、そうも言っていられない。自分の話を少しでもより魅力あるものにしたいと思う方は、手にとってみてはどうだろうか?
 最後に、上に「目新しいことはほとんどない」と書いたが、「ほとんど」のわけは少なくとも1つは目新しいことがあったから。それは「未来ペーシング」だ。実は私は研修講師もしているのだけれど、次回の研修で使ってみようと思っている。

 この後は書評ではなく、別の視点からの考察を書いています。興味がある方はどうぞ

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2009年7月 5日 (日)

王国の鍵1 アーサーの月曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年4月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 著者の作品を読むのは初めてだ。少し調べてみると、「古王国物語」シリーズ、「セブンスタワー」シリーズの著者。この2つの書名は、図書館の書棚で見た覚えがある。そして、本書から始まる「王国の鍵」シリーズは、米国で2003年から毎年1巻ずつ現在までに6巻出版され、その全巻がベストセラー250万部突破という、「超弩級人気新シリーズ(帯の惹句から)」だそうだ。

 主人公はアーサー、7年生というから日本では中学1年生の少年。舞台はおそらく現代の米国。新しい学校に転校してきた初日、長距離走の授業中に、アーサーの前に車椅子に乗った男とそれを押す執事風の男が現れる。それからというもの、不気味な連中につきまとわれ、町は「催眠ペスト」と呼ばれる奇病に襲われる。
 アーサーにはぜんそくの持病があって、後になって分かるのだが、その病気ゆえに「偶然に」創造主の遺志を守り、世界を司る「ハウス」を支配する後継者に指名されたのだ。身の回りに起こる不吉な出来事は、すべてこのことに関連している。彼は街を奇病から救うために「ハウス」に単身乗り込んで行く。

 原題は「The Keys to The Kingdom」。「王国の鍵」としても間違いではないが、アーサーが赴く「ハウス」は、どこかの王様が治める王国ではない。「Kingdom」に含まれる「神の国」という意味合いもあると見るのが正解なのだろう。なぜなら「ハウス」は創造主がお造りになられた場所で、そこの人々は人智を超えた者たちだからだ。
 さらに副題「アーサーの月曜日」の原題は「Mister Monday」。これから想像するに、MondayからSundayまでの7つの物語がありそうだ。つまり、本書は神の領域で起きる事件に少年アーサーが立ち向かう長い物語の序章。序章としては充分な盛り上がりと魅力に満ちた本だ。まだ活躍が予想される魅力的なキャラクターもいるし、次の事件を知らせるベルはもう鳴っている。次巻(7月25日発売) 以降が楽しみ。

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2009年7月 2日 (木)

ウェストマーク戦記3 マリアンシュタットの嵐

著  者:ロイド・アリグザンダー 訳:宮下嶺夫
出版社:評論社
出版日:2008年11月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1作目で主人公テオたちは悪役の独裁者からウェストマークの国を救い、2作目では大きな試練を乗り越えて隣国レギア王国の侵攻を押し返し、さて3作目の本書では..と期待が高まる。これまで2作それぞれ一件落着のハッピーエンドには違いない。しかし、大きな問題を抱えたままだった。それは、「君主制を残すのか、革命によって民主制を勝ち取るのか」という問題だ。ここには、著者なりの解がある。

 前作の終わりで、アウグスタ女王が代表する王室と、平民の執政官3人という統治体制に達した。君主制と民主制の中間と言うか折衷案と言うか、ひとまずの解決策には違いない。英明な女王にも恵まれ、このままで王国の平和と安定が続いてもおかしくない。しかし、多大な犠牲の上に得た平和と安定は、一夜にして崩壊してしまう。
 女王とテオ、革命家のフロリアン、今やゲリラの頭目であるジャスティン。微妙なバランスの上で成り立っていた協力関係も、結び目がほどけるようにバラバラになってしまう。事態が流動化すると、それぞれが最終的に目指すものに、それぞれのやり方で突き進んでしまう。

 今回は首都マリアンシュタットが戦禍に見舞われる、市街戦だ。前作の山岳ゲリラのあり方も凄まじかったが、今回はさらに胸を衝かれる出来事が続く。訳者あとがきによると、著者自身の戦場体験、レジスタンス支援体験に基づくものだそうだ。フィクションとして楽しむも良しだが、国のあり方、命を賭ける価値があるものはあるのかなど、深く考えさせられる物語でもある。

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