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2009年4月

2009年4月29日 (水)

モダンタイムス

著  者:伊坂幸太郎
出版社:講談社
出版日:2008年10月16日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 伊坂幸太郎さんの単行本の最新刊。漫画週刊誌「モーニング」の2007年4月~2008年5月に連載された小説に加筆修正したもの。短めの章が56章もあるのは、週刊誌の1回連載分が1つの章になっているからだろう。帯に「伊坂作品最長1200枚」とあり最長編になるらしいが、長く感じられないのも短い章の連続のテンポの良さのためだ。「全力疾走した短いお話を56個積み重ねたかのような」と著者も評しているが、まさにそんな感じ。

 主人公は、中堅のシステムエンジニアの渡辺。日々、顧客や営業部門から要求されるムリ目のシステム開発を、睡眠時間と健康を削ってこなしている。彼には他人が羨むような美人の妻がいる。物語の冒頭は、渡辺が拷問を受けるシーンだ。なんとショッキングな。主人公に拷問だなんて。しかも、その拷問の影には美人の妻がいるらしい。いったいどうなってるんだこの話は、という思うほどに初っ端から突っ走り気味に始まる。
 さらに、渡辺の周辺で不可解なことが連続して起きる。連絡がさっぱり取れないシステム開発の発注元の会社。先輩エンジニアの失踪。渡辺自身も暴漢に襲われる。そのカギは宣伝文句にもなっている「検索から、監視が始まる。」だ。どうやらインターネットでの検索を誰かが監視しているらしい。

 「伊坂さんにはまる」と宣言して旧作を中心に何冊か読んできた。最新刊も気になっていたので読んでみたというわけだけれど、本書はちょっと私の好きな伊坂作品とは趣がちがった。面白くないわけではない。「勇気は実家に忘れてきました」なんてセリフもあきれてしまうが何故か好きだし。
 でも、伊坂作品の醍醐味は、緻密に張り巡らされた伏線にあると思っている。騙し絵のように読者を欺くミスリードの巧みさが特長だと思っている。だから「ゴールデンスランバー」以降、伊坂作品は1行も読み落としがないような読み方をしていた。ところが、本書にはそういったものが、私が見たところ見当たらない。
 (私の見落としという可能性も十分あるが)恐らくは、漫画週刊誌への連載という形式が影響しているのだろう。著者あとがきには、「毎回、担当編集者と打ち合わせをし、次号の内容をそのつど決めて..」とあり、全体を俯瞰しての伏線という仕込みはできなかったことが伺える。こういう小説の書き方は、著者に限って言えば向いていないと言うか、もったいないとに思うが、どうだろうか?

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2009年4月27日 (月)

仮面の大富豪(上)(下)

著  者:フィリップ・プルマン 訳:山田順子
出版社:東京創元社
出版日:2008年10月30日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「マハラジャのルビー」に続く、「サリー・ロックハートの冒険」シリーズ4部作の2作目。前作で父親の死をめぐる陰謀を切り抜けてから6年後、サリーは、6年の間にケンブリッジ大学を優秀な成績で卒業、今は「財政コンサルタント」をしている。年はなんと弱冠22歳だ。
 前作でサリーを助けて活躍したガーランド写真店のフレデリックは、共同経営者としたのサリーの助けもあって写真店の経営は盛り直し、趣味の探偵稼業にもいそしんでいる。サリーとフレデリックは自然な成り行きで恋人同士となっているのだが、何やら微妙な感じだ。

 ここまでは、本書の物語が始まる前の話。本書の物語は、サリーが顧客の訪問を受けるところから始まる。サリーが薦めた投資先の海運会社の貨物船が沈没し、その後会社が倒産してしまった、というのだ。倒産に至る経緯に疑問を持ったサリーは調査を始める。そして、背後にある大きな陰謀を付き止め、サリー自身がそれに巻き込まれていく。
 フレデリックらのサポートを受けて、サリーが才覚と行動力で困難を乗り越えて行くのは前作と同じながら、今回の作品には実に色々な要素が散りばめられている。ビクトリア朝時代の英国での女性の自立の難しさ、降霊術などの怪しげな科学といった時代背景と、このシリーズの大きな節目となるであろう、サリーとフレデリックの関係の行方など。政界財界だけでなく国際政治なども絡んで、一回り物語のスケールが大きくなっている。

 田中芳樹氏の解説にもあるが、「あれっ」っと思うところもある。これでいいのかな?という感じもする。もしかしたら次回作に続く伏線なのかもしれない。だとしたらどのように反映されるのか?次回作と言えば、前作のレビューの最後に「第2作には(私のお気に入りの)ローザは登場するのだろうか?」と書いたが、本書では活躍の場面はなかった。次回作ではどうなのだろう?

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2009年4月23日 (木)

「ゼロ円販促」を成功させる5つの法則

著  者:米満和彦
出版社:同文館出版
出版日:2009年3月13日初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の米満和彦さんから献本いただきました。感謝。

 タイトルの「ゼロ円販促」というのは、0円もしくは限りなく0円に近い費用でできる、集客や増客などの販売促進のこと。著者が大手の印刷会社での広告の仕事を辞めて独立した後に、小さなお店の経営者の手伝いをする中で見つけた事例やノウハウだ。
 私も、自分の会社でこそないが小さな施設の責任者なので、日々集客には頭を悩ませている。宣伝広告費などないに等しいからお金はかけられない。たまに思いついたように広告を出してみても、広告費分の効果があったとは考えられない結果に終わる。そうした経験上得た結論は「広告はある程度以上の規模でないと、効果は限りなくゼロに近い」だ。数万円で新聞に小さな広告を出しても人の目に留まらない。人の目に留まらなければ効果はゼロだからだ。

 だから「安い費用で広告なんかやってもムダ」というのが私の本心。そこに本書は「ゼロ円で販促」というのだから、反発と興味が半ばする気持ちで読んだ。読んで得心した。「小さな店は、大手の真似をしてはならない」。著者が「大切なお話」と切り出したものだ。「新聞に広告」というのはまさに大手の手法だろう。これでうまくいくはずがない。私の「広告なんかやってもムダ」ははやり正しかったとも言える。
 しかし「販促」は「広告」だけではない、ゼロ円でも効果がある販促は存在する。例えば、本書冒頭に紹介されている居酒屋の「ご意見ノート」はすぐに活用可能だし、「ゼロ円販促」の本質を表す良い事例だ。著者が「ゼロ円販促」を探し始めるきっかけになったそうだが、この事例に出会ったことは著者の運だろう。その運を見事につかんだのは著者の力量だ。

 本書は、意表を突くアイデアから、細かい工夫まで、数々の販促策が収録されているので、集客に悩んでいるお店のオーナーや担当の方まで、一読をおススメする。また、著者が運営するホームページにはさらにたくさんの事例が紹介されているそうなので、そちらもご覧いただいた方が良いと思う。
 タイトルになっている「5つの法則」は「法則」と言うには普遍性が弱く、「5つの分類」と言った方が適切かと思う。しかし、著者の思いは「事例をそのまま真似るのではなく、自分で考えて欲しい」ということで、「法則」はその考え方の枠組みとして提示している。その用には十分に役立つ「法則」だ。「毎日1時間「考える時間」を確保しよう!」という章もある。「考えろ」が、本書から受け取った一番のメッセージかもしれない。

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2009年4月21日 (火)

駆け出し魔法使いと海の呪文

著  者:ダイアン・デュエイン 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2009年3月13日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 「駆け出し魔法使いとはじまりの本」に続く、シリーズ第2弾。前作のレビューで「これはあり得ない、という場面も気にしないようにした。」と書いた。今回は「あり得ない」が突き抜けている。すると不思議なことに、かえって荒唐無稽さも気にならない。すんなりとストーリーに馴染めた。

 主人公は、前作と同じくニータとキットの2人。前作の冒険を無事くぐり抜けてから2か月、正式な魔法使いになったところだ。そして、今回の舞台は海。2人は海で起きているこの世界を破滅に導く出来事を封印するために、水深5000メートルを超える深海へ向かう。しかもクジラに変身して。「あり得ない」。けれども読んでいて全く気にならなかった。
 そして、本書は前作にはなかったドラマが用意されている。詳しくは言えないが、今回ニータは、ある運命を背負うことになる。物語の後半は読者は、その運命から目が逸らせなくなってしまう。ニータはどうなるのか?キットはどうするのか?前作を大きく上回る面白さだ。

 さらに今回はもう1人ユニークなキャラクターが登場している。ニータの妹のデリーンだ。スターウォーズのファンで、ヨーダ柄のパジャマを着ている。ニータとキットの良き理解者ながら、一筋縄ではいかないクセ者。訳者あとがきには、第3弾での活躍が予告されている。目が離せない楽しみなシリーズになってきた。

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「駆け出し魔法使いと海の呪文」 固定URL | 1.ファンタジー, 19.D・デュエイン(駆け出し) | コメント (2) | トラックバック (2)

2009年4月15日 (水)

テラ・ルネッサンスI

著  者:田原実 絵:西原大太郎
出版社:インフィニティ
出版日:2008年11月21日第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 株式会社インフィニティ・志経営研究所様から献本いただきました。感謝。

 「本読みな暮らし」初登場のコミック。本書は「「心を育てる」感動コミック」というシリーズの第3弾。紛争地域の地雷除去や、戦乱の犠牲者である子ども達の保護や社会復帰などを行っている、NPO法人テラ・ルネッサンスと、その理事長の鬼丸昌也氏の活動の記録、ノンフィクションだ。
 「世界には6000万~7000万個の地雷と、約30万人の子ども兵が存在している」。この事実が、20代の鬼丸氏をこの活動へ、そしてウガンダへ向かわせた。そして氏が目にし本書に綴られたことは、恐らくほとんどの日本人が知らないでいる彼の地の悲惨な現実。取材に応じた子ども達の証言でそれが明らかにされている。私は「アフリカ 苦悩する大陸」を読んで、その一端は垣間見たけれど、その時はこういう臨場感は感じられなかった。

 実は、本書は1か月前に手元に届いていて、その日のうちに読んでいた。記事の掲載が遅れたのは、何を書けばいいのかを考えていたからだ。面白かったとか役に立ったとかの感想を書いたり、ストーリーがどうとかの評価をしたり、といったことでは、本書の紹介として足りないのではないか、と思ったのだ。
 本書を読んで私が受け取ったのは「この事実を知ってあなたはどうしますか?」という問いかけだった。それで、これへの返答を考えてから記事にしようと思って、今日になってしまった。その答えは「自分ができることをする」だ。拍子抜けするほどありきたりで、ホントに考えたのか?と言われそうだけれど、これが答え。

 ただ「自分ができることをする」とは「必ず何かをする」という決意も意味する。鬼丸氏はウガンダへ行き、出版元のインフィニティの田原社長は本書を出版し、売上5%をNPOの活動に寄付する。私は同じような影響力のあることはできないけれども、何かをすると決めたのだ。
 考えれば、寄付や会員費として資金を援助したり、誰かにこの話をしたり、本書を読むように促したり、できることは意外にたくさんある。でも、意識してやらないと何もできない。NPOのHPへのリンクも付けておいたので、一度覗いてみて欲しい。

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2009年4月13日 (月)

影のオンブリア

著  者:パトリシア・A・マキリップ 訳:井辻朱美
出版社:早川書房
出版日:2005年3月31日発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「妖女サイベルの呼び声」に続いてマキリップ作品です。本書は「妖女~」から30年近く後の2002年の作品、そして「妖女~」に続いて2度目の世界幻想文学大賞受賞作だ。作家は一生の仕事だと思えば、30年という年月は驚くことはないかもしれない。しかし、息の長い作家だということはできるだろう。
 続けて読んだことと、どちらも大賞受賞作ということで、どうしても比較してしまうのだが、良し悪しは言えないが、私は「妖女~」より本書の方が好きだ。本書の方が設定やストーリーがファンタジーのスタンダードに近いから、楽しみ易かったのだと思う。
 もちろん、スタンダードとは言えありきたりの物語ではない。著者の持ち味であろう不思議で淡い独特な雰囲気は健在だし、何よりもしっかり性格付けされた登場人物たちが魅力的だ。

 舞台はオンブリアという名の都。王が亡くなり幼い王子が即位する。その王を支えるはずの摂政は魔女で邪な野望を持っている。前王の妾妃や甥など幼王を支えようとする人々との攻防が物語のタテ糸。
 そして、世界で一番古いと言われるオンブリアには、その地下に影の都が存在する。「影のオンブリア」は、オンブリアの長い歴史が堆積したもので、そこにはあらゆる時代の記憶や人々が今も存在している。
 その影のオンブリアの住人である魔女やその僕の少女が、現実のオンブリアの争いに関与し、前王の妾妃や甥も含めたそれぞれの生い立ちや事情がヨコ糸となって、物語の織物を重層的に織りだしていく。ファンタジーファンなら一読をおススメする。

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2009年4月10日 (金)

妖女サイベルの呼び声

著  者:パトリシア・A・マキリップ 訳:佐藤高子
出版社:早川書房
出版日:1979年2月28日発行 2003年10月31日13刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「茨文字の魔法」で、その世界観と壮大な物語で楽しませてくれた、マキリップの1974年の作品。1973年が著者のデビューの年だから、最初期の作品といって良いだろう。そして、そのデビュー間もないこの作品は、1975年に創設された世界幻想文学大賞の第1回大賞を受賞している。「新星現る!」といったところだったろう。四季さんから薦められて読みました。

 サイベルは妖女、魔術を使い生きとし生ける者を呼び寄せることができる。彼女は父や祖父が集めた魔獣たちと山深い館で暮らしている。バラッドを吟唱する猪、古代の王女を救いだしたと言われる黒鳥、竜やライオン、隼など。それぞれに並はずれた能力を持ち、伝説の中にその名を残す獣たちだ。
 サイベルは、自身の魔術と自分に従う魔獣たちの力によって、絶大な力を持つ。故に山深く静かな暮らしが許されず、館に若い貴族や王たちが訪れて、俗世の権力争いに否応なしに巻き込まれていく。ここに子を思う気持ちや、愛する人に対する思いなどが組み合わされて、不思議な空気に包まれた物語が展開していく。

 読み終わって見ると、ファンタジーというくくりは確かにそうでも、私の知っているどの話にも似ていない独特な物語だった。サイベルが使う魔術は、人や魔物を呼び出したり操ったりするものなので、ドンとかバンとか音がするようなアクションシーンはない。それでいて、他のどんなファンタジーよりも「魔術」を強く感じる。アクションの代わりにサイベルや他の人の心理を丹念に描くことで、ストーリーが牽引される。そんな物語でした。
 実は「サイベルの心理」ということについては、私は大いに不満がある。サイベルは何度か決断を迫られるのだが、その度に私は「サイベルさん、それは違うよ」と思った。終盤に差し掛かるあたりで一度本を閉じてしまったのだが、それもそのせいだ。

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2009年4月 8日 (水)

仕事頭がよくなるアウトプット勉強法

著  者:増永寛之
出版社:サンマーク出版
出版日:2009年3月25日初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 株式会社ライブレボリューション様から献本いただきました。感謝。

 本書は「ライブ~社」の社長が、自身の経験をもとに「仕事で成果を生み出せる人」(著者はこういう人を「仕事頭のいい人」と呼んでいる)になるための色々を綴ったものだ。著者の会社はモバイルの広告代理店業をメインに急成長している。つまり、本書には成功の裏付けがあるわけだ。成功のただ中にある人の話は自信と勢いがあって、清々しい感じがする。
 自信があるだけに曖昧さがなくて、デキるヤツはこうするけれど、こんなのはダメなヤツ、と切って捨ててしまうような感じがした。そのためか、私にはとても共感できる部分と受け入れられない部分に分かれた。

 共感できる部分は、タイトルの「アウトプット勉強法」をはじめとして全編に通底する、アウトプット(成果)に重きを置いたものの考え方だ。例えば、いつか必要になった時のために英語を勉強するのはインプットに重点を置いた考え方だ。そうではなくて、今の仕事で使うこと(アウトプット)を前提にした勉強を行え、というわけだ。
 また、誰かに報告をすることを前提に日々の活動を記録すると、「記録に書ける活動をしなくては」という気になって活性化につながる、という話も「なるほど」と思う。こちらは、アウトプットが良い意味でプレッシャーになっている。その他、ライブレボリューション式「フセン術」や「打ち出の小槌」の話は良かった。ビジネスに携わる方にはオススメだ。読む価値があると思う。

 受け入れられない部分は、歴史小説とビジネス小説以外のフィクションを「現実逃避本」で経営者には悪影響としたことだ。これは意見の違いであり、正しいか間違いかの問題ではないので「私は違うと思う」とだけ言っておく。
 そうそう、この本は「仕事で成果を生み出す」ことのみに目的が置かれている。その他のこと、例えば家族との暮らしなどは考慮されない。仕事のジャマになればマイナス要素でさえある。著者自身もそういう考えをお持ちらしい。家族や子供がいて事情があっても、早朝勉強会に来られない人は「意識の低い人」という評価をされている。だから「ワーク・ライフ・バランスを考えて」という人には合わないだろう。
 それでも著者が「「経済合理性」や「スキル」といったものがすべてを支配しているとは限らない」と考えておられることに安堵した。もっとも、著者の場合はこれも「人に助けてもらえる「かわいげがある人」になる訓練」という文脈で出てくるのだけれど。

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2009年4月 2日 (木)

ローマ亡き後の地中海世界(下)

著  者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2009年1月30日発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 上巻が、西ローマ帝国の滅亡後の6世紀から15世紀までの地中海世界を、イスラムの海賊の横行とそれに対するキリスト教社会の対応を描いたものだった。下巻の本書は、ビサンチン帝国(東ローマ帝国)の滅亡後の16世紀のイスラム+海賊とキリスト教社会の攻防を描く。一見すると年代が下っただけに見えるが、実は大きく対立の構図が異なっている。
 下巻では、海賊の頭目たちはトルコのスルタンによって、トルコ海軍の総司令官に任命される。キリスト教社会も、スペインやヴェネチアといった強国がそれぞれの海軍を派遣してこれに対抗する。つまり、以前は個々の海賊行為とそれに対する対応策であったものが、16世紀には強国間のパワーゲームの時代に突入したということだ。
 「強国間」と言ったが「トルコ対その他の国」という単純な構図ではない。国がプレイヤーとして登場するようになって、政治的な駆け引きが渦巻く三つ巴、四つ巴の複雑なゲームになった。こうした駆け引きを書かせれば、著者はやっぱりウマい。上巻よりもこの下巻の方がはるかに面白く読める。

 トルコと西欧社会の攻防はとても面白い、詳しい内容は読んでもらうとして、読んでいてつくづく思うのは、大国のエゴと宮仕えの哀しさだ。フランス王はスペインに対抗意識を持っているし、スペインはヴェネチアの利益につながることは徹底して避ける。たとえ、トルコの侵攻に対して西欧の連合軍として戦っている最中でもだ。ヴェネチアだって、利があればトルコと単独で講和を結ぶことだってする。
 それから、スペインやトルコの宮廷官僚が最高司令官に任命される例が結構多いのだが、彼らの絵に描いたような凡庸さが笑えない。目的地に着く前に病気や海賊の襲撃で2000人もの兵士を失っても、王からの命令がない限り作戦は続行、でも何人失ったかは知りたいので、数えるためだけに13日も全軍を停止する、といった具合。そんな不手際が重なって大敗を喫して本人はこっそり逃げ出す始末だ。
(私の職場でもたくさんの集計資料を作ります。上司がさらにその上司から聞かれた時にすぐ答えられるように、念のために用意しておく集計、なんてものもありました。そんなものを作っている間、現場は停滞と混乱の極みです。...失礼、これは余談でした。)

 最後にちょっと気になったこと。この16世紀には、様々な出来事が地中海世界で起きていて、著者としてはそれぞれに思い入れもあるのだけれど、本書で全部を書くことはムリ。そこで「これについては、□□を読んでもらうしかない(□□は著者の著作の名前)」という一文が挿入されるのだが、これが目ざわりなぐらいに多いように思った。

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