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2008年12月

2008年12月29日 (月)

卵のふわふわ

著  者:宇江佐真理
出版社:講談社
出版日:2004年7月29日第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 るるる☆さんのブログ「rururu☆cafe」で紹介されていたので読んでみた。読んでみて最初に感じたことは、「へぇ~こんな時代小説もあるんだぁ」ということ。ちょっとホロリと来ます。
 私が時代小説と聞いて思い浮かべるのは、吉川英治さんや池波正太郎さんの作品、私は読んだことはないけれど、司馬遼太郎さんも代表的な作家だろう。それらは、お奉行やお殿様、剣豪といった武士が活躍するものだ。もちろん、女性を主人公として書かれたものもあるが、そこで進行している出来事は、国盗りであったりお家騒動であったりと、やっぱり武士の出来事だ。
 そんな中で、本書は奉行所の役人の家に嫁いだ主人公、のぶの揺れる心をひたすらに丁寧に描く。奉行所の役人の家なので、誘拐や殺人などの事件は起きるには起きるのだが、妻であるのぶにはそうそう直接は絡んでこない。のぶの心を占める、いや本書のテーマは、のぶと夫の正一郎との関係にあるからだ。

 心に溝ができてしまった夫婦の話は、現代小説では珍しくもないが、時代が江戸時代となるとどうだろう。テレビの時代劇で、時々「人情もの」の回があって、家族や夫婦の再生を描くことはあるが、あくまで脇役であって、ここまで丁寧には描かれないだろう。
 別の見方をすると、夫婦の話を描くのに、時代を江戸時代にする必要はなかろう、とも言えるのだが、そういう意見は本書を読めば出てこなくなると思う。今より格段に女性の立場が脆かったあの時代にこの物語、だから成り立つ味わいがある。のぶの舅姑が実に味わい深い人たちなのだが、そのキャラクターもあの時代だからさらに引き立っている。現代とは違う時間の流れも感じられるし、実にしっくりと物語と時代がかみ合っているのだ。
 かみ合っているといえばタイトルの「卵のふわふわ」も、物語とうまくかみ合っている。本書の各章は食べ物の名前になっていて、後半になるとその食べ物が物語やのぶの心を動かすようになる。「卵のふわふわ」もある章の題で料理の名前だ。どんな料理かは読んでもらえば分かる。私はこの「卵のふわふわ」はもちろんだが、「心太(ところてん)」が食べたくなった。新しい形の時代小説に出会いたい方にはオススメだ。

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2008年12月25日 (木)

うちの一階には鬼がいる!

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:東京創元社
出版日:2007年7月30日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は、英国で1974年に刊行された。原題は「The Ogre Downstairs」。著者の初期の作品と言っていいだろう。しかし、ちょっと捻りの効いたユーモア感覚や、暴走気味の子ども達の活躍など、最近の作品のファンにも読み応えがありそうだ。
 主人公の子ども達は、再婚した夫婦のお互いの連れ子5人。お母さんの方に3人(男男女)、お父さんの方は2人(男男)。お互いに「感じ悪い」と思っているし、お父さんは厳格で堅苦しい人で、子ども達はなついていない。親の再婚でできた家庭が舞台、なんてヤヤこしい設定からして著者らしいと思う。

 物語は、お母さんの連れ子の3人、キャスパー、ジョニー、グウィニーの視点で進んでいく。母が再婚して1か月、彼らは、横暴で怒鳴り散らすし、何かにつけて小言を言う新しい父親に早くも辟易している。タイトルにある「鬼」はこの父親のことだ。本書1ページ目に登場し、3ページ目には正体が説明されている。タイトルだけ見ると、ちょっと思わせぶりな感じだけれど、実にあっさりしたものだ。
 その父親が、ジョニーと自分の連れ子の弟の方のマルコムに、化学実験セットを買い与えたところから物語は始まる。この実験セットがなんと魔法の薬品類で、それを使った子ども達が事件を巻き起こす。そして、最初の事件は、開始20ページで早くも起こる。
 導入から1つ目のトピックスまでの早さがこんな感じ。このスピード感は終盤まで続き、次から次へと巻き起こる騒動に、登場人物たちも読者も休む暇がない。とにかく展開にたるんだところがない。
 しかも、これはただのドタバタ劇ではない。ドタバタの中で、子ども達のお互いを見る目に変化があり、あの「鬼」に対してさえ違った見方ができるようになる。再婚によって同居することになった人々による、家族の創生の物語でもある。面白くてイイ話なのだ、本書は。

 解説によると、「普通に暮らしていた子どもが、魔法とそれが引き起こすトラブルに巻き込まれる話」を、「エヴリディ・マジック」の物語というのだそうで、表紙裏の紹介にもこの言葉が使われている。「日常の中の不思議」のような意味合いなのだろう。
 しかし、私は「エヴリディ」を「毎日」の意味で使って「毎日(次々と)起きる魔法(の騒動)」の意味だと、解説を読むまで思っていたし「上手く言い表している」と満足していた。だから用語としては、正しくないのだろうけれど敢えて言う。本書は「エヴリディ・マジック・コメディ」、ニヤニヤ・ゲラゲラ笑えて、しかもイイ話だからオススメ。

(ひとりごと)
 今年のランキングを発表した後に追加するのはどうかと思ったけれど、読んじゃったんだから仕方ないよね。

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2008年12月22日 (月)

今年読んだ本のランキングを作ってみました。

 年も押し詰まってきましたが、今年はこのブログでこれまでに、ぴったり100冊の本を紹介することができました。☆の数で言うと「☆5つ」は2冊、「☆4つ」は46冊、「☆3つ」は47冊....となりました。我ながら「☆5つ」が付けられない性格にあ然とします。
 それで、初めての試みなのですが、今年読んだ本にランキングを作ってみました。小説部門は10位まで、ビジネス・ノンフィクション部門は5位までです。正直言って順位を付けるのは難しかったです。特に小説部門は10個に絞るのにも苦労しました。面白かったあれもこれも泣く泣くランク外に...。
 また、皆さんからご意見もいただきたく、右のサイドバーに人気投票を設けました。お気に入りの本などありましたら、ドンドン投票してください。では、ご覧ください。

■小説部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
ゴールデンスランバー / 伊坂幸太郎 Amazon
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面白い物語を数々紡ぎだしている著者の作品の中でも群を抜いた、著者渾身の1作。本屋大賞、山本周五郎賞受賞も納得の第1位。
チョコレートコスモス / 恩田陸 Amazon
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本書を図書館の棚で見たのは、幸せな出会いだった。演劇界を舞台とした秀作。演技の迫真の描写に震え、アイデアの豊富さに驚いた。
スカイ・クロラ シリーズ / 森博嗣 Amazon
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本編5冊、短編集1冊のシリーズ。独特の透明感と浮遊感がある空のシーンがCOOL。「分からないことが心地よく楽しい」不思議な作品。
ドミノ / 恩田陸 Amazon
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27人と1匹?が織り成すバラバラのストーリーがドミノ倒し的に展開する、ノンストップコメディ。理屈抜きに楽しめるエンタテイメント作品。
青い鳥 / 重松清 Amazon
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ひとりぼっちの子どもにそっと寄り添う教師の話。子どもの心を丁寧に描く。子を持つ私にはつらいほどに、心の深いところに届く物語。
家守綺譚 / 梨木香歩 Amazon
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不思議なことが日常に溶け込み、時間がゆったり流れる。乱読多読の私もゆっくりとしか読めない。手元に置いて少しずつ読みたい作品。
バッテリー / あさのあつこ Amazon
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頑ななまでに野球に純粋な天才中学生投手を描く。私には分からなくなった少年の心に少し触れられる。児童書ながら読み応え充分。
海駆ける騎士の伝説 / ダイアナ・ウィン・ジョーンズ Amazon
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「ファンタジーの女王」のデビュー前の中編作品。後作のような「ひねり」はないもののワクワク感は充分。DWJの入門編としておススメ。
精霊の木 / 上橋菜穂子 Amazon
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アジアンハイファンタジーの名手のデビュー作はなんとSF。しかし自然との共生、太古の知恵などのメッセージが生きた著者らしい作品。
10 阪急電車 / 有川浩 Amazon
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甘~いお話で読者を獲得してきた著者の連作短編集。阪急今津線に乗り合わせた数組のカップルたちの物語。往復の構成がオシャレ。

■ビジネス・ノンフィクション部門■

順位 タイトル/著者/ひとこと Amazonリンク
夢をかなえるゾウ / 水野敬也 Amazon
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いわゆる自己啓発本、HowTo本ですがとにかく面白い。この本を読んで成功を手に入れる人は少ないと思うが、群を抜く面白さで第1位。
ハイコンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代 / ダニエル・ピンク Amazon
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社会は「情報化」から「コンセプト」の時代に。IT関係や弁護士など、今もてはやされる「ナレッジワーカー」の職が危ないという警告の書。
もう、国には頼らない。 経営力が社会を変える / 渡邉美樹 Amazon
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学校、病院などの「公」の事業を「民」で手掛ける、ワタミ社長である著者の直球勝負の正論。自分でやったことばかりので反論できない。
ワーキングプア 日本を蝕む病 / NHK「ワーキングプア」取材班 Amazon
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格差が小さいと言われる日本を蝕む「新貧困」のレポート。金融危機でさらに問題は深刻になっているはず。もう問題を先送りにはできない。
イノベーションの達人! / トム・ケリー,ジョナサン・リットマン Amazon
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世界的に有名なデザイン会社のGMが考える、イノベーションに必要な10の人材。組織の革新や自らのゴールを考える枠組みとして最適。

 
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2008年12月19日 (金)

アフリカ 苦悩する大陸

著  者:ロバート・ゲスト 訳:伊藤真
出版社:東洋経済新報社
出版日:2008年5月15日第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は、英国の経済誌「エコノミスト」の元アフリカ担当編集長。アフリカに赴任する前は、英国紙「デイリー・テレグラフ」の日本特派員。「貧しい国々はどうすれば豊かになれるのか」が、著者が最も関心を寄せている問題のひとつ。その答えを求めるために、明治維新から軍国主義を経て奇跡的な経済成長を遂げた日本に、大学で日本語を学んでやって来たのだ。
 そして、著者の関心は今まさに貧困に苦悩する大陸「アフリカ」に向かったわけだ。貧困から抜け出せないでいる国々をじかに見ることで、逆にどうすれば豊かになれるのかの答えを探そうというわけだ。本書に記されているアフリカでの苦労の数々を思えば、ジャーナリスト魂の発露とは言え、よくこんな道を選択したと思う。命の危険に遭遇したことも1度や2度ではない。(自国民の保護を断固主張する)欧米諸国の国民でなければ殺されていたかもしれない。

 前半は気が滅入る内容だ。何故アフリカは貧困にあえいでいるのか、著者が見たその理由が次々と挙げられる。独裁者による破たんした国家経営と国民からの搾取、民族・部族間の憎悪、官僚・役人・警察の腐敗、エイズを始めとする疫病に対する無知・無理解、など。
 どうしてこんなことになってしまったのかは分からない。しかし、今現在の問題の核心は分かった気がする。それは国家を経営する能力を持つリーダーの不在だ。自分や親族・出身部族のためでなく国家のために働くリーダー、外国からの援助を本来の目的に使うリーダー、腐敗した官僚たちに規律を守らせるリーダーだ。
 簡単なことではない。「自分たちを優遇しない」ということは、親族・出身部族の憎悪の理由になり得るのだから。また、アフリカの有能な人材はどんどん流出してしまっている。医者の意見より政治家の判断が、エイズ治療の可否を決める国にいたいと思う知識層はそう多くないだろう。

 後半になって、少しだけ展望が見えてくる。著者の取材も以前に比べれば格段に安全になったし、情報通信技術が社会の風通しを少し良くした。南アフリカは未だに問題は多いながら、アフリカ諸国の民主化と脱貧困の先頭ランナーとして走り始めている。
 そして、著者がもっとも信頼をよせるのは、アフリカに住む庶民が豊かになりたい努力すればなれる、と思っている事実だ。それは、ビールの配送ルートの取材のために、500kmのデコボコ道を、トラックに4日間同乗した著者ならではの視点だ。そんな中で南アフリカの青年が言った言葉「南アフリカ人も一生懸命働けば、日本のように豊かになれる」これを聞いて誇らしいよりも面映ゆく感じるのは私だけではないはずだ。

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2008年12月16日 (火)

禁断のパンダ

著  者:拓未司
出版社:宝島社
出版日:2008年1月26日第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 2007年の「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞作。有名な文学賞で、受賞作がベストセラーになることもある賞の、それも1番評価された作品だ。どんな方法で騙してくれるのか?そんな期待をして読んだ。...しかし、先に読後の気持ちを言ってしまえば、後味の悪い小説だった。もっと☆を付けられる作品なのだが、後味の悪さだけが問題で、誰かに薦めるのがためらわれるので☆は2つだ。

 物語が終盤に差し掛かるあたりまでは悪くなかった。主人公の幸太は才能があるフレンチの若きシェフ。彼が、驚異的な味覚の持ち主であるかつての料理評論家と、天才と言われるシェフの手になる料理を食べる。事件の導入部にあるシーンなのだが、ここをはじめとする、料理の描写が読む人を魅了する。
 審査員評に「本格的美食ミステリー(「本格的」は「美食」にかかる)」とある通り、「美食」の部分は秀逸だ。高級フレンチなんか食べたことのない私も、読むだけで幸せな気分になってきた。

 実は、審査員評で評価されているのはこの「美食」部分だけで、ミステリーとしての構成には難があるとして、どの審査員からも指摘されている。まぁ「大賞」にふさわしいかどうか、と言われれば物足りないかもしれないが、私自身はそれなりに楽しんだ。キャラが立っていないと言われた登場人物たちも、私には個性的な人々に思えた。ストーリーにも起伏があって、退屈な感じはしなかった。舞台が私が生まれた神戸の街で、登場人物たちが話す神戸言葉に和んだことも付け加えておく。

 それなのに、どうして後味が悪くなってしまったのか?それは、物語の核心に触れるので具体的には言えないけれど、本書で行われた犯罪に私が生理的に嫌悪感を覚えるからだ。このあたりの感じ方は人それぞれだが、表紙のパンダの絵からホノボノとした物語を連想していると、思いもよらない展開になってギクッとすることは間違いないと思う。

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2008年12月12日 (金)

官邸崩壊

著  者:上杉隆
出版社:新潮社
出版日:2007年8月27日発行 9月30日7刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 副題は「安倍政権迷走の1年」。前の前の政権の、発足から終焉間際までの約1年間の顛末の記録だ。新聞やテレビなどのメディアを通しては見ることのできない、政権内部での出来事がつづられている。ニュースで見たあの場面のウラは、こういうことだったのか!という話題が満載で面白かった。

 そもそも私が1年以上前に出たこの本に興味を持ったのは、今の麻生政権に大きな疑問を持ち、「いったい何でこんなことになるんだ」と思い、政権の内部事情を書いたこの本のことを思い出したからだ。
 各社の調査で20%そこそこの支持率しかない現政権だが、大きな失策というよりは、何もしない(できない)のに自壊しているように思える。そう言えば、安倍政権も閣僚の不祥事が相次ぎ、守ることも切ることもできずに自壊した。最近の短命政権に共通するのは、無為無策による自滅だ。

 本書に話を戻すと、議員秘書からジャーナリストに転身した著者が、その経歴や人脈をフル活用して取材したと思われる出来事が、独自の解釈を加えて紹介されている。すべて実名で、エラい先生方のあれこれの振る舞いが書かれているので、永田町からの風当たりは強かったろうと思う。もちろん、先生方にも言い分があるはずだし。
 先生方の言い分を大幅に考慮に入れて、著者が加えた解釈も含めて、控え目に見て本書の半分が真実だとしよう。それでも感じるのは考えの浅さだ。自分なりに考えて一手を指すのだが、考えが足りずすぐに駒を取られてしまう、初級者の将棋のようだ。「これがいい」と思って口にするのだが、支持を得られず実現もしない、現政権の政策も同じ理由によって迷走しているのだと考えれば説明がつく。

 つまりは人材がいないのだ。幸いなことに登場する官邸スタッフや政治家に私利私欲で動く人はいない。功名にはやることはあるが、行おうとする政策は良かれと思ってやっていることだ。でも、政治は結果で評価するしかない。ねじれ国会や金融危機という逆風もあるだろうが、迷走する政権が3代も続いているのは、永田町と霞が関にもう人材がいないことを表しているのではないだろうか?
 冒頭に「面白かった」と書いたが、それは読み物としてのこと。その後には言いようのない寂しさを感じた。

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2008年12月11日 (木)

ブログ「お試しな暮らし」始めました。

 何人かの方にはすでに見つかってしまっているのですが、今年の10月末から「お試しな暮らし」というブログを始めました。そのブログでは、日々使う色々なモノやサービスの評価や実際に使った感想、特に気に入ったオススメ商品などを書いていくことにしています。

 もともとは、この「本読みな暮らし」を見てくださった方から、「本の評価だけでなく、モノの評価も書いてみませんか?」、というお誘いを受けたことがきっかけで立ち上げたものです。聞けば、試供品などの商品のキチンとした評価を書けば、わずかながら掲載料もいただけるということで、ちょっと欲の虫が動いたことは事実です。
 実を言うと、その方からの提案はその後進展しないのですが、立ち上げてしまったブログを放置するのも忍びなく、ネタを探してネットを検索しているうちに、ブログライターなる言葉と遭遇しました。どうも、私がやろうとしていたこととかなり近い(でもちょっと違う?)もののようです。
 探せばいっぱいありました。モノを試して評価を書いてください、っていうサイトが。何のことはない、私がよく知らないだけで、最初にいただいた提案も数あるサイトの1つだったわけです。

 そういうわけで、今は抽選で当たった試供品の感想を書いたり、リリース文を基に記事を書いたりしています。何だか抽選生活のようになってしまって、最初の考えと微妙に違う気もするのですが、まぁこういうのも良いか、と思っています。気が向いた方は、「お試しな暮らし」も覗いてみてください。

 
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2008年12月 9日 (火)

授業改革に挑む

著  者:東海市教職員会
出版社:文芸社
出版日:2006年1月30日 初版第2刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

  2004年11月に、愛知県東海市で市内18のすべての小中学校が、「授業改革に挑む」というテーマで研究発表を行った。本書はその発表をベースに教職員会がまとめた報告書だ。副題は「教師が変われば子どもが変わる 動き出した教職員」
 この発表会に先立って、東海市では約2年間にわたって授業研究(改革)が、さまざまなテーマで行われた。もちろん、こうした取り組みの前には、これだけの改革を決意させるに足る問題を抱えていた。小学校は学級崩壊、中学校は校内暴力、すべての学校ではないけれど、子ども達が落ち着いて学習できる環境ではなかった。
 冒頭にある中学の描写ではこうだ「3階からは、机やいすが投げ捨てられた。家庭課室からは包丁が持ち出され....」。この後も荒んだ学校の様子が続く。特別な学校の様子に見えるが、実は全国で同じような光景は見られるし、もっと言えば、どこの学校でもちょっとしたバランスの加減で同じことが起きうる。

 そして、東海市の小中学校の取り組みが始まった。具体的な内容は本書に譲るが、方針は明確だ。いかにして、子ども達に「分かりやすい授業」を行うか、この1点のために、徹底して授業を分析しその質を高める、ということだ。そのためには本気で議論する。そうしたことの積み重ねの成果が、授業にそして子ども達に現れるのだという。
 また、総合の時間のカリキュラムや教材作り、小中学校を通じて一貫した評価システムなど共通の課題には全市で取り組んでいる。授業を変えるには、1人1人の教師の力量を伸ばすことが不可欠だが、それを教師個人の頑張りに頼るのではなく、システムとしてバックアップすることが大切だ。
 その授業改革の結果、子ども達が落ち着いて学べる環境を取り戻すことができた。まぁ意地悪な見方をすれば、「普通」に戻ったに過ぎない。しかし、教師が変わり、授業が変わり、子ども達が変わったことは事実。その経過が本書で克明に記録されている。

 東海市が得た結論もまた明確だ。「教育改革は授業改革に尽きる」さらに、「授業改革には教師の自己改革が必要」。私は、このことを現場の教師にではなく、教育改革を謳う関係者に言いたい。最近は下火になって来たが、学校選択制、バウチャー制度といった「制度いじり」、それによる競争原理の導入こそが教育改革だ、という理屈があり、大きな声で言う人々がいた。
 この方法は、教師に競争というプレッシャーを与えて頑張らせよう、というものだ。規制緩和によって競争を起こして、経済を活性化させようという発想と同じ。結果は一例として、大規模店の出店によって廃退した地方の商店街を見れば、成功したとは言えない。
 地方の企業に、そして現場の教師に、自己改革を促す方法が競争原理以外にある。本書は極めて示唆に富む本だと思う。

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2008年12月 4日 (木)

アンガー・マネジメント

著  者:安藤俊介
出版社:大和出版
出版日:2008年10月1日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の安藤俊介さんからお声をかけていただいて、出版社の大和出版さんから献本いただきました。感謝。

 アンガーマネジメントとは、本書によると、「怒り」に正しく対処することで健全な人間関係を作り上げる知識・技術を習得する、ということだそうだ。「怒り」は感情の中でもとくにマイナスの結果を引き起こす原因となる、つまり怒りのままに行動すると、自分にとっても周囲にとっても良い結果は生まないから、怒りに操られるのではなく、怒りをコントロールしましょう、ということだ。
 私は、自分では怒りやすい方ではないと思う。しかし、怒った時にはかなり高いレベルに到達することがある。我が家の壁には、私がつけた拳の形のへこみがあるぐらいだから。絶対に人に手を出してはいけないと思っているので、壁に犠牲になってもらった。

 本書は、怒りを分析することから始まる。あっという間に頂点に達する私の怒りも、分解すると3段階からなるそうだ。(1)出来事に遭遇、(2)出来事の意味付け、そして意味付けの結果、許せないものであれば(3)怒りの発生、という具合だ。
 だから、誰かの行いの結果である(1)だけでは私を怒らせることはできない、(2)(3)という私の行いが私を怒らせている。つまり、私の怒りは私自身が選択したものであって、その選択の責任も私にあるのだ。いや参った、イタイところを突かれた思いだ。誰だって怒っている人は、「誰かのせい」で怒らされた、と思っているだろうから。

 この怒りの発生までの3段階の分析は、自分に反省を促すだけではなくて、これをさらに追及することで「怒らない」ためのテクニックが導き出される。本書ではそれらが具体的に紹介されている。今すぐ使える方法から、長期的に取り組むものまでいろいろあり、詳しくは読んでもらうしかないが、想像するにその効果は劇的だと思えるものもある。
 ただ欲を言えば「怒り」のエネルギーを積極的に活用する方法はないのか?と思う。本書は、ほぼ全編が「怒らない」ことに主眼が置かれている。「「怒り」をプラスに生かす視点」という項目があるのだが、プラスに生かす方法は書かれていない。代わりに「怒らない」ことで得られるプラス面が大きいということが強調されている。まぁ、発想の転換ということかもしれないが。

 「欲を言えば」はあるにしても、真面目な良い本だと思う。世の中全体が他者に対して不寛容になっているように感じる。こうした技術が広く普及して「大人のたしなみ」のようになれば、多くの悲劇が未然に防げるだろう。そのためになら、この本が多くの人の手に渡ると良いと思う。だからオススメだ。

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