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2008年11月

2008年11月29日 (土)

精霊の木

著  者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2004年6月初版第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

  守り人シリーズで、圧倒的な感動巨編を紡いだ著者のデビュー作。本書は、再版を願う読者の声に応える形で復刊された新版。アジアンハイファンタジーという、どこか古代の香りが漂う作品群で知られる著者のデビュー作は、何とSFだった。しかし、文化人類学を学んでいた著者が、沖縄の信仰の場所でその核となる着想を得たというこの物語は、他のどの作品よりも著者らしい、その思いが現れた作品だった。

 舞台は、環境破壊のため住めなくなった地球を出て人類が移住した星、ナイラ星。時代は、物語の中で、白人がネイティブアメリカンを迫害してから400年で地球が破滅、その後人類がナイラ星に移住してきてから200年、とあるから今から400年ほど後のことになるのだろう。そして、この星には知的な先住民がいたが約100年前に滅んでいる。
 主人公は、14歳の少女リシアと、少し年上のいとこの少年シン。彼らの家系にはある秘密があり、その秘密に関連してリシアにある特殊な能力が発現する。彼らは政府によって幾重にも隠匿されてきた、この惑星への移住と先住民族の滅亡に関する陰謀に巻き込まれる。
 そして、リシアの特殊能力は、100年前の出来事、さらには1000年前の出来事を一つに結びつけて、彼女は人々が1000年の間、脈々と受け継いできた希望の最後の一片となる。
 なんという構想力だろう。偕成社のHPによると、著者は出版社に電話をかけて、この物語の原稿を読んでもらったそうだ。そんな経緯で作家デビューしたのには驚く。その時の担当の人が、この物語に目を留めたことに感謝する。でなければ、私は著者の作品に出会っていなかったかもしれないのだから。しかし、この物語自身にそれだけの力が宿っているのも間違いない。著者のファンならずとも、皆さんにおススメだ。

ここから先は、ちょっと思ったこと書いています。お付き合いくださる方はどうぞ

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2008年11月25日 (火)

牢の中の貴婦人

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:東京創元社
出版日:2008年11月14日初版
評  価:☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 ☆2つはカライかもしれない。でも3つはあげられない。書けるのなら☆2.5コにしていた。
 この物語は、1960年代半ばには書きあげられていたというから、デビュー前に書いたという「海駆ける騎士の伝説」より前、現在発表されている著者の作品の中で、もっとも古いものらしい。ジョーンズ作品はハズレはないと思うものの、作品によっては多少クセがあり、読者を戸惑わせる。本書はその部類かも。

 異世界の牢獄にいきなり放り込まれた、現代英国の女性エミリーが主人公で、物語は彼女が獄中で書いた手記の形で綴られる。だから、舞台は彼女が居る牢獄とそこから見える範囲だけ。登場人物もセリフがある人に限れば数人しかいない。
 まぁ、牢獄といっても、彼女は貴婦人として扱われているので、家具もテラスもある立派な部屋ではあるが、それにしたって、たったこれだけの舞台装置で200ページを越えるストーリーはツライ。強いて言えば、力試しに敢えて制限を課して書いた実験小説のようだ。

 ストーリーは、どうしてここに閉じ込められているのかさえ分からないエミリーが、牢番から引き出した話から、徐々に状況を解明していく物語。テラスから見える他の囚われ人との手紙のやり取りや、心の交流などが織り交ぜられている。
 しかし、基本的には何も起こらない。いや、色々と起きてはいるのだが、それはすべて牢の外の出来事であって、牢の中では何も起きない。彼女は(つまり読者も)、牢番らから聞いてそれを知るのみだ。

 先に実験小説のようだ、と書いた。最初に読むジョーンズ作品としてはオススメできないが、ジョーンズが好きな人は読んでみてはいかがかと思う。「魔法!魔法!魔法!」に収められた短編と同じように、いつもとは色合いの違うジョーンズ作品という意味では楽しめるかも。

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2008年11月20日 (木)

美女と竹林

著  者:森見登美彦
出版社:光文社
出版日:2008年8月25日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 小説宝石という月刊の文芸雑誌に2007年から2008年に掲載されたエッセイが、17編収められている。タイトルは、著者がやみくもに好きなもの2つなんだそうだ。「美女」は、「どうして」と聞くまでもない、聞いたところで仕方ない。
 「竹林」の方は「どうして」と聞かずにはいられない。しかし、どうして好きなのかは、さっぱりわからない。確かに言えることは、著者が今現在は「竹林」を愛して止まないことだ。それは、本書に収められているエッセイのテーマが、「竹林の竹を刈る」という一点であることからも分かる。著者は、実際に知り合いが所有する竹林に出向いて、そこを整備すべく、愛すべき友人や編集者さんとともに、竹を刈るのである。

 何とも要領を得ない書籍紹介たが、それもやむを得ないこととご容赦願いたい。何しろ本書そのものが、要領を得ない不思議なシロモノなのだ。冒頭に「エッセイ」と紹介したが、エッセイとは、見たり聞いたり感じたりしたことを散文としてまとめたものを言うとしたら、本書に収められているのはエッセイではない。
 著者は自身のことを「妄想作家」と称しているが、著者の妄想が何の前触れもなく、文章に入り込んでくる。言い方を違えれば、ウソや作りごとが混じっている。これでは、エッセイとは言えないだろう。

 しかし、これがエッセイかどうか、などという瑣末なことにはお構いなく、本書は面白い。著者の他の作品が「妄想小説」ならば、これは「妄想エッセイ」だ。何のことはない、著者の他の作品に漂う雰囲気、夢と現を行ったり来たりする「森見ワールド」そのままの本なのだ。
 だから、森見ワールド未体験の人にとっては冒険。きっと戸惑うと思う。著者の妄想に、そのヘタレ具合に。逆に著者のファンにはオススメだ。随所にちりばめられた、ちょっとした言動に、笑いのツボを刺激されることだろう。

 最後に、本の編集者という仕事は大変ながら楽しそうだ、という感想を持った。

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2008年11月16日 (日)

ホルモー六景

著  者:万城目学
出版社:角川書店
出版日:2007年11月25日初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

  出版社のWEBサイトによると、18万部を突破し来春に映画公開が予定されている、著者のデビュー作「鴨川ホルモー」の続編ではなく、外伝的な短編集だ。前書の登場人物や周辺人物を主人公とした6編が収められている。それで「六景」。2007年に「野生時代」に毎月掲載されたものだ。

 今回、主人公となったのは、京都産業大学玄武組の女性2人、同志社大学の女性、京都産業大学玄武組と龍谷大学朱雀団のOBとOG、立命館大学白虎隊の女性、昔の京都大学の男性2人、そして我らが「凡ちゃん」の6組。女性が多いのは「ホルモー」という一種異様な競技とのミスマッチがドラマになりやすいからかもしれない。
 前書を読んだ時に、主人公の他2,3人以外は、人物像が殆ど描かれていなくて、ちょっと薄味に感じた。主人公が所属する京都大学青竜会に対する他の大学にも、魅力的なキャラクターの1人や2人いそうなのに、と思った。その点からすると、本書は「我が意を得たり」という感じだ。
 また、著者は本書ではいろいろな趣向を凝らしている。甘酸っぱい青春小説であったり、昭和初期の文豪を登場させたり、400年の時を越える思いを描いたり。著者の引き出しには、まだまだどんなアイデアが出番を待っているのだろうと、読み進める程に期待が高まる。

 だけれども...。読み終わって真っ先に思ったのは「もっと、青竜会の面々の話を読みたかったなぁ」だった。さっき「我が意を得たり」と書いた(言った)、舌の根も乾かぬうちにこんなことを書く(言う)のは、我ながら滅裂だとは思う。
 たぶん「本編で登場したあの人」の話の方が思い入れを持って面白く読めるのだろう。あの人にはこんな隠された物語が..とか、あの事件はこういうことだったのか..とか。だから、本書の私の一オシは、「凡ちゃん」が登場する第二景「ローマ風の休日」だ。「鴨川ホルモー」読者は、この1編だけでも読む価値アリ、オススメだ。

 表紙と章の表紙のイラストに注目。凡ちゃんって、こんなにかわいいのか!
 さらに、もう一言。「凡ちゃん、その井戸の底を照らして覗いてみてよ。カエルがいるハズなんだよ。」(←「有頂天家族」読者へのメッセージ)

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2008年11月11日 (火)

予想どおりに不合理

著  者:ダン・アリエリー 訳:熊谷淳子
出版社:早川書房
出版日:2008年11月21日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。早川書房さんのプルーフ版(簡易製本の見本)でいただきました。

 著者はデューク大学の行動経済学の教授で、MITのメディアラボにも籍を置いている。不肖私は20数年前に経済学を学んだ者だが、「行動経済学」という研究分野のことを知らなかった。
 古典的な経済学では「人は合理的に行動する」ことを前提に理論が構築されている。しかし、現実を見ると人の意思決定は合理的ではない。必要ではないものを買ってしまうことの何と多いことか。そこで行動経済学は、人は合理的に行動するという前提をなくし、いわば心理学の見地を取り入れ、人の振る舞いを基礎に置いた経済を研究するものだそうだ。

 まずは、本書にあるちょっとした実験を紹介。日本でもハロウィンの行事が認知されるようになってきたが、著者がハロウィンの日に家にきた子どもに仕掛けた実験(イタズラ?)だ。キスチョコを3つ渡してこう言う「この他に、小さいスニッカーズをもらうのと、キスチョコ1個と交換に大きいスニッカーズをもらうのとどっちがいい?」
 小さいスニッカーズは約30g、大きいのは約60g、キスチョコは約4.5gだ。合理的に考えれば、大きいスニッカーズとの交換が得策だ。でも..この子は一旦もらったキスチョコを手放すのが惜しかったのか、小さいスニッカーズを選んだ。「予想どおりに不合理」だ。
 「子どもだから..」という理由付けをしてしまいがちだが、そうではない。比較のためにやった他の実験では子どもたちは、ちゃんと合理的な判断ができた。そして、何よりも同じような実験を大人(MITの学生が被験者になることが多い。頭の出来は保証付きだと言って差支えないだろう)を対象にしても結果は同じく不合理だ。そんな実験の数々が本書の中にはあふれ返っている。

 実を言うと本書で紹介されている実験結果は、読者にとっても「予想どおり」だ。何となく普段の生活で感じている通りのことで「まさかそんな!」というものはなかった。しかし私は、本書が優れて示唆に富む本だと思う。
 それは、私たちが思う「感じ」を本書はキチンと実験で証明し、その理由を分析しているからだ。理由が分かればうまく利用ができる。もっと大切なのは対策ができることだ。世の中には不合理な行動の結果の争いや悲劇も数多くある。著者はその対策にもいくつか言及しているが、実現することを希望する。

 余談だが、著者は2008年のイグ・ノーベル賞の医学賞を受賞。受賞理由の「高価な偽薬は安い偽薬よりも効果が高いことを証明」に関連する実験も本書で紹介されている。

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2008年11月 6日 (木)

駆け出し魔法使いとはじまりの本

著  者:ダイアン・デュエイン 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2008年10月24日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 帯に「<ハリーポッター>の次に読む本」とある。巻末の解説によれば、本書は1983年に刊行され、それなりに支持を受けてその後シリーズ化もされた。1991年に一度日本語訳が出た後、入手困難な状態が続いていたところ、「ハリーポッターみたいな本は他にないの?」という声を受けて、再び注目されるようになった、とのことだ。
 それで、本書が「ハリーポッターみたいな本」かどうかだが、これは微妙だ。ストーリーは、自分に魔法の力があるとは思っていなかった少女が、魔法の力に目覚め、自分の意思とは別に世界の命運を掛けて、闇の盟主との戦いに巻き込まれる、というもの。この点に関しては確かに「..みたいな本」だ。
 しかし、1冊で完結していて、それも全体で数日の話なので、「ハリー」のように、友情や家族愛や運命なんていう装飾はあまりない。軽い起伏を何度か経るが、基本的には物語はまっすぐに進む。終わってからみると「あぁ、主人公たちはこういうものを得たのね」というおみやげがちょっと心に残る、そんな感じだ。

 「ハリー」みたいかどうかは置いて、本書の感想を。これは結構楽しめた。主人公たちの勇気と知恵を使った冒険譚を素直に楽しんだ。続巻が来年出るそうだが、それも読んでみてもいいカナ、と思っている。
 「これはあり得ないでしょ」という場面も何度かあるが、あまり深く気にしないようにした。ファンタジーにどこまでリアリティを求めるかは人それぞれだ。少しばかり荒唐無稽なストーリーでも、面白ければ楽しめる、という人にはオススメだ。

 最後に蛇足と知りつつ、気が付いたことを。ネタバレになるので具体的なことは極力控えるが、トールキンの作品との相関を感じた。「シルマリルの物語」の冥王、「ホビットの冒険」のドラゴン、「指輪物語」のエント、これらを思い出させる設定やエピソードがあった。
 そして、「ハリーポッターとアズカバンの囚人」の逆転時計のエピソードに似た展開も。こちらは、もし相関があるとすれば制作年代から言って、ローリング氏の方が影響を受けたことになる。この件を指してかどうかは分からないが、本書のファンの間ではそういう噂も囁かれたそうだ。

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2008年11月 2日 (日)

異次元の刻印(上)(下)

著  者:グラハム・ハンコック  訳:川瀬勝
出版社:バジリコ
出版日:2008年9月21日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 ハンコック氏の著書は、人類の歴史についての主流とか定説になっている学説に、真っ向から反対するものばかりだ。それ故、著者の本は「トンデモ本」との評価を免れない。それでも、私が何冊もお付き合いしているのは、著者の主張に一片の真実がある可能性を感じるからだ。また、その主張を裏付けるための取材に見る、著者のバイタリティが敬服に値するからだ。
 その取材のあり方について、「都合の良いところだけのつまみ喰い」という批判があることはもちろん承知している。著者は記者であって、そのテーマを専門とする研究者ではないので、専門家からはイロイロと言いたいこともあるだろう。
 私自身も、これまでに展開された数多くの主張の中には、飛躍しすぎた論理展開など、ついて行けないこともあった。しかし、それでも著者の主張が全くのデタラメである、と論証するのは誰であっても難しい、とも私は思うのだ。

 さて、本書での著者の主張はおおむね次の通り。
 「先史時代の洞窟壁画に描かれた絵、アフリカやアマゾンのシャーマンが得る啓示、ヨーロッパ各地に残る妖精伝説、宗教家が受けたとされる天からの啓示、UFOに拉致されたと主張する人々が遭遇した場面、薬物の摂取によって見る幻覚、これらには多くの共通点がある。そしてこれらは、太古の昔に生物のDNAに組み込まれた暗号であるか、または、通常は脳が感知できない周波数で振動している次元に実在する現実である可能性を否定できない」。
 「先史時代、シャーマン、妖精、天からの啓示、UFO、薬物」これらのワードは、それだけで何となく胡散臭い。「トンデモ」な文脈で語られることが多く、科学者と呼ばれる人々は、道を誤りたくなければ公には口にしない類のものだろう。しかし「胡散臭い」という印象の他には、これらを完全に否定する要因がないのも事実。逆に、こういったワードについて、様々に語られている証言を一旦肯定した上で考察を進めたのが、著者の主張だ。

 同列に語ることに違和感や嫌悪感を覚える人がいるかもしれないが、著者の主張の一部は、量子物理学、宇宙物理学の分野と接近している。超ヒモ理論などで言われる多次元空間や並行世界、宇宙の大部分を占める「暗黒物質」。これらは多くの人が感覚的に理解できないし、目にすることもできない。なのに「トンデモ」とは言われない。
 先ごろノーベル賞を受賞した研究「対称性の破れ」だって、宇宙誕生のその瞬間の研究だけれど、これまでの知識の積み重ねがなければ、ビッグバンなんて考えは、完全に「トンデモ」視されているだろう。

 「胡散臭い」という心のカセを外すことさえできれば、説得力がある論理の展開だ。もし、読者がそのようなことができるのならオススメする。面白い読み物となるだろう。

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「異次元の刻印(上)(下)」 固定URL | 5.ノンフィクション, 54.グラハムハンコック | コメント (2) | トラックバック (1)

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