家守綺譚
著 者:梨木香歩
出版社:新潮社
出版日:2004年1月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「家守」はヤモリではない、イエモリと読む。さらに、平安貴族でも徳川一族でもない。主人公綿貫征四郎は、亡くなった親友の高堂の実家が空くのに伴い、そこに住んで管理をしている。つまり「家の守」をしている。それで家守。
場所は京都。山一つ越えたところに湖がある、その湖から引いた疎水の近くとあり、文中に登場する山の名前などから考えると、山科から大津にかけてのあたりらしい。時代は、トルコの軍船の遭難事件への言及などから推察するに、明治の中ごろか。
山科は古くから宿場町として栄え、この頃には鉄道も通っていたので、決して辺鄙な田舎町ではなかっただろう。それでも100年以上前の日本には、この小説のような、濃密な自然や異世界を感じる空気が流れていたに違いないと思う。
そう、本書では様々な怪異なことが起こる。死んだ親友の高堂は壁の掛け軸を通ってやってくるし、主人公は何度か異界へ迷い込みそうになる。河童や鬼、狐狸妖怪の類が次々登場する。そういった短編が28編収められている。
しかし、決して怪奇小説のような怖さを感じさせないのは、話の背景を流れる時間がゆったりしていることと、こういった怪異な現象を、登場人物たちが普通に受け止めているからだろう。
とくに隣家のおかみさんが、いい味を出している。池の端に落ちていた気味の悪い布か皮か分からないものを見て「河童の抜け殻に決まっています」。散歩の途中で見かけた不思議な老人のことを聞くと「それはカワウソですよ」しかも「この辺の最近の子供なら、みんな知っている」とくる。悪さをするものならそれに備えるのが知恵だし、害がないのなら特に騒ぐこともない。誠に自然体の暮らしぶりなのだ。
私は、乱読多読気味の読書なので、基本的には時間と気力のある限りドンドン読み進めます。本書もそうして読んでいたのですが、なかなか先に進まない。つまらないわけではないのにどうしてだろう、と思っていました。
それは、本書の時間の流れがゆったりしているからなんだと思います。気が付くと、何となく今読んだ話を思い返して浸っていました。そんなことを一話ごとにやっていたので読み進まないのでした。
この本は、手元に置いといてゆったりと一話ずつ読む、そんな読み方が似合うのでしょう。そんなことを思った本は初めてなので、そうしてみたいと思います。
本書は、「鴨川ホルモー」のレビューにコメントをくださったLazyMikiさんから薦められて読みました。LazyMikiさん、良い本を教えてくれてありがとう。
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» 家守綺譚/梨木香歩 [ここから]
森見登美彦さんの「きつねのはなし」がとても気に入った、と書いたところ、「それならこちらも」とyurinippoさんにお薦め頂き、さらにbarnesさんからも「私も大好きな本です」とうかがって、もーこれは、どう転んでも間違いない、と自信満々で手に取った1冊。家守綺譚/梨木香歩(新潮社)
というわけで、もちろん素敵なお話でした。
「きつねのはなし」が、森見流にされていた味付けが気に入ったとするならば、こちらはあたかも味付けほとんどなしの天然だしの風味を堪能しました、という感じ。
なんのこっ... [続きを読む]
受信: 2008年7月15日 (火) 00時09分




コメント
ゆっくり読みたい本、
短編集では特にそういう本に出会うことが多いです。
私はゆっくり…と思いつつどんどん読んじゃいがちですが。。
1回電車に乗る間に1篇読む、くらいのペースで読める本と
ちょっとずつ読める、通勤時間の読書タイムが好きです◎
投稿 liquidfish | 2008年7月14日 (月) 15時11分
liquidfishさん、コメントありがとうございました。
liquidfishさんも、どんどん読んじゃうタイプですか。
私は、今はマイカー通勤なので、通勤読書が少しうらやましいです。(ガソリンが..高い)
読むのはだいたい寝る前で、気が付くと睡眠時間を削ってしまっていることがよくあります。
投稿 YO-SHI | 2008年7月14日 (月) 17時07分
私もイッキ読みしてしまう方ですが、
この本は寝る前に一話ずつ、ゆったり読みました。
夢の中でもう一度、本のなかの風景に出会えるという感じがしました。
隣のおかみさん、不思議な存在感がありましたねー。
投稿 たこΩ | 2008年7月14日 (月) 18時29分
ホントですねぇ。
おっしゃる通り、「ゆったり」、「自然」といった雰囲気が素敵ですよね。
主人公と高堂の関係が、ちょっと京極夏彦さんの関口巽と京極堂を連想させるね、とブロガー仲間と話したのですが、YO-SHIさんはどう思われます?
私、犬(ゴロー、だったかな?)が好きです^^
気に入って下さって、私も嬉しいです。
投稿 lazyMiki | 2008年7月15日 (火) 00時08分
たこΩさん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。
寝る前に一話ずつ。そういう読み方いいですね。
似合ってますこの本に。何だかぜいたくな感じさえします。
隣のおかみさん、何者なんでしょうか?
----
LazyMikiさん、コメントありがとうございます。
それからこの本を教えていただいて、重ねてありがとう。
京極夏彦さんは未読です。気にはなっているんですが、
まだ手が出ていません。オススメなら読んでみます。
投稿 YO-SHI | 2008年7月15日 (火) 12時38分
はじめまして。
私は光文社ペーパーバックスの高橋と申します。いつも楽しくブログを拝読させていただいております。
さて、拙著『やっぱり「仕組み」を作った人が勝っている』を
ぜひ献本させていただき、ご感想を賜りたいと
考えているのですが、
どのような手続きを取ればよろしいでしょうか。
できましたら、送付先を教えていただければ
幸いです。
よろしくお願いいたします。
投稿 高橋学 | 2008年7月15日 (火) 17時29分
京極作品、好き嫌いはあると思いますが、好きになれればこれはもう、至福の本読み体験ができることでしょう!
京極堂シリーズと又市のシリーズ(と、その他)とありますが、私は前者の大ファンです^^
「姑獲鳥の夏(シリーズ1作目)」、是非是非お試し下さいませ。
投稿 lazyMiki | 2008年7月15日 (火) 21時54分
高橋学さん、コメントありがとうございます。
「36倍売れた!」の対談に登場された高橋さんですね。
献本のお申し出、ありがとうございます。ぜひ、読ませていただきたいと思います。
ついては、個別にメールでやり取りさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
----
LazyMikiさん、再びコメントありがとうございます。
「姑獲鳥の夏」から始まるシリーズですね。
「至福の本読み体験」を期待して、読んでみます。
投稿 YO-SHI | 2008年7月16日 (水) 09時45分
YO-SHIさん
有難うございます!
そうです、「36倍売れた!」の対談で登場させていただきました。先ほど、メールを送らせていただきました。お手数ですが、よろしくお願いします。
また、こちらの所用でコメント欄を使わせていただき、大変失礼いたしました。純粋に本に対するコメントを寄せられている方々、YO-SHIさんに、お詫び申し上げます。すみませんでした。
高橋
投稿 高橋学 | 2008年7月16日 (水) 15時21分
YO-SHIさん、初めまして♪
コメントをありがとうございました。
梨木香歩さんの本は、
「りかさん」「からくりからくさ」
しか読んだことがないのですが、凄く不思議が一杯でした。
書評を拝読し、「家守綺譚」を是非読んでみたいと
早速、図書館にネット予約を入れました。
またお邪魔させてくださいね♪
投稿 かりん。 | 2008年7月18日 (金) 20時31分
かりん。さん、コメントありがとうございました。
私は、梨木香歩さんの本は、この本が初めてです。記事にあるとおり、薦められて読みました。
「りかさん」と「からくりからくさ」も読みたくなりました。
ちょっと今、なかなか読み進まない重たい本を読んでいて、「読みたい本」がたまってしまってるんですが。
投稿 YO-SHI | 2008年7月19日 (土) 10時47分
初めまして。
家守綺譚の植物が大変参考になりました。ありがとうございました。
このお話の世界は本当に良いですね。時間の流れがゆったりしていて、景色が目の前にうかぶようです。
私もこの本は時間をかけてゆっくり味わいながら読みました。
梨木香歩の世界、もっと他の本でも堪能したいですね。
投稿 たかこ | 2008年8月18日 (月) 20時28分
たかこさん、コメントありがとうございました。
「時間をかけてゆっくり」そうおっしゃる方がホントに多くて、
この本の読み方として合っているんだなぁと思います。
私も、梨木香歩さんの作品を少しずつ読みたいと思っています。
たかこさんのブログも拝見しました。読書傾向が、少し私と
重なるようですネ。これから時々覗かせてもらいます。
右のリンクリストに、たかこさんのブログを加えました。
たかこさんも、もし同じ本を読んだらまたコメントくださると
うれしいです。
投稿 YO-SHI | 2008年8月20日 (水) 16時10分
YO-SHIさん
梨木香歩さんの作品は、私もまだまだです。でも、もっと他のも読んでみたいと思っています。またトラバさせて下さいね。
リンクありがとうございました。私の方もRSSでリンク表示させて頂きました。
これからもよろしくお願いします。
投稿 たかこ | 2008年8月20日 (水) 20時50分