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2008年7月17日 (木)

大量監視社会 誰が情報を司るのか

著  者:山本節子
出版社:築地書館
出版日:2008年4月20日初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 著者は、行政ウォッチャー、調査報道ジャーナリストとして、主に環境問題、ゴミ問題に取り組んでこられたようだ。他の書籍は読んだことがないのでわからないが、本書を読む限り、膨大な資料を読み解き、そこから1つの文脈を探り当てる手法のようだ。その手腕は並大抵のものではない。各章末に記載される参照資料の量が、著者の分析力とエネルギーを表している。

 高速道路に設置されたETCやNシステム、コンビニやスーパーなどの商業施設に留まらず街中に設置された監視カメラなどによって、我々の生活は監視されている。本来、「監視」というのは、悪を為す可能性のある者を見張ることであったはずが、「安心、安全のため」という名の下に、国民全員を監視する仕組みが出来上がってしまっている。これが、タイトルの「大量監視」の意味するところだ。

 話は、官僚と企業との癒着、いや実際には企業に主導権を取られている実態とか、米国の悪名高い盗聴システム「エシュロン」の話とか、様々に発展して行き、それぞれ読み応えがある。そして、その発展が収斂していく先にあるものは、「日本はまた戦争をするのではないか?」という重大な懸念だ。
 住基ネット、教育基本法改正、有事関連法、IT機器やGPSの利用など、一つ一つの出来事は、若干の違和感はあっても、許容範囲、もしくは好ましい変化だとさえ思えるようなものであっても、あるフィルターを通して見ることで、とんでもない方向を指し示していることが分かる、そんな感じだ。

 9.11以降、国外や入出国を見ていた米国の監視の目が、米国内に向き始めた。日本の警察組織だって、国民の安全を守る組織もあるが、国の治安や体制維持のためには、国民を監視し、場合によっては拘束する組織だってあるのだ。
 本書は、最後の章でナチスのユダヤ人虐殺の際に、いかに情報システムが有効に使われたかを示している。そういったことを考え合せると、一見バラバラに取得されているように見える、我々の生活の断片の情報が、一か所に集約される可能性があるとしたら、サブタイトルの「誰が情報を司るのか」の答えが「国家」であるとしたら...著者の重大な懸念が、起こりうる現実となって迫ってくる。

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コメント

再び覗きに来ました~^^;
アメリカ留学です♪いつも突然でごめんなさい(汗)
実は何度も訪問してるんですw
今後の記事更新の参考にさせてもらいたいと思って見させてもらいましたけど、普通に楽しんじゃいました^^;
って長々とすいません、楽しいブログこれからもよろしくです♪

投稿: アメリカ留学 | 2008年7月19日 (土) 18時05分

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