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2008年5月31日 (土)

青い鳥

著  者:重松清
出版社:新潮社
出版日:2007年7月20日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 この作家さんの本を読むのは初めてだ。このところ何人かの方の書評のブログを巡回していて、度々お目にかかったので、どんなお話を書かれるのだとうと気になっていた。どうも、人の心のひだを丁寧に描写される、心に沁み入る物語を書かれるらしいのだけれど。
 それで、図書館の棚にあった比較的新しめの本書を手にとってみた。読んでみて、他の方が書かれている感想に合点がいった。そこには心の深いところに届く、そんな物語が綴られていた。

 本書は8編からなる短編集。舞台は中学校。作品ごとに違う学校だけれど、そこには、色々な理由でひとりぼっちな子どもがいる。学校では一言も発せない女の子、教室に自分の居場所がない男の子、転校してきて学校に馴染めない男の子...
 そして、8編通して登場する非常勤の国語教師、村内。彼は吃音者でカ行とタ行と濁音がなめらかに出てこない。だから授業はとても聞き取りにくい。彼を採用するなんて「非常勤講師はそんなに人手不足なのだろうか」とある生徒の感想にある。

 しかし、彼はひとりぼっちの子どものそばに寄り添う。寄り添われている本人でさえ気が付かないほど、そっと寄り添う。そうすることで、その子はひとりぼっちではなくなり、何かに気付き、何かを乗り越えることができる。そして、村内先生は言う「間に合って良かった。」
 あらすじを追うだけなら、同じような話は今までにも幾度も聞いただろう。しかし、本書がありきたりの話とは違うのは、ひとりぼっちの子どもたちを丁寧に描いていることだ。その子がなぜそうなったのか?子どもを取り巻く様々な出来事が、その子の心に傷を残す。

 正直、読んでいてつらく感じたこともあった。心身どちらかが疲れていたら読めないだろう。私が特につらかったのは、父親が交通事故を起こした女の子の話だ。事故で父親を亡くしたのではない。父親が事故の加害者として他人を死なせてしまったのだ。10年以上前の出来事が、彼女にそして家族の心に影を落とす。そう、事件の後にも人は生きていかねばならないのだ。

 村内先生が吃音者なのは、著者自身の経験と無縁ではないだろう。しかし、表紙に小さな字で書いてある My teacher cannot speak well. So when he speaks, he says something important. という英文がその意味を端的に表している。

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「青い鳥」 固定URL | 2.小説, 28.重松清

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28.重松清」カテゴリの記事

コメント

重松清の「青い鳥」
YO-SHIさんには、つらい作品でしたか?そうでしたか…。
にも拘わらず、きちんと、こんな風に書評を書かれるってすごですね。

この本、私は結構好きです。一編一編、ボロボロ泣きながら車の中で読みました。
吃音者の村内先生の存在がありがたかったことと、先生の発する言葉の一言一言が未来への明るさに思えました…。

投稿: 「ふーこ」です。 | 2008年5月31日 (土) 08時51分

「ふーこ」さん、コメントありがとうございます。

もちろん私も、1編1編を読み終わってとても感動しました。
でも私の場合、子どもがかわいそうな目にあうのが、とてもつらいんです。
その後に救いがあるのだろうと思っていても、かわいそうな目にあっている時点でもう、自分もつらくなってしまう。
最近のテレビドラマには、子どもがいじめにあうものがいくつかありましたが、見ることができませんでした。

投稿: YO-SHI | 2008年5月31日 (土) 16時26分

YO-SHIさん、はじめまして。

初めての重松作品だったのですね。
素敵な出会いになったようで、わたしまでうれしい気持ちです。
ほんとうに、ひとりぼっちの子どもたちが丁寧に描かれていて
ときに胸が痛くなり、ときにじんとあたたかな気持ちになり
今回もたっぷり泣かされました。

投稿: ふらっと | 2008年6月 2日 (月) 06時36分

ふらっとさん、コメントありがとうございます。

「本との出会い」というのは素敵な言葉ですね。
この本も、図書館で他の本を探していて、たまたま目についたものです。
まさに、「出会い」という言葉がふさわしい経験でした。

投稿: YO-SHI | 2008年6月 2日 (月) 13時01分

TB,コメントありがとうございました。
つらい内容の話のなかにあって、村内先生の生徒との接し方が、心に沁みました。
ひとりぼっちの子どもに寄り添うということの大切さを痛感しました。

投稿: | 2008年6月 2日 (月) 19時50分

この本は読んだことはありませんが
重松さんの話は好きで、いろいろ読んでいます。
この方の心の描写はすごいですよね。

レビューを読んでいて
YO-SHIさんは書き方が上手だなと感心しました。
私も、色々書いていくうちに上達したいです♪

投稿: えみ | 2008年6月 2日 (月) 20時45分

先日はTB、コメントありがとうございました。
重松さんの作品を初めて読まれたのですね。
この方の作品は本当に胸が苦しくなるくらい心に響いて
泣いてしまう作品が沢山あります。
辛い気持ちと温かい気持ち、切ない気持ちと優しい気持ち、
心の表現がとても素敵な作家さんだと思います。

投稿: ちびえみ。 | 2008年6月 2日 (月) 23時22分

花さん、コメントありがとうございます。

子どもに寄り添う、というのは先生だけではなくて
大人みんなにとって大事なことなんだと思います。

----
えみさん、コメントありがとうございます。

重松さんの本を最初に意識したのは、えみさんのブログ
ででした。いろいろな本を教えてくださってありがとう
ございます。

それから、書き方をほめてくださってありがとうございます。
上手だとは思わないですが、書くのにうんと時間がかかって
いるので、ほめてもらうとうれしいです。

----
ちびえみ。さん、コメントありがとうございます。

この本を読んでいて、本当につらくて、苦しくなってしまい
ました。それほど深い所に伝わる描写でした。
他にもたくさんあるとのことですから、もう何冊か読んで
みたいと思います。

投稿: YO-SHI | 2008年6月 3日 (火) 13時20分

こんにちは。
重松さんの本は絶対泣くとわかっているので、なかなか手が出ないのですが、この本は読んで本当によかったと思ってます。
確かに読んでいてつらくなる話もありましたが、「間に合ってよかった」という村内先生のひと言にジ~ンときました。
誰かがそばにいてくれるというのはすごく幸せなことだと改めて思います。

投稿: mint | 2008年6月27日 (金) 11時26分

mintさん、コメントありがとうございます。

重松さんの本は、私はこれ1冊しか読んだことはないのですが、他の本も良いんですね。
誰かがそばにいてくれる。家族がいたり、友達がいたり。普通にいる時には、そのありがたみに気が付かないものですけれどね。

投稿: YO-SHI | 2008年6月27日 (金) 23時48分

やっと手に入ったので、今読んでいます。なんだか今mで頑張ってきた自分に肩の力が落ちたような感じです。今半分ぐらいきました。出会う機会を通っていただき、ありがとうございました。読み終わりましたらわたしも掲載しますね。見てください

投稿: ピッピ | 2008年7月 4日 (金) 08時23分

ピッピさん、こんにちは。

「青い鳥」読んでいただいているんですね。うれしいです。
感想を楽しみに待ってますよ。

投稿: YO-SHI | 2008年7月 4日 (金) 09時15分

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受信: 2008年6月 2日 (月) 19時45分

» 『青い鳥』 重松清 [いつか どこかで]
今日読んだ本は、重松清さんの『青い鳥』です。 中学の臨時教師の村内先生と子供たちのふれあいを描いた物語です。 [続きを読む]

受信: 2008年6月27日 (金) 11時18分

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