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2008年4月

2008年4月27日 (日)

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

著  者:梅田望夫
出版社:ちくま新書
出版日:2006年2月10日第1刷 2006年3月10日第5刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2年余り前に1度読んだ。良い本に巡り合ったと思う。さすがにベストセラー。いや、ベストセラーは、特に新書のベストセラーは、あてにならない。比較的安いからなのか「売れている」という評判を聞いて買う人が、売上部数を雪だるま式に増やすらしい。読んでみたら、茶飲み話を口述筆記で本にしたようなのだったりするから。

 「Web2.0」という言葉が話題になっている。いや、なった(既に過去形)。コンピュータの世界では、常に何か旬な言葉というのがあり、実態より言葉が先行して独り歩きすることが多い。「Web2.0」という言葉も明確な定義を試みようとする人は多いが、もはや好き勝手に使われてしまっている。
 著者も、「Web2.0」の本質として定義めいたものを述べているところがあるが、その部分よりも、本書の中であげた様々な具体事例こそが、「Web2.0」を的確に指し示していると思う。

 次の10年の3大潮流として「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」の3つをあげている。特に「チープ革命」は、革命というだけあってインパクトが大きい。
 何かをするコストが限りなくゼロに近づく。「1円ずつでも、1億人からもらえたら1億円稼げる」という無邪気な発想がある。1円ならたいていの人は抵抗なくくれそうなもんだが、問題は1円をもらうために1円以上のコストや時間がかかるため、「無邪気な発想」だったのだ。しかし、コストがゼロになれば、意味のあるビジネスになるかもしれない。

 Googleについての分析は秀逸だ。「世界中の情報を整理し尽す」という構想が現実に近づくことで、世界が一気に変わる。Googleが只の検索エンジンだと思ったら大間違いなのだ。

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2008年4月23日 (水)

工学部・水柿助教授の日常

著  者:森博嗣
出版社:幻冬舎
出版日:2001年1月10日第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 「ゾラ・一撃・さようなら」という本の著者の作品。前回読んだ「ゾラ~」がそんなに良くなかったのだけれど、それはハードボイルド系で、著者としては珍しい系統だったらしい。それで、もう1冊読んでみようと思って手に取ったのが本書。
 ところが、これがさらに珍しい系統だったということが、読んでいてわかった。そして前回よりさらに良くなかった。ミステリ作家さんのミステリ以外の本をまた選んでしまったわけで、迂闊なことこの上ない。反省。

 内容は、某国立大学工学部助教授の水柿先生の、特に劇的なことが起きるわけでもない生活が綴られている。奥さんの須磨子さんがミステリ好きなので、日常のちょっとした不思議を話して、奥さんに感心してもらうのが、水柿先生の喜びだ。しかし、須磨子さんの要求レベルは高く、先生が話す不思議の多くは奥さん的には失格なのだ。
 チョコチョコと小噺になりそうなエピソードがちりばめられている。ホテルの部屋で盗まれた教授のカバンが、数日後ホテルから忘れ物として届けられた。ホテルが盗難事件をしらばっくれているわけではない。その真相は?とか、大学の庭にできたミステリーサークルの謎、とかだ。
 まぁ、そこの部分はちょっとは面白い。でも、所々に著者自身がツッコミを入れて茶化しているところがあって(後述の「小説なのに伏字なのは変ではないか?」のように)、おちゃらけたヨタ話を聞いているようだった。全体としても退屈だったし。

 雑誌に連載したものを単行本にしたということだ。小説なんだけれど、大学の先生である著者の体験を聞いているような雰囲気が漂う。大学の名前がNやMやOと伏字なのはまだしも、何人かの名前だけがSとかHとかになっているのは、著者も言っているが、小説なのに変だ。これは部分的には実話だ、ということなのだろう。
 だから、著者のファンには面白いのかもしれない。好きな作家の素顔が少し垣間見えて。ただ、私には合わなかったようだ。これも著者自身が入れているツッコミの通り、「なんと、こんなのが本に?」「誰が買うんだ?」というのが、私の感想をうまく言い当てている。

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2008年4月21日 (月)

まほろ駅前 多田便利軒

著  者:三浦しをん
出版社:文藝春秋
出版日:2006年3月25日第1刷 7月25日第4刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「風が強く吹いている」の著者の作品なので手に取った。不勉強のため、2006年上半期の直木賞受賞作であることは後から知った。
 本書はどういったジャンルに当てはまるのか、言葉の矛盾に目をつぶって言えば「ソフトなハードボイルド」か。主人公は、便利屋を営む青年、多田啓介。彼自身が好んでやっているわけではないが、ヤクの売人や娼婦、そのストーカーなどの危ない人間たちと絡み、刃傷沙汰や不可解な事件を乗り越えていく。
 友人が腹を刺されて瀕死の重傷を負ったり、ヤクザに凄まれたりと、ストーリーはハードボイルドの王道なのだが、何故かノリが軽い。そうか「ライトなハードボイルド」の方が、矛盾しないしうまく言い表しているかも。

 ライトな感じを漂わせているのは、腹を刺される友人の行天春彦の存在によるところが大きい。彼の突き抜けた奇人ぶりが、シリアスな場面から暗さを取り除いている。彼は、高校時代の多田の同級生なのだが、指を落とすという大けがをした時に「痛い」と言った以外に一言も発しなかったという(どういうわけか、今は普通に喋るのだけど)。
 この物語の中でも彼の言動は常軌を逸している。そうなんだけれども、滅茶苦茶なんだけれども、その言動が事件の解決につながっている。そこが本書の面白さなんだと思う。

 面白く読めるし、短いストーリーが伏線が絡んで有機的に結びついていてよくできている。登場人物もみんな愛嬌があって好感が持てる。難を言えば、全体に漂う軽さと読みやすさが災いしてか、満足感には欠けるかも。直木賞が、年に1,2冊その時の大衆文学の秀作を選ぶ賞だとするならば「本書がそれなのかな」と、ちょっと疑問だ。

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2008年4月16日 (水)

塩の街

著  者:有川浩
出版社:メディアワークス
出版日:2007年6月30日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「図書館戦争」シリーズの著者のデビュー作。第10回電撃小説大賞受賞作で、2004年に文庫本として出版されたものを、大幅に改変、加筆をして単行本として出版された。文庫として出たものを改めて単行本にしたことや、改変の経緯が著者によるあとがきに記されている。文庫の方は読んでいないから比較はできないが、著者が変更したと言っている設定などは、本書の設定の方がいいと思う。

 宇宙から飛来した高さ500mにもなる巨大な塩の結晶が、東京湾に落ちた時から、人間が塩になってしまうという奇病が世界を襲う。日本の被害者は半年で推定8千万人!道行く人はその場で塩となって動きを止めて、その姿のまま塩の柱となり、やがて崩れ去ってしまう。街は、塩で覆われ白い風景が続く。
 こんな設定の物語。こんな世界で人々はどう生きていくのか?いつか解決するのか、それとも人類は滅亡してしまうのか?

 夢も希望も持てない状況なのだけれど、実際に人々は自暴自棄になり世の中は混乱しているのだけれど、これは有川浩のデビュー作。図書館戦争シリーズで戦闘組織の中のアマアマな愛をエンタテイメントとして描いた著者だ。本書でも描かれているのは、超アマアマな恋人たちのストーリーだ。

 主人公は、高校生の真奈と20代後半の秋葉の2人。本編と単行本化で追加された4編の短編全体を通して、2人の関係が描かれている。しかし、早くも本編の第1章で登場する遼一という男性の物語が、本書のテーマを雄弁に語っていた。そのテーマは「世界が終わる瞬間まで、人々は恋をしていた。」だ。

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2008年4月13日 (日)

ラスト・イニング

著  者:あさのあつこ
出版社:角川書店
出版日:2007年2月14日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 同じ著者による小説「バッテリー」第6巻の新田東と横手ニ中の試合の前後談。特に第2章「白球の彼方」では、横手ニ中の名遊撃手、瑞垣の口によってあの試合の後、彼らが歩んできた道が明らかにされる。もちろん、第6巻の最後に巧が門脇に対して投げた白球がどうなったかも語られる。

 「バッテリー」の続編であることには違いないが、主人公は瑞垣だし、話の中心は瑞垣と門脇の関係に置かれている。それぞれ中学を卒業し、今は別々の高校に通う。どちらも進学先の高校は、周囲の期待や予想と違ったものだった。門脇はあるものを追い求めるため、瑞垣はあるものから逃れるため、15才の少年とは思えない決断の末の行動だった。

 正直に言って、この本を読もうと思ったのは、あの試合がどうなったのか知りたかったからだ。「バッテリー」はあそこで終わった話だし、充分に完結しているので、その後のことは、想像したい人は想像すればいい、という意見もあろう。私も、この本が出ていなかったらそう言うだろう。でも、知りたくて読んでしまった。「後日談など知らないほうが良かった」という結果を招く可能性を省みずに....。
 少し、意味ありげな言い方をしたが、結果的に言えば、読んでよかったと思っている。「バッテリー」読者にもおススメする。巧と門脇の対決の結果も、著者は実に練りこんだ答を用意していた。直接は語られないが、巧と豪のバッテリーの強靭さも垣間見られる。それにも増して、瑞垣と門脇の2人の少年のひたむきさを感じることができる。

 そう、本書を含めた「バッテリー」シリーズに流れる通底奏音は、少年たちのひたむきさ、なのかもしれない。本書で「ほんまもんの極めつきの生意気な人」と評される巧の頑なさも、混じりけのない「少年らしい素直さ」と見る見方にも、ある人に言われて気付かされました。瑞垣や門脇の行動からも同じような衝動があるように思います。
 主人公の巧たち1年生と比べて、3年生の瑞垣や門脇、海音寺らは大人びて描かれていたため、忘れてしまいそうになりますが、彼らとてたった2歳年上なだけでまだ10代半ば。迷いや悩みも多く、自分では処理しがたいこともあるはずなのに、彼らは自分の意思で乗り越えていく。感動。

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2008年4月 3日 (木)

バッテリー(1)~(6)

著  者:あさのあつこ
出版社:角川書店
出版日:(1)2003.12 (2)2004.6 (3)2004.12 (4)2005.12 (5)2006.6 (6)2007.4 初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 第1巻は11年前、最終巻の6巻は3年前に刊行されている。噂はかねがね聞いていた。児童書だと軽く見てはいけない、と。この度、小学生の娘が春休みに読むために6冊まとめて文庫本で買ってきたのを読んだ。
 主人公は、中学1年生の天才ピッチャー原田巧。中学生の天才ピッチャーというのがどういったものがイメージしにくいのだが、彼の球を受けた人、打席に入って対峙した人、近くで見た人までもが、「あいつは天才やで」と言うような球を投げる。
 彼が岡山の小さな街である新田市に、父親の仕事の都合で引っ越して来て、やはり才能のあるキャッチャーである永倉豪と出会い、バッテリーを組む。この二人を中心に、その家族、同級生、周辺の大人たち、他校の野球部員と、渦を大きくしながらストーリーが展開する。

 「渦」という言葉を使ったが、巧自身は、周辺への関心を全く持たないにも関わらず、周りの人々を巻き込んでしまう。巧の球を受けることができる唯一人のキャッチャーの豪、巧の球を打つことに魅入られてしまった全国レベルの強打者の門脇、その他にも多くの人たちの生活を、大げさに言えば人生を変えてしまう。巧が誰も投げられない球を投げる、というその1点だけのために。

 児童書だと軽く見てはいけない、と聞いていたが、全くその通りの読み応えのある本だった。うがった見方をすると、児童書というのは、大人から見て「子どもはこうあって欲しい」というメッセージを込めたものと言えるだろう。しかし、主人公の巧はそういった子ども像には収まらない。その意味では、本書は児童書たりえないのではないか?
 彼は、より早く力強い球を投げるという目的以外の、一切の規範や常識を拒む。監督に髪を切るように言われても、野球と関係ないとして無視する。先輩の言うことにも従わない。自分を支えてくれる豪の心情さえも汲むことができない。
 そんなだから、当然衝突を生む。彼のむき出しの自我が、周囲の人々とぶつかり、お互いを深く傷つける。

 「こうあって欲しい」ということで言えば、こんな巧が色々な経験を経て成長し、周囲に受け入れられていく、という成長物語が順当なところだろう。そういった話なら児童書として安心して読める。
 著者も、巧が周囲と妥協していく方が楽だと分かっていた。それでもそれを拒んだ。巧の物語をそんな風に描いてしまっては、巧を貶めることになると思って、彼を変えることを頑なに拒んだのだ。行間から、自分が生み出した主人公が辛い思いをすることへの葛藤が伝わってくる。

ココから先はネタバレありです。

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