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2008年3月

2008年3月21日 (金)

ドミノ

著  者:恩田陸
出版社:角川書店
出版日:2001年7月25日初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の作品は「夜のピクニック」に続いて2冊目。随分前の作品を今さらどうして、という感じもしたけれど、本書に何故かずっと惹かれていてこの度めでたく読むことができた、という次第。
 著者は、面白さのツボを心得ているというか、どうすれば読者を引き付けることができるか分かっているようだ。本書は、エンタテイメントに徹していて、大人も子どもも理屈抜きで楽しめる。

 表紙をめくって少し面食らう。27人と1匹?の登場人物からのイラスト付き一言が載っている。あまり登場人物が多いと読むのに苦労しそうだから。でも、そんな心配は無用だった。27人のほとんどが、キャラクターの立ったクセのある人々だから、「あれ、これ誰だっけ?」ということにならない。
 こんなに、登場人物が多いのには訳がある。始まりは全く別々のいくつものストーリが同時進行しているからだ。それぞれのストーリーに登場人物が数人いるので、結果的に大人数になっている。そして、このバラバラのストーリーが、ある出来事が別の出来事を引き起こしながら、徐々に1つの場所になだれ込むように集約していく。タイトルとおり「ドミノ」倒し的展開だ。
 事の発端は、52歳の千葉県の主婦、宮本洋子。彼女が不用意にポーチに置いたビニール傘が、風に煽られて飛んで行ったことが、遠く離れた東京駅での大事件につながる。もちろん、そんなことは当人は一生わからないままだ。冒頭の27人にさえ入っていないし。

 数多くのクセのある登場人物の中で、私は(小学生の娘も)、エリコ姉さんが一番のお気に入りだ。こんな人が職場にいたらドキドキしてしまうだろう。次に愛すべきは額賀部長だ。この人には、笑いのツボを刺激された。これからも頑張って欲しい。

そうそう、リアリティは少し脇に置いているので、細かいことを気にすると楽しめない。読む方はリラックスして読もう。

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2008年3月20日 (木)

ゾラ・一撃・さようなら

著  者:森博嗣
出版社:集英社
出版日:2007年8月31日第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 図書館の本棚で気になっていた作家さん。何度か手に取って見たことはあるものの、その時々に他に読みたい本があったりして、初めて読んだのが本書。「よく出ている本」のコーナーにあった。この記事を書くに当たって書誌データを検索して、幅広く多作な作家であることが分かった。本書のようなハードボイルド系は、珍しいらしい。

 ストーリーは、探偵である主人公の頚城(くびき)悦男が、志木真知子という美しい女性から依頼を受けるところから始まる。「天使の演習」という美術品を、ある男から取り返して欲しいということだ。ある男とは元都知事で、彼は「ゾラ」という暗殺者に命を狙われているという。
 主人公の頚城の視点から書かれた事件の推移の中に、ほんの少しだけ真知子を一人称にしたページが挟まっている。それが互いの微妙な心理のズレを表現していて効果的だとも言えるし、完全にネタバレで推理の面白さを削いでしまっているとも言える。私はどちらかと言えば後者の感じ方が強かった。
 270ページと、多くはないページ数で、4章の起承転結を付けているわけでムリもないのだが、話の進展がストレートすぎる。主人公の仕事は1度も破綻することなく進んで、調子良すぎるし、登場する若い女性が揃って彼に好意を寄せるのはどうも不自然な気がする。

 読みやすさという点では申し分ないので、軽い読み物が欲しい時にはいいだろう。最初にも書いたが、著者は多作であり、本書は系統的には珍しい部類にあたる。他も作品ももう少し読んでみようかと思う。

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2008年3月15日 (土)

ゴールデンスランバー

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2007年11月30日発行
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 帯に「伊坂的娯楽小説突抜頂点」とある。宣伝文句に珍しくウソはなく、最新刊の本書は伊坂作品の(現時点での)頂点を極めたと思う。そのくらい他を圧倒して面白い。もちろん他の作品が面白くないわけではない。しかし、スピード感、良い意味で読者の予想を裏切るストーリー展開、巧妙な伏線と、著者渾身の作品を受け取った感じがする。

 ストーリーは、首相の暗殺事件に始まる。仙台でのパレードの最中に、ラジコンのヘリコプターを使った爆発で現職の首相が暗殺されてしまう。主人公は、その犯人に仕立て上げられてしまった男、青柳雅春。彼を取り巻く人々に、陰に日向に支援を受けて、警察の追及から逃げる、逃げる、逃げる。逃亡の記録がスリリングに、時にユーモアを交えてつづられる。
 五部からなる本作の、第四部が本編とも言えるこの逃亡記だが、第三部までに事件のあらましが紹介されてしまっているので、読者はある程度何か起こるかを知っていて読むことになる。正直言って、第四部読み始めのころは、こういった構成を恨んだ。何が起こるか分かっていて、それを確認するのでは何が面白いのかと。
 しかし、第四部を読み進めていてふと気が付いた。「もう夜中の2時だ。明日も会社に行かなければならないのに。」そのくらい引き込まれていたわけで、自分でも意外だった。

 構成の話で言えば、第三部はノンフィクションライターによる事件から20年後の調査書で、事件の後日談が紹介されている。面白い構成だとは思うが、伊坂作品の中には、時制が前後する作品が時々あるので、特に気にしていなかった。
 しかし、読了後にキアさんのブログ「活字中毒日記」の紹介を読んで、「もう一度第三部を読み返すと...」とあったので、私も読み返してみた。そうしたら、また別の発見があった。(これに気付いてすごく満足した。)著者は、この順番であれば読者が気が付かないかも、と知っていてこういう構成にしたのだろう。一本取られた。そして、キアさんに感謝。
 青柳雅春のその後の人生がどうなったか、読み終わってそれがわからない方は、もう1度、第三部を読むことをおススメする。

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2008年3月 9日 (日)

バビロンまでは何マイル(上)(下)

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:原島文世
出版社:東京創元社
出版日:2006年3月30日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズおなじみの、パラレルワールド、多元宇宙ものだ。マジド(魔法管理官)とよばれる魔法使いが、世界の均衡を保つために、宇宙の境界を越えて活動している。この辺りは、クレストマンシーシリーズの設定に近い。
 主人公はこのマジドの一人(そう、マジドは何人もいる。本書には5人登場する)であるルパード。彼はマジドとしてひとり立ちしてからまだ2年と月日が浅いのだが、新人マジドの候補選びと、崩壊寸前の大帝国の後継者を捜すという、骨の折れる使命を同時に抱えることになり、職務遂行のため走り回る、というのが本書のストーリー紹介。

 この多元宇宙は、魔法に肯定的な「正域」と否定的な「負域」に分類され、地球は「負域」側にある。ルパードは地球出身ながら、魔法の能力があり、地球では絶大な力を持つ。しかし、正域の宇宙では魔法は一般的だから、魔法の能力を持つ者は多い。彼らが負域の地球に、大帝国の後継者争いに絡んで乗り込んでくることで、大混乱に陥る。
 上下巻で合計650ページの長編なのだけれど、スピード感のある展開の速さで飽きない。ただ、最後の最後に、準主役の男の子の語りが40ページも続く。重要な部分なのだけど、少しくたびれた。

 本書の原題は「Deep Secret」つまり極秘事項、邦題は、ストーリー中重要な役割を持つマザーグースの歌から取っている。このマザーグースの歌のこと以外にも、本書には様々な暗喩がちりばめられているらしく、訳者あとがきで紹介されている。訳者自身は「蛇足と知りつつ」と言っているが、読後に読むことをおススメする。

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「バビロンまでは何マイル(上)(下)」 固定URL | 1.ファンタジー, 14.ダイアナ・ウィン・ジョーンズ | コメント (1) | トラックバック (0)

2008年3月 1日 (土)

夢をかなえるゾウ

著  者:水野敬也
出版社:飛鳥新社
出版日:2007年8月29日第1刷 2008年2月3日第12刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社のWEBサイトによると、現時点で60万部突破とのことで、堂々たるベストセラー書籍だ。近所の書店チェーンでも永らくランキング上位を維持している。半年ほど前に朝日新聞の書評で見てから気にはなっていた。個人的には過去の経験から、バカ売れしている本はハズレが多い、と思ってしまっているので売れれば売れるほど手が出ない、という状態だった。
 そんな時、たくさんの本を紹介されている、えみさんのブログ「Diary」でこの本が紹介されていて、読んでみる気になりました。普段から本を読んでいる人の意見は、素直に聞いてみようと思うので。

 そして、........これは面白かった。「興味深い(interesting)」ではなく、「楽しい(amusing)」もっと言えば「バカバカしい(funny)」という意味で。それは、ガネーシャというゾウの頭を持ったインドの神様が話す関西弁に負うところが大きいのだが、吉本の漫才のノリだ、それも最近の若手のではなく、往年のしゃべくり漫才の。
 かく言う私は関西の出身、漫才と新喜劇を見て育ったようなものなので、漫才のような本書の言葉のキャッチボールが小気味よかった。著者は名古屋近郊の出身とのことだが、この流れるような関西弁と雰囲気をどこで習得したのだろうか?

 ところで、本書はいわゆる自己啓発本で、主人公の「僕」のように「変わりたい」「成功したい」と思っている人が、「これを読めば、夢が実現できるかもしれない」と思って読むものだ。私自身もこれを読む時に、そんな期待があったことを否定しない。
 そういう意味での効能を求めるとしたら、本書はどうだろう?恐らく、あまた出ている自己啓発本と変わりないのだろう。今までの本でダメだった人の大部分はこれでもダメ。本書の中で、ガネーシャも「ワシが教えてきたこと、実は、自分の本棚に入ってる本に書いてある...」と言っている。
 いや、もしかしたら今までの本以上に、効能は薄いかも。なぜなら、この本は面白すぎる。ガネーシャが1日に1つずつ出す課題を実行していく、そうすれば成長するし変われる、というのが本書の目指すところだ。例えば、1日目は「靴を磨く」、2日目は「募金する」という具合に。ところが、この本は面白すぎて、多くの人が1日か2日で読了してしまうだろう。読み終わった後、相当の精神力を持って、もう一度最初から教えを1つずつ実行することが求められる。
 著者も、24個の課題を出した後、「もしかしたら、ここまで一気に読んでしまいましたか?」と、聞いてくる。すっかりお見通しだ。

 しかし、全部の課題がそうではないが、胸にストンと落ちるアドバイスは多い。上に書いたように、劇的な成功を望むのは期待しすぎだとしても、面白くてタメになる本を望まれる方は是非一読を。ベストセラーにも読んで良かったと思う本はあるのです。

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