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2008年2月

2008年2月29日 (金)

フィッシュストーリー

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2007年1月30日発行
評  価:☆☆☆(説明)

 表題の「フィッシュストーリー」の他、「動物園のエンジン」「サクリファイス」「ポテチ」の4篇を収めた短篇集。
 伊坂幸太郎の作品を読むのは本書で4冊目。毎回、よく練られた展開と小気味いいトリックで楽しませてくれる。本書の4篇もそれぞれに仕掛けがあり、ウマい!という感じ。

 ストーリーを一番楽しむことができたのは「フィッシュストーリー」だ。フィッシュストーリーとは、ホラ話、大げさな話のこと。釣った魚のことは大体実際より大きめに言うことが、言葉の由来らしい。
 「僕の孤独が魚だったとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに鯨でさえ逃げ出すに違いない。」という一節から始まる小説を通じて、40数年の時を越えた4つの物語がつながる。それも、一連の物語の発端となる、ミュージシャンのレコーディングの時に、マネージャが言うヨタ話に、大まかに沿った形で続く3つの物語が起きる。
 それぞれの物語も、ありそうでなさそうな限りなくホラ話に近い話。それらが細~い糸で、しかししっかりと結び合わさっている。いやいや大したものだ。

 もう一つ良かったのは「ポテチ」。重力ピエロにも登場する、黒澤という本業は泥棒で、副業が探偵というハードボイルドなおじさんが良い味を出している。ちょっとした人情話なんだけど、登場人物の振る舞いが可笑しくて笑えた。

 他の2篇は、少し期待ハズレだった。もちろんストーリーに仕掛けはあるのだけれど、今一歩平板な印象がしてしまった。短篇になり切らない習作といった感じか。
 特に「動物園のエンジン」は、ある人物が動物園の敷地から足を離したとたんに、辺りが暗くなり音のボリュームも下がる、という独特な設定で一旦はその世界に引き込まれた。それなのに、この設定はその後のストーリーに一切絡まない。残念だった。

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2008年2月26日 (火)

崖の国物語8 真冬の騎士

著  者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2007年11月第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 崖の国という舞台の、様々な時代の物語をつづるシリーズの8作目。第4巻「ゴウママネキの呪い」の直後の物語。主人公はクウィント。1~3巻の主人公であるトウィッグの父であり、通り名を「雲のオオカミ」という空賊だが、これはその青年時代、トウィッグの母であるマリスと結婚(するのかどうかは定かではないが)する前の話。

 シリーズを時代順に追うと、外伝-4巻-8巻・・1巻-2-巻-3巻・・5巻-6巻-7巻となる。途中の・・は、年代が開いていることを表す。著者の意図があるのかどうかはっきりしないが、このクウィントの物語だけが、連続しないで飛び飛びに刊行されていることがわかる。そして、残されたピースがあと僅かであることもわかる。崖の国の年代記の完成にあと少しだ。(本シリーズの原題は「The Edge Chronicles」。Chronicleは年代記だ。)

 ストーリーは、空賊の息子であるクウィントの飛空騎士団での生活を中心に展開する。騎士団と言っても、飛空騎士を養成する学校のようなもの。難しい授業あり、厳しいが生徒思いの先生あり、いけ好かないヤツもいる、という感じで、ハリーポッターのホグワーツでの暮らしのよう。いけ好かないヴィルニクスというのが、愛嬌のかけらもないヤツで、様々な事件を引き起こすのだが、ホント救いようがないヤツだ。

 シリーズの他の巻と同じく、本書も500ページを越える大書なのだが、これまた他の巻と同じく、苦痛を感じることなく最後まで読み通せる。ストーリー展開のウマさはこれまで通りだ。
 しかし、前巻の「自由の森の戦い」には、その面白さやスケールの大きさ、終わった後の爽快感などなどでかなわない、と私は思う。飛空騎士団の中、というのでは舞台が少し小さすぎたか。だた、。「自由の~」は、ルークという若者を主人公とした3部作の最終巻、クウィントの物語も他の主人公と同じ3部作だとすると、本巻は上中下で言うとまだ中巻だ。次回作に期待がかかる。

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2008年2月20日 (水)

イノベーションの達人! 発想する会社をつくる10の人材

著  者:トム・ケリー ジョナサン・リットマン 訳:鈴木主税
出版社:早川書房
出版日:2006年6月30日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書はIDEOという、世界的に有名なデザイン会社のゼネラル・マネジャーである著者が、IDEOの企業姿勢のキモである「イノベーション」について記した本。日本では2002年に出版された「発想する会社」の続編。
 「世界的に有名」と言っても、もちろん誰でも知っているという意味ではない。でも、アップルの1つボタンのマウスをデザインしたと言えば?マイクロソフトのマウスもIDEOの仕事だと言えば?IT関係の製品デザインの実績は特に豊富だから、皆さんも気付かないだけでIDEOの成果を手にしたことがあるハズ。
 そして、今やこういった製品のデザインだけでなく、ビジネスのプランニングまでを手掛けるようになって、AT&T、Bank of America、ナイキ、ルフトハンザ、プラダ...と超有名企業をクライアントに持っている。日本企業のクライアントも、NEC、松下、TDK、セガ、ヤマハ...という具合だ。

 本書の内容は、イノベーションを継続的に企業に根付かせるためのヒューマンファクターに注目して、これに必要な人材を10個のキャラクターで紹介している。
 例えば、顧客の行動などを(詳細に正確に)観察できる人を「人類学者(Anthropologist)」、障害を乗り越えられる人を「ハードル選手(Hurder)」、最高の環境を整える人を「舞台装置家(Set Designer)」、という具合に、読者にイメージしやすいようにネーミングして、それを豊富な事例で肉付けしている。
 もちろん、事例の多くはIDEOの実績から取り上げられているので、なんだか自慢話を聞かされているような感覚はある。でも、自慢話は役に立たない、と決まっているわけではない。ビジネスに携わる人、「何かを変えなくちゃいけない」と思っている人にとっては、示唆に富む話をいくつも発見できるだろう。読む価値は大いにある。

 例えば、「人類学者」の項でこんなのがある。「病院で患者が快適に過ごせるようにする」というテーマでアイデアを得るには?医者や看護師に話を聞く。患者に入念に作ったアンケートを行う。どちらも妥当だけれどIDEOの社員は違う方法を採った。患者と病院の了解を得て、48時間病室に張り込んでビデオを撮影したのだ。
 つまりは、現場の観察が何より重要だということだ。もちろん観察から何かを導き出せるがどうかは、自分の感性にかかっている。しかし、アンケート調査が少しばかりの改善には役に立っても、革新的なアイデアにはつながらないのではないか、とは誰しもウスウス感じている。
 自動車王 ヘンリー・フォードの格言が紹介されている。「もし私が顧客に彼らが望むものを聞いていたら、彼らはもっと早い馬が欲しいと答えていただろう」 

 ちなみに、あと7つのキャラクターは、「実験者(Experimenter)」「花粉の運び手(Cross-Pollinator)」「コラボレーター(Collaborator)」「監督(Director)」「経験デザイナー(Experience Architect)」「介護人(Caregiver)」「語り部(Storyteller)」
 私にとって、多くの気付きがあったのは、「人類学者」「実験者」「花粉の運び手」「語り部」の4つの章だ。

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2008年2月19日 (火)

「日刊ココログ・ガイド」で紹介されました

大変ありがたいことに、この「本読みな暮らし」が、日刊ココログ・ガイドで紹介されました。

ココログのスタッフの方の目に留まったブログを、1日1つずつコメント付きで紹介しているコーナーで、レトロな雰囲気のテレビ画面型のサムネイルがいい味を出しています。「本読みな暮らし」の紹介コピーは「読みたい本は全て読みたい」。自分でも気が付いていませんでしたが、私は正にそんな気持ちです。どこかで使わせてもらいます。

これでアクセス倍増!という感じでは今のところないのですが、誰かに認められるのはいいものですね。ココログスタッフの方、ありがとう。

 
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2008年2月15日 (金)

インストール

著  者:綿矢りさ
出版社:河出書房新社
出版日:2001年11月20日初版 2001年8月22日4刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「蹴りたい背中」で、2004年の芥川賞を受賞した著者の処女作。最年少の17歳で文藝賞を受賞、なんと当時は高校生だったんだ。

 主人公は高校3年生の女の子。「蹴りたい背中」の主人公と同じく(こちらの作品の方が先だけど)、少し変わっている。クラスにはうまく馴染んでいないようだ。
 男友達の「疲れてるんなら、休みたいだけ休んだら?」という言葉をきっかけに、学校に行かなくなってしまう。そして思いつきで部屋のものすべてを捨ててしまう、文字通りの意味で。そう、家具まで全部。やっぱりどこかおかしい、異常だ。

 異常なこの女子高生が、やはり少し変わっている小学生と出会い、アダルトチャットのバイトを始める。お互いの親に隠れて、押し入れの中で。
 「そんなことあるかよ」と、リアリティが飛んでしまうギリギリの設定が、良くも悪くも最後まで続く。もしかしたら、本書が業界で評価されている理由は、そんなところにあるのかもしれない。今の高校生や小学生ならこんなこともあるのかもしれない、と。

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2008年2月12日 (火)

新釈 走れメロス 他四篇

著  者:森見登美彦
出版社:祥伝社
出版日:2007年3月20日初版第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 諸説雑誌に掲載した短篇5篇の短篇集。表題の「走れメロス」の他、「山月記」「藪の中」「桜の森の満開の下」「百物語」と、太宰治、中島敦、芥川龍之介、坂口安吾、森鴎外と、日本文学の文豪たちの作品名が並ぶ。
 表題に「新釈」とあるので、基の作品に新しい解釈を加えて描き直したものかと思った。実際はそうではなくて、基の作品のテーマや表現手法などに着想を得て、著者が書き下ろしたもの。文豪の作品のリメイクを期待する人にはハズレ、森見作品を楽しむ人にはひとまずアタリ、ということだ。なぜなら、舞台は京都の街、登場人物たちは腐れ大学生たちと、森見ワールドお馴染みの設定だからだ。

 雑誌への掲載時期を見ると、2005年10月号から2007年3月号と、「夜は短し歩けよ乙女」の出版前後から、「有頂天家族」の出版前まで。「走れメロス」と「百物語」には「夜は~」のエピソードが登場するし、「山月記」には「有頂天~」に通じるものがある。このように3冊の作品のつながりを楽しむ読み方も、悪くないのではないか。

 「森見作品を楽しむ人にはひとまずアタリ」と、「ひとまず」をわざわざ付けたのには理由がある。森見ワールドっぽさ(こんな言い方で分かってもらえるだろうか)で言うと、5篇の作品に落差があるからだ。「夜は~」「有頂天~」の雰囲気を一番強く残しているのは「走れメロス」だ。
 「山月記」と「藪の中」は森見ワールドの範疇に入るが、「桜の森の~」はかなり違った趣だ。坂口安吾がベースなだけに、悲しいような怖いような雰囲気が漂う。「百物語」は、私には面白みが分からなかった。

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2008年2月11日 (月)

レビュー記事の一覧を作りました

 ブログ読者の方から、「どんな本のレビューが載っているのか全部知りたい。」という要望をいただきました。ありがとうございます。それに応えるべく、このブログが使っているココログの機能を探しましたが、記事一覧の機能は見当たりませんでした。
 そこで、手作業でレビュー記事一覧表を作りました。下のリンクか右下の「レビュー記事一覧」からご覧ください。

レビュー記事一覧へのリンク

 
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2008年2月 9日 (土)

HARRY POTTER AND THE DEATHLY HALLOWS(ハリー・ポッターと死の秘宝)

著  者:J・K・Rowling
出版社:ARTHUR A LEVINE BOOKS
出版日:2007年7月 First edition
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ハリーポッターシリーズもいよいよ完結。当初から7巻までと言われていたからか、意外にも特別な感慨もわかない。しかし、終わるからにはキッチリと終わって欲しいものだと思っていた。そういう期待には応えてくれたと思う。
 ヴォルデモート卿との対決もあったし、前巻の終わりに残された数々のナゾも、それぞれに解明されている。ハリー、ロン、ハーマイオニー、その他の登場人物たちの関係も丁寧に描かれている。本巻だけを見ても、起伏のあるストーリーはさすが全世界でのベストセラー作家だと思う。
 前巻の発売後しばらく後に、著者の発言を基に憶測も含めて、「○○が死ぬらしい」という情報が飛び交ったが、それも今となってはどうでも良かったと思えてきた。何よりも、6巻まで読んだ読者にしてみれば、本巻を読まないわけにはいかないだろう。読んで損はない、おススメだ。

ココから先はネタバレありです。

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2008年2月 8日 (金)

呪われた首環の物語

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:野口絵美
出版社:徳間書店
出版日:2004年7月31日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 このタイトルはいただけない。おどろおどろしいホラー小説かと思って、子どもたちが手に取れないのではないでしょうか。中身は少年少女向けの平易なストーリー。思春期の悩み、他者への理解、家族についてと、どちらかと言えばさわやか系の物語だ。
 原題がそうならば、著者の意図が反映されているとして仕方ないが、原題は「Power of three(3つの力)」だ。シンプルすぎてインパクトに欠けるかもしれないが、こんなにかけ離れた題にして、印象を変えてしまっていいのか?

 「3つの力」とは、物語の中に登場する「古き力、今の力、新しき力」「太陽、月、大地」のように3分割された考えを表している。また、この世界には「人間」と「巨人」、水の中に住む「ドリグ」の3つの種族が住む。この3つの種族の力、という意味もあるはずだ。だから、「Power of three」というタイトルには意味があるのだ。

 「人間」は、正しい言葉を使えば、戸を封印したりできる。それは魔法ではなくて、正しいやり方を覚えれば誰でもできるのだと言う。言葉やものの名前というのは何かしらの力を持っているという考えだ。ゲド戦記やジブリのナウシカなど、そういう考えを基にした物語は多い。

 「人間」「巨人」「ドリグ」という3種族にはちょっとした仕掛けが隠されている。題にひるまず、軽めのファンタジーとしておススメ。

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2008年2月 6日 (水)

心でっかちな日本人

著  者:山岸俊男
出版社:日本経済新聞社
出版日:2002年2月25日1版1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「心でっかち」という言葉は著者の造語。「頭でっかち」が、知識(頭)ばかりで実際の経験や行動とのバランスがとれていないことを言うように、「心でっかち」は、「心」に重きを置きすぎるものの考え方を言う。

 例えば、学校でのいじめの問題について。「いじめが起きるのは、行き過ぎた個人主義で、子どもたちから他人を思いやる「心」が失われているからだ」という言説。だから「心」の教育が大事、と続いていく。一見して受け入れられやすい話だ。だからこそ危険でもある。
 実際に子供たちに接していれば違和感を感じるはずだ。そうでなくても少しの想像力を働かせれば気が付くのではないかと思う。いじめが起きているクラスの1人1人の子どもを見れば、友達を死に追いやるような子どもが何人もいるはずはない。
 もちろん、全くいないとは言わない。でも、子どもたちに他人を思いやる「心」がない、と言うのは間違いか少なくとも過大な表現であることが分かる。大多数の子どもに「心」の欠如の問題がない以上、この問題を、「心」の教育という漠としたもので解決しようとするのはムリなんじゃないかと思う。
 しかし、先の言説があまりにスムーズに受け入れやすいために、それで良しとして、それ以上の考えも対策もなされない。だから危険なのだ。いじめだけでなく、犯罪や格差の問題など、社会の不都合なことをすべて「心」の問題にしてしまう傾向が感じられるが、それは危険なのだ。

 いじめについての著者の見解はこうだ。クラスの1人が誰か1人をいじめたとする。その時の他の子どもたちの反応が問題を左右する。ほんの少しのバランスが崩れることで、一気に凄惨ないじめに発展することも、解決することもある。
 たとえ自分1人でもそのいじめに立ち向かう子、誰かが一緒なら立ち向かう子、何人以上かが一緒なら立ち向かう子、他の全員が立ち向かうなら従う子、いろいろな子どもがクラスには混在している。逆の言い方もできる。自分もいじめに加わってしまう子、何人かがいじめ始めればそれに加担してしまう子、というように。
 さて、ここで思考実験。自分1人でも立ち向かう子が1人、誰かが一緒なら立ち向かう子が1人、他に3人いれば立ち向かう子が5人.....とすると、このクラスでは2人しか立ち向かうことにならない。しかし、もし「誰かが一緒なら立ち向かう子」がもう1人だけいれば?そう、「他に3人いれば...」の5人も加わって8人、「8人味方がいれば...」という子が何人かいれば、さらにその数は増える。初期のたった1人の行動の違いで結果は大きく左右される。

 このように考えると、いじめは子どもたちの「心」の問題というよりは、社会心理学的現象と捉えられる。そうすれば、解決の糸口も見える。
 学校では、子どもたちのそれぞれが、少しでも仲間が少なくても(3人いれば..と思っていた子は誰か1人でも一緒なら、誰かと一緒ならと思っていた子は自分1人でも、といううように)立ち向かうようにすればいいのだ。
 子どもたちは先生を見ているから、初期の先生のリーダーシップで少なからず反応が変わるはず。いじめに立ち向かおうとする子どもの後ろ盾に、先生がほんの少しでもなれば、事態は変わるかもしれない。これが解決の糸口だと思う。

(補足)
 私は、子どもたちの心に問題がないとは言いません。だから、他人を思いやる心を育ませる、という教育に異議はありません。念のため付け加えさせていただきます。しかし、制度やカリキュラムをいじることで、これができるとは思いません。

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2008年2月 3日 (日)

ハイコンセプト 「新しいこと」を考え出す人の時代

著  者:ダニエル・ピンク 訳:大前研一
出版社:三笠書房
出版日:2006年5月20日第1刷 5月30日第3刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 訳者の大前研一氏によれば、これからの日本人は「右脳を生かした全体的な思考能力」と「新しいものを発想していく能力」が必要になるという。そして、本書にはそういった能力の重要性とその磨き方が書かれている。

 著者の(訳者も)時代認識では、現在の「情報化の時代」から、これからは「コンセプトの時代」になるとしている。アルビン・トフラーが「第三の波」で、産業社会から情報化社会への移行を指摘したが、今度はその情報化社会も終わりを告げ、次の時代へ移るということだ。
 その「コンセプトの時代」では、6つの感性が求められる。1.機能だけでなく「デザイン」 2.議論よりは「物語」 3.個別よりも「全体の調和」 4.論理ではなく「共感」 5.まじめだけでなく「遊び」 6.モノより「生きがい」だ。
 ここまでなら、よくあるお手軽自己啓発本のようだ。「デキるビジネスマンはここが違う」みたいな本だ。しかし、本書は少し奥が深い。

 何より現状分析が的確だ。上の6つの感性も現状分析の上に成り立っていて、思い付きではない。著者の現状分析では、情報化時代にもてはやされた、金融業やITのエンジニアや、弁護士、会計士などの「ナレッジワーカー」の職が危うくなっているという。
 原因の1つは、インドとIT技術だ。米国の大手金融業では、企業会計や財務分析をインド人MBA取得者に委託しているという。米国内で行うのと同じ品質の仕事が、何分の1かのコストでできるからだ。判例検索をする弁護士業務、ソフトウェア開発も同じ理由で、インドに流出している。米国内で高給を謳歌していたエリートたちは、ずっと安い賃金で同じ仕事を提供する人々と競争しなくてはならなくなった。
 IT技術も脅威だ。データベースの充実で、医療情報など、従来は一部の有資格者が独占していた知識が、限りなく無料に近いコストで誰でも手に入れることができる。また、会計や医師の診療行為さえ、初歩的な部分に限られるとは言え、数万円のパソコンソフトでできてしまう。

 だからこそ、ネットワークでつながった遠いインドではできないこと、コンピュータソフトではできないこと、がこれからは重要になってくる。それが「デザイン」他の感性を必要とする仕事だ、というわけである。本書には、それぞれの感性を磨くには、どこのサイトに行って何を手に入れて、と詳しく書いてあるので、興味を持った人は一読の上実践することをおススメする。

 しかし、著者も訳者も触れていない点で、気になることがある。それは、著者が指摘するような能力を持つ人は、「そんなに沢山いなくても良い」ことだ。
 商品のデザインはともかく、ビジネスのグランドデザインなどを行うのは、一握りの人々だと思う。本書の読者のひとりひとりが、こういった能力を磨いたり仕事を目指したりするのは良いことだが、社会全体で見ると、多くの人が職を失うか抑制された賃金で働くしかなくなるのではないか。
 世界の工場といわれる中国に生産ラインを移してしまったことで、多くの工場従業員の職が奪われたのと同じことが、今度は、高学歴で高い技能を持ったナレッジワーカーにも起きるということだ。社会や技術の進歩は確かに、極端な貧困などからは人々を救ったが、その行き先は幸せにつながっているのだろうか?

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2008年2月 2日 (土)

ななつのこ

著  者:加納朋子
出版社:東京創元社
出版日:1992年9月25日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「ささらさや」の著者の作家としてのデビュー作品。第3回鮎川哲也賞受賞作。鮎川哲也賞というのは、長編推理小説に贈られる賞。本書がいわゆる推理小説かというと、そうではないと思う。巻末に選考委員の選評が載っていて、著者の力量は認めながらも、これを長編推理小説として良いものかどうか?、と悩んだ跡を見て取ることができる。悩んだ上で賞を贈っているのだから、本書が問題を抱えいてもなお捨てがたい優れた作品であった、ということなのだろう。

 殺人事件も起きなければスパイも登場しない。ここで起きる事件は、デパートの屋上のビニールの恐竜が、一夜にして遠くはなれた保育園に現れた、とか、夜に畑からスイカを盗まれた、とかいうことだ。著者が扉のページで書いている言葉を借りれば、「日常に溢れている謎解き」がふんだんに盛り込まれている。
 筋立ては、複雑かつ巧みだ。「ななつのこ」という架空の小説の中で、「あやめ」さんという名の女性が、その小説の主人公である「はやて」が体験する様々な不思議の謎解きをしてみせる。そして、本書の主人公である「駒子」と「ななつのこ」の作者である「綾乃」の往復書簡の中では、駒子が体験する事件の謎解きを綾乃がしてみせる。さらに....、と2重3重の入れ子構造になっている。

 これだけの入り組んだストーリーを、混乱することもなく一気に読ませる筆運びが、著者の力量の表れだ。迷いながらも本作を選定した選考委員の気持ちも分かる気がする。そして感謝する。これは長編推理小説ではない、として選考されなければ本書を手にすることはなかっただろう。もしかしたら、後に続く著者の作品群を読む機会もなかったかもしれないのだから。

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