« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »

2008年1月

2008年1月28日 (月)

人類が知っていることすべての短い歴史

著  者:ビル・ブライソン 訳:楡井浩一
出版社:日本放送出版協会
出版日:2006年3月25日第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は、ユーモアのある旅行記を書く作家として有名だそうだ。物書きとしては一流であることの証だが、科学については門外漢。その著者が、3年の月日をかけて科学界の重鎮を含む多数の専門家を取材して、人類がこれまでに解明してきた科学の成果を語る。
 テーマは、宇宙のあり方から、45億年あまりの地球の歴史の様々な分野にわたる。相対性理論や量子力学などの物理学はもちろん、生命の誕生や進化論、小惑星の激突やプレートテクトニクス、恐竜の絶滅と人類の起源、その他の科学の様々な発見と、ほぼ文字通りの「すべて」の歴史だ。(原題は「A Short History of Nearly Everything」,ほとんどすべて と少し控え目だ。)

 これだけの内容の豊富さだから当然と言えば当然だが、600ページを超える大書だ。読み通すにはそれなりの時間と根気が必要だ。著者がいかに平易に書く努力をしてくれたとしても、テーマがテーマだけに難しい内容であることに違いないから、なおさら根気が必要になる。

 しかし、それでも本書は思いの外読める。(私も何度か睡魔に襲われながらも結局読み通した。)それは、本書が科学的事実の解説ではなく、その解明に至る経緯と、それに関わる人に焦点を当てているからだ。
 紹介される研究者の多くは、その変った言動と共に紹介される。塩素、フッ素、マンガンなどを発見したある科学者は、研究材料を何であれ舐めずにはいられない性格だった。ある極限状態の研究者は、酸素濃度が人体に与える影響を調べるために、自分はおろか家族や周辺の人々を次々に減圧室に放り込んだ。実験中に痙攣を起こした妻は、発作が治まった後、夕食の支度のために家に帰された。という話が盛りだくさんに紹介されている。

 また、科学というのは新しい発見がなかなか認められないらしい。その発見が既成の学説を否定するとなればなおさらだ。プレートテクトニクスは今でこそ主流の学説だが、広く認められるようになったのは、1960年代の後半だ。
 それまでは、大陸が移動している証拠として、遠く離れた大陸に生息する同種の動植物が次々と発見されると、科学者たちは大陸のどこにでも陸橋を懸けてこれを説明しようとしたと言う。アインシュタインも反対の立場を表明して、その誤りに気付かないまま亡くなっている。
 こうしたことを、現代から過去を見て笑ってばかりはいられない。20年ぐらい後になって、「わずか20年前には、人が猿から進化したと本気で思っていたんだ」と言われているかもしれないのだから。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「人類が知っていることすべての短い歴史」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0) | トラックバック (1)

2008年1月 7日 (月)

重力ピエロ

著  者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2006年7月1日発行 2007年11月30日14刷
評  価:☆☆☆(説明)

 2003年に発表された作品で、著者紹介欄によると「ミステリファン以外の読者からも喝采をもって迎えられ」た、ということだ。2006年に出た文庫版で読んだ。

 主人公は、遺伝子関係の会社員、泉水。絵の才能があるハンサムな弟、春と、末期癌で入院中の父がいる。ストーリーは、泉水と春の兄弟を中心に進み、泉水の回想として家族の過去の出来事が語られる。そして、結末に向けて長い坂を上るように静かに盛り上がる。
 泉水の家族には、公然となった秘密がある。それは、春がレイプ犯によって母が身ごもらされた子どもであることだ。何とも重々しい設定だ。父が生むことを決断したのだが、それが正解であったのかどうかは、今もって誰にもわからない。
 「泉水も春も私の息子ですよ」と、動じることなく言い切る父の態度に救われはするが、家族につきまとう影は払いようがない。春の絵の才能さえ、レイプ犯の血を受け継いだのではないかと言われてしまう始末だ。

 泉水の職業や春の才能などの設定に無駄がなく、ストーリーに絡んでくる。連続放火事件が事の発端なのだが、放火とグラフィティアート(壁に描かれた落書き)に深い相関があり、事件のナゾを解くカギは遺伝子にある。また、家族の過去の悲劇とも深く関わっていた。
 徐々に明らかになってくる真実と、気の利いたエピソードの重層構造で読ませる、技ありの作品で、評判になったのもうなずける。

 少し残念に思うのは、ストーリーに意外性がほとんど無いことだ。もちろん、最初からすべて分かってしまうような単純なストーリーではない。でも、徐々に明かされることを追って行くと、中盤ぐらいで読者が「もしかしたら」と予想してしまい、そのとおりになってしまうのではないかと思う。少なくとも私はそうだった。結末に向かっての道筋がまっすぐな感じなのだ。
 それから、読んでいてつらくなってしまう時があった。レイプという凶悪な犯罪に対する嫌悪感だと思う。母の事件の他にも何度か、そういったシーンや話題が出てくる。この小説に限って言えば、重要な要素であるので取り除きがたいことは分かる。しかし、嫌な気持ちになってしまった。

 人気ブログランキング投票「一番好きな伊坂作品は?(~2007年)」
 人気ブログランキング投票「一番好きな伊坂作品は?(2008年~)」
 (あなたの好きな伊坂作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「伊坂幸太郎が好き!」ブログコミュニティへ
 (伊坂幸太郎さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「重力ピエロ」 固定URL | 3.ミステリー, 31.伊坂幸太郎 | コメント (2) | トラックバック (0)

2008年1月 1日 (火)

あけましておめでとうございます。

 皆さん、あけましておめでとうございます。

 昨年の後半から、このブログを見ていただく方が徐々に増えてきて、うれしく思っています。数えてみると、昨年は43冊の本をここで紹介しました。
 一晩で一気に読んでしまう本もあれば、1ヶ月以上かけて何とか読み終わることのできる本もあり、それぞれの本にその読み方があるので、何冊読んだかという数には、強いこだわりはありません。だた、昨年もこんなに多くの本に出会えたことに感謝しています。また、今年もたくさんの本を読んでここで紹介したいと思います。

 今年は、年賀状にこのブログのアドレスを書きました。中には、40年近くもお会いしていない方にも年賀状を送らせていただいています。今の私を知っていただくのに良いかと思い、このブログのことをお知らせしました。それを見てアクセスしてくださった方も多いでしょう。
 ブログに、その日あったことを綴っておられる方も多いようです。先に書いたような近況報告の意味では、その方が良いと思いますし、そういったものを期待された方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私のブログは読んだ本の感想と紹介しか書いていません。そして、名前や身分を明らかにしていません。その理由もあるのですが、ここでは長くなるので書きません。

 それでは、今年が、皆さんにとって良い年でありますように。

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「あけましておめでとうございます。」 固定URL | | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年12月 | トップページ | 2008年2月 »