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2007年12月16日 (日)

夜のピクニック

著  者:恩田陸
出版社:新潮社
出版日:2004年7月30日発行 2005年4月5日第17刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者が人気作家であることは知っていて、何度か手に取ってみたこともあったのだけれど、読むに至らないままになっていた。幅広いジャンルを手がけているらしいので、本書が著者の作風すべてを表しているのではないとしても、読後感がさわやかで、他の作品も読んでみようと思った。

 高校生活も終わりに近づいた秋の1日の物語。1日というのは文字通り24時間の意味で、朝の8時から翌朝の8時まで80kmを歩き通すという学校行事「歩行祭」が舞台の青春小説だ。
 中学生高校生に読んでもらいたい。登場人物の高校生が「ナルニア国物語」を「なんで、小学生の時に読んでおかなかったんだろう」と、後悔する話が出てくる。「ナルニア~」がそういう本かどうかは置いて、本書は中高生の時に読んだ方が、大人になってから読むより意味があるように思う。
 もちろん、ここには青春のすべてが描かれているのではない。イジメも受験の苦しみも、「自分とは何なのだ」というような葛藤さえも、存在はするのだけれどストーリーの背景に押しやられてしまっている。そういう意味では「大人が振り返って思い描く青春」なんだろうと思う。だから、大人は「そんな時代が自分にもあったなぁ」などと懐かしんで読むことができる。逆に言えばそういいう読み方しかない。
 しかし、現在青春の渦中にある中高生には、別の読み方がある。きれいごと過ぎるように思えるかもしれないが、それでもなお読んでもらいたいと思うのは、恋愛を含む人間関係の悩みや、友人という大切なものなど、青春時代に経験をしてもらいたいと思う事柄が全編からあふれ出ているからだ。自分たちの今の生活にも、同じように大切なものがあることに気が付いてもらいたい、そうすればもっと良い青春を送ることができる。そう言った「今」を変えるような読み方だ。

 主人公は融と貴子の2人。学校では内緒なのだが2人は異母兄弟で、何の因果か高校3年のクラスメートだ。お互いに距離のとり方が分からないまま一言も言葉を交わさずに秋になっている。このまま卒業してしまえば、一生言葉を交わすこともないだろう。それで良いのがどうか分からない。少なくとも貴子の方は良くないんじゃないかと思い始めている。
 どちらか一方でも、イヤなヤツであれば悩むこともなかったのだろう。お互い相手を憎んだり無視したりしていれば、それはそれで安定しているとも言える。しかし、どうやら2人とも良き友人にも恵まれ、クラスの中でもそれなりに存在感のあるイイヤツらしいから困ったことになっている。 言葉を交わさなくても強烈に意識し合っていることは、周囲も感付くほどになっていて、2人は実は付き合っているのでは?と勘ぐられてしまう。

 24時間の間に2人の距離というか位置関係が微妙に変わる。特に貴子の心が行きつ戻りつ、本人が「こうありたい」と思うものに近づいていく。この様子が、「歩行祭」という特別な時間を舞台にして良く描き出されている。「こうなってよかった」と思える結末を期待しつつ最後まで気持ちよく読める。良き友人がいることのありがたさを噛み締めることができる1冊。

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