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2007年11月

2007年11月28日 (水)

最初のヒト

著  者:アン・ギボンズ 訳:河合信和
出版社:新書館
出版日:2007年8月25日初版第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 「最初のヒト」化石の発掘をめぐる、化石ハンター達の仕事と成果が、詳細に、時に生々しく語られている力作。特定の分野に焦点を当てた著作によくあるように、専門家から見れば色々と異議はあるのだろう。
 しかし、専門家ではない私から見れば、理解できない専門用語の行列に悩まされることまく、「人類の祖先をめぐる数多くのことを知ることができたし、何より十分に楽しめた。専門書ではなく一般の図書として出版されている以上、専門家でない人が楽しめることが第一に大切だと思う。
  謝辞に70人にもおよぶ研究者の名前が並ぶので分かるように、膨大な取材の上に本書は成り立っている。科学誌「サイエンスの」主席ライターだからこそできたとも言えるが、これだけの深い内容を引き出した取材は、並大抵のものではない。

 正直に言えば、この本を手に取ったのは、人類の歴史についてのドラマを期待していた。いつごろ、どこで、どんな姿で、どんな生活をしていたか。多少乱暴でも、少しばかり科学の味付けがあれば、好奇心を満たす面白い読み物になるだろうから。
 だから、最初は少し面食らった。その分野では著名なのだろうけれど、門外漢は知らない名前が次々でてきて、拾った化石を見比べてどうだった、ということの繰り返し。
 しかし、人物の輪郭がおぼろげに把握できるようになると、これが実に面白い人間ドラマであることが分かる。化石ハンターたちの駆け引きや、ねたみ、アフリカの政治家を巻き込んでの確執、人類の祖先の創作ドラマより断然面白いではないか。
 それぞれの化石ハンターたちが、自分を信じて調査にすべてをかけている。顎骨の化石を見つけるのに1年や2年はザラだ。いや、見つかればよし、見つからないほうが圧倒的に多いのだろう。そんな彼らが魅力的な人々に見えてくる。

 好奇心という意味では、色々なことが本書を読んで分かった。ヒトと類人猿の境界は、「直立二足歩行」にあること。頭蓋骨の化石があれば、直立二足歩行をしていたかどうかの推定ができること。そして多くのこの分野の化石は、頭蓋骨さえそろってはなく、顎骨や中には歯だけ、というのもあること(実際歯だけでどこまで何が分かるのか、というのは本書を読んで解説を受けた後でも疑問なのだが)。ヒトの祖先は、今や700万年も遡るとされていること。今はホモ・エレクトスと言われているピテカントロプス・エレクトスは「ピテク」(猿)+「アントロプス」(ヒト)+「エレクトス」(直立した)というラテン語の造語だということ。

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2007年11月 2日 (金)

夜は短し歩けよ乙女

著  者:森見登美彦
出版社:角川書店
出版日:2006年11月30日初版 2007年4月5日7版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 1人の大学生が後輩の女の子に恋こがれて、独り相撲の遠回りの末に彼女に近づいていく様を、彼と彼女の2つの視点からコミカルに描いていく。しかし、普通の青春恋愛小説ではない。「感動」ともほとんど無縁、彼も彼女も他の登場人物も、とても変なのだ。

 正直に言って、読み始めは戸惑った。淡々とした語り口で次々と繰り出される「ありえない話」の数々に。樋口さんは、フワフワと空中に浮かび、口から鯉のぼりを吐き出す。李白さんは、先斗町の通りを三階建ての電車に乗ってやって来る。電車の屋上には古池や竹林がある。おとぎ話にしては俗っぽすぎるし、ちょっとついていけない。
 ふと思いついたのは「銀河鉄道の夜」。ジャンルも方向性も全く違うが、夢の中の出来事のような予想外の事が淡々と語られる。

 しかし、章を追うごとに加速するテンポの良い展開に、ドンドン引き込まれて行き、面白くなってくる。第三章あたりではすっかりはまり込んでしまった。
 「先斗町」でお気付きかもしれないが、舞台は京都の街。先斗町や木屋町などの繁華街、下賀茂神社に糺の森など、京都の街を知っている人にはお馴染みの地名が出てきて楽しめるだろう。そして第三章の舞台は京都大学の学園祭だ。これには参った。なぜなら私の母校だから。第三章ではまり込んだのは、そのせいもあるのだろう。 

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