« 2007年8月 | トップページ | 2007年11月 »

2007年10月

2007年10月26日 (金)

図書館危機

著  者:有川浩
出版社:メディアワークス
出版日:2007年3月5日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「図書館戦争」の続々編。確実に前々作、前作より面白い。前作よりダークな部分がなくて、私としては単純に楽しめた。元々、登場人物たちのそれぞれのストーリーが並行して進むことで、物語に厚みを持たせていたけれど、今回は、主人公の郁を中心にそれぞれのストーリーが縦横に織り込まれた織物のように展開する。
 中でも階級章の話は秀逸だ。階級章にあしらわれた花は、菊に見えるが実はカミツレ(カモミール)、花言葉は「苦難の中の力」。図書隊の成り立ちを表す重要な意味が込められていて、しかも郁と上官の関係を深めるエピソードだ。 あとがきにもそれらしいことが書いてあるが、著者の隠し玉だろう。この階級章は第一作から巻末についていたのだから、いつでも書けたエピソードをここで披露したわけだ。

 今回のテーマも、前作同様に図書館内の内部抗争だ。しかし原則派と行政派といったイデオロギーの対立ではなく、戦闘職と業務職という部門の間のあつれきだ。県から来た館長が防衛部の活動と権限を制限したことに始まり、女子寮では風呂に入る順番まで業務職が先だというのだから笑止だ。

 第三章も良い。あるタレントが、祖父の職業の呼び名が差別用語とされていることに対して感じた抵抗感、その気持ちが分かっていても、インタビュー記事を出版できない出版社、そしてこの煮詰まった状況を解決する技ありの解決策。話の中では、隊長が考え付いているのだが、本当は誰が考えたのだろう。著者自身だろうか?

 あとがきによれば、あと1巻出るそうだ。楽しみだ。

 にほんブログ村「有川浩」ブログコミュニティへ
 (有川浩さんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「図書館危機」 固定URL | 2.小説, 22.有川浩 | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年10月24日 (水)

トラックバックについて

 トラックバックについて、私の考えを表明しておきます。

 他の方の記事にトラックバックを送ろうとした時に、失礼があってはいけないと思い、そのマナーを調べてみて、色々な考え方があることを知りました。
 トラックバックを送る時は、「自分の記事の中で相手先の記事の引用をすべきだ」と言う人、「関連性のある記事であれば、必ずしも引用は必要ないのでは」と言う人、少数ですが「トラックバックを削除することができるのだから、特に制限がなくても良いのでは」と言う人もいらっしゃいました。
 これに加えて、トラックバックのお礼をすべきがどうかなど、議論は発展しているようです。

 現在のところ、このブログにはトラックバックがほとんど付いていませんが、将来、トラックバックを付けていただく方の参考に、そして、私がトラックバックを送るブログの所有者の方に、私の考えをお伝えできるように、ここに表明します。

  • トラックバックは、同じテーマであるなど、自分の記事と関連性のある記事に限って送るべきだと思います。
  • 意見の反対/賛成は問わなくて良いと思います。
  • 記事の中での引用は、必要があれば行えば良いと思いますが、それがトラックバックの必須条件だとは考えません。

 念のために付け加えますが、これは、私の考えの表明であって、他の方の考えに対する非難や誤りの指摘をすることを意図したものではありません。

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「トラックバックについて」 固定URL | 0.トラックバックについて | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年10月21日 (日)

獣の奏者 1.闘蛇編、2.王獣編

著  者:上橋 菜穂子
出版社:講談社
出版日:2006年11月21日
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「守り人」シリーズの著者による長編ファンタジー。時代も場所も架空の物語だが、なんとなくアジアの古代を思わせる。魔法がなくてもファンタジー小説は成り立つのだと、改めて分かった。

 舞台は、リョザ神王国、真王が国を治めているが、血の穢れをきらう真王に代わって、大公が他国からの侵略に対する防衛の任に就いている。その大公が兵器として使うのが「闘蛇」、巨大な蛇のような生き物だ。そして、闘蛇の唯一の天敵が「王獣」、翼を持つ崇高な獣で、真王のシンボルとされる。(大公の闘蛇より優位にある、という意味もあるらしい)

 主人公エリンは、闘蛇の世話をする母の子として生まれ、曲折を経て長じてから王獣の医術師となり、この世で唯一人王獣を慣らすことができる能力を得る。
 しかし、いくら心を通わせたと思っていても、獣と人間の隔たりは大きく、どうやら太古には人間と王獣の関わり方が原因となって、国が破滅するような悲惨な事件が起こったらしい。エリンの母の民族である「霧の民」が厳しい掟を作って、闘蛇や王獣を人間が飼い慣らすことのないようにしたのは、2度と同じ過ちを繰り返さないためと言う。

 面白い。一気に2冊読ませるような面白さだ。しかし、2つ意見を言いたい。
 一気に読んだ最後に結末を迎えた読者は、突然放り出されたような感覚を味わう。色々なことが着地しないまま物語は終わってしまう。続編がないのなら、これはいただけない。
 もう1つ、この話はエリンの成長物語なのだとしても、その他の人の話も少し肉付けしたらどうだろうか。エリンの成長に合わせて周辺には色々な人が現れ、それなりに個性的な背景を持つな人々なのに、エリンがいる舞台が移ると、背景の書割のように消えてしまう。魅力的な登場人物もいるのでもったいない気がする。

 人気ブログランキング投票:「一番好きな上橋菜穂子さんの作品は?」
 (あなたの好きな上橋作品の投票をお待ちしています。)
 にほんブログ村「ファンタジー」ブログコミュニティへ
 (ファンタジー小説についてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「獣の奏者 1.闘蛇編、2.王獣編」 固定URL | 1.ファンタジー, 16.上橋菜穂子 | コメント (5) | トラックバック (1)

2007年10月17日 (水)

風が強く吹いている

著  者:三浦しをん
出版社:新潮社
出版日:2006年9月20日
評  価:☆☆☆☆(説明)

 オンボロアパート「竹青荘」に住む10人の大学生が箱根駅伝に挑む、青春ストーリー。箱根駅伝は10人で走る、その総力で順位が決まる。もちろん誰でも出られるわけではなく、選ばれた20校(正確には20チーム/19校らしい)だけに与えられる栄誉なのだ、出場そのものが。
 加えて、昨年の成績によるシードなどもあるから、初出場を果たそうと思えば、予選会で上位9位に入らなければならない。そこに、10人ちょうどで挑む、しかも陸上経験者は3人、残りのうち1人はマンガおたくで運動経験はゼロ。
 そんなムリめの展開なのに、話にのめり込まずにいられない。著者の筆力によるものだろう。ちなみに、2006年の直木賞作家だ。

 主人公の走(かける)は、高校時代は陸上部のエースだった。しかし、走ることへの純粋さゆえに暴力事件を起こしてしまった過去がある。コーチの灰ニ(ハイジ)も、才能のあるランナーであったが、ヒザの故障のため挫折した経験がある。こうした登場人物の背景をドラマチックに絡めながら、物語は箱根駅伝当日へと集約していく。

 ここで私が指摘するまでもなく、著者は承知の上で本書を書かれたのだと思うが、駅伝というスポーツは、登場人物を丁寧に描ける素材であることに気付かされた。
 駅伝は何人かで行う団体競技であるが、ランナーはただ一人孤独に走る。誰の助けも得られない20キロ程度を走るその時間に、ランナー自身も何かを考えるだろうし、小説家はじっくりと1人1人のドラマを描くことができる。走と灰ニ以外にもあと8人のドラマを凝縮することができるわけだ。
 500ページの本の200ページは駅伝当日。何ともオイシイ舞台ではないか。

 にほんブログ村「三浦しをん」ブログコミュニティへ
 (三浦しをんさんについてのブログ記事が集まっています。)

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「風が強く吹いている」 固定URL | 2.小説, 27.三浦しをん | コメント (2) | トラックバック (0)

2007年10月 7日 (日)

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

著  者:ブライアン・グリーン 訳:林一、林大
出版社:草思社
出版日:2001年12月25日第1刷 2002年1月28日第7刷
評  価:☆☆☆(説明)

 超ひも理論を豊富な例え話を交えての解説を試みた本。著者は、超ひも理論の新鋭理論物理学者。難解な理論を普通の言葉で語れる数少ない1人とされている。本書も全米でベストセラーになっているらしい。

 ベストセラーはホントだとして、本書の内容が読者に理解できたのかどうかは、非常に疑わしい。超ひも理論の奥深さに似て、本書の内容も奥深く、いかに「普通の言葉」で語られようと、難解であることには違いないからだ。

 しかし、本書の約1/3を占める第2部までは、今までに無い明快さで相対性理論と量子物理学が語られている。特に、相対性理論による時空の解説が良く分かる例え話とともに秀逸だと思う。
 残念なことに、良く分かるここまでは、超ひも理論の解説に入る前段階、本書の主たるテーマではない。テーマではないが、アインシュタインの相対性理論に興味がある、興味があっていくつか本を読んでみたが分からなかった、という方には、ここまでだけでもおススメしたい。

 残る2/3の部分も、4次元以上の空間次元を頭の中で想像できれば、少し分かる。逆に言えば読者にはそうした想像力が要求されることになる。著者自身も「かなり難解なのでうんざりなさらないように」と書いている部分があるほどだ。すべてを理解しようと力まない方が読み進められる。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

 
Yahoo!ブックマークに登録 livedoorクリップに登録 このエントリーをはてなブックマークに追加 Evernoteにクリップ

「エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する」 固定URL | 9.その他 | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年8月 | トップページ | 2007年11月 »