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2007年5月

2007年5月30日 (水)

信長の棺

著  者:加藤廣
出版社:日本経済新聞社
出版日:2005年5月24日第1刷 2007年10月4日第10刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本能寺の変とその時の信長の死の真相に迫る歴史フィクション。もちろんフィクションなので、「これが真相だ」と著者も言っているのではない。しかし、読む方は、こうだったのかも知れないと思うことで楽しめる。そう思えるぐらいの物語が綴られている。これが小説家としてのデビュー作で、74歳だというのだから驚きではないか。

 主人公は、信長ではなく「信長公記」を記した実在の伝記作者、太田牛一。(信長は、本書の冒頭で早々に死んでしまう) 伝記作者であるから、様々な調査をしたであろうことは想像に難くない。このことが、物語中の主人公の調査活動や、ひいては本書の描く信長の死の真相に真実味を与えることになる。

 本書では、信長が目指していた天下がどのようなものであったのか?本能寺の変はどのようにして起こったのか?黒幕は居たのか?居たとすれば誰なのか?秀吉や家康との関わりは?、そして信長の遺体はどこへ行ってしまったのか?と言った謎解きの面白さが、ギュッと詰まっている。
 信長、秀吉、家康と言った天下人に加えて、信玄や謙信などの武将が数多く居て、物語には事欠かないこの時代に、また面白い物語が加わった、そんな感じがする本。

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2007年5月24日 (木)

バーティミアス プトレマイオスの門

著  者:ジョナサン・ストラウド 訳:金原瑞人、松山美保
出版社:理論社
出版日:2005年12月第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 バーティミアス3部作の最終部。前作のゴーレム事件から3年、主人公のナサニエルは、17才にして情報大臣という政府の要職に就いている。首相の覚えも良く、若さと自身に満ちていて女性の人気も高い。
 もう1人の主人公、バーティミアスの方は調子が良くない。ナサニエルにコキ使われてボロボロになっている。そんな状態で、大事件が起きる。

 前2作は、それぞれが一件落着の物語でありながら、いくつかの謎が残っており、それが今回の物語の伏線にもなっている。例えば、第1作で、4人の魔法使いが共謀して、強力な悪魔を召喚しているが、その内の1人は見つかっていない。第2作で、少女キティをレジスタンスに引き入れたホプキンスなる人物も、レジスタンスを影で支援している人物もその正体が分かっていない。
 そして、主人公ナサニエルは、これまでのところ悪人とは言えないまでも、他人に支えられていることに全く気づかず、自分の成功に酔っていて結構いけ好かないやつのままだ。このままシリーズを終えてしまうのか?ということも記になるところだ。

 第3部の本書では、こう言ったことに答えてくれる。そして、起きる事件もスケールが大きく、3部作の締めくくりにふさわしい展開となる。一歩間違えば、というか、ほとんど世界の崩壊寸前の事態を招いてしまう。愚かな驕り高ぶった魔術師たちのために。

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2007年5月11日 (金)

虚空の旅人

著  者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2001年8月第1刷 2001年9月第2刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 女用心棒バルサが活躍する「守り人」シリーズの外伝的な物語。バルサは登場しない。主人公は、新ヨゴ皇国の皇太子チャグムと星読博士のシュガ、舞台も新ヨゴ皇国ではなく、南の隣国サンガル王国。

 サンガル王国の第一子に男児が誕生し、その祝いの儀式への出席のために、チャグムとシュガが出掛ける、という設定。
 サンガル王国は、かつては海賊だった今の王家の祖先が周辺の島々を征服して統一した国。王家の男たちは「海の男」であり、戦にも漁にも進んで出て行く。皇宮の奥深くにいる新ヨゴ皇国の皇族とは随分と違う。
 そして、女たちは更に特徴的だ。王家と王国を安定させるため、幼いころから権謀術数を学ぶ。大人になれば、島々の領主に嫁いでいくのだが、それも王家の一員として領主たちを監視し、操っていくための方策なのだ。今回の物語でも、この王家の女たちは重要な役割を担っている。

 バルサが登場しないので、外伝という扱いなのだが、シリーズの中では重要な位置づけの1冊と思われる。舞台のサンガル王国以外にも、ロタ王国や南の大帝国であるタルシュ帝国などが紹介され、それらの特色や力関係などが明らかになる。「守り人」シリーズの世界観がぐっと広がった感じがするし、サンガルの王子タルサンとチャグムとの間の友情も今後の展開が期待されるところだ。

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2007年5月 8日 (火)

アトランティスの暗号

著  者:コリン・ウィルソン 訳:松田和也
出版社:学習研究社
出版日:2006年9月15日第1刷
評  価:☆☆(説明)

 古代文明の謎を追う、グラハム・ハンコックの著作と通底する作品。(通底するだけではなく、ハンコックその人や著作も登場する)

 著者の言わんとすることはこうだ。エジプトやマヤその他の古代文明には、現代以上の知識と技術が認められる。しかし、それらはエジプト人やマヤ人が発明、発見したものではなく、約一万年前に水没したアトランティスを通じて更に遡り、10万年前の高度に発達した文明を共通の源としたものである。その証拠はいたるところに残っている、と。

 この手の本は好き嫌いはあるだろうが、多少展開が強引でも少し信じがたい面があっても、読者の方もそういったことは織り込み済みで読むので、「可能性としてはアリかも?」と思わせてくれればOKだと思う。
 その点では私はOKなのだが、この本には別の問題があって、どうも私には合わなかった。何かと言うと内容が散漫なのだ。エジプトやマヤ文明、地殻の変動、大洪水などは1つの流れの中で語ることができるだろう。
 しかし、麻薬物質を使ったシャーマンの幻覚や、フリーメーソン、イエスの血脈などの話まで出てくる。非常に多作な著者とのことで、自分の知っている、世間の常識から少し外れた好奇心をくすぐるような話を詰め込んだという感じで、途中から何の本なのか分からなくなってしまった。

 しかも、収められている話の多くは、○○の著作「□□」にはこうある....とか、○○の報告によると...とか、他の人の研究の引用が占める。著者には大変な侮辱かもしれないが、あまり出来のよくない学生のレポートのようだ。これでは、古代文明の研究書ではなく、古代文明の研究を調査した報告書だ。

 しかし、1つだけ、著者自身の主張とも言えるものがある。それは、超古代文明は精神文明とも言えるものだったこと。現代文明のように、電気機械や蒸気機関などの物質的な発明は行わなかったが、彼らは高度な科学を理解することができた。我々が失ってしまった「全体を認識する能力」によって。
 余談だが、本書に24桁の素数を言い当てる知的障害を持つ双子の女の子の話が出てくる。数値を1つづつ検証する方法ではこうしたことはできない。おそらく、全体を捉えて細部へ向かう方法を取っているのであろう。人類の脳にはそうした能力が内在している、と言えるのではないか。

 現代文明が、様々な発明、発見によって便利で長生きできる世の中を作ったことは確かだろうが、同時に多くの問題を抱え込んでしまった。核兵器や環境問題は、自らの生存さえ脅かしてしまっている。「全体を認識する力」によって、そうした未来が見えていたのなら「あえて発明しない」という選択肢もあったかもしれない。

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