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2007年4月

2007年4月20日 (金)

ヒストリアン 1・2

著  者:エリザベス・コストヴァ 訳:高橋素子
出版社:日本放送出版協会
出版日:2006年2月25日第1刷  3月20日第3刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ドラキュラの消息を追うミステリー。怪奇小説のドラキュラ伯爵のモデルとされる、15世紀の封建領主、ワラキア公ウラド・ツェペシュが、「死なざる者」となって現代に至っているという設定。歴史家(ヒストリアン)たちが、その存在を追い詰めていく終盤のヤマ場は、なかなかのものだった。

 本書は、主として3つの時制が並行して進む。ドラキュラを研究していて失踪した教授の体験(1930年代)、その教え子が失踪した教授を、教授の娘とともに捜す物語(1950年代)、教え子も妻を捜すために姿をくらましてしまい、娘が父親の消息を追いかける話(1970年代)の3つ。そして、最後の父親を捜している娘が本書の著者、ということになっている。
 さらに、冒頭の「読者へ」を見ると、日付が2008年!なんと未来だ。つまり自分の経験を30年経ってから書いた、ということらしい。おやっ、と思わせる小技だけれども、本書にとってはあまり意味を持たない。(意味があったとしても、少なくとも私にはまだわからない)

 上下巻で1,000ページにはなろうという大作で、一気には読めない。出てくる場面数も多く、ストーリーも長い。時制が絡み合って一見複雑なようだが、慣れれば決して分かりにくくはない。しかし、3つの時代で、それぞれの人間が体験する物語が進展するので、3倍読まないと先へ進まないことになる。必然的に話の進展が遅く感じられて、退屈にもなってしまうかもしれない。それでも、結末を目指して読み進めましょう。
 途中に細かな伏線が少しずつ挿入されている。その多くは、最後になって説明される。読み終わって余力があれば、読み返して伏線を探し出すのも良いかも。

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2007年4月 8日 (日)

大人になると、なぜ1年が短くなるのか?

著  者:一川誠、池上彰
出版社:宝島社
出版日:2006年12月30日第1刷
評  価:☆☆(説明)

 著者2人は、それぞれ認知科学者と、元NHK記者のジャーナリスト。2人の対談をまとめて出版した形。

 認知科学者である一川誠氏は、山口大学の「時間学研究所」のメンバーである。「時間学」なる学問が確立されているとは思わないが、心理学や物理学から、文学、考古学、哲学といった様々な学問の学際的研究によって、時間に関する学問の価値創造を行っているらしい。この取り組みは面白いと思う。

 前半は、一川氏の専門である認知科学の面白い事例が紹介されていて、「へぇ」と思わせてくれる。人間は実は見たもののほとんどを覚えていない、とか。例えば、見知らぬ人に道を聞かれて、途中で道を聞いた人が入れ替わっても、半数以上の人は気付かない、といった実験。また、同時に光っても、動いている光点は実際より先に進んで見えてしまう「フラッシング効果」も興味深い。サッカーのオフサイドは、この錯覚のために正確な判定は難しいそうだ。

 後半になってタイトルの「大人になるとなぜ1年が短くなるのか」の話題になる。しかし、これに対しては、期待を満たすような回答はない。「子どものころは変化に満ちていて、運動会や遠足などイベントが多くて充実しているからではないか」などと、普通に思いつくようなことが言われているだけだ。これについての学問的検証もない。対談で出てきた話題の中で、ウケそうなものをタイトルにしただけではないのか?

 ただし、「大人になると.....」という話のくだりではないのだけれど、「1,2,と、カウントしないで自分で1分を測ることで、代謝の良い悪いが分かる」ということが紹介されていた。
 代謝が良いと実際より早く1分だと感じてしまう、悪いと遅く感じる。子どもの頃は代謝が良いので、自分は1分経ったと思っても45秒だったりするわけだ。これなら、子どもの頃は時間がゆっくり流れるように感じるはずで、この説明なら何とか学問的かもしれない。

 タイトルに対する明快な解や研究を期待すると裏切られてしまうが、時間に関する興味深い話を仕入れることはできる。

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