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2007年2月

2007年2月17日 (土)

夢の守り人

著  者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:2000年6月第1版
評  価:☆☆☆(説明)

 守り人シリーズの第3弾。今回の舞台は再び新ヨゴ皇国。登場人物も、ほぼ第1巻ろ同じ顔ぶれ。第2巻で舞台が違う国になってしまったので、新しい物語と登場人物を求めて、色々な国に行く旅物語形式なのかと思った。同じ顔ぶれでは、不思議な物語も作りづらいたろうから、と。しかし、著者にとってはそうでもなかったらしい。ちゃんと1巻とのつながりも確保しながら、不思議な物語を紡ぎだしている。

 今回の不思議世界は「夢」。人は夢の中では一切のしがらみから解き放たれる(実際には、現実の世界と同じように苦労している夢を見ることもあるけど)。精神世界を研究している人の中には、夢というのは魂の世界での連絡方法だと言う人もいるようだ。この物語もそう。夢というのは、魂が別世界へ言っている状態ということになっている。

 現実に大きな問題を抱えてしまうと、夢の世界から戻りたくなくなり、目覚めなくなってしまう。戻ってこなくなった魂たちを救うために、現実世界ではバルサが、魂の世界ではタンダとトロガイ師が活躍する。

 この世の中は、水中の気泡のように近づいたり離れたりしているたくさんの世界の1つ、というのが、このシリーズの世界観だ。時々2つの世界が行き来できるほど近づいた時に不思議なことが起きる。現実の不思議事件もそうして起こるのかもしれない。

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2007年2月14日 (水)

闇の守り人

著  者:上橋菜穂子
出版社:偕成社
出版日:1999年2月第1刷
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 女用心棒バルサが活躍するアジアンファンタジーの第2弾。
 今回は舞台がバルサの故郷カンバル王国。登場する人物はバルサ以外は全員新顔。(回想シーンを除けば)
 バルサが故郷を追われることになった事件のてん末など、第1巻からの伏線が成就する。著者は、ここまでの物語について、第1巻の執筆時には少なくとも構想を持っていたのだろう。
 この物語は、この世ならぬ不思議なものが色々と登場するが、今回の主たるテーマは、人間ドラマだ。そのドラマに引き込まれる分、前作よりもしっかりした読み物になっているように思う。

 1つのドラマは、バルサの養い親ジグロとその兄弟、一族を巡るドラマ。真実は別にあるとしても、故郷では反逆者の烙印を押されているジグロ。残された兄弟や一族にはつらい時期があったことは想像できる。さらに、ジグロを討って国宝の金の輪を取り返したとして英雄となった弟には、秘められた過去がある。

 もう1つのドラマは、バルサとジグロとの間のドラマ。ジグロはすでに亡くなっているので、このドラマはバルサが1人で背負い込む宿命としてこれまで語られていた。しかし、今回思いもよらない形で、バルサとジグロが思いをぶつけ合うこととなる。
 そこで聞いたジグロの心の叫び「バルサさえいなければ...」、そしてバルサの心の叫び「私に何ができたと言うのだ」
 深い。「守り人」シリーズは、少年少女向けの物語とされているが、ここまで深い心の掘り下げは、バルサ自身の年代、そう30年以上は人生を経験した者でないと、なかなか伝わるものではないと思う。

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2007年2月 6日 (火)

ローマ人の物語15 ローマ世界の終焉

著  者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2006年12月15日発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ローマの歴史を綴る全15巻の完結。
 本巻は、ローマが東西に分裂して別の皇帝が治めるようになる395年から、476年に西ローマ帝国が滅び、その後東ローマ帝国による領土の回復のための100年間を描いて終わる。
 この後は、1453年のオスマントルコによるコンスタンティノープルの陥落まで、約1000年間も東ローマ帝国ないしビサンティン帝国は続く。しかし、塩野氏はこれを含めない形で「ローマ人の物語」とした。

 後世の歴史家の評として、帝国滅亡の70年前に亡くなったスティリコという蛮族出身の将軍を「最後のローマ人」としたのは、塩野氏の考えでもあるのだろう。ローマ人とは、ローマ市民である以上に、その姿勢(スタイル)までローマ的であるべきだ、と言うのである。
 確かに東ローマ帝国は、あまりにオリエント的であるし、カトリックの考えのためか排外的でもある。また、ローマという都市なしでのローマ帝国はあり得ない、とも言う。確かにそうであろう。地中海を内海とする歴史に類を見ない帝国であり、ローマはそのカプト・ムンディ(世界の首都)であったのだから。

 それにしても、本巻の主役たちが全員軍人であるのはどうしたことだろう。皇帝は、宮中深くでろくなことをしない存在としてしか描かれていない。
 ローマは王政、共和政、帝政を通して、有能なリーダーが支えた帝国ではなかったかと思う。最終巻の主役が全員軍人になってしまったということは、帝国末期には、皇帝がリーダーでなくなってしまっていたことを表しているのだろう。

 西ローマ帝国は、壮絶な戦いの末に滅んだのではなく、蛮族出身の将軍に皇帝が退位させられ、その後の皇帝が選ばれなかった、というだけなのだ。滅亡でなく消滅、気が付いたら無くなっていた。歴史に類を見ない大帝国の最後にしては、あまりに情けない。

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