帰還 ゲド戦記最後の書
著 者:ル・グウィン 訳:清水真砂子
出版社:岩波書店
出版日:1993年3月25日第1刷 1993年5月12日第3刷
評 価:☆☆☆(説明)
第3巻「さいはての島へ」から18年ぶりの第4巻。日本での出版で言えば16年ぶりになっている。待望の新刊ということなのだけれど、どうもパッとしない。
「こわれた腕環」のテナーが再登場したので、どんな活躍をしてくれるのかと期待した。エレス・アクベの腕環を持ち帰り、この世に平和と秩序をもたらした当本人だ。ゲドの行方が知れない以上、この世界に対して特別な役割を持っているに違いない。
と、そんな期待を持っても責められないと思うのだが、その期待には今回は応えてもらえない。
虐待された過去を持つ子どもテルーという新たな登場人物の存在を軸に物語は進んでいくが、ウツウツとしたいやな感じの事件が何度か起こるだけで、大きなテーマが見えてこない。
ファンタジーなのだから、正邪の戦いとか、この世の均衡とか、平和を取り戻すとか、そんなテーマがあっても良さそうに思うが、この巻で成されたことは、テルーをそのろくでもない親族たちから守った、ということに尽きる。
どうも、テルーは特別な存在なのではないか、ということは明かされた。しかし、それも非常にあいまいなままだ。これで「最後の書」ではあんまりではないか。もっと言えば、ゲドはどうしてしまったのだろう。ゲドが何ら物語に関わってこない「ゲド戦記」で良いのだろうか?
そうそう、フェミニズムの空気が途中で色濃く漂う。グィンのメッセージはここにあったのかと思った。もしそうであるなら、読者の期待とは恐らく違っていたと思う。
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