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2006年8月

2006年8月28日 (月)

崖の国物語6 ヴォックスの逆襲

著  者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2005年7月第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 第5巻の少し前のお話。登場人物も設定もほぼ第5巻と共通している。
 ヴォックスと言うのは、第3巻に登場する雲読み師だ。野心たっぷりだったが、格下のカウルクエイプに最高位学者の座を取られてしまう。その時に「今に見ていろ、必ずその座を我が物にしてみせる」というようなことを、最後に言い捨てて終わる。それなのに、4巻では触れられず、5巻ではすでに失脚していることになっていて、どうしたんだろうと思っていた。

 今回は、良きものは救われ、悪しきものは滅びる、そいうったラストにカタルシスを感じるものになっている。崖の国には悪しきものがはびこっていた。夜の守護聖団、ゴブリン軍、オオモズ軍、それらが互いにいがみ合いながら危うい均衡を保っていた。

 主人公たちの活躍で、良きものたちは窮地を脱し、悪しきものたちは....気になるのはここだ。悪しきものたちは、さらに悪しき怪物に滅ぼされてしまった。この世界には、誰も太刀打ちできない怪物が闇の中で巣くっている。そういう怪物に運悪く遭遇してしまえば、観念するしかない、という設定になっているのだが、今回は、その怪物を町に解き放ってしまった。これで良いのか?

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2006年8月12日 (土)

愛がいない部屋

著  者:石田衣良
出版社:集英社
出版日:2005年12月20日第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者は、テレビのニュースにコメンテーターとして出演して、さらっと毒のあるコメントを吐いているので、本業の作家ではどんな仕事をしているのかと思い、1冊手に取ってみた。

 小説雑誌に連載された10編の短編、どれも大人の愛の物語。いや、タイトルの通りに「愛がいない」ことを表現した物語。
 「愛」を表現するのに、愛そのものを描写するのではなく、そこにあるべき愛や、あって欲しいと愛が「ない」ことを描写する。なかなかのテクニシャンだ。欠けている部分を描くことで、対象物の輪郭がくっきりと見えるような感じか。デザインの技法にもそういうのがあったような。

 10編のそれぞれはいろいろだ。実らない大人の恋愛、熟年の愛、中年の悲哀、中にはエロ小説かと思うようなものもある。短編であるし、ミステリーでもないので、大した出来事は起きない。主人公は、それぞれ重荷を背負って生きているのだけれど、読むほうは軽い気持ちでのぞき見をしているような感覚。

 収録されている10編には共通点がある。すべて神楽坂にある、1階にオープンカフェがあるマンションの住人(予定の人も含めて)の話であること。私がみたところ登場人物は重複しない。1人を除いて。(特に重要な人物というわけではないけれど、1人をいろいろなところに登場させている。著者のちょっとした仕掛けというか遊びだろう)

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2006年8月 6日 (日)

蹴りたい背中

著  者:綿矢りさ
出版社:河出書房新社
出版日:2003年8月30日初版 2003年10月20日10刷
評  価:☆☆☆(説明)

 2004年の芥川賞受賞作。当時19才で最年少受賞。そういうことで手に取ってみた。
 主人公はハツ、高校1年生、陸上部、クラスでは浮いている。「適当に5人組を作れ」と、先生に言われると余ってしまうようなヤツ。そして、クラスでもう一人余ってしまうのが、にな川、もう一人の登場人物だ。この2人が中心となってストーリーは進んでいく。

 にな川という男はおかしい。モデルの「オリちゃん」のファンなのだが、ケースにぎっしりと「オリちゃん」の記事やらグッズやらを入れていて、それが彼の生きがい。
 ハツの方も相当おかしい。にな川の背中を見ているうちに蹴りたくなって、本当に蹴っとばしてしまったのだから。
 そして、おかしい者同士が惹かれあったのかというと、そういうことでもない。なにせ、にな川は、「オリちゃん」以外の女性には興味がないのだから。

 どうも、自分が常識人として年をとってしまったのか、高1の女の子が、にな川のような変なヤツの家にノコノコとついていくか?とか、展開に疑問を持ってしまうため、読んでいて何だか居心地が悪かった。
 明るいばかりの青春物語が巷にあふれているので(もちろん、それぞれの話にはそれなりに悩みや問題は含まれているのだけれど、多くは解決するし)、こういった2,3回ひねった青春に妙なリアリティがあるのかも。

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2006年8月 5日 (土)

こわれた腕環 ゲド戦記2

著  者:ル・グウィン 訳:清水真砂子
出版社:岩波書店
出版日:1976年12月10日第1刷 1989年2月15日第17刷
評  価:☆☆☆(説明)

 ゲド戦記の第2巻。前巻で自らの影と対決した若き魔法使いハイタカは、すでに竜を退治した「竜王」の称号を持つ大魔法使いに成長している。この間は数年という設定なので、年齢的にはまだ若いと言える。

 前巻が独特の雰囲気を持ちながらも、影との息詰まる攻防が描かれていて、他のファンタジーと共通する「動」の部分があったのに対して、本作は完全な「静」の世界だ。
 地下に巡らされた迷宮、そこを守る巫女、舞台は動きどころか光さえ差さない暗黒の地下迷宮なのだ。そして、ほとんど魔法は使われない。地震を留めるという魔法が後半にでてくるのだが、何かを起こすのではなく起こさないという、大技ではあっても地味なもの。その他は目くらましとか、うさぎを呼ぶとかで、本当に動きがない。動きがないだけに、ストーリーは内面に深く入り込む。

 言い忘れたが、今回の主人公はゲドではなく、巫女のアルハ(テナー)だ。ゲドは中盤まで姿さえ現さない。
 地下迷宮から巫女を救い出す、というのは、何かの暗喩なのだろうか?

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「こわれた腕環 ゲド戦記2」 固定URL | 1.ファンタジー, 13.ル・グウィン(ゲド戦記) | コメント (0) | トラックバック (0)

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