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2006年3月

2006年3月24日 (金)

ローマ人の物語14 キリストの勝利

著  者:塩野七生
出版社:新潮社
出版日:2005年12月30日発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 キリスト教徒から「大帝」と呼ばれるコンスタンティヌスの死の年の337年から397年のテオドシウス帝の死までの60年間のローマの歴史。
 15巻の予定のシリーズだから残すはあと1巻。この巻の最後でローマ帝国は東西に分裂する。そして一方の西ローマ帝国が滅亡する476年まであと80年。ボロボロと崩れ落ちる音が聞こえてきそうな中身の濃い1巻だ。

 著者によれば、ローマ帝国は崩壊ではなく溶解する。少なくとも宗教的には多神教を国の宗教としていたローマ人が、キリスト教徒になってしまう。対決して負けたわけではなく、変質してしまった。このことが、サブタイトルの「キリストの勝利」につながっている。

 この巻では、皇位継承の安定から考え出された世襲制がほころびる。コンスタンティヌスの死後、葬儀の直後に親族の4人が殺され、息子3人による分割統治が行われる。しかし、それも1人死に、2人死にして、副帝になったいとこまでも処刑されるというありさま。同じぐらいの力と正統性を持った複数の者が並び立つことはでいないのだろう。血のつながりが不幸を招く。

 この巻の主役はユリアヌスだろう。生き様が劇的だ。コンスタンティヌスの死後の大粛清時には6才だった皇帝の甥は、父を殺され兄とともに幽閉される。18年後に学究生活から呼び戻され、副帝、正帝となっていく。しかもこの時代、キリスト教へとひた走るローマ帝国の流れを、ただ一人押し留めようとした皇帝だ。彼を主人公とした物語がいくつかあるそうだが、いつか読んでみたいと思った。

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2006年3月 5日 (日)

脳内汚染

著  者:岡田尊司
出版社:文藝春秋
出版日:2005年12月15日第1刷 2006年2月1日第3刷
評  価:☆☆(説明)

 またもやヒステリックなゲーム・ネット排撃論が出版されてしまった。
 冒頭に国内外の少年少女による悲惨な事件を持ってきて不安をあおった他は、前半は抑え気味で、「こうした傾向を持つ子が、メディアに引き寄せられやすいのではないか」という疑問も生じる、などと反論ににも配慮を見せた書き方をしている。
 しかし、後半になると徐々にテンションが上がり、遂には少年犯罪はもちろん、不登校、引きこもり、家庭内暴力、ニート、学級崩壊、ADHD、DV、虐待、性犯罪、自殺と、およそ考えられる全ての現代の不都合な部分を、メディアのせいにしてしまう。
 そして、メディアに対して厳しい目を向けなければ、「将来あなたの子どもを殺人者にしたり、自殺させることになるかもしれない」と結んでいる。これでは脅しだ。子どもを人質に取った悪質な脅しだ。
 メディアリテラシーの必要性について、僅か4ページではあるが触れてはいる。しかし、こんな脅し文句を投げつけられては、メディアリテラシーのことなど、読者の心には残らないだろう。現に作家の柳田邦男氏は、雑誌の記事の中で「学校からパソコンをなくせ」と主張している。メディアを取り上げてしまったら、メディアリテラシーを身につけることなどできるはずもないのに。

 本書の中で多用されているのが、「寝屋川調査」といわれる調査で、中学生とその親4,000人へのアンケート調査だ。「ゲームを1日4時間以上する子は、それほどしない子と比べて○○と答える割合が△倍多かった」というもの。調査結果を使うなら、△倍という表現ではなく、結果の数値そのものを示すべきだと思う。また、多くのグラフは0を原点としないグラフだ。こうすれば、僅かな差でも強調される。作為的にやっているとしたら、これもいただけない。

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