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2006年1月24日 (火)

議論のウソ

著  者:小笠原喜康
出版社:講談社
出版日:2005年9月20日第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 マスコミやインターネットを通じて大量に流される様々な言説、それらの真偽を考える、というのが本書の主旨。具体的には統計のウソ、権威のウソ、ムード先行のウソ、といったものを取り上げている。とは言え、ウソを見破ってみせるとか、あるいはその方法を示す、というわけでもないらしい。
 もっともらしいことでも、「立ち止まって疑ってみよう」と言うことを、もっと言えば、ウソとホントの境界は非常にあいまいだから、必ず正しい答がある、とする「正答主義」を止めよう、という結びになっている。

 あとがきに自ら告白しているように、まわりくどい議論に付き合わされた、という感じを強く持った。大学の先生という教育者だから仕方ないかもしれないが、「ムード先行のウソ」の事例として取り上げた「ゆとり教育批判」については、事例という捉え方を越えてしまって、著者の主観が入りすぎて本書が何の本なのか分からなくなりそうだった。
 しかし、「権威のウソ」でのゲーム脳に関する指摘は適切で説得力があった。ウラを返せば、「ゲーム脳の恐怖」がいかに欠陥を持った論理展開をしていたか、ということだ。更に興味深いのは、著者が、「ゲーム脳の恐怖」の著者である森昭雄氏と同じ、日大の文理学部の教授であるということ。往々にして、大学の先生は自分の意見に抵触しない限り、他の先生の研究を批判したりはしないものだと思う。その点「ゲーム脳」は、遠慮なく批判できる「トンデモ理論」だと、受け止められているとしか思えない。

 まえがきに面白いことが書いてあった。「ウソが見分けにくいのは、それが私たちが望むような形で流されることが多いからだ」ということだ。塩野七生氏の著作に良くでてくるカエサルの言葉だが、「人間は、自分が見たいと思う現実しか見ない」。そのようなことに陥らないよう、肝に銘じたい。

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