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2005年11月 5日 (土)

「学級」の歴史学

著  者:柳治男
出版社:講談社
出版日:2005年3月10日発行 2005年6月7日2刷
評  価:☆☆☆(説明)

 副題は「自明視された空間を疑う」 つまり、学校の中の学級という装置について考え、「生徒はおとなしく先生の言うことを聞く」などの決まりを、当たり前の事とするのではなく、もう1度考え直す、ということだ。
 著者は、この論の展開のために、近代の学校と学級の成立過程から解き起こしている。学校は、19世紀初の英国で始められた教育システムがその起こり。3R's(Reading, wRiting, aRithmetic) つまり、「読み書き計算」を、効率的に教える仕組みとして始められている。そこには、個性の尊重も、道徳さえも考慮されていない。同時期に英国で起こったパックツアーと同様に、個々人の希望を制限することで、事前に決められた内容を効率的に消化するしくみだったのである。

 元々がそういうものだったのだから、現在の個性尊重の教育が行き詰まり、諸々の問題が起きても仕方がない、というのでは説得力に欠ける。しかし、さらに学級が持つ機能の分析という視点を持つことで、現在の問題点が明瞭に解き明かされる。
 つまり、お互いに縁もない40人もの同じ年の子どもを12年間もの長期間に亘って、1つの空間に押し込もうとすることの理不尽さ。それをこれまでは可能にした、競争という動機付け(これには必ず敗者を生むという危険性がある)の失敗。つまり、その競争に残れば、良い生活が送れるという幻想の崩壊、といったことである。
 また、本書からは、いかに無責任な教育言説が堂々と声高に語られているか、ということも読み取ることができる。

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