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2005年6月

2005年6月26日 (日)

ナルニア国物語6 魔術師のおい

著  者:C.S.ルイス (訳:瀬田貞二)
出版社:岩波書店
出版日:1966年9月1日第1刷 1984年6月15日第20刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ナルニア国創世の物語。今までの疑問とまでは言わないまでも、明らかにされていなかったことや、物語の基になる世界観などがわかる。これが、7巻の内の6巻にしてあるところが、なかなかの演出だ。

 今回は、ポリーとディゴリーという2人が主人公。ディゴリーのおじのアンドルーが、不十分な形でも、異世界へ行く方法を発見したことから物語りは始まる。「魔術師のおい」とはディゴリーのことだ。
 物語の後半に来て、2人はナルニアの創世に立ち会う。最初は暗黒の何もない所だったのが、どこからともなく歌声が聞こえ、大地ができ草木が生え、動物たちが歌声に合わせて生まれてくる。なんと厳かな雰囲気だろう。そう言えば、トールキンの書いた創世も歌によるものだった。

 さらに、この物語で、私たちの住むこちら側の世界と、あちら側のナルニアの2つの世界しかないのではなく、もっと多くのパラレルワールドが存在することが明らかになっている。移動するための中間の場所があることも。そう、クレストマンシーシリーズと同じだ。
 ジョーンズはトールキンに師事したこともあり、そのオックスフォードにはルイスもいたことを考えれば、ジョーンズがルイスの影響も受けたことは間違いないだろう。この発想が英国では非常にポピュラーなものでない限り。
 ディゴリーの住む長屋は、屋根裏に通路があり、それ伝いに他の家にも入ることができる。これもこのパラレルワールドのあり方の暗喩になっている。

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2005年6月21日 (火)

魔法がいっぱい 大魔法使いクレストマンシー外伝

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:田中薫子・野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2003年3月31日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 クレストマンシーシリーズの外伝。短編が4つ収められている。

 「キャットとトニーノの魂泥棒」が一番面白い。トニーノがクレストマンシー城に来てからの話なので、「トニーノの歌う魔法」の直後の話だ。タイトルどおり、「魔女と暮らせば」のキャットとトニーノが主人公。「クリストファー魔法の旅」の時のクレストマンシー、ゲイブリエル・ド・ウィットや、その他の登場人物、もちろんクリストファー・チャントも登場する。著者は、シリーズのまとめとして、このオールスターキャストの物語を書いたのかも。

 次が、「キャロル・ホールの百番目の夢」。夢を巻き取り機で取り出してビンに詰めたり、枕にして売るという設定がすばらしい。キャロルは自分の夢をそうやって売って有名になった少女。夢の中の登場人物が、待遇の改善を訴えるという、奇想天外な展開がさらにすばらしい。

 「見えないドラゴンに聞け」は、ハラハラドキドキ感としては4編中最高。歴史のパラドクスなどを巧みに取り入れていてすごく面白い。クレストマンシーは少し超人的すぎるかも。今回は天界へ登って、神々を諌めるのだから。
 クレストマンシーシリーズのパラレルワールドの中には、神々が治める世界もあったというわけだ。

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2005年6月15日 (水)

トニーノの歌う魔法 大魔法使いクレストマンシー

著  者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ (訳:野口絵美)
出版社:徳間書店
出版日:2002年3月31日初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 クレストマンシーシリーズの第2作目。シリーズの中を時系列で並べれば、「クリストファー魔法の旅」から25年、「魔女と暮らせば」の半年後、になる。
 舞台はイタリア、カプローナという、フィレンツェ、ピサなどに囲まれた小国。モンターネ家とペトロッキ家という2つの呪文作りの名家があり、互いに反目しあっている。その反目がカプローナ全体の徳の力をの低下を招き、呪文の効力がなくなっている。どうらや悪の第魔法使いの仕業らしい、というストーリー。
 今回は、クレストマンシーは重要な役柄ではあるけれども、出番は少ない。メインは反目しあう両家の若い世代が、頭の固い大人たちより先に協力して、難題と危機を乗り越えていく様子だ。イタリアだし、反目しあう2つの名家だし、ロミオとジュリエットみたい。

 クレストマンシーのいる世界は「魔法が私たちにとっての音楽と同じぐらいありふれている」と、シリーズの本の冒頭に書いてあるが、カプローナでの呪文とは、まさに音楽。歌うことで木が芽吹き、花が咲き、もっと不思議なことも起こる。歌詞にも曲にも強い力が宿っている。とっても面白い着想だと思う。
 世界中、「歌」が存在しない地域や文化はないのじゃないか、と思う。歌には本当に何らかの力が秘められているのかも。

 シリーズの子どもの主人公たちは、皆、魔法についての劣等感を持っている。キャットもクリストファーも、そしてこの本のトニーノも。自分は魔法は得意ではないと思っている。しかし、実は特別な能力を持っている。そういったところが読者を勇気付ける。シリーズ長編4作の中でも、「クリストファー魔法の旅」と並んで秀作だと思う。 

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2005年6月 8日 (水)

検証 松本サリン事件報道

著  者:テレビ信州
出版社:龍鳳書房
出版日:2001年3月4日発行
評  価:☆☆☆(説明)

 オウム真理教が係争中の裁判の裁判官の殺害を目的として、住宅街に猛毒のサリンを噴霧し、7人が死亡、数百人が被害を受けた「松本サリン事件」の報道を巡る顛末記。
 当初、第一通報者の河野義行さんが犯人視されていた。報道各社もこぞって、河野さんが犯人であるという前提で報じていた中で、テレビ信州は「裏付けの取れない情報は報道しない」という方針の下で、「農薬の調合ミスで毒薬を発生させてしまった」などの報道を行わなかったそうだ。同社は、この事件報道を端緒に、メディアリテラシーというものの活動を進めていくことになる。

 まぁ、他の報道と比べると、テレビ信州の姿勢は格段に良かったと言える。しかし、内実は英雄視するようなものではなく、限られたスタッフと取材能力のために、なかなか情報が得られない中で、他と同じような見切り発車をしなかった、ということらしい。
 本書は、当時の現場の様子が伝わって来て面白い読み物になっている。その一方で、現場の細かい動きが明らかになるに従って、背筋が寒くなる思いも募る。河野さん犯人説を疑うべき事実は、いくつも明らかになっていたらしい。にも関わらず、地下鉄サリン事件まで、その疑いは晴れなかった。警察は人権を軽視した取調べを行っていたようだ。ジャーナリズムは何をしていたのか、がもっと検証されるべきだと思う。ジャーナリズムが明らかにすべきは真実であり、戦うべき相手は悪と、市民に敵対する公権力だったはず。
 誰かを標的にしてたたきまくるような報道は今も続いている。報道各社は、この事件について、それぞれ反省や謝罪を口にしたが、進歩はしていないようだ。

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2005年6月 4日 (土)

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線

著  者:マーク・ブキャナン (訳:阪本芳久)
出版社:草思社
出版日:2005年3月3日発行
評  価:☆☆☆(説明)

 世界のさまざまな複雑な事象を、ネットワークの観点から論じる「ネットワーク科学」の解説書。ネットワーク科学は、物理学、生物学、経済学などの多くの学問に通じる。例えば、物理学では従来は、物質の成り立ちを極限まで小さな構成要素に分解し、個々の要素の性質と働きを調べることで、全体を理解しうるとする「還元主義」の立場であった。こういったアプローチの仕方が科学的であるとされ、生物学でも経済学でも、こういった方法が試みられてきた。しかし、この方法では、生物の複雑な働きや社会現象などを説明し切れない。要素とその間の相互作用を理解して初めて説明することができる、というのが、ネットワーク科学である。

 本書では、さらに「スモールワールド理論」を中心に取り上げ、その例として人と人とのつながり、脳のニューロン、インターネット、生態系、河川のパターン、感染症の流行など多くのものを挙げている。スモールワールドとは、あるパターンのネットワークによって、多くの要素がつながることで、どの2つの要素も非常に少ない隔たりでつながるというもの。
 人と人とのつがなりで言えば、地球上の60億の人口は、どの2人の間も6次の隔たりしかないという。ここでは、弱いつながりが重要になる。ただの知り合い、という弱いつながりがあるから、60億もの人が6次の隔たりでつながるのだ。
 感染症も流行も、弱いつながりを経ることで、広範に広まる。そしてこのスモールワールドは全くの自然に発生する。多くのリンクがあるところに更に多くのリンクが集まるという形で形成されていく。

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