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2004年12月

2004年12月24日 (金)

ネット王子とケータイ姫

著  者:香山リカ、森健
出版社:中央公論新社
出版日:2004年11月10日発行
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 この本の言わんとすることに全く異議が無い。私としては、ひどく常識的なことが、多くの引用を用いながら、解きほぐされている。
 中に登場するケータイがなければ暮らしていけないような「ケータイ姫」(メールにいつ何時でもすぐさま返事をしなくてはいけない。それがつながりの証だと思っている)の感性は異常だと思うが、現実に存在する。ならば、彼女を否定しても始まらない。現代のメディアと生活をテーマとして考えるなら、出発点、少なくとも前提にはしなくてはならない。
 この本が当たり前のことを書いてありながら有益だと思うのは、身の回りに非常識な見識がはびこっているからだ。「ゲーム脳」のことを、非科学的な説と言い切る意見があることを、つい最近まで知らなかった。「何だってやり続ければおかしなことになるだろう」ぐらいには、肯定の気持ちがあった。しかし、脳波の測定からα波β波の解説まで、全くデタラメなのだと言う。こんな話を基に、自治体がテレビやゲームを制限する政策決定をしてしまったら良い笑い者だ。
 しかし、あんなのはデタラメだ、と笑って済ませる問題ではない。子どもたちがネットの危険に晒されていることは、ゲーム脳とは別の次元で重要な問題なのだ。誰かが正しい方法で子どもたちにネットに対する耐性を身に付けさせなくては、悲劇は繰り返される。「危ないのはネットとカターナイフ」と言って、取り上げても意味ない。

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2004年12月20日 (月)

アホでマヌケなアメリカ白人

著  者:マイケル・ムーア (訳:松田和也)
出版社:柏書房
出版日:2002年10月15日初版 2003年3月5日第18刷
評  価:☆☆☆(説明)

 原題は「Stupid Whitemen」、バカ白人ということになるか。もちろん、著者の意図は白人全部を指すのではなく、アメリカの白人を指しているようなので、この邦題は的を射たものと言える。
 内容は、アメリカの、またはアメリカ人の可笑しなところ、モラルの無さを、これでもかとこき下ろすもの。2000年の大統領選でのブッシュ陣営のあくどい行いから始まり、根強く残る黒人差別や学生の無知、教育の荒廃。そして、軍事予算やエネルギー消費量、批准していない国際人権条約の数、強姦の件数と不名誉なナンバーワンを数多く持っていることなどを多く書き連ねる。ウソではないにしても、一方的な見方に過ぎることは確かだろう。
 しかし、「ウソではない」とすれば、アメリカという国はなんと傍若無人で病んだ国だろうと思わせるに充分だ。これで、自分たちの国が一番だと思っているなんて。Stupid Whitemen。
 と言うように、この本は暴露本なのだが、出色は出だしの2000年の大統領選の記述だ。ブッシュ陣営は、選挙を前にして、フロリダ州で民主党の支持者が多い黒人を中心に、2万人ほどの有権者から選挙権を奪っている。重犯罪者には選挙権がないからだが、実際には、犯罪者と名前が似ているからとか、誕生日が同じだからといった(それもテキサス州の犯罪者と)理由で選挙権を奪われた人も多くいたそうだ。
 それだけではない。フロリダ州知事はブッシュ大統領の実弟だし、ブッシュ当選を最初にフライング気味に報じたのは、フォックスTVのブッシュの従兄弟、票の数え直しを命じた最高裁長官も共和党の配下の人だ。フェアであることを何よりも重んじるアメリカの大統領選がこんな状態で行われたことに驚きを禁じえない。
 そして、アメリカは、そうして大統領になった人を再選してしまった。イラク戦争など、政策の実績よりも、キリスト教的価値観を共有していることに判断基準を置いて。驕慢と言わずに何と言おう。

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2004年12月12日 (日)

ナルニア国物語3 朝びらき丸東の海へ

著  者:C・S・ルイス (訳:瀬田貞二)
出版社:岩波書店
出版日:1966年8月1日初版 1986年6月10日第22刷改版 1995年6月15日第33刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 前号「カスピアン王子のつのぶえ」から3年後のナルニアの物語。カスピアン王子がおじのミラースが追放したナルニアの7卿を探す東の海への旅。人間の世界からは、ルーシィとエドマンドの兄弟と、いとこのユースチス。
 7人の卿を探す旅は、世界の東の果てにあるというアスランの国への旅にもなる。今回の物語は、著者の宗教観が色濃く反映されているように思う。
 旅の最後に水の壁の向こうにそびえる大山脈が見え、それがアスランの国らしい。もの言うねずみのリーピチープは一人、皮舟に乗り水の壁を登って向こう側へ消える。これは、指輪物語にも見える西方浄土思想だと思う(今回は東方だったけど)。また、この水の壁の手前は、白いハスの花が一面に浮いている。これは仏教的だ。
 また、いやなやつだったユースチスは、竜になってしまったことから、いいやつに変わってしまう。竜が出てくるあたりは西洋のファンタジーの王道かも。改心するというのも、第1巻のエドマンドのように定番かも。その他に、星が地上に降りてなった人とか、海底人、奴隷商人、魔法使いなどが登場、島々を巡る旅など、ベルヌやスウィフトなど、西洋の古典のエッセンスが詰まった感じの話だ。

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2004年12月 6日 (月)

イラクの中心でバカとさけぶ

著  者:橋田信介
出版社:アスコム
出版日:2004年1月20日第1版 3月1日第2刷
評  価:☆☆☆(説明)

 ベトナム戦争から「爆弾を落とされる側」から戦場を撮り続けた、戦場カメラマンのイラク戦争のルポ。著者は数ヵ月後にイラクに戻り、移動中に銃撃を受けて死亡している。
 この人が語る戦場には圧倒的な臨場感がある。そして何故か楽天感が漂う。これは多分、戦場のありのままを飾りのない文章で伝えているからなのだと思う。最後になって著者自ら踏み越えてしまったが、著者の戦争記者としての哲学は、戦場を見て「戦況」は語っても「戦争」は語らないことだそうである。「戦争」は政治的なもので、戦場を取材しても分からないからだそうだ。
 著者は、この本の中でも何度か死にそうになっている。爆風で窓が吹っ飛ぶベランダにいたこともあるし、2度も米軍の戦車に砲台を向けられている。完全な混乱の中なので、死ぬか生きるかは偶然に左右されている。
 そんな中で、ホテルは営業していて朝食もちゃんと出る。街ではお茶屋さんも居たそうだ。砲弾が飛び交う下でも、普段の生活も営まれている。アラブの民の強さなのか、人というのは元来強いものなのか。報道される情報だけでは、見落としがちなことだと思う。
 気が重くなるような話も。イラク戦争は現場の取材では米軍の圧勝だったそうだ。国連査察で身ぐるみ剥いでから米軍は来たわけで、戦いとしては実にアンフェア。さらに、バグダッドで唯一爆撃されなかったビルは「イラク石油公社」。オイルが戦争の目的だったと言われても仕方ないのではないか。

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2004年12月 5日 (日)

THE DA VINCI CODE

著  者:Dan Brown
出版社:Transworld Publishers(Corgi Books)
出版日:2004年
評  価:☆☆☆☆(説明)

 友達が貸してくれた洋書。ハリーポッターと違って、日本語版も既に出ているのだけれど、原書で読んでみた。
 ダヴィンチの絵に込められたメッセージや、暗号の謎解きが随所にあり、次々と降りかかる危機を切り抜けていく。退屈しない。だから、苦労しながらも読めたのだろう。映画にすれば面白いだろうと思う。と思っていたら、本当にトム・ハンクス主演で映画化が決まったらしい。
 あくまでこれは小説なので、ここに書いてあること全部を真実と受け止めることはできない。以下にあげたようなことが、真実っぽく説得力を持って語られている。トンデモ本に分類されるものかも知れないが、同様の内容の本が大真面目に出版されているらしい。
(1)イエス・キリストは実は結婚していて、子どもももうけている。
(2)その相手は娼婦から改心したとされるメアリーマグダレン(マグダラのマリア)
(3)その事実が都合が悪い教会がその証拠を葬ろうとしたが、失敗し逆に隠されてしまった。(これが聖杯の正体だという)などなど
そして、ダヴィンチの最後の晩餐に女性が描かれていること、これは現在確かめることのできる紛れもない真実。聖書によると13人の使徒は全員男性ということなのに。

 次々と明らかにされる謎を真実だと信じて読むと実に面白い。もちろん日本語版で良いのでオススメです。

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