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2004年9月

2004年9月14日 (火)

スルメを見てイカがわかるか!

著  者:養老孟司/茂木健一郎
出版社:角川書店
出版日:2003年12月10日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 著者2人の対談を中心としたヨモヤマ話。なんとも言えないフワフワした現実感のない話題が、延々と次々に展開される。
 例えば...「言葉は不思議だ。"リンゴ"と言った時、人それぞれ違う音を出している。書いた字も違う。リンゴそのものだって1つとして同じものはない。それでもリンゴはリンゴ。」または...「標本箱に閉じ込めた昆虫は自然か人工か?...自然と人工の両面を持っている。」といった感じ。こんな話に何の意味があるのか?
 タイトルの「スルメを見て...」というのは、「生きているものをデータ化するには、生きていて動いているものを止めなくちゃいけない。それでも生きているものを相手にしていると言えるのか?」というくだりにほんの僅かだけ出てくる。スルメはイカを干してある時点で動きを止めたもの。現実をデータ化して考えるのは、スルメを見てイカを語るようなものだ、と言うわけ。興味深い指摘だ。
 しかし、この話は本書のキーワードでもなんでもない。ダラダラした話の中にひょっこり顔を出した、少しマシな指摘という以上のものではない。これをタイトルにしていいのだろうか。「バカの壁」が売れに売れたことで、養老本を早く出したい、とばかりに角川書店が、何でもいいから対談させて、そのまま簡単に作った本、という感じがしてならない。口述筆記の「バカの壁」を上回る無責任さだ。
 それでも、心に引っかかった話を1つ。ほとんどの物はコントロールできない。自分の体や意識さえ。しかし、手入れすることはできる。里山のように適切に手を入れて、後は自然に任せる。これで維持することができる。人間関係も子育ても、ほとんどのことはままならない。それは当たり前のことなのだ。

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2004年9月 8日 (水)

アダムの呪い

著  者:ブライアン・サイクス (訳:大野晶子)
出版社:ソニー・マガジンズ
出版日:2004年5月30日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 女性にしか継承されず、遺伝子の組み換えも起こらないミトコンドリアDNAを基に、ヨーロッパの7つの母系集団を描き出した「イヴの7人の娘たち」の著者の第2弾。
 前作は、本当に鮮やかだった。研究者らしく論理的にヨーロッパの人々が、そしてアジアやアフリカの人々までが、数人の女性の子孫であることが導き出された。もっとも、遺伝学の専門家には異論はあるようだ。知人が遺伝学の先生に感想を求めたところ、「人類の起源がたった7人の女性だなんてことはあり得ない」と言われたらしい。「イヴの7人の娘たち」にはそんなことは書かれていない。読むつもりもないということなのだろうか。
 今回は著者の意図が少し分かり辛かった。男性のみに継承されるY染色体が今回のテーマ。「Y染色体でやってもいくつかの家系に分類されました」だけでは、本にならないのだろう。しかし、第2弾なのだから、読者はそれも期待したと思う。
 しかし、本書の主張は、ミトコンドリアDNAもY染色体も意思を持ち、自らのコピーを作るための戦いを繰り広げている、という、いわゆる「利己的な遺伝子」説だ。その傍証も数多く登場する。しかも、Y染色体はその戦いの敗者、このままでは、12万5千年後には男性は滅亡する。男性がいなければもちろん女性だって子孫を作ることはできない。なんという悲劇だ。(正直に言うと、そんな先まで心配しているわけでなないが)
 Y染色体は、受精の際に組み替えによる修復が行われない。だから個体の突然変異がそのまま蓄積されてしまう。重要な遺伝子が傷ついてもそのままだ。しかも、男性の生殖細胞は、数をかせぐために千回もコピーされるらしい、女性の生殖細胞は24回だ。当然突然変異が起きる可能性も高くなる。そして現代人のY染色体はひどく傷ついていいるものが多く、1940年以降、男性の精子の数は激減しているのだという。

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