19.その他ファンタジー

2009年11月11日 (水)

いさましいちびの駆け出し魔法使い

著  者:ダイアン・デュエイン 訳:田村美佐子
出版社:東京創元社
出版日:2009年9月25日初版
評  価:☆☆☆(説明)

 「本が好き!」プロジェクトで献本いただきました。感謝。

 「駆け出し魔法使い」シリーズ第3弾。第1巻の 「駆け出し魔法使いとはじまりの本」のレビューで、「これはあり得ないでしょ」という場面があるけれどあまり深く気にしないようにした、と書いた。それは、第2巻「駆け出し魔法使いと海の呪文」はもちろん、本書でもそうだ。前作で深海に行った魔法使いたちは、今回は遠くへと飛び出してしまう。

 登場人物は前作までと同じだが、今回の主人公はデリーン。前作までの主人公の1人ニータの妹だ。デリーンは前作で、姉のニータと友達のキットが魔法使いだという証拠をつかんだ。しかし「全部話してもらうからね」と言い置いただけで、深くは追求せずに2人に協力したのだ。仮病を使って両親の気を引いたりして。
 そう、デリーンは前作ですでに、主人公の姉を凌ぐ人気キャラクターになっていた。生意気だけれど正義感があり頭もいい少女。詳しくは第2巻を読んで欲しいが、上に書いた仮病だってまだ11才とはとても思えない周到さなのだ。そして、本書では彼女がスゴ腕のハッカーであることも判明する。恐るべしだ。

 ストーリーは、ニータの「魔法の指南書」を見て「誓約」を立ててしまったデリーンが、魔法使いになるための「最初の試練」を描く。スターウォーズの熱狂的なファンで、ライトセイバーでダースベイダーと戦うことが夢、という彼女の「最初の試練」の場は「宇宙」。
 それも地球からの観測限界である「事象の地平線」をはるかに越える遠い宇宙。そこで「力ある者たち」との遭遇と戦いが展開される。宇宙空間やターミナルの描写が、とても活き活きしている。著者はあの「スター・トレック」シリーズの著作も手がけているそうだ。なるほど。

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2009年8月19日 (水)

天地のはざま

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2001年3月26日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」「地の掟 月のまなざし」に続く連作ファンタジーの3冊目。前作で再会を果たした縄文のムラのポイシュマと弥生のクニのワカヒコの少年2人が、さらに過酷な運命に立ち向かう。

 シリーズを通して、縄文と弥生の文化の衝突と、それを通しての現代の社会や文明への疑問を投げかけてきた。自然や動物を神として崇める気持ちを失ったことや、「所有」の概念が生んでしまった身分制度や陰謀などなど。
 そして今回物語の俎上に上がったのは「交渉」。弥生の悪しき習慣を一身に体現するホムタという男がいるのだが、彼が別のムラとの産物の交換の場でこう言う「すこしでも得な交換をするのが、おれたちの役目」このあとホムタは「なんていやしいやつだ」とか言われて足蹴にされてしまう。
 「交渉」が「いやしい」とは..。身分制度や陰謀という言葉に感じる負のイメージは「交渉」にはない。だいいち仕事でも生活でも、誰かに何かを頼んだり頼まれたり、どこを向いても交渉だらけなのだ。(関西人だし。過度な交渉は自粛しているけれど)..でも、本書を読んでいると確かに「いやしい」と思えてしまう。

 話を本書に戻すと、これまでの縄文のムラと弥生のクニに加えて、さらに強大なクニが物語に絡んでくる。そして、ポイシュマが大化けする。物語がスケールアップして、いよいよ佳境にはいる予感を残して終わる。次が最終巻。読むのが楽しみだ。

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2009年8月13日 (木)

地の掟 月のまなざし

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:2000年1月28日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「月神の統べる森で」に続くシリーズ2冊目。前回、縄文のムラと弥生のクニの敵同士として出会い、心のわだかまりがすっかり晴れたとは言えないまでも、「次に会う時は友に」と別れたポイシュマとワカヒコの2人の少年のその後を描く。

 少年たちを待っていたのは、大人の理屈の世界と言える。心根の真っ直ぐな縄文のムラの人々でさえ、災いを背負うと言われる星の息子であるポイシュマをすぐに受け入れることはできない。少年がそこを出て行けば、1人で生きてはいけないだろうことは分かっていてもだ。
 弥生のクニに帰還したワカヒコの運命はさらに厳しいものだった。ムラとは違って身分制度があるクニでは、人々は謀(はかりごと)を覚えてしまった。女王ともいえるヒメカの甥という身分は、ワカヒコの安全を保証するどころか、謀略の対象となる原因となってしまった。

 稲作を覚え、周囲を柵で囲って定住する弥生文化は、その前の狩猟採集生活の縄文文化より優れていると考えられがちだ。技術の観点からは断絶がないかぎり、前の時代の上に積み重ねていける以上、後の時代のものが前の時代のものより優れていると言うこともできる。しかし、社会制度は新しいものが必ず優れているとは言えない。
 「所有」の概念が身分制度を作ったとはよく指摘されるが、身分制度が謀を生み出したとも言えるのではないか、と思う。前作では自然や動物の神性を見ることができるかどうかという違いであったが、本書では悪しき概念(謀、裏切りなど)までが弥生のクニでは生まれている。その差がポイシュマを救いワカヒコには厳しく覆いかかる。
 あえて理屈を付ければこんな感想が言えるが、運命を背負った2人の少年の物語が、起伏にとんだストーリーで進む。それだけを楽しんで読む方が素直な読み方かもしれない。

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2009年7月30日 (木)

王国の鍵2 地の底の火曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年8月31日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 「王国の鍵」シリーズの第2弾。前作「アーサーの月曜日」で偶然に創造主の後継者として選ばれた主人公のアーサー。異世界である「ハウス」の支配者の一人「マンデー」との闘いの末、第一の鍵を手に入れて現実世界に戻って、恐ろしい伝染病から街を救った。しかし、ホッとしたのもつかの間で、すぐに「チューズデー」の挑戦を受けることになった。
 もうお分かりのように、闘うべき相手は「マンデー」から「サンデー」までの7人いて、手に入れるべき鍵も7つある。マンデーが現実世界に手を出せるのは月曜日だけ、チューズデーは火曜日だけ..という決まりがある。一見すると何とか1日しのげば攻撃をかわせそうに思うがそうではない。次の日の相手が手ぐすねを引いて待っているからだ。アーサーの戦いは日替わりで相手を変えて続く。なんと過酷なことか。

 今回の相手のチューズデーは冷酷で筋骨逞しい大男。「ハウス」の「地底界」のさらに下で、労働者たちに採掘の重労働を強いている。そして部下のグロテスク兄弟(なんという名前だ)に命じて現実世界の経済を大混乱させて、第一の鍵を渡さなければアーサーの家族を破滅させる、と脅しをかけてきた。
 第一の鍵のおかげで少しは魔力が備わったとは言え、アーサーは普通の少年。端っから勝てそうにないし、実際何度も絶望的な状況に陥る。でも要所要所で協力者に恵まれて(冷酷なチューズデーは人気がないのだ)...というストーリー。

 都合が良すぎる展開、と言ってしまうこともできる。でも、敵役も含めて多彩なキャラクターと起伏のあるストーリーは楽しかった。そしてアーサーは、偶然に選ばれただけの運命なのにそれを受け止めたばかりでなく、普通の人間でありたいと思いある決断をする。アーサーしてみれば「都合が良すぎる」なんてとんでもないのだ。

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2009年7月23日 (木)

月神の統べる森で

著  者:たつみや章
出版社:講談社
出版日:1998年12月11日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」のファンタジーのコミュニティで話題になっていたシリーズの1巻目。実は半年ほど前に小学生だった娘が読んでいたシリーズ。小学校の図書館にあったのだから小学生向きの本なんでしょう。でも、子供向けの本でも大人が読んで面白い場合が2つある。1つは子どもに頃に戻ったように楽しめるもの、もう1つは大人なりの読み方で考えさせられるもの。本書はその両方、どちらかと言えば後者。

 舞台は縄文時代のムラ。弥生文化に接触する時代のことらしい。彼らは、月や太陽を神と崇め、川にも木にも動物にも、家の戸口にまでカムイという神的な存在を感じ、お願いをしたり感謝したりして暮らしている。時にはその姿を目にしたり、その声を聞いたりすることもある。
 そして、彼らが暮らしていた土地に、海を越えて言葉も服装も習慣も違う「ヒメカの民」が移り住む。月と太陽は神として崇めているが、自然には敬意を払わない。山菜を根こそぎ採ってしまうし、魚も動物も一網打尽という具合。やがて衝突が起きる、これが物語の発端。

 その後、それぞれの部族の少年である、ポイシュマとワカヒコを中心にして、物語は展開していく。少年ながら背負ったものがあって泣かせるシーンや、部族同士の抗争にハラハラするところもあって、この辺りが「楽しめる」部分。
 「考えさせられる部分」は..。1つは、川や木や動物に神的なものを感じて見る、ということが、縄文の人々にはできて私たちにはできなくなっているのではないか?ということ。深海の生物の目が退化するように。
 もう1つは文明について。「ヒメカの民」は土地を囲いイネを育てて暮らす。狩りや採集による暮らしと比べれば安定しているし、文明が1段階進んだと言える。そして、その段階を何段も進んだ先にあるのが私たちの社会。本書の限りでは「ヒメカの民」は無礼で知恵の足りない悪役だ。だとすればその先にある私たちは...?

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2009年7月15日 (水)

リリス

著  者:ジョージ・マクドナルド 訳:荒俣宏
出版社:筑摩書房
出版日:1986年10月28日 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書はなんと1895年に英国で出版されたもの。100年以上前だ。「アリス」のルイス・キャロルや「指輪物語」のトールキンに大きな影響を与えた、と裏表紙の紹介に書かれている。トールキンをして「ファンタジーの祖」という言い方をする方もいるが(私もどこかでそう言ったかもしれない)、さらに遡る先祖がいるということだ。
 実はこの本、20年ぐらい前に家族が買ったものなのだが、私が入っている「本カフェ」というSNSで友達に「読みましたか?」って聞かれたことから手に取ったもの。何度かの引っ越しや本棚の整理をくぐり抜けて、20年も眠り続けた本。それを読むことになったのは何かの縁だと思う。

 主人公ヴェインは、先祖代々続く屋敷を相続し、その図書室で出会った不思議な老人の導きで異世界へ足を踏み入れる。そこでは、荒涼とした大地に魔物が潜み、死者が眠る部屋がある、寒々しい世界。かと思えば、川が流れ、リンゴの実がなり、大人にならない子どもたちが暮らしてもいる。
 解説による後付けの知識を言えば、「リリス」はヘブライの伝承に出てくるアダムの最初の妻の名。異世界の人々や出来事の多くは、創世記の時代の登場人物や出来事と関連があるらしい。生と死の問題を扱うことも含めて、宗教的な意味合いを持った物語だと言える。

 しかし、そうした宗教的な含みを除いても本書の鑑賞はできる。この物語は「夏の夜の夢」のようなのだ。シェイクスピアのそれではなくて、夢の中の出来事がきっかけで醒めてしまうような浅い眠りの夢。異世界で、逃げ出そうとドアを開けたり、穴に落ちたりすると、夢から醒めるように元の世界に戻ってしまう。
 それに、ミミズを放り投げると蝶に変身したり、地面が盛り上がって魔物の姿になったりは、夢らしいイマジネーションの世界だ。「ファンタジー」に「幻想文学」という言葉を充てることがあるが、本書はまさに「幻想」そのもの。奔放なイメージが楽しめれば本書は魅力ある作品となるだろう。

この後は、書評ではなく、読んでいて思い出した本について書いています。興味のある方はどうぞ

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2009年7月 5日 (日)

王国の鍵1 アーサーの月曜日

著  者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2009年4月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 主婦の友社さまから献本いただきました。感謝。

 著者の作品を読むのは初めてだ。少し調べてみると、「古王国物語」シリーズ、「セブンスタワー」シリーズの著者。この2つの書名は、図書館の書棚で見た覚えがある。そして、本書から始まる「王国の鍵」シリーズは、米国で2003年から毎年1巻ずつ現在までに6巻出版され、その全巻がベストセラー250万部突破という、「超弩級人気新シリーズ(帯の惹句から)」だそうだ。

 主人公はアーサー、7年生というから日本では中学1年生の少年。舞台はおそらく現代の米国。新しい学校に転校してきた初日、長距離走の授業中に、アーサーの前に車椅子に乗った男とそれを押す執事風の男が現れる。それからというもの、不気味な連中につきまとわれ、町は「催眠ペスト」と呼ばれる奇病に襲われる。
 アーサーにはぜんそくの持病があって、後になって分かるのだが、その病気ゆえに「偶然に」創造主の遺志を守り、世界を司る「ハウス」を支配する後継者に指名されたのだ。身の回りに起こる不吉な出来事は、すべてこのことに関連している。彼は街を奇病から救うために「ハウス」に単身乗り込んで行く。

 原題は「The Keys to The Kingdom」。「王国の鍵」としても間違いではないが、アーサーが赴く「ハウス」は、どこかの王様が治める王国ではない。「Kingdom」に含まれる「神の国」という意味合いもあると見るのが正解なのだろう。なぜなら「ハウス」は創造主がお造りになられた場所で、そこの人々は人智を超えた者たちだからだ。
 さらに副題「アーサーの月曜日」の原題は「Mister Monday」。これから想像するに、MondayからSundayまでの7つの物語がありそうだ。つまり、本書は神の領域で起きる事件に少年アーサーが立ち向かう長い物語の序章。序章としては充分な盛り上がりと魅力に満ちた本だ。まだ活躍が予想される魅力的なキャラクターもいるし、次の事件を知らせるベルはもう鳴っている。次巻(7月25日発売) 以降が楽しみ。

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2009年7月 2日 (木)

ウェストマーク戦記3 マリアンシュタットの嵐

著  者:ロイド・アリグザンダー 訳:宮下嶺夫
出版社:評論社
出版日:2008年11月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1作目で主人公テオたちは悪役の独裁者からウェストマークの国を救い、2作目では大きな試練を乗り越えて隣国レギア王国の侵攻を押し返し、さて3作目の本書では..と期待が高まる。これまで2作それぞれ一件落着のハッピーエンドには違いない。しかし、大きな問題を抱えたままだった。それは、「君主制を残すのか、革命によって民主制を勝ち取るのか」という問題だ。ここには、著者なりの解がある。

 前作の終わりで、アウグスタ女王が代表する王室と、平民の執政官3人という統治体制に達した。君主制と民主制の中間と言うか折衷案と言うか、ひとまずの解決策には違いない。英明な女王にも恵まれ、このままで王国の平和と安定が続いてもおかしくない。しかし、多大な犠牲の上に得た平和と安定は、一夜にして崩壊してしまう。
 女王とテオ、革命家のフロリアン、今やゲリラの頭目であるジャスティン。微妙なバランスの上で成り立っていた協力関係も、結び目がほどけるようにバラバラになってしまう。事態が流動化すると、それぞれが最終的に目指すものに、それぞれのやり方で突き進んでしまう。

 今回は首都マリアンシュタットが戦禍に見舞われる、市街戦だ。前作の山岳ゲリラのあり方も凄まじかったが、今回はさらに胸を衝かれる出来事が続く。訳者あとがきによると、著者自身の戦場体験、レジスタンス支援体験に基づくものだそうだ。フィクションとして楽しむも良しだが、国のあり方、命を賭ける価値があるものはあるのかなど、深く考えさせられる物語でもある。

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2009年6月24日 (水)

ウェストマーク戦記2 ケストレルの戦争

著  者:ロイド・アリグザンダー 訳:宮下嶺夫
出版社:評論社
出版日:2008年11月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 ウェストマーク戦記3部作の2冊目。1冊目の「独裁者の王国」で協力して困難に立ち向かった面々が、それぞれの立場で新しい生活を始めたところから物語は始まる。巻頭に付いている地図に書き込みが増えていることで分かるように、少し舞台となる世界が広がり、そして物語は複雑さを増している。

 今回ウェストマーク王国が直面した困難は、隣国レギア王国からの侵攻だ。単純な領土争いではなく、ウェストマーク王家に対する貴族や将軍の陰謀、レギア王家内部の事情などが絡んでいるらしい。
 そして、対するウェストマーク王国側は、アウグスタ女王が率いる正規軍と、革命家のフロリアンが率いる市民軍、さらに市民軍の中には別行動をとるゲリラ部隊が、微妙な協力関係を保って迎え撃つ。前作の主人公テオは、市民軍と行動を共にする。

 「複雑さ」という点では、前作で独裁者の宰相に立ち向かうことでは一致しても「君主制を維持するのか、それも革命によって打倒するのか」という、難問を抱えたままだが、今回はさらに答えのない重い問いかけが残る。
 それは、戦争という非常時にあっての様々な行為の評価だ。戦時下の英雄も視点を変えれば残忍な殺人者に他ならない。しかし、そうしなければ仲間を祖国を守ることができないとすれば...。前作が児童書とは言え大人も楽しめるユーモアのある冒険小説だとすると、一転して本書は重い問いかけを読者に投げかける戦争小説と言えるだろう。

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2009年6月17日 (水)

ウェストマーク戦記1 王国の独裁者

著  者:ロイド・アリグザンダー 訳:宮下嶺夫
出版社:評論社
出版日:2008年11月30日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ユーモラスな登場人物、友情、成長、「そうだったんだ」という驚き、児童文学として子どもが楽しめそうなのはもちろん、大人も楽しめる。著者は、本書の出版社である評論社から、1970年代以降少なくない数の作品が出版されている。それでも私を含め馴染みがない場合は、劇団四季の「人間になりたがった猫」の原作者と言えば「ああそうなのか」と思う人もいるかもしれない。

 舞台はウェストマークという架空の王国。主人公は、印刷工見習のテオ。時の宰相カバルスはいわゆる独裁者で、文筆活動だけでなく印刷所までを弾圧し、テオがいる印刷工場も、警察の襲撃を受けてテオ自身はお尋ね者になってしまう。
 その後、口を開けばウソばかりのラス・ボンバス伯爵(伯爵というのもウソ)や、みなしご少女のミックル、革命家のフロリアンらと出会い。そして自分や国の「あるべき姿」のあり方について悩みながらも成長していく。
 脇役ながらラス・ボンバス伯爵が良い味を出している。どうしょうもないウソつきだけれども、ウソつきは悪人とは限らないし、ウソつきは信用できないとも限らない(普通は信用できないけれど)のだ。

 上に書いた通り、テオはこの国の「あるべき姿」について考える。それは難しい問いだ。革命家のフロリアンが目指すものはテオのそれとは違う。敵役のカバルスを倒せばみんなハッピー、というわかりやすい話ではない。「大人も楽しめる」とは「大人も悩む」ということでもある。
 本書は、「ウェストマーク戦記」3部作の1冊目。この1冊で紆余曲折を経て、役者たちが落ち着くところへ落ち着いた、というところだ。個性の際立った登場人物たちが、これからの2冊でどんな物語を紡ぎだしてくれるのか楽しみだ。

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