11.トールキン

2005年3月 6日 (日)

サー・ガウェインと緑の騎士 トールキンのアーサー王物語

著  者:J・R・R トールキン(訳:山本史郎)
出版社:原書房
出版日:2003年2月28日 第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 トールキンが書いたアーサー王物語の1つ「サー・ガウェインと緑の騎士」と、詩の「真珠」と、ギリシャ神話を基にした「サー・オルフェオ」の3編を収めたもの。
 この3編とも中世の英国で書かれたものらしい。つまり、これらは、純粋な意味でのトールキンの作品ではない。中世の英語で書かれた物語をトールキンが現代英語に訳し、それをさらに日本語に訳したものを読んでいることになる。
 実は、「サー・ガウェインと緑の騎士」を読んで、前に読んだサトクリフが書いた物語と、かなり細部まで同じであることに驚いたのだが、そういう事情なのだ。つまり、基になる話(作者不詳)があって、それを二人が現代語訳を発表し、その日本語版が日本で出版される。瀬戸内寂聴と谷崎潤一郎が源氏物語をそれぞれ現代語で発表し、それを英語にしたようなもの。それぞれの訳者が現代語に込めたニュアンスなど伝わりようもないのだから、「同じだ」と思っても仕方ない。
 現に、古英語では頭韻が多用されていて、トールキンは現代語訳の際にもそうした響きを伝えようとしたらしい。しかし、日本語にした時にそれを伝えるのは至難の技。
 80ページ近くの詩としては大変に長い「真珠」が、いささか退屈だとしても、トールキンの責任ではない。宗教的社会的なバックグラウンドが異なっているので、解説を読むまで何が何だか分からなかった。

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2004年8月13日 (金)

終わらざりし物語(上)(下)

著  者:J・R・R・トールキン クリストファー・トールキン編
出版社:河出書房新社
出版日:2003年12月20日初版 2004年1月30日第3刷
評  価:☆☆☆(説明)

 トールキンが、ホビットの冒険や指輪物語を執筆、出版するに時に、膨大な背景世界を構想していた。その中で出版を目的に書きためた原稿をつないで、指輪物語の前史に当たるものを、息子のクリストファーが本にしたものが「シルマリルの伝説」。首尾一貫しないところもあり、読み辛いものだったが、それでもひとつの物語の体を成していた。
 本書は、さらに断片的に残っていた遺稿を、若干解説を加えつつも、断片は断片のまま収録したもの。序文にあるように、指輪物語の読者で、その歴史的背景の探求に関心がある人でなければ、大半の人には読むに値しない。映画The Lord of the Ringsを見ただけの人には、全くわけがわからないはず。この本は読者を選別する。
 私は、悪戦苦闘しながらも、指輪物語、シルマリルの伝説、ホビットの冒険他を読んできたし、歴史的背景にも興味があるので、さらに悪戦苦闘したが何とか読み切った。
 トゥオル、トゥーリンの話は面白かったし、第三紀のゴンドールとローハンの友情や、ガンダルフらイスタリの話は、好奇心を満たしてくれた。読んでいて歴史をひも解くような感覚が何度もした。そう、これは、それぞれは断片ながら、ひとつの世界の歴史を記録した、トールキン世界の歴史史料を集めたものなのだ。この本の読者は、もはや研究者だということか。
 実は、中つ国の歴史シリーズという12巻の書籍があるらしい。この上まだ12冊も。いったいトールキンは、本当に1つの世界の歴史を作ろうとしていたのではないだろうか。英語版なので躊躇しているが、日本語版の出版予定はあるのだろうか。

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2004年6月14日 (月)

トールキン小品集

著  者:J・R・R・トールキン (約:吉田新一他)
出版社:評論社
出版日:1975年3月20日初版 1993年4月10日第8刷
評  価:☆☆☆(説明)

 トールキンの短篇集。「農夫ジャイルズの冒険」「星をのんだかじや」「ニグルの木の葉」「トム・ボンバディルの冒険」を収録。
 トム・ボンバディルは、指輪物語に登場する人物で、全ての物の前に存在していたとされる。魔王サウロンも手が出せないとも言われている。そういうこともあって、「トム・ボンバディルの冒険」に興味があって手に取った。
 しかし、これは16篇の詩からなる詩集で、しかも、トム・ボンバディルは最初の2篇にしか登場しないし、読んだ限りはただの「陽気なおじさん」としか描かれていない。トールキンを深く理解するためには必要な詩らしいのだが、正直に言うとちょっとあてがはずれた感じ。
 「農夫ジャイルズの冒険」は、ホビットの冒険のような冒険譚。竜も出てくる。運と不思議な刀の力で最後には王様になる。まぁ、読める。
 「星をのんだかじや」「ニグルの木の葉」は、メルヘン。トールキンの他の作品とは違った感じで、冒険はない。フワフワとした感じの捉えどころのない話で、どうも面白くなかった。あとがきに訳者の解説があり、「星をのんだかじや」では、人間の世界と妖精の世界の関わりについての作者の考え、「ニグルの木の葉」では、キリスト教的な要素が指摘されていた。これで、やっと腑に落ちた。そういうことだったのか。

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2003年10月29日 (水)

シルマリルの物語(上)(下)

著  者:J・R・R・トールキン他 (訳:田中明子)
出版社:評論社
出版日:1982年3月10日初版 1994年9月30日第7刷
評  価:☆☆☆(説明)

 指輪物語を遥かに遡る天地創造を含む神話の時代からの話。トールキンの世界観がここまで深いとは驚きだ。ロードオブザリングを映画で観ただけでは想像もつかないと思う。
 この世界は、イルーヴァタアルという創造主が、アイヌアという神々を使って創造した。このアイヌアのうち、最も力のあるメルコオルが邪な心を持ち、冥王モルゴスとなる。このモルゴスの破滅までが、第一紀。この後に、二紀、三紀と続く。
 創造主が最初に世界に住まわせたのがエルフ族。彼らは指輪物語に出てくるような、高貴で完成された人々ではない。強欲であったり、憎しみ殺し合うことさえある。この話で1つ特徴的な言葉が「誓約」、つまり約束。エルフ達は、誓約を破らない。というか破ることができない。「シルマリルという宝玉をこの世の果てまで取り返しに行く」という誓約を立ててしまったフェアノオルの一族は、このために、相手が誰であろうとシルマリルを奪い返すために戦うハメになり、同族同士の争いに陥る。
 ちなみに、指輪物語は、第三紀の終わりの話。第二紀は、エルフと人間の連合軍がサウロンから1つの指輪を奪うまで。サウロンはかつてはモルゴスの第一の手下、エルロンドは、シルマリルの所有者の息子で第一紀の終わりに生まれている、というように、物語は、連綿と続いているのだ。

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2003年10月 9日 (木)

ホビットの冒険

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:岩波書店
出版日:1965年10月13日発行 1994年11月15日第23刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 指輪物語に先立つビルボとガンダルフとドワーフの冒険の話。
 すんなりと面白く最後まで読めた。トールキン先生は、この本の後、勧められて指輪物語を書いたということだ。指輪物語は少し力みすぎたのかも。
 指輪物語の主人公フロドと違って、この物語の主人公ビルボ(フロドの養父だ)は、自分の知恵と機転と行動力で幾度も危機を切り抜ける。エルフは指輪物語では大変に高貴な種族として描かれていたが、この物語ではエルロンド以外のエルフは随分と人間くさい。宝物をブン捕りに攻めてきたりもする。
 最後は、ゴブリン対エルフ、ドワーフ、人間、ホビットの連合軍の戦いになり、登場人物が大集合して大団円を迎える。なかなかの盛り上がりだ。
 話の中に、エルロンドも出てくるし、ビルボはこの冒険の途中で、ゴクリから指輪を得る。映画のロードオブザリングで石になったトロルが出てくる場面があるが、そのトロルが石になったいきさつも分かる。ギムリのお父さんのグローインは端役だけれどちゃんと出ている。
 と言うことで、映画を見て興味を持った人は、この本を読むと面白みが増すんじゃないかな。「指輪物語」ほど長くないしテンポ良く進むので、途中で挫折ということも少ないだろうし

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2003年5月 1日 (木)

指輪物語6 王の帰還(下)

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:評論社
出版日:1975年2月28日初版
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 いよいよ6分冊の6刷目。長い指輪を捨てる苦難の旅と戦いの日々がクライマックに達し、そして大団円を迎える。と思っていたら、指輪を捨てる旅はこの分冊の序盤であっさりと完結し、冥王サウロンも滅んでしまう。(もちろん、それなりのドンデン返しやストーリーの工夫はあるのだが)
 この時点で、まだ200ページもの残りがあって、この先いったい何があるのだろうと思っていたら、後日談が続いていた。
 トールキンの世界観では、西方に神々の国があって、寿命に限りがないエルフたちは然るべきときに船に乗ってそちらに渡ることになっている。だからフロドも含めガンダルフやエルロンドらが、船に乗って旅立つシーンは、重要な意味を持つとして良いだろう。でも、一度やられてしまったはずのサルーマンが、ちょこちょこと出てきて悪さするなんてエピソードは必要なのか理解に苦しむ。巻末の筆者ことわりがきには、「話の構想の中では重要な部分」とあるが。
 「追補編」は、資料編にしか見えないし、相当読みづらいがガマンして読んでよかった。この物語の背景には、数倍か数十倍の壮大なドラマがあり、その一端でも垣間見ることができる。本編に数倍の厚みを加える効果がある。

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2003年4月21日 (月)

指輪物語5 王の帰還(上)

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:評論社
出版日:1974年12月20日初版
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 前冊から、まる1年待たされた当時の読者は辛かったろうと思う。なんせ絶望のままに放っておかれたのだから。
 ガンダルフが長駆ゴンドールまで行くところから、アラゴルンが救世主のように現れて、ミナス・ティリスを包囲するモルドール軍を打ち破り、続いてモルドールの黒門に兵を進めるところまで。
 この分冊は、合戦あり、ローハンの女騎士エオウィンの活躍やアラゴルンに対する恋心ありと、ドラマチックな盛り上がりが多く、映画向きだと思う。中でも、エオウィンがナズグルの首領を倒すシーンはゾクゾクしました。これまでは戦いのシーンが多く、主な登場人物が男ばかりで汗臭いお話でしたが、ここで救われた感じです。
 今回も、太古の人間の王との約束を果たさなかったために、眠ることを許されなかった死者たちを、人間の王としてアラゴルンが率いてきたり、普段は姿を見せない山の原住民がローハン軍に道案内したりと、多彩な登場人物が現れる。
 今までの中で(特に前冊との比較で際立って)展開が速い事もあって、最も読ませる一冊。

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2003年4月15日 (火)

指輪物語4 二つの塔(下)

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:評論社
出版日:1973年12月20日 1981年12月20日第6刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 前冊と打って代わって、この分冊は全篇フロドとサム、そしてゴクリのストーリーが280ページに渡って続く。
(ちなみに、ゴクリは映画ではゴラムになっている。原書ではGollumだから名前だとするとゴラムで良いのだろう。しかし、Gollumは喉を鳴らす音の擬音で、彼が食べ物の魚を求めて良く喉を鳴らしていたことから付いたあだ名という設定になっているらしいから、それを訳してゴクリとなった。)
 跡をつけて来たゴクリを捕まえて道案内にしてモルドールまで行く。悪者がそう簡単に改心するはずもないが、それでも道案内の訳を果たして、モルドール内に入り込むことに成功する。しかし、ゴクリの奸計によって、シュロブという大グモに襲われ、フロドは意識を失いオークたちに連れ去られてしまう。
 全くの絶望の中で、この分冊は終わることになる。鉛のような重苦しさを読者に残したままで。なんという展開だろう。
 途中で、ボロミアの弟ファラミアに会う。少しずつ登場人物が増えていくのも、この物語の特徴か。結果的に指輪の魔力に屈してしまった兄と違って、ファラミアは指輪を奪おうとしなかった。よくできた人物だ。
 話の展開の割には長い。映画ではこの分冊の部分は何分になるのだろう。

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指輪物語3 二つの塔(上)

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:評論社
出版日:1973年6月20日 1984年8月30日第9刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 指輪物語6分冊のその3。映画の第2作は既に公開になっているが、まだ見ていない。よって、予告編で明らかになってしまったことを除けば、予備知識なしで読んだ。気のせいか前の2冊より物語に没入できたように思う。
 この分冊は、3手に分かれてしまった旅の仲間のうち、アラゴルン、レゴラス、ギムリの組と、メリーとピピンのホビットのコンビの2組を追ったもの。映画の主人公であるフロドは登場しない。かなり、大胆な章の割り振りだと思う。
 「二つの塔」というタイトルの割には塔の場面はあっけない。 「二つの塔」のうちの1つイセンガルドのオルサンクの塔がエント族によって攻略される、映画の予告編のシーンはない。アラゴルンたちが着いたときにはもう落ちていた。そこにいたサルーマンも、元の白の会議の主宰者にしては、実にあっけなくガンダルフに杖を折られてしまう。
 ローハン国が登場し、徐々に世界が広がっていく。色々なことが徐々に明らかになってくる。主人公不在の進行は確かに辛いが、進展はある分冊。

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2003年3月31日 (月)

指輪物語2 旅の仲間(下)

著  者:J・R・R・トールキン (訳:瀬田貞二)
出版社:評論社
出版日:1972年11月25日初版 1984年8月30日第8刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 指輪物語6分冊のその2。映画The Lord of the Ringsの1作目の後半にあたる。
 指輪を捨てる旅のために9人が選ばれて旅立ち、主人公フロドとサムが他とは別にモルドールへ向かうまで。
 途中一行のリーダー的存在であったガンダルフは、地底の怪物バグログとの戦いで地の底へ落ちてしまう。このバグログは、敵の一味ではなく、地上の生き物とは違う世界に棲む太古の魔物である。トールキンの世界は、敵と味方、善と悪のような単純なものではなく、もっと複層的なものであるらしい。
 ロスロリエンの姫君であるガラドリエルは、映画では私には奇人じみて見えたが、原作では思慮深き導き手として描かれている。この世界では非常に重要な人物のひとりであるらしい。映画を見てあの描き方に憤慨している人がいるのもわかる。

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