1.ファンタジー

2017年2月25日 (土)

RDG レッドデータガール 夏休みの過ごし方

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2010年5月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「RDG レッドデータガール はじめてのお使い」 「はじめてのお化粧」に続く第3巻。

 主人公は鈴原泉水子。熊野古道に近い山深い神社で育ち、東京郊外の鳳城学園という私立高校に進学。今は1年生。成り行きもあって生徒会執行部に所属しているが、前に出るタイプでも人をまとめるタイプでもない。ただ普通の女子でもない。彼女は「姫神憑き」という、その身に神が降りる体質?なのだ。

 今回、生徒会執行部は学園祭の企画をまとめるために、夏休みに合宿をすることになった。泉水子のルームメイトの宗田真響の地元の長野県戸隠で。高校生の男女が、避暑地に行って合宿。これが青春小説ならば、恋のひとつやふたつは生まれそうなシチュエーションだけれど..そういうことは起きない。

 真響も普通の女子ではなくて、戸隠忍者の血を引いていて、神霊を呼び出したりすることができる。合宿を言い出したのは真響で、思惑があってのことだった。その思惑が大小の事件を引き起こす。さらに、戸隠は修験の地、戸隠山は霊山。泉水子たちの行いが、封じられた「たいへんなもの」を招き出してしまう...。

 今回舞台となった戸隠に、私は少し縁があって、何度か足を運んだことがある。登場する地名やお社の名前は全部わかるし、そのあたりの雰囲気も思い浮かぶ。それが楽しかったし、「あそこなら、こういうことが起きても不思議じゃない」と思う。

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2017年1月11日 (水)

ハリー・ポッターと呪いの子

著  者:J.K.ローリング、ジョン・ティファニー、ジャック・ソーン
出版社:静山社
出版日:2016年11月11日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 ハリーポッターシリーズの8番目の物語。と言っても、これまでの7作とは少し違う。本書はシリーズ著者のJ・K・ローリングさんが書いた新たな物語を基にした舞台劇、その脚本を書籍化したもの。描かれている舞台も7作目の「ハリー・ポッターと死の秘宝」の19年後だ。

 「死の秘宝」のエピローグも「あの出来事(「ホグワーツの戦い」と言われているらし)」の19年後。ハリーの息子たちがホグワーツ特急に乗る、キングズ・クロス駅のプラットフォームのエピソードが描かれている。実は本書の冒頭は、そのエピソードとそっくり重なっている。そういう意味で、前の7作と本書は確かにつながっている。

 本書の主人公は、そのエピソードで初めて登場した、ハリーの二男のアルバス。同じくその場面にいた(ほとんど名前だけで、セリフはなかったけれど)、ドラコ・マルフォイの息子のスコーピウスが、重要な役割を担う。そう、本書は前7作でホグワーツにいた面々の、息子たちの物語。

 アルバスはハリーの息子として、重いものを背負っていた。スコーピウスもドラコの息子であるが故の偏見と闘っていた。19年経ってもなお人々は「あの出来事」を引きずっていた。世間の「目」を感じて、それぞれに孤独を抱えた、アルバスとスコーピウスの間には共感が生まれ、急速に近づいていく。

 引きずっているのはハリーも同じ、ドラコも同じ。そして一連の事件で息子を失った老魔法使いも。そんな中で、ハリーの額の傷が再び痛みだす...。
 面白かった。楽しめた。正直に言ってそんなに期待していなかった。「ハリーポッター」は既に完結した物語だし、その設定を使って「おまけ」のような話を作っても、大したものにならないだろう。そう思っていた。でも「完結した物語」の「その後」をうまく昇華した、読み応えのある作品になっていた。

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2016年12月 7日 (水)

RDG レッドデータガール はじめてのお化粧

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2009年5月30日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「RDG レッドデータガール はじめてのお使い」の続き。

 主人公の鈴原泉水子(いずみこ)と、同級生の相楽深行(みゆき)の2人が前作から引き続き登場。舞台は前作の熊野古道に近い山深い里の中学校から、一転して鳳城学園という東京の私立高校に移る(もっとも東京と言っても高尾山の近くなのだけれど)。泉水子はそこに新入生として入学してきた。

 ざっとおさらいすると、泉水子は「姫神憑き」という、その身に神が降りる体質?で、深行はそれを守る山伏の家系の男。泉水子の父親が進学先として選んだ鳳城学園も、どうやら普通の学校ではない。追々分かるのだけれど陰陽師やら戸隠忍者やらが「集められている」らしい。、

 泉水子の成長が著しい。と言っても「ひとりで高尾山まで来れた」とか「券売機で切符が買えた」とかいったことなんだけれど。でも、これは外から見える象徴的な出来事であって、それを上回って内面も成長した。自分で考える、自分を受け入れる、ことができるようになった。

 舞台が高校に移って、登場人物のほとんどが高校生になって、寮生活や生徒会や部活動が描かれて、ますます「学園モノ」の様相が濃くなってきた。濃いと言えば、学園の生徒たちのキャラクターも濃い。「影の生徒会長」なんてのもいて。物語がどこに行こうとしているのか、目が離せない。

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2016年11月13日 (日)

君の名は。Another Side:Earthbound

著  者:加納新太 原作:新海誠
出版社:KADOKAWA
出版日:2016年8月1日 初版 2016年10月10日 7刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 大ヒット映画の「君の名は。」には、3つの作品がある。映画と、新海監督が書き下ろした原作の「小説 君の名は。」と、そして本書。映画を観て本書を読んだ人が口をそろえて言う「この本は読んだ方がいい」あるいは「読むべきだ」と。そう言われて読まない選択はないと思う。

 最初に言うと、本書は映画か小説かの、少なくともどちらかを観たか読んだかした人向けの作品だ。だから、ここでも登場人物やストーリーの紹介はしない。そういうことは既に知っている、という人でないと本書を読んでも分からない。

 映画と小説の違いは、小説が一人称で語られることで、映画では想像するしかなかった、主人公の三葉と瀧の心情が言葉で表されていることだ。ストーリーやエピソードに違いはない。本書は章ごとに(本書では第一話、第二話..となっている)、瀧、テッシー、四葉、三葉と四葉の父の俊樹、と主人公が変わる。そこには映画にも小説にもないエピソードが綴られている。

 読み終わって「これはやられたな」と思った。著者のというのか、映画のマーケティングのというのか、とにかく制作側の術中にはまってしまった。清々しいぐらいに。..皮肉な言い方になってしまったけれど、素直に言えば「とてもよかった」ということだ。

 第一話、第二話までは、「映画と同じストーリーを別の視点で」という、言ってしまえばそれだけなので、気軽に読んでいた。ところが、第三話の四葉の物語で趣が変わって、読者はちょっと遠いところに連れていかれる。

 そしておそらく本書のキモとなるのは、第四話の俊樹の物語。映画でも小説でも、その心情があまり描かれることなく、ネガティブな印象が残った俊樹、それ以上に描かれなかった、三葉と四葉の母の二葉のことが描かれる。私自身と一番近いのは俊樹だと気が付いた。

 私も「映画を観て本書を読んだ人」として、他の人たちの仲間入りをする。映画を観た人は、この本は読んだ方がいい。絶対。

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2016年11月 6日 (日)

RDG レッドデータガール はじめてのお使い

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2008年7月5日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 もうかなり前に、本好きの知人から薦められていたのだけれど、「全6巻」ということに、ちょっと躊躇を感じて尻込みしていたら、読まずに随分経ってしまった。

 主人公は鈴原泉水子(いずみこ)。第一巻の本書では中学3年生。世界遺産に認定された熊野古道に接する神社「玉倉神社」の宮司の孫でその境内に住んでいる。神社と学校の往復以外寄り道ひとつしたことがない。用事があって遠出する時は、自家用ヘリ(!!)で出かける。いわば「お嬢様」で絶滅危惧種の少女(Red Data Girl)というわけだ。

 第一巻なので、登場人物と設定の紹介を兼ねて物語が進む。泉水子の家系を守る使命を持った、山伏の家系の相楽雪政と深行(みゆき)の父子や、同級生らが物語に絡んでくる。今回の最大のヤマ場は、泉水子の修学旅行。何と言ったって寄り道ひとつしたことがない泉水子が、遠路はるばる東京へ旅行するのだ。

 面白かった。上の説明と「はじめてのお使い」というサブタイトルからは、ボーイミーツガール(ガールミーツボーイか?)系の学園ドラマが想像される。それは間違いではないのだけれど、それだけではない。

 そもそも「それを守る使命を持った山伏の家系」なんてものが存在するのだから、言い換えればとても危険なのだ。泉水子の家系というのは。徐々に明らかにされるのだけれど、古来からの神憑りの血族らしい。だからオカルトの要素にも満ちている。

 こういうの好きだ。もっと早く読んでいれば良かった。そう言えば、上橋菜穂子さんも本書のことを好きだと、どこかでおっしゃっていたように思う。

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2016年10月 6日 (木)

小説 君の名は。

著  者:新海誠
出版社:KADOKAWA
出版日:2016年6月25日 初版 2016年9月30日 18刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 大ヒット上映中の映画「君の名は。」の原作。映画の監督・脚本・編集ほかを務めた、新海誠監督による書き下ろしなので、「原作」というより「小説版 君の名は。」と言った方がいいかもしれない。ヒットした映画にままある公開後ではなく、8月の映画公開に先立って出版された。

 ストーリーは映画と同じ。映画をご覧になった方には、紹介する必要がないけれど、まだご覧になってない方のために。

 主人公は、山深い田舎町の糸守町に暮らす女子高生の三葉(みつは)と、東京で暮らす男子高校生の瀧(たき)の二人。ある朝、瀧が目覚めると、三葉の体の中に入っていた!そう、これまでにもいくつかの作品で扱われた「男女入れ替わり」の物語だ。

 物語が進んでいくと、この入れ替わりには大きな意味があったことがわかる。その時間・空間のスケールの拡大が、この物語の魅力。..と、ここまでは映画の宣伝のようなもの。これだけであれば映画を観たなら、わざわざもう一度小説で読むこともない。

 でも私は、わざわざもう一度小説で読んで良かったと思う。冒頭に書いた「「原作」というより「小説版 君の名は。」」という部分に通じるけれど、本書は新海監督によるもうひとつの別の「君の名は。」だと思う。何よりの違いは、本書は三葉と瀧の一人称で語られることだ。映像とセリフで進行する映画では分からなかった、あの時の三葉の、そして瀧の心情が言葉となって書かれている。

 映画を観て「良かった」と思う人にもおススメ。それから本書を読んで「良かった」と思った人には映画もおススメする。映画の映像美と音楽は、小説では分からないから。

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2016年9月 4日 (日)

黄金の烏

著  者:阿部智里
出版社:文藝春秋
出版日:2015年6月10日 第1刷 2016年7月5日 第3刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「烏に単は似合わない」「烏は主を選ばない」に続く、八咫烏シリーズの第3弾。本書で物語が大きく動き出した感じだ。これまでの2巻は、それはそれで面白かったが、シリーズが描く物語としては序章、まだ何も始まってなかったことが分かる。

 八咫烏が、私たちと同じ人間の形になって暮らしている、という世界。平安京にも似たその宮廷が舞台。本書の主人公は前作「烏は主を選ばない」と同じで、地方貴族の言えの少年の雪哉。前作での皇太子である若宮の側仕えを終えて帰郷していた。

 事の発端は、雪哉の故郷で起きた事件。人間でいうと「クスリでもやった」ように正気を失った八咫烏が、雪哉の目の前で女性と子どもを襲った。さらにこの事件の調査の途中で「大猿が村人たちを喰らい尽くして、集落をひとつ全滅させる」という凄惨な出来事が起きる。

 物語はこの後、舞台を中央の宮廷に移して、この2つの事件を追う。そこで展開される出来事は、この八咫烏が支配する世界の存在そのものを揺るがす深刻な問題へと行き着く。

 読んでいて「あぁこう来るのか!」と思った。著者がどのように考えておられるかはわからないけれど、小野不由美さんの「十二国記」と重なる世界観を感じる。この世界は、まだまだ広がりがある、まだまだ物語は発展する、そんな予感が充満している。

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2016年8月24日 (水)

烏は主を選ばない

著  者:阿部智里
出版社:文藝春秋
出版日:2015年6月10日 第1刷 2016年7月25日 第11刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「烏に単は似合わない」の続編。いや「続編」という言い方は正確ではなくて、本書は前作と全く同じ時間に起きた別の出来事を描いた物語。著者はインタビューで、当初は前作と本書がひとつの物語だったことを明かしている。だから「続編」よりは「下巻」、いや「裏編(そんな言葉ないと思うけど)」とか「SideB」とかが適切な表現か。

 改めてシリーズを紹介すると、私たちと同じ人の形になっている八咫烏の世界、平安京に似た宮廷を舞台としたファンタジー・ミステリーだ。前作では、皇太子である若宮の后選びを舞台に、后候補となった4人の姫たちを描いた。

 そして本書の主人公は、若宮の近習となった少年の雪哉。雪哉の目を通して、前作でほとんど何も明かされなかった、若宮に起きた出来事が描かれる。「若宮の后選び」という時間を、后候補の姫たちの側から描いた前作と、若宮の側から描いた本書、2作でひとつの物語、というわけだ。

 とは言うものの、本書では「若宮の后選び」は、ほとんど描かれない。描かれているのは「后選び」どころではない、その身を危うくするような事件だ。若宮は、10年前の政変で兄を追い落として皇太子の座に就いた。その兄の一派が巻き返しを図ってきたのだ。

 面白かった。人気が出るのも頷ける。前作の美しい姫が4人も登場するキラキラした感じから一変、気を抜くと殺されてしまうようなハードボイルドな展開。信頼と裏切り。正義と悪。ジャンプのマンガのようでワクワクさせる。

 「ぼんくら次男」と呼ばれている雪哉と、「うつけ」扱いされている若宮。「解説」にも書いてあったが、物語の主要な登場人物で「ぼんくら」や「うつけ」として現れて、本当にそうだった試しはない。本当の姿が早々にチラっと見えるのも楽しい。

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2016年7月28日 (木)

烏に単は似合わない

著  者:阿部智里
出版社:文藝春秋
出版日:2014年6月10日 第1刷 2016年6月5日 第14刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は著者のデビュー作にして、2012年の松本清張賞受賞作。その後、年に1作のペースで続編が出て、先日、5作目となる「玉依姫」が出版された。今や「八咫烏シリーズ」という、出版界やファンタジー、ミステリーファンが注目するシリーズとなっている。

 シリーズの世界観はこんな感じ。八咫烏の一族が支配する世界。一族は族長である「金烏(きんう)」を擁する「宗家」と、東西南北に分かれた貴族の四家に分かれている。その四家は覇権を争い、宗家との結びつきを強めることによって、勢力の拡大を狙う。

 本書の舞台は、平安京に似た宮廷。皇太子の若宮の后選びが行われることになり、貴族の四家それぞれの娘が、后候補として宮廷に登殿してくる。自らの家の将来を背にした「姫たちの女の戦い」を、煌びやかに描く。

 「烏」と「煌びやか」がアンマッチな感じがするけれど、彼らは普段は「人形(ひとがた)」という人間の姿をしていて、事があれば「鳥形」となって飛翔することができる。そして姫たちは美女揃いだ(皇太子の后候補になるぐらいだから、まぁ当然だけれど)。しかも、姉御肌、妖艶、清楚、無邪気と、キャラ設定が各種取り揃えてある。

 主人公は四家の一つの「東家」の二の姫の「あせび」。疱瘡を患った姉の代わりとして宮廷に登殿してきた。代役であるため、后候補としての教育をほとんど受けていない「世間知らずの姫」。読者は彼女の目を通して物語を見ることになり、その「世間知らず」加減が読者の目線と合っていて、ちょうどいい塩梅になっている。

 源氏物語の昔から最近の韓国ドラマまで、「宮廷」は「女の戦い」にうってつけの舞台。本書もすべり出しは、四家に宗家も加わって女ばかりの諍いやら友情やらが描かれる(彼女たちが住まう「桜花宮」は男子禁制)。ただし、それだけでは終わらない。

 本書は「松本清張賞受賞作」。表紙イラストはライトノベル・ファンタジー風で、実際そのように始まるのだけれど、その実はミステリーだ。出来事の裏側には秘められた真実があり、後半にそれが明らかになる様は、探偵小説のようだった。

 「解説」に次作のことが少しだけ紹介されていた。本書だけでもなかなか面白いのだけれど、次作のことを知って俄然期待が膨らんだ。これは金鉱脈のようなシリーズを掘り当てたかもしれない。

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2016年5月 8日 (日)

ダークエルフ物語 ドロウの遺産

著  者:R.A.サルバトーレ 監訳:安田均 訳:笠井道子
出版社:アスキー・メディアワークス
出版日:2008年11月14日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 私はファンタジーが好きで、海外作品もけっこう読んでいたのだけれど、ここしばらくは遠のいていた。本書のことも知らなかったのだけれど、シリーズが何巻かあるし、パラパラと読んだところ面白そうだったので、読むことにした。

 主人公はドリッズド・ドゥアーデンという名のダークエルフ。ダークエルフというのは、地下世界に棲む邪悪な種族。その世界は裏切りや謀略が渦巻く。ただしドリッズドは、そんな故郷と同族を捨てて地上世界に出てきている。

 ドリッズドは地上世界で、ドワーフの王や蛮人の友人や、人間の女性などの仲間を得て、争い事が絶えることはないまでも、それなりに穏やかな暮らしを得ていた。だたし、故郷の地下世界は、そんなドリッズドを放っておく世界ではなかった..。

 エルフにドワーフにゴブリン、魔法に召喚魔獣に魔法の武具。ダンジョンでの息もつかせぬ戦い。まさにファンタジーの王道のような物語だった。主人公が邪悪な種族の出自で、その同族から狙われる、という設定は「デビルマン」のようでもある。

 期待通りに面白かった。他のシリーズも読んでみようと思う。ただひとつ迂闊なことに、本書がシリーズ第1巻ではなかった。どうりで物語の随所に回想が度々はいるはずだ。これは最初に戻ってみた方がよいだろう。

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