2019年4月24日 (水)

「60点女子」最強論

著  者:広野郁子
出版社:合同フォレスト
出版日:2019年4月20日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 出版社のFacebookページによると、今月初めの発売以来、注文や問い合わせ、特に年配の女性からの問い合わせが多いそうだ。Amazonでもカテゴリーランキングの1位になっている。

 タイトルの「60点女子」という言葉がキャッチーだ。100点満点の60点。本書ではちょっと幅を持たせて「自己評価で50~70点」としている。50点以下つまり平均より下ではないと思うけれど、80点以上の人のように自分に自信がない。個性がない自分に自信がなくて、将来に漫然とした不安を持っている。そんな女性が「60点女子」。多くの女性が当てはまりそうだ。

 ところで著者は、マーケティング会社を経営する社長。その会社の年商は1億円超で、設立以来17年間で赤字は1期だけだという。「成功した女性起業家」そのもので、「60点」じゃなくて「100点」なんじゃないの?と、思うけれど、本書の前半を読めば「自己評価で60点」にも納得感がある。

 その「60点女子」が実は「最強」、というのが、本書のテーマ。「60点女子」は、その資質として「傾聴力」や「中立性」「地味な仕事でも確実にこなす力」「弱さへの共感」などを持っている。それは会社が必要としているもので他には代えがたい。だから「最強」というわけ。

 私も30年以上も会社や組織で働いているけれど、これには同意する。特に「地味な仕事でも~」については、自分が管理する立場になって 心からそう思う。「やっておいて」と言えば(いや場合によっては言わなくても)確実にしてくれる。そういうことにどれだけ助けられるか。その人がいなくなって、どれだけ困るか。(困るまで気が付かない、ということも多く、本当に申し訳ないのだけれど)

 ..とまぁ、ここまで紹介してきたけれど、本書の魅力はこんなところにはない。「60点女子」が実は「最強」、がテーマではあるけれど、本書の狙いはそれを説明することにはない。本書の狙いは「60点女子でも100点満点に近い人生を送れる」ということを、多くの女性に伝える、ということだ。

 「60点」が「80点」や「100点」になろうとする必要もない。短所を克服したり、無理に自分を変えようとしなくてもいい。「あなたのままでいい」今はそう思えないかもしれないけれど、自分を肯定してそう思えるきっかけが必ず訪れるから。そして一歩踏み出してみて。著者はそんなことを何度も言っている。

 最後に。この本は「あなたはあなたのまま、自分なりのスタイルで歩み続けてください」のように、最初から最後まで「あなた」に向けて、著者は書いている。「かつての私のように悩んでいる女性たちに、どうしても伝えたい」という著者の気持ちが、「あなた」という言葉の使い方に現れていると思う。そして「どうしても伝えたい」という気持ちに、私も共感するので、多くの人にこの本をお勧めしたい。

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2019年4月 7日 (日)

メモの魔力

著  者:前田裕二
出版社:幻冬舎
出版日:2018年12月25日 第1刷 2019年1月15日 第4刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は、昨年末の発売直後(実は、発売前から)に、Amazonの「ビジネス・経済書」ランキングの1位になり、現在まで上位ランクをキープし続けている。部数で言えば発売3ヵ月で30万部突破。

 著者は「SHOWROOM」という「仮想ライブ配信サービス」を立ち上げ、現在は運営会社の社長を務めている。まぁ本書の内容はこの事業とは直接の関係はない。著者が小学生のころから習慣になっているという「メモを書く」ということの効用とその方法について熱く語っている。

 効用として、次の5つのスキルが鍛えられる。「アイデアを生み出せるようになる(知的生産性)」「情報を素通りしなくなる(情報獲得の伝導率)」「相手のより深い話を聞き出せる(傾聴能力)」「話の骨組みがわかるようになる(構造化能力)」「曖昧な感覚や概念を言葉にできるようになる(言語化能力)」

 これらのスキルのカギとなるのが「抽象化」という作業。ある「事実」に対して、「つまり何なのか(What)」「どういうことなのか(How)」「どうしてなのか(Why)」という問いを発することで、他の物事への「転用」を可能にする。著者はその方法を丁寧に説明してくれている。

 オリジナリティを感じる本だと思う。それが「売れる」理由の一つなのだろう。

 メモをアイデアを生み出すツールとして捉えることは、まぁ「普通」と言える。しかし、傾聴能力や構造化能力、言語化能力の向上という効用は、視点が斬新だと思う。「いやいや、私も前からなんとなくそう思ってた」という人はいるだろうけれど、それこそ「曖昧な感覚や概念を言葉に」という「言語化」ができているかどうかで、大きな違いがある。

 「売れる」理由も分かるし、とても良い本なのだけれど、違和感も感じた。それは本書全体に感じる「何一つ見逃さない」という緊張感のこと。「同僚の何気ない一言に重要な情報が眠っていたと、1年後にわかるかもしれない」という理由で、聞いたことを全部メモする。映画や演劇を見れば、気づいたことを多い時には一つの作品で100個以上メモするという。もちろん著者はそれを強いているわけではないので、読者は自分なりに受け取って取り入れればいい。それは分かっているのだけれど、ちょっと「やり過ぎ」に思った。

 最後に。ちょっと気持ちが明るくなったこと。(「この映画、面白いな」で終わらせずに)「なぜ面白いのか」を言葉にして(メモでなくてもSNSででも)伝えれば、抽象化能力、言語化能力が身につく、と書いてあった。このブログで16年あまりも本の感想を書き続けている私は、さぞかし能力アップしていることだろう。

 

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「メモの魔力」 固定URL | 6.経済・実用書 | コメント (0)

2019年4月 4日 (木)

宝島

著  者:真藤順丈
出版社:講談社
出版日:2018年6月19日 第1刷 12月19日 第5刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 2018年下半期の直木賞受賞作。著者のことは寡聞にして知らなかった。プロフィールによると、2008年にダ・ヴィンチ文学賞大賞や日本ホラー小説大賞など、4つの賞を別々の作品で受賞している。

 舞台は沖縄、コザ市。この街に生まれ育った、グスク、レイ、ヤマコの3人の若者の物語。時代は1952年から1972年までの約20年間。念のため言うと、1952年はサンフランシスコ講和条約締結の年、1972年は本土復帰の年。どちらも沖縄の歴史に関連する、特に1972年は特別な年だ。そう、この物語は沖縄の言葉でいう「アメリカ世(ゆ):アメリカの統治時代」を描いている。

 物語は冒頭から疾走する。グスクとレイが「オンちゃん」の隣を走っている。嘉手納基地の中を、アメリカ兵の追撃を振り切るために必死に走っている。グスクとレイは、アメリカ軍の倉庫から、資材や医薬品、食料などを盗み出してくる「戦果アギヤー」の一員。「オンちゃん」は、そのリーダー。盗み出した「戦果」を街中に配るだけでなく、学校まで作った。オンちゃんは地元の「英雄」になっている。

 ところがオンちゃんは、冒頭の嘉手納基地での逃走劇のさなかに、行方知れずになってしまう。生死さえわからない。グスクはオンちゃんの親友で、レイは実弟、ヤマコは恋人だ。いなくなった「英雄」を追いかけて、探して、永遠の別れを自身に言い聞かせる、残された3人の三様の年月を、物語は描く。それは、本土復帰までの20年間の沖縄の真実を、その内側から描くことでもある。

 奔流のような物語に圧倒された。レイは触れると切れるカミソリのようになり、自分までも傷つけかねない。グスクはいくらか真っ当に見えるけれど、それでも危険な綱渡りだ。ヤマコはしなやかで力強いが、その中に脆さが見える。ハラハラし通しだ。正体が明らかにされない「語り部」の存在もとても効果的だと思う。

 最後に。一文を引用。

 勘弁してくれ、もう勘弁してくれ。この島の人たちはみんな、理不尽な運命にあらがう処世術を、見のよじれるような悲鳴や憎悪からの自衛手段を教えられて、いまもそれを次の世代へと引き継いでいる。

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2019年3月31日 (日)

ヘイ・ジュード

著  者:小路幸也
出版社:集英社
出版日:2018年4月30日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「東京バンドワゴン」シリーズの第13弾。

 前々作の「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」の続き。東京の下町にある古本屋&カフェの「東京バンドワゴン」。を営む堀田家の1年を描く。

 本書のシリーズは毎回、ミステリーと人情話が散りばめられてエピソードが重ねられる。時には、堀田家の存亡に関わる事件や、親しい人たちが抜き差しならない窮地に陥ることもある。ネタバレになるけれど、今回はそういった方面の大立ち回りではなく、メンバーの成長や新しいステージへの踏み出しが主に描かれる。

 例えば、当主の勘一の曾孫である花陽は医大を受験、花陽の母である藍子は夫の英国人のマードックさんとある決断を。堀田家を物心ともにサポートしてきたIT企業の社長の藤島さんは、高名な書家だった父が亡くなって、実家の後継者に。

 13巻、年に1回のペースで続いてきたシリーズだから13年。物語の中では7年の時間が流れている。元々大家族で、大勢の出入りもある堀田家だけれど、今回は多くの人に異動や決断があって「節目」を感じる。前々々作「ヒア・カムズ・ザ・サン」あたりから成長著しい研人くん(勘一の曾孫)が、さらに存在感を増した。

 最後のシーンで、本書のタイトルでもある、ビートルズの「ヘイ・ジュード」が歌われる。その歌詞を思い出すと、心に染み入る。

 Then you can start to make it better.(そうすれば、きっと良くなるから)

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「ヘイ・ジュード」 固定URL | 3.ミステリー39.小路幸也(バンドワゴン) | コメント (0)

2019年3月28日 (木)

日本の女性議員 どうすれば増えるのか

編著者:三浦まり
出版社:朝日新聞出版
出版日:2016年4月25日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 以前新聞に、「これまで1度も女性が、議員にも役所の課長以上にもなったことがない」鹿児島県の市のことが載っていて興味を持った。そうしたら引き寄せたように「女性議員」についての情報が集まってきた。本書はその一つで、図書館でいつも見る「新刊コーナー」にあった。3年前の本なのに。

 編著者の三浦まりさんは上智大学法学部の教授。専門は現代日本政治論、比較福祉国家、ジェンダーと政治。本書は執筆者7人による共同研究の成果。共同研究では、科学研究費補助金(科研費)を活用したり、全国会議員への郵送調査、女性国会議員へのインタビュー調査などを行っている。

 内容を概観する。「女性議員に関するこれまでと現況」「90年代の躍進」「2000年以降の停滞」「国会議員へのキャリアパス」「女性議員と男性議員の違い」「地方の女性議員」「女性が政治に参画するために」。包括的な内容で、今後の研究や実践の基礎になる素晴らしい研究だと思う。

 とても示唆に富んだ内容だと思うと同時に、「女性議員増加の必要性」を調査によって明らかにすることや、効用(メリット)の観点で論ずることの限界も感じた。

 「示唆」の一例をあげる。1990年代の調査で多少古いけれども、衆議院議員へのキャリアパスで、男性議員は地方政治家、政治家秘書、官僚で77.9%もあるのに対して、女性は15.1%しかいない。その代わり、大学等の教員、法曹関係が多く33.4%あるが、男性は13.8%しかいない。(複数の職業を経ている場合があるので合計は100%を超える)

 これから読み取れるのは、女性は「専門分野を学んだ」人が多く、男性は「政治を学んだ」人が多い(というか大半)、ということ。敢えて極論すると、男性は「国会議員になりたくて」、女性は「何かを実現するために」国会議員になった(人が多い)。私たちは、もっと専門性を持った人を国会に送るように努めた方がいいのではないか?。もちろん、それは男女を問わずだけれど。それが私が得た「示唆」。

 「限界」について。調査で女性議員と男性議員の政策志向の違いなどを明らかにしようとしたが、芳しい結果は得られなかった。現在の国会は「議員個人」よりも「政党」が優先される。「女性」というくくりで傾向を見つけるのは難しい。

 だから「女性議員が増えるメリットは何?」という問いには、調査では答えが出ない。それよりも逆質問が有効だ。「男性議員ばかりいるメリットは何?」

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「日本の女性議員 どうすれば増えるのか」 固定URL | 7.オピニオン | コメント (0)

2019年3月24日 (日)

愛なき世界

著  者:三浦しをん
出版社:中央公論新社
出版日:2018年9月10日 初版発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。そして2冊続けての三浦しをん作品。「愛なき世界」だけれど、愛をたっぷり感じる物語。

 読み始めてしばらくして「これは「舟を編む」の系統だ!」と思った。著者には一部で「お仕事小説」と呼ばれる作品群がある。例えば「舟を編む」は辞書の編纂、「仏果を得ず」は文楽の大夫という、「お仕事」とそれに従事する人にフォーカスした小説、と言える。そして著者の「お仕事小説」が、私は例外なく好きだ。だから本書も期待を持って読んだ。

 主人公は藤丸陽太。20代初め。東京のT大赤門前の洋食屋「円服亭」の住み込み店員。もう一人。本村紗英。20代半ば。T大学理学部で植物の研究をしている大学院生。20代の男女二人が出会ったのだから、なるべくしてなったということで、藤丸くんが本村さんに恋をした。そういうお話。

 「そういうお話」なのだけれど、本村さんの方がウンと言わない。彼女は「植物の研究にすべてを捧げる」と決めている。だから誰ともつきあうことはできないし、しない。あぁ藤丸くん、残念。

 それでも藤丸くんが本村さんに魅かれ続けるし、本村さんだって藤丸くんからたくさんの影響や気付きを受ける。本村さんが所属する「松田研究室」には、いつも黒いスーツを着て陰鬱な殺し屋みたいな松田教授をはじめ、魅力的なキャラクターが揃っている。たくさんのエピソードのそれぞれがとても心地いい。

 そんな具合で今回は「植物の研究者」という「お仕事」に(藤丸くんの「洋食屋の店員」にも少し)フォーカスが当たっている。本村さんだけじゃなくて、研究室の面々の「植物への愛と好奇心」が半端じゃない。それがとても好ましい(家族にいたらちょっと困るかも?)。読者もその一端を垣間見ることで、ちょっと新しい世界を知ることができる。

 期待を持って読んだけれど、本書はその期待に十分以上に応えてくれた。私の「著者の「お仕事小説」が例外なく好き」も継続中だ。

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「愛なき世界」 固定URL | 2.小説27.三浦しをん | コメント (0)

2019年3月21日 (木)

ののはな通信

著  者:三浦しをん
出版社:KADOKAWA
出版日:2018年5月26日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 主人公は、野々原茜と牧田はな。物語の始まりには、二人とも横浜の女子高校の2年生でクラスメイトだった。今「物語」と書いたけれど、通常の意味の「物語」ではなく、本書は全編が、この二人が互いに相手に書いた手紙で成っている。つまり書簡文学。「のの」と「はな」の間の手紙の往来。タイトルはそういう意味。

 また「手紙」と書いたけれど、郵便による手紙もあれば、授業中に回したメモもあり、後半には電子メールもある。郵便と電子メールには日付が付されていて、これがいつの出来事なのかがはっきり分かることも、本書の特長かもしれない。物語の最初は昭和59年(1984年)、最後は2011年。なんと30年近い時間が流れている。

 これは、「のの」と「はな」の友情を超えた絆の物語。1章は二人が高校生のころ。2章は進路が分かれた大学生のころ。3章は20年のブランクを経た2010年。4章は...3章の「その後」。各章の終わりには二人の関係の「終わり」があり、各章の始まりには「新しい始まり」がある。そうやって二人の関係は決別と再会を繰り返して30年続いた。

 あらすじは敢えて紹介しない。 読み進めると「え?!そう来たのかよ。そっちか!」という「驚き」が何度か。その「驚き」を、これから読む人にも感じて欲しいから。たぶん誰にも予想できない展開だと思う。

 最初の「驚き」が1章の真ん中あたりである。「これはちょっと趣味が合わない」と思うかもしれないけれど、それでもぜひとも2章、3章と読み進めて欲しい。私が「誰にも予想できない」と書いたのは、最初の「驚き」もそうだけれど、むしろ3章の展開の方を指している。

 「しをんさんは、私をどこに連れて行こうとしているのか?」と、最初の「驚き」で不安に思った。しかし、読み終わって連れて行ってもらったのは、読む前よりも少し自分の視界が開けた場所だった。

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「ののはな通信」 固定URL | 2.小説27.三浦しをん | コメント (0)

2019年3月17日 (日)

下町ロケット ヤタガラス

著  者:池井戸潤
出版社:小学館
出版日:2018年10月3日 初版第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「下町ロケット」シリーズの第4作。前作の「下町ロケット ゴースト」と一体の物語。昨年TBS系列で放映されたテレビドラマの後半は、本書が原作となっているらしい。(私は観ていないけれど)

 前作「ゴースト」で、トランスミッションの開発に参入した佃製作所が、今回手掛けるのは「無人農業ロボット」。衛星の測位情報を基に、誤差数センチで自動運転を行う。作業は昼夜問わず可能で、作業効率が向上し経営面積を増やせることで、世帯収入が飛躍的に増加する。日本の農業の危機を救えるかもしれない。

 「手掛ける」と言っても、佃製作所の担当はトランスミッションとエンジン。トラクターは、因縁はあるものの佃製作所の取引先である帝国重工で製造し、肝心の自動運転の制御部分は、大学の研究室の研究成果を利用する。ロケット開発に勝るとも劣らない「最先端」の技術開発に挑む。

 物語に引き込まれた。著者は今回もたくさんの要素を盛り込んた。今回、大企業の帝国重工と組んだ佃製作所のライバルは、中小企業の技術を結集した「ダーウィン・プロジェクト」。いつもの「大企業vs.中小企業」。ただし佃製作所は、今回は「大企業」側だ。

 それから、技術開発に対する姿勢の問題。どんな小さなものでも、問題の兆候を見逃してはいけない。ましてや保身のために目を逸らしてはいけない。あとは、何のための技術開発か?ということ、技術は結局「人」なのだということ、それから日本の農業が直面している問題、等々。

 実用までのどの段階にあるのかは分からないけれど、実際に「無人農業ロボット」の研究は進んでいるらしい。期待が膨らむ。

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「下町ロケット ヤタガラス」 固定URL | 2.小説2H.池井戸潤 | コメント (0)

2019年3月14日 (木)

ベルリンは晴れているか

著  者:深緑野分
出版社:筑摩書房
出版日:2018年9月25日 初版第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。著者は2016年にも「戦場のコックたち」で本屋大賞にノミネートされ、結果は第7位。第二次世界大戦のころの仏独の前線を舞台としたミステリーで、私は「どうして日本人の作家が、ここを舞台に選んだのだろう?」と思った。

 本書の舞台も、第二次世界大戦終戦直後のドイツ・ベルリンで、どうして?と思った。前著と同じく日本人は一人も出てこないし。 主人公はアウグステという17歳のドイツ人の少女。占領下のアメリカ軍の兵員食堂で働いている。父母は親しい人たちを、戦争で失った。ベルリンの街も激しい空襲で壊滅状態。アウグステはなんとか生き延び、英語が話せることから兵員食堂での仕事にありついた。

 ところが、アウグステは物語が始まって10ページ余りで、アメリカの憲兵に引っ立てられた上に、ソ連の秘密警察に引き渡されてしまう。そこで、アウグステの恩人でもある音楽家が毒殺されたことを知らされる。そして、犯人の疑いがある被害者の甥を捜しだすよう依頼される。

 物語は、このアウグステの人探しの一部始終を描く。土地勘があるということで、この事件に巻き込まれたユダヤ人の元俳優道連れにして。音楽家を殺したのは本当に甥なのか?ちがうなら誰なのか?また、ソ連の秘密警察の目的は何なのか?ドイツ人の殺人になぜ関わるのか?

 読み応えのある物語だった。場面の描写が詳細で、例えばアウグステが歩く道路の様子に、2~3ページを費やす。早く先へ読み進めたいのに困るのだけれど、これによって映像を見たように光景が浮かぶ。気持ちは逸るけれど、読み飛ばさない方がいい。

 それから、本編の間に「幕間」と称して、アウグステの幼少期からの思い出が4回、差し挟んである。これも、先へ読み進めたい気持ちに反するのだけれど、いやいやこれが憎らしいぐらいうまい構成になっている。

 気になった言葉
 みんな、人の善意が妬ましくて仕方ないのよ。自分に向けられない善意には特にね。

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「ベルリンは晴れているか」 固定URL | 3.ミステリー | コメント (0)

2019年3月10日 (日)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2017年12月21日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 第6巻の「星降る夜に願うこと」で完結した 「レッドデータガール」シリーズの、5年ぶりの新作。表題作は、シリーズ主人公の鈴原泉水子のルームメイトの、宗田真響の視点で、「最終巻のその後」を描いたもの。その他に、泉水子の幼馴染である相楽深行の視点で描いた短編を3編収録。

 深行視点の短編から。「影絵芝居」は泉水子と深行が、泉水子の実家がある玉倉山で暮らしていた中学三年生のころ。深行はそつのない優等生で、初々しくもある。「九月の転校生」は、深行が中三の9月に、鳳城学園に転校してきてから。ここは本編では描かれていない時期で、本編で登場する人物たちの「それ以前の姿」が描かれている。「相楽くんは忙しい」は、わずか8ページ。

 深行視点の3編は、アニメDVDや単行本、コミックスの発売時の、特典やプレゼント用に書き下ろしたもので、まぁ読者サービスだ。イケメンキャラでもある相楽深行くんの、思春期の男の子の心情を控えめに描いた。シリーズ本編が持つミステリーや神霊の世界の要素には乏しい。軽い気持ちで読める。

 それに対して真響視点の表題作「氷の靴、ガラスの靴」は、本編からの流れを汲んでいる。泉水子や真響たちが、何者かに試されることになる。まぁ物語のすべり出しは、深行視点の短編と同じような感じで「まさかこのまま何も起きないのか」と思われたけれど、泉水子が結界を作っている鳳城学園を離れて、横浜へ舞台を移してから面白くなる。

 真響は戸隠忍者の家系で三つ子の姉。著者は「ドラマの主人公になれる背景をもっていてほしい」と考えて生み出したそうだ。今回、そのドラマの片鱗が見えたけれど、まだまだありそうで楽しみ。シリーズ本編も、これで先へ続く道筋がついたので期待。

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「RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」 固定URL | 3.ミステリー1F.荻原規子 | コメント (0) | トラックバック (0)

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