2019年9月10日 (火)

ブログ移転のお知らせ

このブログ「本読みな暮らし」は、下のURLに移転しました。

2002年9月から17年間の長きにわたり、このURLで続けてきましたが、事情により移転することにしました。

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移転先でも変わらぬご愛顧をお願いいたします。

「本読みな暮らし」
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2019年9月 8日 (日)

育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ -日々の習慣と愛用品-

著  者:小川糸
出版社:扶桑社
出版日:2019年9月8日 初版第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 出版前のゲラを読ませてくれる「NetGalley」から提供いただきました。感謝。

 Simple is Beautiful. 生活スタイルの理想。かくありたい、と思った本。

 「食堂かたつむり」「ツバキ文具店」「キラキラ共和国」著者の小川糸さんの作品には、ちょっと疲れた人への優しさがある。そういうところが私は好きだ。その著者が、心のあり方や暮ら方などについて綴ったエッセイが40編。著者自身やお部屋、大事にしている持ち物やおすすめの食品の写真付き。

 テーマ別に章になっていて「心のあり方」「体との付き合い方」「私らしい暮らし方」「ドイツに魅せられて」「育て続けるわが家の味」「自分式の着こなし」「人とのつながり」の7章。心に沁みこんでくるような素敵な言葉が随所にある。その言葉に一貫して感じられるのは「余裕」。

 「余裕」は著者も意識しているらしく、「はじめに」にこんな文章がある。「自然であること、無理をしないこと。それが、今の私の暮らしのテーマになっています。(中略)自分にとって必要な行いを習慣化することで無駄を省き、慣れ親しんだ愛用品を持つことで、自分自身がラクに、自由になれる。」

 「慣れ親しんだ愛用品」が素敵。京都の○○旅館のお昼寝布団とか、鎌倉のギャラリーで作ったテーブルとか、加賀の○○製茶場のお茶とか、築地の○○商店や◇◇商店に買い出しに行く昆布、煮干し、かつお節、海苔...。本当にいいものを選んで使っておられる。名前を聞いても私には良さはわからないけれど。

 次々と繰り出される「丁寧な暮らし」(著者は言下に否定されているけれど、まぎれもなくそうだと思う)は、ともすると自慢に聞こえて妬ましく感じてしまうかもしれない。私がそう感じなかったのは、著者の作品が好きで偶像視したからかもしれない。「かくありたい」と思ったのは本当だけれど、そうなれる気がしないのも本当の気持ち。でも「マネしてみよう」と思ったことがいくつかある。さっそくやってみようと思う。

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「育てて、紡ぐ。暮らしの根っこ -日々の習慣と愛用品-」 固定URL | 4.エッセイ2M.小川糸 | コメント (0)

2019年8月29日 (木)

命に国境はない 紛争地イラクで考える戦争と平和

著  者:高遠菜穂子
出版社:岩波書店
出版日:2019年6月5日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 私は何も知らなかったんだ、と思った本。

 著者は、イラクでエイドワーカーとして人道支援の活動をしている高遠菜穂子さん。30代より上の世代には、2004年に起きた「イラク日本人人質事件」で、人質として拘束された女性、と言えば、多くの人が思い出すだろう。今も変わらずイラクで平和のために活動していらっしゃる。

 本書は、その著者が、2003年のイラク戦争勃発から現在に至るまでのイラクの現状と、自身の人道支援の取り組みを記したもの。現地に身を置いて、あるいは現地から日本を見て、自身の目と耳で得たこと。それは、私たちが(少なくとも私が)知っていることと、まったく違うことだった。

 例えば、イラク戦争は正規軍の戦いが終結した後にも、「武装勢力」と米軍の戦いが長く続いた。ではその「武装勢力」とはどういった人々なのか?イラク軍の残党?地方の軍閥?アルカイダ?そういう人もいただろう。しかし「米軍に殺害された市民の遺族」が、抵抗勢力となったものが数多いのだ。(著者を拘束した武装集団もそうだった)

 では、遺族はどうやって生み出されたのか?私の認識では「巻き添え」だ。米軍が言うような「戦闘員だけを標的にしている」という言葉は信じていないけれど、「多少の犠牲は仕方ない」という大雑把な攻撃をして市民にも多くの犠牲が出ている、と思っていた。

 ところが例えば、ファルージャではこんなことが起きた。米軍は小学校を占拠。「子どもたちが勉強できないから返せ」と200人ぐらいがデモ行進。米軍はなんと銃撃して20人ぐらいが死亡。こんなことが繰り返されて、米軍側にも犠牲者が出るに至って、米軍は街を封鎖して総攻撃を行う。14歳以上の男性は戦闘年齢にあたるとして街から出ることを許さずに。「虐殺」だ。「巻き添え」なんかではない。

 最後に日本について。上に書いたような出来事が進行する最中に、米軍を支援する日本の陸上自衛隊がサマワに派遣される。「人道復興支援」といいながら軍服を着ている。米軍の兵站も担う。当然だけれど「自衛隊」なんて言葉はアラビア語にはない。「日本」がイラク国民からどう見えたか?今もどう見られているか?私たちは「知らなかった」では済まない。「国民として責任がある」なんていう間接的なことではなくて、このままでは私たちが危険だ言う意味で。

 本書は、わずか87ページ、わずか620円(+税)。それで大事なことを知ることができる。

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「命に国境はない 紛争地イラクで考える戦争と平和」 固定URL | 5.ノンフィクション | コメント (0)

2019年8月24日 (土)

戦争の記憶 コロンビア大学特別講義-学生との対話-

著  者:キャロル・グラック
出版社:講談社
出版日:2019年8月1日 発行
評  価:☆☆☆☆☆(説明)

 過去の戦争に関する国際間の衝突を緩和するスタートラインが見えた、と感じた本。

 著者はコロンビア大学の教授。アメリカ人であるが、専門は「明治時代から現在までの日本の近現代史」。本書は、第二次世界大戦を各国の人がどのように記憶しているのか?をテーマにした講座における、多国籍の学生たちとの対話を収録したもの。

 このテーマの端緒は、日本と中国・韓国の関係に顕著なように、75年近く前に終結した戦争の影響が、なぜこうも現在にネガティブな形で存在しているのか?という疑問だ。その答えの一つが、立場によってあの戦争の捉え方が一致しない、ということだ。

 第二次世界大戦を、アメリカ人は、ドイツと日本の侵略に対抗した「良い戦争」と見る。日本人は、自国の指揮官によって悲惨な戦争に「巻き込まれた」と見る。韓国人は、日本による植民地搾取の極致と見る。中国人にとっては勇敢な抗日戦争、インドネシア人は戦後の独立へ続く出来事、と著者は考える。要するに自国に都合が良いように捉えて記憶している。

 各国で、この「国ごとに異なる自国に都合が良い記憶」を、政治的に利用する「記憶の政治」が行われている。それによって国と国との間で、感情的な敵対心を生んでいる。これへの対応の一つは、他国の「記憶」を尊重しつつ、それぞれの「記憶」に「歴史」を付け加えること。この講座で行われているのは、そのための「対話」だ。

 これは読むべき本だと思った。この本を読んで、まずは「自分たちは知らない」ことを認識するべきだ。それがよく分かる質問がある。「第二次世界大戦が始まった年は?」。(あくまで私の印象だけれど)日本人は終戦の年は知っていても、開戦の年は知らない人が多い。「知っている人」でも真珠湾攻撃の1941年と答える。日中戦争開始(1937年)や満州事変(1931年)と答える人は少ない。

 日本と中国・韓国で、あの戦争の捉え方が違うことはあまりによく知られたことだ。だから衝突するのだと思っている。しかし「捉え方」以前の問題として、日本人は中国との戦争のことを知らなすぎる。もっと言うと興味もない。これでは意見がぶつかるばかりで、対話は成り立たない。

 そして若者たちの頼もしさを感じた。講座に参加した学生の国籍は、日本、韓国、中国、アメリカ、カナダ、インドネシア。パールハーバーも広島・長崎も慰安婦も南京も俎上に上る。日本で悪名高い「反日教育」を受けた学生も含めて、彼らはちゃんと「対話」している。「対話のドアは常にオープンにしている」と言いながら、まともに話し合いができない政治家とは違う。

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「戦争の記憶 コロンビア大学特別講義-学生との対話-」 固定URL | 9.その他 | コメント (0)

2019年8月21日 (水)

マカロンはマカロン

著  者:近藤史恵
出版社:東京創元社
出版日:2016年12月16日 初版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 人生いろいろ、ちょっとしたことに気付くことで、明日か変わるんだなぁと思った本。

 「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」に続く、「ビストロ・パ・マル」シリーズの3冊目。これまでと同様、下町の小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」を訪れるお客が抱える悩みや問題を、シェフの三舟さんが解き明かす。

 本書は8編の短編を収録。訪れるお客は収録作品順に、「フランス料理と和解しにきたという乳製品アレルギーの女性」「お店で出していないブルーベリータルトを注文する女性」「肉類が嫌いだったはずなのに豚足を注文する中学生」「婚約者に豚の血のソーセージを食べさせたい男性」。

 続いて「フランスの菓子パンを驚いた顔で見る紳士」「近くのフレンチレストランのオーナーとパティシエール」「タルタルステーキをメニューに載せて欲しいという女性」「ヴィンテージワインを持ち込む若いグループ客」。性別も年齢も幅広く、このレストランが親しみやすいお店だということが分かる。

 とても面白かった。時には「そうか!」と膝を打ち、時には嘆息を漏らし、多くの場合はしみじみとした余韻が残る。冒頭に「悩みや問題を解き明かす」と書いたけれど、お客が「いやぁ実はこんなことで悩んでてさぁ」と相談してくるわけではない。シェフは、注文した料理や会話から、お客が口に出さない想いまでもを推し測る。そして本人も気が付かない大事なことを「あなた、このことに気が付いていますか?」と、控えめにでも的確に伝える。いやぁお見事。

 シリーズ3冊目にして、一番よかったと思う。

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「マカロンはマカロン」 固定URL | 3.ミステリー2B.近藤史恵 | コメント (0)

2019年8月18日 (日)

定年前に生まれ変わろう 50代からしておきたいこと

著  者:中谷彰宏
出版社:PHP研究所
出版日:2019年5月29日 第1版第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 読み終わって「新しいことをやり始める、感じのいい60代」になろうと思った本。

 冒頭にこう書いてある。「この本は3人のために書きました。(1)定年になって、どうしたらいいか、不安な人。(2)定年になる前に、定年後楽しめるように、準備しておきたい人。(3)生まれ変わって、ワクワク仕事や勉強をしたい人。強いて言えばだけど、私は(2)。「準備しておきたい」というほど心配はしていない。じゃぁなんでこの本を読んでるの?という自問自答に答えられないけど。

 本書は、上に書いた(1)~(3)の人に対して、「60歳からもっと楽しむため」のポイントを62個並べたもの。例えばポイントの「05.サポートする側にまわろう」とか「12.世間の目を気にしないで、恥ずかしいことをしよう」とか「20.ライフワークとして、すぐに結果がでないことをする」とか「23.相席で感じのいい人になろう」とか「30.してもらっていることに、気づこう」とか「44.前もうまくいかなかったから、と言わない」とか。

 62個を見渡してとても乱暴にまとめると、3つに分かれる。1つは「誰かの役に立つ」とか「相手から見て気持ちいい」とかの「他人から好かれる」系。もう一つは「他人の目を気にしない」とか「成果を求めない」とかの「自分の気持ちに正直に」系。この2つは、一方は外側からの評価、もう一方は自分の内側からの評価を重視していて正反対に思える。でもその両立こそが大事なのだろう。

 残りの1つは「思考停止防止」系。例えば「10.異界に遊ぼう」。50歳ぐらいになる「居心地のいいところ」ができて、そこに閉じこもっていると楽だ。でもそれじゃ成長しないし楽しくない。敢えて居心地の悪い新しいところへ行ってみよう、ということ。言い換えると、自分とは違う価値観の場に身を置く、ということで「敢えてはやりたくない」けれど、それを敢えて...厳しい。

 最後に。読んでいて気持ちが明るくなったこと。著者は「人間の願望には4段階あります」と言う。1番目が20代の「安定したい」、2番目が30代の「評価されたい」、3番目が40代の「支配したい」、そして、4番目が50代の「新しいことをしたい」。そして、4番目に行く人と行かない人がいると言う。私は「新しいことをしたい」と思う。順調に4段階目に移行したらしい。

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2019年8月15日 (木)

クジラアタマの王様

著  者:伊坂幸太郎
出版社:NHK出版
出版日:2019年7月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「伊坂幸太郎の本を読む」という期待にキッチリ応えてくれた本。

 主人公は岸君。大手のお菓子メーカーの宣伝広報部員。妊娠中の妻と二人で暮らしている。この前まで「お客様サポート」に居て、そこでの苦情対応は高く評価されている。物語は,岸君の会社の新商品のマシュマロに対する苦情電話から動き出す。「マシュマロに画鋲が入っていた」という。

 岸君の後任のお客様サポート係が、この苦情への対応を失敗する。棒読みの謝罪の言葉、「はいはい」というバカにしたような返事、相手の主張に反論して、挙句にもう1回「はいはい」とあしらってしまった。当の後任は「投了」と言って会社を休んでしまい、岸君がその対応力を見込まれて、お客様サポートに復帰して事後処理にあたることになった..。

 本書には珍しい特徴がある。エピソードが切り替わるタイミングで十数カ所、コマ割りされたマンガが数ページ挟まっている。マンガは冒頭にもあって「ロールプレイングゲームの主人公が旅立つ」風の様子が描かれている。途中に差し挟まれているのには、その主人公が大きな獣と闘っている様子も。

 小説が苦手とする(と著者が思っている)アクションシーンを、絵やコミックで表現して挟み込む。これは著者が10年ほど前から考えていたことだそうだ。とはいえ、文章で表現された物語と挟み込まれたマンガの関連が、最初はさっぱり分からない。ある時「そういうことか!」と分かる。「胡蝶の夢」という言葉を思い出した。さらに進むと「胡蝶の夢」という言葉を思い出した。これはけっこう効果的な趣向だった。

 帯に「伊坂幸太郎の神髄がここに」とある。ちょっと誇大かなと思うけれど、言いたいことは分かる。ごく平凡に善良な人間が巻き込まれてヒーローに。立ち向かう相手は、得体のしれない巨大なシステム。ちょっと現実から遊離したような設定。技巧的なことを言えば伏線と回収、気の利いたセリフ。こういうのは伊坂さんの「スタイル」だ。私はこういうのが大好きだ。

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2019年8月11日 (日)

ブラックペアン1988

著  者:海堂尊
出版社:講談社
出版日:2007年9月20日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「これがすべての始まりの物語か」と、感無量になった本。

 海堂尊さんの一連の作品が織りなす「海堂ワールド」で、時系列で一番最初に位置付けられる作品。タイトルの中の「1988」は物語の年の表す。「チーム・バチスタの栄光」は2006年とされているから、それより18年前ということだ。

 舞台は東城大学医学部付属病院。「チーム・バチスタの栄光」以降のシリーズと同じ。主人公は世良雅志。外科医に成りたての1年目。というか物語の冒頭では、まだ医師国家試験に合格してさえいない。新米なのに手術の予定に遅刻してくる。世良の医師としての成長が物語の一つの側面。

 物語で描かれるその他のこととしては、新しく赴任した外科医と教授を頂点とした医局の秩序との衝突、新技術の導入、はぐれ者の天才医師、教授が抱える過去の因縁、等々。特に、教授の過去は厳しい現実となって現在に降りかかってくる。緊迫した展開が波のように繰り返される。

 面白かった。1つの物語として面白かっただけでなく、「海堂ワールド」の一番最初としても、面白かった。「チーム・バチスタの栄光」以降のシリーズの田口センセイをはじめ、主な登場人物の多くが、18年前の姿で登場する。それだけでなく、この物語は20年の時を越えて「ケルベロスの肖像」へつながる。そういうことだったのか!と感無量。

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2019年8月 8日 (木)

何度も読みたい広告コピー

出版社:パイ インターナショナル
出版日:2011年11月25日 初版第1刷 2012年8月5日 第4刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「アドミュージアム東京」という広告専門ミュージアムのライブラリーで見つけた本。

 1980年代にコピーライターのブームがあって、その頃に高校生~大学生で影響を受けた私は、「何度も読みたい広告コピー」というタイトルから、糸井重里さんの「おいしい生活」や、川崎徹さんの「ハエハエカカカ」とかの、キャッチコピーを思い浮かべた。あの頃、もしかしたら、自分にもこういう仕事ができるかもしれない、などと思っていた。

 本書は、その「キャッチコピー」の本ではない。キャッチコピーに続く文章「ボディコピー」をテーマとした本だ。出版社で選考した100余りの「名作ボディコピー」を、担当コピーライターが書いた「ボディコピーの考え方」と共に紹介する。極小の文字だけれど、クリエイティブディレクター、アートディレクターなどのスタッフや、代理店、デザイン事務所載っていて、ちょっとした広告図鑑になっている。

 紹介された広告の年代が明記されていないのだけれど、どうも2000年代から2011年までらしい。つまり10年ぐらい前。キャッチコピーにうっすら覚えがあっても、ボディコピーは全く覚えていない。そもそも読んでもいないかもしれない。

 その辺りことは、コピーライターさんも重々承知で、「読んでもらえない」とはっきりおっしゃる方もいた。それは「でも..」と言葉が続く。他の方も、読んでもらう工夫をしたり、「自分の中にある想い」を総動員したり。「読んでもらえない」とおざなりな仕事はしない(当たり前だけど)。担当コピーライターさんによる「ボディコピーの考え方」は、個性的で面白かった。

 ボディコピーの方も、それぞれに魅力的で引き込まれた。実は本書は活字がそもそも小さくて読みづらい。元の広告は新聞やポスターがA5サイズに縮小されて載っていて、ルーペなしでは読めない。でも全部、ルーペを使って読んだ。「磨き抜かれた言葉には力がある」そう実感した。

 ルーペを使って読んだ心に残ったボディコピーを引用。宝石・時計販売の会社の「時」をテーマにしたシリーズ広告の1つ。

 にんげんの時間 ひとりがすると1時間かかることを、/ふたりでやれば30分で終わる。/ひとりがすると1ヶ月かかることを、/30人でやれば1日で終わる。/人類が何千年かけても/まだできないこと。/みんなでやれば/1日で終わるかもしれない。/もう、平和なんて、/1日あればできるはず。

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2019年8月 4日 (日)

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた

監修者:佐藤文香
著  者:一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同
出版社:明石書店
出版日:2019年6月21日 初版第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 感心したり反省したり、よく知っているつもりで理解が浅いことを知らされたりした本。

 一橋大学の「ジェンダー研究のゼミ」に所属している学生たちが、友人・知人から投げかけられた、29の問いに答えたもの。悩みながらも真正面から向き合った「真摯で誠実なQ&A集」と帯に書いてある。

 ゼミの指導教員で監修者でもある佐藤文香教授が「おわりに」で、本書出版の経緯を書いている。ゼミ生たちは、友人や知人、ときには家族からさまざまな「問い」を投げかけられ、うまく答えられず、時には険悪になってしまう。その都度「どういえばよかったんだろう」と思い悩む姿を見て「みんなでグッド・アンサーを考えて..」と提案した..。

 「問い」には、例えば「男女平等は大事だけど、身体の違いもあるし仕事の向き不向きはあるんじゃない?」という、男女平等の必要は理解しながらの疑問もあれば、「性欲って本能でしょ、そのせいで男性が女性を襲うのも仕方ないよね?」という、信じがたいものもある。でもこれも学生たちが実際に受けた「問い」なのだ。

 本書ではこれらの「問い」の一つ一つに、「ホップ」(ジェンダーっで聞いたこともない、と言う「初心者向け)、「ステップ」(およその知識は持っている中級者向け)、「ジャンプ」(ジェンダー研究の最新動向もおおむね理解している上級者向け)、の3段階の回答が用意されている。読みやすさと専門性を兼ね備えた上手い構成だ。私は自己判定で「中級者」だけれど、「ジャンプ」も興味深く読んだ。それによって、一段深い理解が必要なのだと分かったことも多い。

 答えが難しいと感じた「問い」も多い。例えば「フェミニストはなにかと女性差別というけど、伝統や文化も重んじるべきじゃない?」という問い。重んじられるべき「伝統」や「文化」はあるが、近代以降に創造されたものもあり決して絶対的なものではなく、女性差別を正当化できない、と一旦は答えが出る。しかしでは、もっと長く続く例えば千年続く伝統は?他の民族の伝統は?と思考を広げると簡単ではない。

 本書では、他の民族の伝統への批判には抑制的な意見で、逆に問題点を指摘している。そこには明確な答えはない。監修者の佐藤教授の言葉を拾うと、本書は「グッド・アンサー」であって「ベスト・アンサー」ではない。さらに議論を積み重ねることが大事なようだ。本書はその議論の基盤になるだろう。

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