2009年12月16日 (水)

やればできる まわりの人と夢をかなえあう4つの力

著  者:勝間和代
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2009年12月3日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者が、香山リカさんの「しがみつかない生き方」の第10章「<勝間和代>を目指さない」への反論書と自ら言っている本。「しがみつかない生き方」のレビューは8月に掲載した記事にも関わらず、現在もこのブログの人気記事ランキングの第1位であり続けている。Googleで「しがみつかない生き方」や「しがみつかない」と検索すると、けっこう上位にリストアップされるので、そこを経由して来られる方がたくさんいらっしゃるためだ。

 本書の発行の前に、アエラ10月12日号に「勝間和代×香山リカ 激論2時間」という6ページの記事が掲載された。ドクロマークのジャケットを着た香山リカさんが勝間和代さんに執拗に絡む、といった図式の記事。まぁ香山さんがヒール役を演じて絡んだにも関わらず、議論はあまりかみ合っていない。
 ただ、香山さんが「<勝間和代>は成功者のアイコンとしてカッコ付きで使った」と言い、そのアイコンと勝間さん本人とは違う、という点は両者の共通認識になった。その他のことは勝間さんの冷静な受け応えが目立って、ヒール役の不利もあって香山さんには分が悪い展開だった。(アエラはここからデジタル雑誌で購入可能です)

 さて本書である。表裏の両表紙とプロローグとエピローグに「しがみつかない生き方」への答(反論書)と書く念の入れようだ。それにも関わらず、本書には「しがみつかない生き方」への答も反論も載っていない。そもそも「~目指さない」の答が「やればできる」では、ねじれの位置にある2つの直線のように交わるところがない。
 だからと言って、ただの売るためのコピーかと言うとそうではない。著者は香山さんやその著書にではなく、「しがみつかない生き方」の読者と世間に対して、反対の作用を及ぼすメッセージを発しているのだ。著者は「努力してもムダかも?今のままでもそこそこ幸せだし」という雰囲気が漂って、社会が努力を止めて停滞することを懸念している。そうならないように「いえいえ努力すればいいことあるって」という意味で「やればできる」とハッパをかけているわけだ。つまり社会に「ガンバリの天秤」があるとして、「そんなにガンバラなくてもそこそこ幸せなんじゃないの?」と「ガンバラない」方に少し傾いたので、「ガンバる」方にオモリを置いた、という感じだ。

 肝心の中身は、分かりやすさを念頭に丁寧にかみ砕いた文章を誠実に綴ったものだ。「しなやか力」「したたか力」「へんか力」「とんがり力」という、著者が創造した4つの力を表す言葉を紹介し、これを順に身に付けていきましょう、それぞれのステップはこうです、と実に丁寧に書かれている。
 また、巷にあふれる自己啓発書の多くのように「○○さえやれば」という特効薬はなく、4つの力を完成させるプロセスは「早くても数年、遅いと10年はかかる」と言うあたりは、誠実さの表れだ。「全員ができるとも言いません。」と言うのも至極当然のことだ。

 この「誠実さ」が、カッコ良さや分かりやすさや親しみ易さ(Twitterのつぶやきに見られるような)以上に、著者の人気の秘密なのだと思う。しかし罪深くもある。もちろん、これは著者の責に帰すべきことではなく、言いがかりに近いのだけれども。
 10年ガンバって思うような結果が得られない人はどうなるのか?著者が誠実なだけに「あの本のようにはいかないもんだ」とは思わず、「私の努力が足りない」と思ってしまうかもしれない。最後の方で「成果があがってない人は、それなりのやり方しかしていないのです。」とも書かれている。10年もガンバったのに..私のは「それなりのやり方」だったのか..

 香山さんの「<勝間和代>を目指さない」は、こういった形で心の病を抱えてしまう人が実際にいることを懸念して訴えているのだ。さて、こうした人は割合にするとどのくらいだろうか?おそらくごく僅かだろうが、香山さんはそこにも「生きた人がいる」ことに注目する。
 しかし「リターンマキシマイズ」を身上とする著者は、これをおそらく「取るべきリスク」と捉えるだろう。100%うまく行く方法などないし、うまく行く人がそれ以上にいて社会が活性化すれば問題なしだ。「うまく行かない人」の捉え方も重みも違う。だから議論は交わらないのだ。

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2009年12月14日 (月)

崖の国物語10 滅びざる者たち

著  者:ポールスチュワート 訳:唐沢則幸
出版社:ポプラ社
出版日:2009年9月第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 「崖の国物語」堂々の完結編!。9巻目の「大飛空船団の壊滅」のレビューにも書いたが、このシリーズは、世代が違う血のつながったクウィント、トウィッグ、ルークの3人の若い頃の物語が、順序を変えながら綴られてきた。それぞれを主人公にして3巻づつで、バランスとしては9巻目が最終巻と思われたが10巻目の本書が出た。これが本当の最終巻。3人の物語には発展があるのか?

 時代はなんと、ルークの時代から約300年後。クウィント、トウィッグ、ルークの3人はそれぞれ空賊や槍騎兵として、伝説上の人物になっていた。そして今回の主人公は、鉱山で点灯夫という仕事をしているネイトという若者。彼と伝説の3人の関係は分かっていない。ただ父から遺されたメダルに描かれた空賊の肖像画には、何か意味があるらしい。
 そして、ネイトが鉱山を追われた後、ヒロインのユードキシアら数々の出会いと危機を経て運命に導かれるストーリーを中心に、複数の物語が並行して進められる。一見して無関係意のそれぞれの物語が、ネイトのメインストーリーに次々と縒り合わされていく。この辺りの手法は見事だ。

 このシリーズの特長とさえ言えるのだけれど、本が厚い。本書は101章、860ページ超もある。これが苦もなく読み切れるのだから、いかに物語に牽引力があるかが分かるだろう。スピード感と起伏に富んだストーリーが楽しめる。
 前9巻の内容を上手にすくい取ったという意味では、よくできた「完結編」だ。よくできてはいるけれど、壮大な物語をまとめるにはちょっと力不足だったかも。しかし、そんなこととは別に構わない、ネイトの物語が充分に面白い。ネイトとユードキシアという魅力的なキャラクターの物語はまだ始まったばかりだ。「これが本当に最終巻」という言葉は保証の限りではない。

 とは言え、現在のところ公式には最終巻ということなので...
 この「崖の国」シリーズは、ファンタジーが好きな方にはオススメ。魔法は出てこないけれど、とても面白い冒険活劇的異世界ファンタジーの傑作。ただし、私の感想では第1巻がちょっと退屈でいただけない。2巻でグンと良くなり3巻4巻5巻...と巻を重ねるごとに面白くなる。7巻は最高傑作だと思う(8巻以降がダメという意味ではない。念のため)。だから、このシリーズを読もうと思った方は、是非少なくとも2巻までは読んで欲しい。

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2009年12月 9日 (水)

「おバカ教育」の構造

著  者:阿吽正望
出版社:日新報道
出版日:2009年7月30日 発行
評  価:☆☆(説明)

 以前にいただいたコメントで紹介いただいたので読んでみた。著者は、元公立小中学校教員。「おわりに」に「長い教員生活で..」とあるので、まぁ少なくとも20年ぐらいは先生をされていたのだろう。現場で感じたこの国の学校教育の実態への怒りと危機感が伝わってくる。

 極めてストレートな主張が書かれている。文科省の官僚のデタラメな教育改革と法律による規制が、学校の機能不全をもたらし、「子どもを教育しない(できない)学校」にしてしまった。対策は徹底した教育の自由化。具体的には「学習指導要領」「教員免許制度」「受験競争」の廃止。
 あまりに突飛な意見だと思われるかもしれないが、OECDのPISA(学習到達度調査)でトップの成績を修めたフィンランドの教育制度などを引いて、この意見に至っている。フィンランドの教育ではテストを行わず、受験勉強もなく、教員の免許更新制度も評価制度も、教科書検定制度もないのだそうだ。

 私としては、4割は共感する、6割は共感できない、という感じだ。著者も「半信半疑の方が多いはずです。」と書かれているが、四信六疑?というところか。共感するのは、今の日本の教育の現状が危機的な状況であり、それは個々の先生や親にだけ起因する問題ではなく、教育システムに構造的な問題がある、とするところ。そして、「国任せ」「官僚任せ」でなく、自分たちで監視しよう、というところ。
 共感できないのは、その分析と対策について。例えば、官僚が自分たちの利益や天下り先の確保のために、教育を崩壊させるような制度法律を作っている、という主張は言い過ぎだ。ましてや「優秀な日本国民を「愚民」にする外国政府の謀略説」はいただけない。わずか2ページに過ぎないがこの話は書かない方が良かった。ジョークなのであれば、そうハッキリと書いておいて欲しい。
 逆に対策の「教育の自由化」については、言葉が足りなさ過ぎる。今の問題の原因の一つに、規制でがんじがらめになった学校の硬直化があると私も思う。しかし、その規制を全廃すればすべては上手く行く、かとでも言うような著者の主張はあまりに楽観的かつ無責任だ。

 怒りのあまりなのか、インパクト狙いなのか、極端なもの言いが目立つのも気になった。教育改革のことを「愚民化政策」「教育破壊工作」、学校のことを「落ちこぼれ製造工場」と言ってみたり、「能力の高い生徒でも、最低限の学力すら身に付きません」「教員の評判を得た教科書は、これまで一点もありません」と100%の断言をしたり。アジ演説ではないのだから、文章によって誰かに何かを訴えたいのなら、冷静に正確にならなければ信頼を失うと思う。

---追記---

 ネット上に、本書について同様の文面のコメントを数多く見かけます。本書を多くの人に手に取ってもらいたい、との熱意の表れだと推察します。お一人の方なのか複数いらっしゃるのか、著者や出版社と関係があるのか、全く分かりませんが、お止めになった方がいいと思います。同じ文面がたくさん発見されれば、そのコメントの誠実さが疑われ、推薦しようとする意図と逆の結果を招いてしまいます。

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2009年12月 7日 (月)

フラット化する世界 増補改訂版(上)(下)

著  者:トーマス・フリードマン 訳:伏見威蕃
出版社:日本経済新聞出版社
出版日:2008年1月18日 1版第1刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本書は2006年5月に出版され「フラット化する世界」の増補改訂版。2007年8月に米国で出版された、The World Is Flat: A Brief History of the Twenty-first Centuryの、Further Updated and Expanded: Release 3.0版の日本語訳。日本の書籍ではあまり見ないが、Release3.0とある通り、改訂と新しい内容の追加を2回も行ったものだ。

 「世界がフラット化する」とは、本書から例を引くと「アメリカの銀行のコンピュータ運用をインドの会社が請負い、その会社がインドの夜間時間帯はウルグアイの会社に業務委託している」とか、「アメリカの会社が韓国の機械を輸入し、自社の装置を取り付けてクエートに輸出するためのアラビア語のパンフレットを、ネイティブアメリカンの会社が印刷している」という状況を表している。
 様々な業務は細分化され、最適な業務を最小のコストで実施できところで行う。インドのIT企業のCEOの言葉を借りれば「競技場はいまや均されている」。従来は国境の壁、政治体制の壁、習慣の壁などによって、見通しがきかなかったビジネスのフィールドが、平らに均されて何処からでも見えるし、走っていけばゲームに参加することができる、というわけだ。

 こうした状況は良い面と悪い面があり、しかも複雑に入り組んでいる。インドの会社にアウトソースしたアメリカの企業は、従来と同じ業務を何分の一かのコストで行える。その企業の顧客も低コストで商品を買える。消費者たる一般市民にとってもありがたいことだ。しかし同時に労働者たる一般市民としては、仕事をインドに奪われることになるのだから。
 さらに事は安全保障にまで及ぶ。このようなグローバルな枠組みに入った国では、小規模な紛争を除けば戦争への抑止力が働くという。逆の面もある。テロリストたちは、その連絡手段として、資金や支援者・新兵の獲得手段として、そしてプロパガンダとして、インターネットを実に巧みに利用する。

 それでは国家や企業や個人はどうしたらいいのか?正直に言って手詰まりの感があるが、著者はページを割いて言及していることは、技術・能力を身に付けることに尽きる。詳細は本書に譲るが、個人は「雇用される能力」を付ける、国家と企業はそれを手伝う、それには社会保障と教育の二本柱が必要、ということだ。
 著者が言うには、アメリカでも科学者や技術者が不足しているそうだ。優秀な学生の多くは投資銀行を目指してしまうらしい。そして将来のために子どもたちの数学や科学の基礎学力を高めなければならないと言う(どこかの国でも聞いたことがある)。それなのに、2005年に全米科学財団の予算を1億ドルも削減してしまった、と嘆く(あれ?これもどこかの国で似たような話が...)

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2009年12月 2日 (水)

田村はまだか

著  者:朝倉かすみ
出版社:光文社
出版日:2008年2月25日 初版1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」で知り合いの何人かのブログで見て読んでみようと思った本。(るるる☆さんジーナフウガさん板栗香さん
 クラス会の話である。40才の大人たちの小学校のクラス会。場末のスナックでの3次会まで流れてきた男3人女2人。冒頭に流れてきた音楽は「夜空ノムコウ」。「あのころの未来に、ぼくらは立っているのかなぁ」。物語を読む前に泣けてきた。

 本書は「小説宝石」に2006年から2007年にかけて掲載された短編を6つ収録した連作短編集だ。「田村」はスナックにいる5人には入っていない。タイトルのとおり、この5人は「田村はまだか」と言って彼を待っているのだ。待っている間に5人+αのそれぞれの人生の1コマが、小学校時代のエピソードを織り交ぜながら順々に語られていく。
 中にはあまりに赤裸々な表現の話もあるのだけれど、5人自身の人生はどちらかと言うと平凡なものと言える。「六年一組が沸き返った」という小学校時代の出来事が一番の事件かもしれない。登場人物の1人が「紙吹雪が見えた」と言ったそうだけれど、読んでいる私にも見えたような気がする。紙吹雪が。
 しかし、大きな事件とは言えないけれど、語られるその1コマはそれぞれの「今」につながる凝縮した1コマだ。その1コマの紹介で、40才になった彼らの今の立場や悩みが鮮やかに伝わってくる。この著者は人物造形や物語の組み立てがうまい。

 私は彼らよりいくらか年上で、高校卒業後に実家出て何度も引っ越しをしていることもあり、もう小学校はおろか中学校時代の友達との交流もない。かろうじて高校の同窓会の音信が聞こえてくる程度、大学時代の友達とも何年も会っていない。もし今、会ったらどんな話をするのだろう?
 12月になり年賀状を書く時期になった。私の年賀状の大半は、恩師や大学時代の友達、以前の会社の同僚や先輩など、自分を過去とつなぎ止める人たちに宛てたものだ。そんなことを思いながら、るるる☆さんオススメの、作曲者の川村結花さんの「夜空ノムコウ」を聞いたらまた泣けてきた。

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2009年11月29日 (日)

イトウの恋

著  者:中島京子
出版社:講談社
出版日:2005年3月5日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 この著者の本を読むのは初めて。本好きのためのSNS「本カフェ」で友達になった方が「最近、気になってる」んだそうで、記念にと思って図書館の棚から1冊取って読んでみた。たった1冊しか読んでないのだけれど、この著者の本は私とは相性がいいらしい。するすると読めてそして楽しめた。

 タイトルの「イトウ」とは、明治時代の通訳ガイド、伊藤亀吉のこと。彼が英国人の女性探検家の「I・B」のガイドとして、横浜から出発して函館に至りそこから北海道を旅する間を、後年になって本人が残した回想の形でたどる。
 現代の交通の便利な旅でも遠くに2人で出かければ、良くも悪くも特別な情が湧く。まして明治時代の殆どが徒歩という3ヶ月の旅は険しく、頼れるものはお互いだけ。苦難を共に乗り越えるうちに湧いた情を、タイトルのように「恋」と呼ぶのが正しいのか、年上の女性に対する「憧憬」と呼ぶべきなのか分からない。しかし、二十歳の青年イトウの心に「I・B」に対する抗し難い情を刻んだ。

 この回想をイトウは人に宛てた書簡の形で残した。このイトウの物語が、淡々とした記述が逆に情感を醸していて気持ちいい。そして、この書簡を読んでいるのは100年後のイトウの孫娘の娘。そこにもそこはかとない恋の予感?と母にまつわる物語が。現代と過去を結んで並行して物語が進むこの形式は、もう珍しくはないかもしれないが、なかなかの技巧だ。

 本書はフィクションだけれど、イザベラ・バードという英国人の女性探検家が実在し、伊藤鶴吉という通訳の青年を同道して東京から北海道まで旅した史実があるそうだ。そのことは「日本奥地紀行 」(原題:Unbeaten Tracks in Japan)という本として出版されている。機会があれば読んでみたい。

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2009年11月25日 (水)

オデュッセウスの冒険 サトクリフ・オリジナル5

著  者:ローズマリ・サトクリフ 訳:山本史郎
出版社:原書房
出版日:2001年10月10日 第1刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者が伝説や神話の再話を試みた作品群、サトクリフ・オリジナルの第5弾。第4弾の「トロイアの黒い船団」の「イーリアス」に続いて、ホメロスの叙事詩「オデュッセイア」を基にしたもの。「イーリアス」が描いたギリシアとトロイアの間の戦いの後、ギリシアの勇将イタケの王オデュッセウスが故郷を目指す冒険が描かれている。

 「故郷を目指す冒険」?伝説だから確かなことは言えないけれど、小アジア半島のエーゲ海沿岸にあったとされるトロイアから、オデュッセウスの故郷イタケ島とされる島までは、ギリシア半島を回って距離およそ1000キロ。遠いようでも船で数日の距離。冒険と呼ぶには近すぎる。
 ところが、トロイアを発った船団は風に恵まれず、いきなり正反対の方向のエーゲ海の北「トラキア」に流れ着いてしまう。その後も神々や巨人族、魔女、そして手下らの軽率な行いに翻弄されて、実に故郷イタケ島の土を踏むまで19年もの歳月がかかってしまう。

 まぁ次から次へと災難に会いその度に部下たちを失いながら、その都度の判断によって危機を逃れる。現代の小説のような捻りや伏線などはないけれど、その物語は正に英雄譚。屈託なく楽しめた。
 実は、故郷へ帰るまでの冒険は本書の前半分。後半は、帰り着いた故郷での物語。余りに長い王の留守の間に、不作法な貴族たちに好き放題にされていた宮殿の大掃除だ。冒険もいいけれど、こっちの方が面白かった。

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2009年11月22日 (日)

ツイッター 140文字が世界を変える

著  者:コグレマサト いしたにまさき
出版社:毎日コミュニケーションズ
出版日:2009年10月20日 初版第1刷 2009年11月5日 初版第3刷 
評  価:☆☆☆(説明)

 R+(レビュープラス)様にて献本いただきました。感謝。

 本書は「ツイッター(Twitter)」をまだ使っていない人に紹介する本。ツイッターとは、ユーザーがネットに140文字以内の「つぶやき」を投稿、それを別のユーザーが閲覧することで、コミュニケーションが発生するサービス。今年9月の利用者は国内で257万人、世界では5840万人もいる。

 そのツイッターの日本での歴史から始まって、「ツイッターとは?」「~を楽しむためには?」などを章ごとに説明する本書は、正にツイッターのガイドブック。特に、勝間和代さんや広瀬香美さんら著名人が演じた出来事を活写した部分は秀逸。読者はこんな場面に自分もぜひ遭遇したい、と思うに違いない。
 ただ、著者も「一度経験して分かってしまえばすごく簡単なサービス」「経験のない人に説明するのがこれほど難しいサービスも珍しい」と書いているように、どんなに親切に上手に説明したとしても、読者がツイッターの魅力を感じるのは難しい。一言で言ってしまえば「やってみた方がいい」ということだ。

 実は、私もやってみたことがある。勝間さんらが使い始めたことを知って登録したのだ。すぐに「さてこれからどうするか」とつぶやいたのだけれど、その後には沈黙と寂しさが..。本書には「月面に一人着陸したような孤独感」という表現があるが、周囲は盛り上がっているので「雑踏の中の孤独」に近い。
 何の手引きもなしに飛び込むと私のようにひとりぼっちにされてしまう。手を引いて教えてくれる人がいればいいのだけれど、そういう人がいないのなら本書の第3章「ツイッターを楽しむためには?」を読もう。少なくとも「これからどうするか」はそれで分かる。その先には面白い世界が待っているはずだ。

 140文字ぐらいでは大したことは言えない、と思う方もいるだろう。しかしそうでもない。実は、この記事は最初の1行と英文以外の段落が全部140文字でできている(お時間のある方は数えてみてほしい)。「つぶやき」と呼ぶにはかなり長い。ある程度まとまった情報を伝えることができる量だと思う。
 本書にも書いてあるが、日本語は英語より140文字で伝えられる情報量が多いようだ。戯れにこの記事の一段落を英訳したら(下の英文。文法には自信なし)282文字もある。だからツイッターは日本では情報ツールとして独自に発展する可能性がある。本書タイトルどおり「世界を変える」かもしれない。

 This book introduces “Twitter” to who haven’t used it yet. Twitter is the service that makes communications by that one user posts “tweet” up to 140 characters to the net and the other see it. There are 2.57 million visitors in Japan and 58.4 million in the world in this September.

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2009年11月19日 (木)

COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン)12月号に載りました

結果発表の画像  「クーリエ・ジャポン レビューコンテストで「副編集長賞」をいただきました。」という記事でお知らせした入賞特典の1つに、「クーリエ・ジャポン本誌面上にブログ情報を掲載」というのがありましたが、現在発売中の12月号に載っていました。
 右の写真がそれです。裏表紙から2つ目の見開きに載っていました。見ての通り定期購読のキャンペーン広告のページです。ブロガーレビューコンテスト結果発表!、という見出しの下に「☆副編集長賞 YO-SHI様「本読みな暮らし」」と書かれています。

 正直に言うと..「うれしい」という気持ちと、「これだけ?」という気持ちが半々です。名前を載せてもらうだけでもスゴイことだとは分かっています。わがままを言える立場ではないことも..。
 でも、このコンテストはこれから何回か続く予定なので、受賞者の正直な気持ちは表明しておいた方がいいと思うのです。今後の受賞者が私と同じ気持ちになったら、受賞者もせっかく掲載した編集部さんもお互いに不幸ですから。私のことはもう良いので、できることならこれから変えることを検討していただきたいのです。

 それで私としてはどんなものを期待していたかと言うと、受賞者全員分で1段ぐらい使って(1ページは5段組になってます)、コンテストの概要と、受賞者名/ブログ名/ブログのURL、それと選評ぐらい載せてもらえるかなぁ、と漠然とですが思っていました。選評と言っても「結果発表のホームページ」に載せていただいた50文字程度のもので充分です。期待しすぎなんでしょうか?

 (取って付けたようになりますが)この度は、本誌に載せていただいてありがとうございました。「ありがたい」という気持ちには偽りはありません。念のため。

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2009年11月18日 (水)

六番目の小夜子

著  者:恩田陸
出版社:新潮社
出版日:1998年8月20日 発行 2000年3月5日 7刷
評  価:☆☆☆(説明)

 著者のデビュー作。1992年に新潮文庫ファンタジーノベル・シリーズの1冊として刊行されたものを、1998年に単行本として再刊された。著者について私の周囲には、絶大な賛辞を送る人がいる一方で、「どうしても受け入れられない」という人もいる。私は基本的には好きな作家さんなのだけれど、鏡の多面体のそれぞれの面を見るように、作品によって全く違うテイストを受け取ることになって、戸惑ってもいる。

 舞台は地方の進学校。主な登場人物たちはそこの高校3年生の男女。その学校には秘された行事がある。3年に一度生徒の中から「サヨコ」と呼ばれる者が選ばれる。選ばれた生徒は他の生徒に気付かれることなく、様々なことをしなくてはならない。そこに「沙世子」という名の美少女が転校してきて...。
 「サヨコ」がすること自体は、多少大変だろうけれどまぁ他愛のないことだ。しかし、15年に亘る過去5人の「サヨコ」は伝説化し、その中には怪談めいたものもある。タイトルの通り今年の「サヨコ」は6人目なのだ。当然、誰が「サヨコ」なのか、というミステリーに読者の関心が向かう。

 しかし本書は、そんな読者の関心などお構いなしにドンドンと多方向に発展する。これは、ミステリーなのかホラーなのか青春小説なのか、「多面体」のようなその後の作品群が垣間見えるような作品だった。何もキッチリと分類できなくてはダメだというのではない。しかし、読んでいてどこに連れて行かれるのか分からないので不安になった。
 特に、唐突にゾクゾクするほど怖いシーンに出会うのが何より不安になる。お化けも悪魔も出てこないのだけれど、予感だけですごく怖い。異様にテンションが張り詰めるそんなシーンが要所にあるのだ。

 このようにホラーの傾向はあるものの、私は全体としては高校生の青春小説の色合いを強く感じた。その意味では読後感は悪くないし、私は好きだ。ただこのモザイクのような物語はちょっとした衝撃だ。肌に合えばこの上なく魅力的だし、何かを掛け違えれば受け入れ難いものになってしまう。合うか否かはギャンブルかもしれない。

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