2018年4月29日 (日)

一〇五歳、死ねないのも困るのよ

著  者:篠田桃紅
出版社:幻冬舎
出版日:2017年10月8日 第1刷 12月15日 第2刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 1913年(大正2年)生まれ、御年105歳で現役の美術家である、篠田桃紅さんのエッセイ。「水墨抽象画」という独特なスタイルの作品。その展覧会を見に行って「105歳でこの作品を描く人は、どんな人なんだろう?」と思って、ミュージアムショップで本書を購入した。

 4つの章に分けて全部で40本のエッセイを収録。第1章「歳と折れ合って生きる」、第2章「幸福な一生になりえる」、第3章は「やれるだけのことはやる」、第4章は「心の持ち方を見直す」。自分の道をひたすらに求めた105歳の口から出た言葉は、すべてが「人生訓」に聞こえる。

 心に留まった言葉をいくつか紹介する。第1章の2本目「楽観的に生きる」。「普段は、歳のことなど気にしていないのですが、なにかの拍子に、これはもうとんでもないことで、不思議な現象が起きている」。普段は歳のことを気にしてないのだ。そしてご自分でも「とんでもないこと」と思っていらっしゃる。

 第2章の1本目「生きていく力は授かっている」。「どこかで自分を肯定しているものがあるから、生きていかれるのだろうと思います。私はこういうことが、ほかの人よりうまくできる」「幸せになりえる人は、ないものねだりをしないのだと思います」。「今」を肯定することが上手にできるようになろう、と思う。

 第3章の6本目「この世に縁のない人はいる」。「いくら自分の考えを伝えても、理解してくれない人は必ずいます」。これはお釈迦様の教えにある「縁なき衆生は度し難し」について書いたもの。「どうして理解してくれないのだろう」と思い悩むことはないのだ。

 同じエッセイの中にこういう言葉も。「私の展覧会では、大抵の人はすーっと通って帰ります」。私は、すーっと通って帰ってしまう人の気持ちも分かる。桃紅さんの描いた絵は、寡黙で何も説明してくれない。とっかかりがない。それでもしばらく前に立って眺めて「あぁこれ何かいいな」とか、見ているこちらが思って初めて微笑を返してくる。そんな作品なのだ。

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2018年4月25日 (水)

うつくしい子ども

著  者:石田衣良
出版社:文藝春秋
出版日:2001年12月10日 第1刷 2006年8月10日 第19刷
評  価:☆☆☆☆(説明)

 友人が私のために選んでくれた石田衣良さんの本。選んでくれたのは「アキハバラ@DEEP」「5年3組リョウタ組」と本書の3冊で、本書が読後感が一番「重い」ということで、最後に読んだ。

 本書は「神戸連続児童殺傷事件」を題材にしたミステリー。約20年前の事件ながら、40代以降の方なら「あぁあの事件か」と容易に思い出せることだろう。社会にそのぐらいの衝撃を与えた。読後感が「重い」ことも想像できる。

 舞台は常陸県東野市という架空の地方都市。主人公は朝風新聞東野支局の記者の山崎邦昭と、夢見山中学2年生の三村幹生の2人。事件はほぼ冒頭に起きる。5月のある日、小学校3年生の女児が行方不明になり、捜索の結果、翌日に遺体で発見される。小学校がある夢見山ニュータウンは、ハリネズミのような緊張状態に陥る。

 ネタバレだけれど、書誌データでも明かされているので書いてしまうと、事件の犯人は、三村幹生の1歳下の弟だった。本書は、殺人を犯した弟を持つ兄が、自分の弟が「なぜあんなことをやったのか」を探す物語。だから犯人が捕まって事件としては解決したところから始まる。第1章のタイトルが「事件の終わり」であることが象徴的だ。

 いろいろな要素を含んだ物語だった。メディアスクラム、加害者家族に苛烈な世間、その中でも暖かい少数の人、学校教育のあり方、等々。確かに読後感は重い。軽々しく取り扱えるような題材じゃない。
 しかし、題材の重みに負けて沈み込んではしまわない。ちゃんと中学2年生の少年のしなやかで強い心があって、軽やかささえ感じられる。著者はうまく描き切ったと思う。ミステリーだから「真相」もある。

 最後に。「事件の後」を描いた物語と言えば、角田光代さんの「八日目の蝉」や塩田武士さんの「罪の声」が思い浮かぶ。どれも秀作だと思う。

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2018年4月21日 (土)

オリジン(上)(下)

著  者:ダン・ブラウン 訳:越前敏弥
出版社:角川書店
出版日:2018年2月28日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の大ヒット「ロバート・ラングドン」シリーズの5作目で最新刊。これまでの4作のうち「ダ・ヴィンチ・コード」「天使と悪魔」「インフェルノ」は映画化されていて、残る「ロスト・シンボル」も映画化の発表があったものの未だ実現していない。とは言え、このシリーズがとても映像化に向いているのは確かだと思う。

 主人公は、ハーヴァード大学のラングドン教授。専門は宗教象徴学。五芒星、六芒星、三角形、十字など、宗教的な意味を持つシンボルの専門家。本来は荒っぽいこととは無縁なはずの学者だけれど、「宗教」と「科学」の間の摩擦によって起きる事件に「巻き込まれる」形で、命に関わる冒険を繰り返す。

 今回は、教え子のコンピューター科学者、エドモンド・カーシュによって、事件の渦中に招き入れられる。未来学者でもあるカーシュは「世界の宗教に大打撃を与える」科学的発見をしたという。その発見を、大々的な催しを開催し、全世界にライブ配信して発表するという。ラングドンはその発表の催しに招待されて出席する。

 この催しが突発的な事件で中断され、ラングドンはその場から脱出する(いつものように美貌の女性とともに)。危機に次ぐ危機を間一髪乗り越えるのもいつもの通り。「映像化に向いている」というのは、この辺りのことだ。

 AI、スペイン王室、ガウディ、進化論、等々がストーリーに織り込まれている。面白かったのだけれど、ちょっと思わせぶりに引っ張り過ぎなんじゃないの?と思った。あと、事件の解決にラングドンは必要だったの?そもそもこれって解決なの?とも。繰り返すけれど、面白かったのだけれどね。

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「オリジン(上)(下)」 固定URL | 3.ミステリー, 36.ダン・ブラウン | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月18日 (水)

チェーン・ピープル

著  者:三崎亜記
出版社:幻冬舎
出版日:2017年4月20日 第1刷発行
評  価:☆☆☆(説明)

 著者の作品を読むのは久しぶり。この前は2012年に読んだ「決起! コロヨシ!!2」で、それもそうっだったけれど、著者が描くのは「あり得ない」とは言えないけれど、明らかに「普通じゃない」少しズレた世界。本書にもそんな物語が6編収められている。

 本書は一人のルポライターが、各章ごとに一人、合計6人の人物にスポットを当てて取材し、その人生の軌跡を辿った、という体裁になっている。章の間の関連はそれほどなく、それぞれが独立したルポルタージュとして読める。

 2つ紹介する。表題作「チェーン・ピープル」は、チェーン店のように画一化された人々の物語。彼らは、言動や身のこなし、癖、考え方に至るまで「手引書」に沿うように自らを律して暮らしている。全国的に353人いる。彼らはどうして自らの個性を捨てることにしたのか?

 冒頭の「正義の味方」は異色作。スポットを当てたのは、わが国が「未確認巨大生物」に襲われた時に、どこからともなく現れて撃退してくれる「正義の味方」。国民もマスコミも当初は歓迎していた(だからこそ「正義の味方」と呼んだ)けれど、戦いが繰り返されるうちに論調が一変する。現れるタイミングが良すぎるじゃないか?とか、あいつが戦うことで被害が大きくなってる、とか。

 読み進めていくうちに共通点を感じた。この2作を含めて「視点の転換」が見え方を一変させる、ということ。「正義の味方」では顕著だけれど、ある視点からは「善」と見えても、別の視点からは「悪」に見える。もちろん「悪」に見えていたものが「善」に見え出す、ということもある。

 最後に。普通じゃない少しズレた世界は、ちょっと気味が悪い。でも、小説は所詮「作りもの」。現実離れすればするほど、物語との距離が保てるので「怖い」という感覚は薄まる。その点、最後に収録された「応援-「頑張れ!」の呪縛-」は、現実であってもおかしくなくてすごく怖い。

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「チェーン・ピープル」 固定URL | 2.小説, 35.三崎亜記 | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年4月15日 (日)

きっと嫌われてしまうのに

著  者:松久淳+田中渉
出版社:双葉社
出版日:2017年9月24日 第1刷発行
評  価:☆☆(説明)

 著者は、松久淳さんと田中渉のお二人。このお二人には「天国の本屋」というシリーズ作品がある。「天国」とその住人(普通は亡くなった人たち)を描くことで、「生きる」ことを際立たせる、シンプルな秀作だった。そのような物語を期待して読んだ。

 主人公は間宮充と大迫ユキ。高校1年。入学して3日目に、充がユキの白いふくらはぎを目にしてひと目ぼれ。翌日から帰り道の待ち伏せなどの、ストーカーじみた行為を繰り返す。そして誰もが驚いた充の恋心の成就。二人は帰り道を一緒に帰るカップルになった。

 序盤にこんな急展開があり、その後、充のパートとユキのパートを交互に繰り返す。充のパートは、だいたいユキと一緒か、そうでなくてもユキの話題。ユキのパートは、友達か父親の話題が多い。ユキの父親は、ゴルフのレッスンプロで、すごくカッコいい。

 ユキのパートには充が登場しないのだけれど、充のパートと同じことを繰り返しても仕方ない。まぁ「同じエピソードを別の視点で描く」という技巧もあるけれど、本書にはそうしたものはない。充のパートだけで、二人の距離が近づいていくのがよく描かれている。

 ところが...。帯に「衝撃のどんでん返しミステリー」と書いてあるけれど、この物語は、読者が思っていた物語とは別の「真相」がある。ネタバレになるので詳しくかかないけれど、著者の巧妙さに完全に騙された。

 「騙された」に関連して言うと、「その(天国の本屋の)ような物語を」という期待も裏切られた。まぁ勝手な期待と違うからといって、「騙された」というのは筋違いだとは思う。ミステリーとしての構成もいい。でも、この「真相」のような話が、私は苦手だし嫌い。そういう理由で☆は2つ。

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2018年4月11日 (水)

同じ時代を生きて

著  者:武田志房、窪島誠一郎
出版社:三月書房
出版日:2017年12月20日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

  70代の男性お二人の対談。武田志房さんは、観世流の能楽師。重要無形文化財総合指定や旭日雙光章を受けていらっしゃる。窪島誠一郎さんは、「無言館」という戦没画学生慰霊美術館の館主。スナックの経営や小劇場の立ち上げなどを経て、美術館の設立に至る。

 能楽師の家に生まれて能の世界一筋の武田さんと、靴修理職人の家で育ち、傍目には自由に生きてきた窪島さん。接点は窪島さんが武田さんに、無言館近くの前山寺での薪能を依頼したことらしい。その時の武田さんの窪島さんに対する第一印象は「絶対しゃべりたくないって感じ」だったそうだ。

 ところが話し始めると「いろんなことが一致して、楽しくて面白くて」と。人と人の相性というのは分からないものだ。ただ、少年時代からの思い出を語り合う本書を読んでいると、その相性の一端を感じる。少年時代から青年期まで、二人は同じ時代に同じ場所で暮らしている。一致するのはそのことが大きい。

 ただ、それだけではなくて「一致しないこと」も、よい方向に作用しているように思う。武田さんの話に出てくる生活は「セレブ」と言っていい。窪島さんは武田さんのことを「高級マグロ」と言い、自分のことは「川魚」に例える。その距離感を敢えて埋めようとしないことが、二人を引き寄せあっているようだ。

 まぁ悪く言えば、年寄り二人が語り合っているだけ。読んでも何も得るものはないかもしれない。繰り言っぽいものもあるし。でも、私にとっては「無言館」についての窪島さんの、気が合う武田さんが相手でポロリと出た感じの、(たぶん)本音が垣間見られたのが収穫。

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2018年4月 9日 (月)

勝手に予想!2018本屋大賞

 明日4月10日(火)に本屋大賞が発表されます。10作品がノミネートされていて、今年はそのすべての作品を読むことができました。

 その10作品は「AX アックス」「かがみの孤城」「キラキラ共和国」「崩れる脳を抱きしめて」「屍人荘の殺人」「騙し絵の牙」「たゆたえども沈まず」「盤上の向日葵」「百貨の魔法」「星の子」です。

 これまでも何度か予想していても、大賞が当たったことがないのですが、懲りずに今年も、私の予想を発表します。

 大賞:「屍人荘の殺人」 2位:「かがみの孤城」 3位:「百貨の魔法」 4位:「たゆたえども沈まず」

 「屍人荘の殺人」は、ペンションを舞台にした「クローズドサークル(密室)殺人事件」のミステリ作品。粒ぞろいの候補作の中で、そのオリジナリティと完成度に「特別感」を感じました。すでに多くのミステリランキングで高い評価を受けていますが、本屋大賞受賞によって、ミステリファン以外にも読者を獲得できるでしょう。著者のデビュー作ということも、書店員さんが「売りたい本」という、本屋大賞の主旨に対するプラス要因になっていると思います。

 「かがみの孤城」は、中学生たちが鏡を通り抜けてお城に集う、ファンタジックな設定。それでいて、壮大な「救い」の物語。私は、この作品を昨年の「今年読んだ本ランキング」の1位にしたし、ノミネート10作品でただ一つ☆5つを付けた。だからこの本が、私の一番のおススメなのだけれど、本屋大賞の主旨を鑑みて敢えての二番にしました。

 「百家の魔法」は、地方の老舗百貨店を舞台にした、ハートウォーミングな物語。店員たちのそれぞれのストーリーを語りながら、同時に大きな物語が進む。 登場人物たちやこのお店を応援したくなるとともに、自分も励まされているように感じる。他の作品と比べて、とりわけ幅広い層の読者に受け入れられる作品だと思います。

 「たゆたえども沈まず」は、ファン・ゴッホを題材に「史実を巧み取り入れたフィクション」。著者は、この本と同様の、画家とその作品をテーマにした作品を多く記していて、これまでも何度かノミネートされているけれど、この本はこれまでとは違った完成度を感じました。昨年は6位ですが、今年はそれより上位になると思います。

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2018年4月 8日 (日)

情報リテラシーのための図書館

著  者:根本彰
出版社:みすず書房
出版日:2017年12月1日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 タイトルに掲げられている「情報リテラシー」も「図書館」も、私の関心事なので読んでみた。

 最初に指摘しておくと、本書のサブタイトルが「日本の教育制度と図書館の改革」で、こちらの方が本書全体の内容をよく表している。「情報リテラシー」は、論考の導入部、または「日本の教育制度」や「図書館の改革」を考える際の「視点」として位置づけられる。

 大づかみに内容を紹介する。まず「ネット社会」や「情報リテラシー」をテーマに3章。日本人の「学び」をテーマに、江戸時代に一旦遡ってから昭和期までで2章。図書館の現在と教育改革をテーマに3章。「情報リテラシー」に戻ってまとめの1章。計9章。

 というわけで「情報リテラシー」について、分量的には期待ほどではなかったのだけれど、とても興味深い指摘がしてあって、内容的には読んでよかったと思った。その指摘は、日本の「情報リテラシー」の理解が「システムの利用法の習得」言い換えると「技術的なこと」を中心にしている、というものだ。

 このことは、アメリカでの理解との比較で述べられている。アメリカでは「技術的なこと」は軽く済ませて、個々のサービス(例えばウィキペディア)が何を提供するものなのか?その情報にはどのような特性があるのか?注意すべきことは何か?などを具体的に学ぶ。一言でいえば「実践的なこと」を中心にしている。

 ネット上の情報のかなりの割合が、意図的であるか否かを問わず「誤った情報」だと、私は思っている。そうだとすると「ネット上には誤った情報もある」ということを知っているだけではなく、具体的なサンプルを利用して「この情報は間違っている。それを見抜くにはこうすればいい」というトレーニングが必要だと感じた。

 最後に。日本の将来のために、実践的な「情報リテラシー」を習得するために、図書館に対する期待は大だ。そのためには、司書を始めとする、もっと手厚い人員配置が必要だと思う。

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2018年4月 5日 (木)

原発ホワイトアウト

著  者:若杉冽
出版社:講談社
出版日:2013年9月11日 第1刷 12月10日 第9刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 帯に「現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!」と大きな赤い字が躍っている。著者はインタビューで、この小説を書いた理由を尋ねられて「いかに国民不在で再稼働を原発推進に向かった進んでいるのかをできるだけリアルに国民の方に伝えたかった」と答えている。

 主な登場人物は3人。日本電力連盟常務理事の小島巌。関東電力の総務部長を経て連盟に出向している。元民放テレビ局アナウンサーの玉川京子。現在は再生エネルギー研究財団の主任研究員。そして、資源エネルギー庁次長の日村直史。キャリア官僚として政財界のウラにまで通じている。

 短いプロローグの後、2013年の参議院選挙の投開票日から物語は始まる。結果は「保守党」が大勝し、衆参両院で過半数を占めることとなった。その夜、小島は「これからの課題」として3項目をレポート用紙にしたためた。「再稼働」「電力システム改革の阻止」「世論対策」。

 物語はこの後、原発の再稼働を目論む小島と日村らの暗躍と、再稼働阻止に動く玉川の動きを描く。この「再稼働か阻止か」のせめぎ合いは、現実がそうであるように「再稼働」が勝つ。物語は、さらにその先を描く。「現実に起きる」と十分に想定できる未来の一つが描かれている。

 ここに書いてあることが真実だとは言わない。しかし著者は「私が直接見聞きしている事実と間接的に見聞きしている事実を元に書いた」と言っている。それに本書で描く、「総括原価方式」を基にした集金・献金システムや、デモ潰しの手法は、詳細かつ具体的で説得力がある。昨今のニュースで思い当たる節もある。

 随所に国民をバカにしたひどいセリフや場面があって、読んでいて顔をしかめてしまうのだけれど、それさえも「あり得る」と思ってしまう。すでにベストセラーだけれど、もっともっと多くの人が読むといいと思う。

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2018年4月 1日 (日)

屍人荘の殺人

著  者:今村昌弘
出版社:東京創元社
出版日:2017年10月13日 初版 12月8日 第5版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。第27回2017年度の鮎川哲也賞を受賞して、著者は本書でデビュー。そのデビュー作が「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」の3冠を達成。これは相当な強者が登場した。

 主人公は葉村譲。関西の私大である神紅大学の一回生。ミステリ愛好会の会員。「愛好会」と言っても、ミステリ愛好会には葉村の他には、会長で三回生の明智恭介しかいない。彼らは学食で適当に選んだ学生が「何を注文するかを推理する」という、生産性のない活動で推理の腕前を磨いている。

 その二人に、剣崎比留子という二回生の女子学生が接触してきた。明智が頼んでも断られ続けていた、映画研究部の合宿への参加を仲介するから、自分と一緒に参加してほしい、と言う。剣崎は「相当な美少女」でもあるし、この話は明智と葉村に都合が良すぎる。何かウラがある。

 物語は、葉村たちが参加した映画研究部の合宿を描く。その凄惨な展開を描く。タイトルの「屍人荘(しじんそう)」は、合宿地のペンションの名前「紫湛荘」をもじったもので、タイトルが表すとおり、そこで殺人事件が起きる。ある事情で、そのペンションは「クローズドサークル(密室)」になっていて「犯人はこの中にいる!」状態に..。

 「3冠を達成」も納得。「○○の殺人」というシンプルなタイトルは、ミステリーの名作を想起する。「モルグ街の殺人」「オリエント急行の殺人」「十角館の殺人」..。学園ミステリーのような出だしは、これらの名作と雰囲気を異にするし、過去のミステリーではまず起きない事態も出来する。「邪道」であるのにも関わらず、本書は「本格ミステリー」だ。それは、鮎川哲也賞の選考委員の誰もが認める。「邪道」なのに「本格」。これは面白い本に出会った。

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