2018年4月11日 (水)

同じ時代を生きて

著  者:武田志房、窪島誠一郎
出版社:三月書房
出版日:2017年12月20日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

  70代の男性お二人の対談。武田志房さんは、観世流の能楽師。重要無形文化財総合指定や旭日雙光章を受けていらっしゃる。窪島誠一郎さんは、「無言館」という戦没画学生慰霊美術館の館主。スナックの経営や小劇場の立ち上げなどを経て、美術館の設立に至る。

 能楽師の家に生まれて能の世界一筋の武田さんと、靴修理職人の家で育ち、傍目には自由に生きてきた窪島さん。接点は窪島さんが武田さんに、無言館近くの前山寺での薪能を依頼したことらしい。その時の武田さんの窪島さんに対する第一印象は「絶対しゃべりたくないって感じ」だったそうだ。

 ところが話し始めると「いろんなことが一致して、楽しくて面白くて」と。人と人の相性というのは分からないものだ。ただ、少年時代からの思い出を語り合う本書を読んでいると、その相性の一端を感じる。少年時代から青年期まで、二人は同じ時代に同じ場所で暮らしている。一致するのはそのことが大きい。

 ただ、それだけではなくて「一致しないこと」も、よい方向に作用しているように思う。武田さんの話に出てくる生活は「セレブ」と言っていい。窪島さんは武田さんのことを「高級マグロ」と言い、自分のことは「川魚」に例える。その距離感を敢えて埋めようとしないことが、二人を引き寄せあっているようだ。

 まぁ悪く言えば、年寄り二人が語り合っているだけ。読んでも何も得るものはないかもしれない。繰り言っぽいものもあるし。でも、私にとっては「無言館」についての窪島さんの、気が合う武田さんが相手でポロリと出た感じの、(たぶん)本音が垣間見られたのが収穫。

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2018年4月 9日 (月)

勝手に予想!2018本屋大賞

 明日4月10日(火)に本屋大賞が発表されます。10作品がノミネートされていて、今年はそのすべての作品を読むことができました。

 その10作品は「AX アックス」「かがみの孤城」「キラキラ共和国」「崩れる脳を抱きしめて」「屍人荘の殺人」「騙し絵の牙」「たゆたえども沈まず」「盤上の向日葵」「百貨の魔法」「星の子」です。

 これまでも何度か予想していても、大賞が当たったことがないのですが、懲りずに今年も、私の予想を発表します。

 大賞:「屍人荘の殺人」 2位:「かがみの孤城」 3位:「百貨の魔法」 4位:「たゆたえども沈まず」

 「屍人荘の殺人」は、ペンションを舞台にした「クローズドサークル(密室)殺人事件」のミステリ作品。粒ぞろいの候補作の中で、そのオリジナリティと完成度に「特別感」を感じました。すでに多くのミステリランキングで高い評価を受けていますが、本屋大賞受賞によって、ミステリファン以外にも読者を獲得できるでしょう。著者のデビュー作ということも、書店員さんが「売りたい本」という、本屋大賞の主旨に対するプラス要因になっていると思います。

 「かがみの孤城」は、中学生たちが鏡を通り抜けてお城に集う、ファンタジックな設定。それでいて、壮大な「救い」の物語。私は、この作品を昨年の「今年読んだ本ランキング」の1位にしたし、ノミネート10作品でただ一つ☆5つを付けた。だからこの本が、私の一番のおススメなのだけれど、本屋大賞の主旨を鑑みて敢えての二番にしました。

 「百家の魔法」は、地方の老舗百貨店を舞台にした、ハートウォーミングな物語。店員たちのそれぞれのストーリーを語りながら、同時に大きな物語が進む。 登場人物たちやこのお店を応援したくなるとともに、自分も励まされているように感じる。他の作品と比べて、とりわけ幅広い層の読者に受け入れられる作品だと思います。

 「たゆたえども沈まず」は、ファン・ゴッホを題材に「史実を巧み取り入れたフィクション」。著者は、この本と同様の、画家とその作品をテーマにした作品を多く記していて、これまでも何度かノミネートされているけれど、この本はこれまでとは違った完成度を感じました。昨年は6位ですが、今年はそれより上位になると思います。

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2018年4月 8日 (日)

情報リテラシーのための図書館

著  者:根本彰
出版社:みすず書房
出版日:2017年12月1日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆(説明)

 タイトルに掲げられている「情報リテラシー」も「図書館」も、私の関心事なので読んでみた。

 最初に指摘しておくと、本書のサブタイトルが「日本の教育制度と図書館の改革」で、こちらの方が本書全体の内容をよく表している。「情報リテラシー」は、論考の導入部、または「日本の教育制度」や「図書館の改革」を考える際の「視点」として位置づけられる。

 大づかみに内容を紹介する。まず「ネット社会」や「情報リテラシー」をテーマに3章。日本人の「学び」をテーマに、江戸時代に一旦遡ってから昭和期までで2章。図書館の現在と教育改革をテーマに3章。「情報リテラシー」に戻ってまとめの1章。計9章。

 というわけで「情報リテラシー」について、分量的には期待ほどではなかったのだけれど、とても興味深い指摘がしてあって、内容的には読んでよかったと思った。その指摘は、日本の「情報リテラシー」の理解が「システムの利用法の習得」言い換えると「技術的なこと」を中心にしている、というものだ。

 このことは、アメリカでの理解との比較で述べられている。アメリカでは「技術的なこと」は軽く済ませて、個々のサービス(例えばウィキペディア)が何を提供するものなのか?その情報にはどのような特性があるのか?注意すべきことは何か?などを具体的に学ぶ。一言でいえば「実践的なこと」を中心にしている。

 ネット上の情報のかなりの割合が、意図的であるか否かを問わず「誤った情報」だと、私は思っている。そうだとすると「ネット上には誤った情報もある」ということを知っているだけではなく、具体的なサンプルを利用して「この情報は間違っている。それを見抜くにはこうすればいい」というトレーニングが必要だと感じた。

 最後に。日本の将来のために、実践的な「情報リテラシー」を習得するために、図書館に対する期待は大だ。そのためには、司書を始めとする、もっと手厚い人員配置が必要だと思う。

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2018年4月 5日 (木)

原発ホワイトアウト

著  者:若杉冽
出版社:講談社
出版日:2013年9月11日 第1刷 12月10日 第9刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 帯に「現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!」と大きな赤い字が躍っている。著者はインタビューで、この小説を書いた理由を尋ねられて「いかに国民不在で再稼働を原発推進に向かった進んでいるのかをできるだけリアルに国民の方に伝えたかった」と答えている。

 主な登場人物は3人。日本電力連盟常務理事の小島巌。関東電力の総務部長を経て連盟に出向している。元民放テレビ局アナウンサーの玉川京子。現在は再生エネルギー研究財団の主任研究員。そして、資源エネルギー庁次長の日村直史。キャリア官僚として政財界のウラにまで通じている。

 短いプロローグの後、2013年の参議院選挙の投開票日から物語は始まる。結果は「保守党」が大勝し、衆参両院で過半数を占めることとなった。その夜、小島は「これからの課題」として3項目をレポート用紙にしたためた。「再稼働」「電力システム改革の阻止」「世論対策」。

 物語はこの後、原発の再稼働を目論む小島と日村らの暗躍と、再稼働阻止に動く玉川の動きを描く。この「再稼働か阻止か」のせめぎ合いは、現実がそうであるように「再稼働」が勝つ。物語は、さらにその先を描く。「現実に起きる」と十分に想定できる未来の一つが描かれている。

 ここに書いてあることが真実だとは言わない。しかし著者は「私が直接見聞きしている事実と間接的に見聞きしている事実を元に書いた」と言っている。それに本書で描く、「総括原価方式」を基にした集金・献金システムや、デモ潰しの手法は、詳細かつ具体的で説得力がある。昨今のニュースで思い当たる節もある。

 随所に国民をバカにしたひどいセリフや場面があって、読んでいて顔をしかめてしまうのだけれど、それさえも「あり得る」と思ってしまう。すでにベストセラーだけれど、もっともっと多くの人が読むといいと思う。

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2018年4月 1日 (日)

屍人荘の殺人

著  者:今村昌弘
出版社:東京創元社
出版日:2017年10月13日 初版 12月8日 第5版
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。第27回2017年度の鮎川哲也賞を受賞して、著者は本書でデビュー。そのデビュー作が「このミステリーがすごい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「本格ミステリ・ベスト10」の3冠を達成。これは相当な強者が登場した。

 主人公は葉村譲。関西の私大である神紅大学の一回生。ミステリ愛好会の会員。「愛好会」と言っても、ミステリ愛好会には葉村の他には、会長で三回生の明智恭介しかいない。彼らは学食で適当に選んだ学生が「何を注文するかを推理する」という、生産性のない活動で推理の腕前を磨いている。

 その二人に、剣崎比留子という二回生の女子学生が接触してきた。明智が頼んでも断られ続けていた、映画研究部の合宿への参加を仲介するから、自分と一緒に参加してほしい、と言う。剣崎は「相当な美少女」でもあるし、この話は明智と葉村に都合が良すぎる。何かウラがある。

 物語は、葉村たちが参加した映画研究部の合宿を描く。その凄惨な展開を描く。タイトルの「屍人荘(しじんそう)」は、合宿地のペンションの名前「紫湛荘」をもじったもので、タイトルが表すとおり、そこで殺人事件が起きる。ある事情で、そのペンションは「クローズドサークル(密室)」になっていて「犯人はこの中にいる!」状態に..。

 「3冠を達成」も納得。「○○の殺人」というシンプルなタイトルは、ミステリーの名作を想起する。「モルグ街の殺人」「オリエント急行の殺人」「十角館の殺人」..。学園ミステリーのような出だしは、これらの名作と雰囲気を異にするし、過去のミステリーではまず起きない事態も出来する。「邪道」であるのにも関わらず、本書は「本格ミステリー」だ。それは、鮎川哲也賞の選考委員の誰もが認める。「邪道」なのに「本格」。これは面白い本に出会った。

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2018年3月29日 (木)

世界の中で自分の役割を見つけること

著  者:小松美羽
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2018年3月7日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者は「新進気鋭の現代アーティスト」と帯で紹介されている。現在33歳。作品の出雲大社への奉納、大英博物館での永久展示、ニューヨークのワールドトレードセンターでの常設展示と、ここ数年は大きな話題が続く。一般的な知名度がどのくらいなのかは分からないけれど、私のような素人も含めて、現代アートに興味がある人なら、知らない人はまずいないと思う。

 本書は、アーティストとして高みを駆け上っている最中の小松美羽さんが、自分の半生と自分に与えられた「役割」について記したもの。「絵筆をペンに持ち替えて」と表現したいところだけれど、美羽さんの制作風景をご存じの方は「絵筆」ではなく、手や絵の具のチューブから直接キャンバスに描く姿の方が思い浮かぶことだろう。

 小松美羽さんの「役割」について。美羽さんは作品の殆どすべてに「神獣」や「守護獣」を描く。それは見えない世界の生き物。美羽さんは子どもの頃からその世界の生き物を身近に感じてきた。道に迷ったら必ず「山犬さま」が現れて、見慣れた道まで連れて行ってくれたそうだ。美羽さんの「役割」は、その「「神獣」や「守護獣」らの「依り代」としての作品を作ること。

 「見えない世界」とか「神獣」とか、すんなりとは受け入れられない人もいるはず。むしろその方が多いかもしれない。でも、小松美羽さんの作品を眼前にしたことがある人ならどうだろう?作品を制作する場面を見た人は?(美羽さんは度々ライブペイントを行っている) きっと私のように、「頭」が拒んでも「心」が早々に受け入れてしまうのではないだろうか?

 「絵筆をペンに持ち替えて」、それがうまく行くとは限らない。上に書いたように、その作品を見たことがあるかないかで、受け取りが違うのなら、アーティストは作品こそが一番のメッセージ、という証左でもある。でもこの飾りのない媚もない真っすぐな文章には、作品を描く時に向ける、澄み切った眼差しと同じものを感じた。心に響いた。

 最後に「はじめに」から引用。

 この本は、私の「これまで」を振り返るための本ではない。あなたの「これから」を、私の「これまで」を通じて見つけていただくための本であり、あなたと見つめ合えたらと、祈り願って書いた本だ。

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2018年3月25日 (日)

美術手帖2018年3月号

出版社:美術出版社
出版日:2018年2月17日 発行 
評  価:☆☆☆(説明)

 本書は月刊の美術の専門雑誌、その2018年3月号。私は美術鑑賞は好きで、美術館の展覧会にも月に1回ぐらいは行くのだけれど、本書を手に取ったのは「美術」への興味のためではない。この号の特集が「言葉の力。」だと知って、書店で取り寄せてもらった。「言葉」に興味があった。

 結論から言うと、この特集は私が思っていたものと違った。私は、人が会話の中で発する「言葉」が、会話の相手や自分自身に及ぼす影響、という意味での「言葉の力」のことを思っていた。もちろんヘイトスピーチなどでのネガティブな力も含めて。もしくは普段読んでいる本のような「物語としての言葉の力」のことも少し考えていた。

 特集の扉では、「言葉の力」から想起するものとして、「孤独を和らげてくれた誰かの一言」とか「感銘を受けた一冊の本」とかも例示している。しかし、これに続く本論での「言葉」とは、詩や短歌、演劇や音楽、ラップの中で使われる「言葉」だった。

 本書では、それぞれを実践する方々が、自らが操る言葉について時に熱く、時に冷静に語っておられる。私としては、小説家の川上未映子さんと、その詩を演劇として立ち上げた、劇団主宰の藤田貴大さんの対談がとても興味深かった。

 「思っていたものとは違う」と、いくらも読み進まないうちに気が付いたのだけれど、構わず読んでいるとあることに気付いた。「言葉」には「意味」と「音」の両方の属性がある、ということ。これまでの私の「言葉」観は「意味」に偏ったものだったかもしれない。

 もっと言えば「音」には「韻律」や「リズム」もあるし、「意味」と「音」以外に、何かの上に書かれた「言葉」には「形」もある。「形」とはつまり「デザイン」。そんなことを考えていると、少し視野が広くなった気分がした。

 そして最後に思い至ったのが、こんなことを全部この本は「言葉」で私に伝えたことだ。この特集は「言葉の力」を、私に理解させるのではなく、感じさせることに成功した、と言える。

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2018年3月21日 (水)

キラキラ共和国

著  者:小川糸
出版社:幻冬舎
出版日:2017年10月25日 第1刷発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。昨年の本屋大賞で第4位となった「ツバキ文具店」の続編。「ツバキ文具店」は、NHKで多部未華子さん主演でドラマ化された(公式サイト)。

 主人公は前作と同じで雨宮鳩子(ポッポちゃん)。いや本書の冒頭で守景鳩子になった。前作で知り合った、近くでカフェを営む守景蜜朗(ミツロー)と結婚したのだ。前作の最後でミツローさんがポッポちゃんをお寺の境内でおんぶしたシーンがある。その時から付き合い始めてそれから1年足らず、だそうだ。

 ポッポちゃんは「ツバキ文具店」という文具店を営む傍らで、手紙の代書を請け負っている。こんなご時世でも手紙の代書を依頼に来るお客は一定数居て、ポッポちゃんは、依頼人の事情を聴いて、文面だけでなく、紙や封筒、筆記具、インクの色、字体、切手まで選んで、手紙を書いて投函する。

 前作は、この代書の依頼を主に、ポッポちゃん自身の身辺を従に描いた。本書では、主従が代わって、ポッポちゃんの物語が主になった。象徴的なのは、本書でポッポちゃんが最初に書く手紙が、自身の結婚のお知らせだったことだ。

 なんと言っても新婚だから...。行間から幸せが立ち上ってきて、甘い香りがしてきそうな物語。「私は恥ずかしくて「モリカゲさん」と言ってしまう。ミツローさんは、私のことを「ポッポさん」と呼んだり「ポッポちゃん」と呼んだり、たまに..」なんてあって、「どーでもええわ、好きなように呼びなさい」と思ってしまう私は、少し羨ましいのだろうきっと。

 タイトルだって「キラキラ共和国」で、なんだか浮足立った感じがする。ただ、これには意味付けがあって、隣家の婦人が教えてくれたおまじないに関係している。心に暗闇ができた時に「キラキラ、キラキラ」と唱える。今はちょっと「アホらしい」と思うけれど、いつか使う時がくるかもしれない。

 こんなおまじないが必要だったことで分かるが、ポッポちゃんもミツローさんも、結構深刻な事情も抱えている。それを一つ一つ乗り越えての結婚であり、その後の本書で描かれる約1年も、そうしたことの連続だった。ポッポちゃんに幸あれ。

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「キラキラ共和国」 固定URL | 2.小説 | コメント (0) | トラックバック (0)

2018年3月18日 (日)

RDG レッドデータガール 学園の一番長い日

著  者:荻原規子
出版社:角川書店
出版日:2011年10月31日 初版発行
評  価:☆☆☆(説明)

 「レッドデータガール」シリーズの第5巻。第4巻で準備が進んだ学園祭当日の2日間を描く。 
 主人公の鈴原泉水子が在籍する東京郊外の鳳城学園の学園祭。今年のテーマは「戦国学園祭」で、「風雲わたあめ」とか「下剋上焼きそば」とかの模擬店は、まぁ「ありがち」としても、全校生徒が戦国時代の装束で行うフィールドゲーム「戦国合戦」は、手の込んだ大掛かりな催しだ。

 この学園には、陰陽師の集団と忍者の組織が活動している。これらの覇権争いが、この学園祭の裏では進行していた。泉水子自身も「姫神憑き」という、その身に神が降りる体質で、彼女を守るために、山伏たちもいる。陰陽師のリーダーは泉水子の取り込みに動く。

 物語のクライマックスは「戦国合戦」。六百数十名いる全校生徒が参加するので、ただでさえ混乱が予想される。さらに陰陽師やら忍者やらがあれこれ画策するし、泉水子の能力がちょっと覚醒するしで、大混乱に陥る。その大混乱のさなかに泉水子は...。の周辺ではもう少し静かだけれど深刻なことが起きていた。

 これまで結末に向かって、比較的真っすぐに進んできたように思うけれど、今回はちょっとその道がねじれて、この先どうなるのか分からなくなった。残すはあと一巻。どうなるのだろう?
 どうなるのだろう?と言えば、泉水子と山伏の相良深行の関係も、ますます甘酸っぱさを増してきた。

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「RDG レッドデータガール 学園の一番長い日」 固定URL | 1F.荻原規子(RDG), 3.ミステリー | コメント (2) | トラックバック (0)

2018年3月15日 (木)

1時間で歴史とビジネス戦略から学ぶ いい失敗 悪い失敗

著  者:鈴木博毅
出版社かんき出版
出版日:2018年1月22日 第1刷 発行
評  価:☆☆☆☆(説明)

 著者の鈴木博毅さまから献本いただきました。感謝。

 本書はタイトルを見て分かるとおり「失敗」をテーマとしたもの。基本的には「失敗」はネガティブな出来事で、できれば避けたいものだ。そこに「いい失敗」という、本来は「失敗」とは相容れない、ポジティブな言葉をキーワードとして設定することで、考察の新しい視点を提供している。

 その「いい失敗」を設定するにあたって、著者は一つの考え方を導入する。それは「ミス≠失敗」という考え方。「ミス」を犯したとしても、それが悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。「ミス」と「失敗」の間には、意味的にも時間的にもギャップがある。

 つまり「ミス」も、悲劇的な結果につながらなければ「失敗」ではない。それどころか、後の扱い次第で成長や成功につながることもある。その場合は「失敗」であっても「いい失敗」だ。「あれ?悲劇的な結果につながらなくても「失敗」なの?」と、定義に混乱はあるけれど、言いたいことは分かる。要は「後の扱い次第」ということだ。

 本書は全編を使って、この「後の扱い」に注目してたくさんの例を挙げて「いい失敗」と「悪い失敗」を区分けする。例えば「いい失敗:成長に転換できる/悪い失敗:甚大な被害になる」「いい失敗:客観的に見ている/悪い失敗:感情にとらわれてしまう」「いい失敗:失敗をプロセスと考える/悪い失敗:失敗を終点と考える」...

 私たちは「早く忘れてしまいたい」と思うあまり、失敗を見つめることをしない。でも、何かに挑戦すれば失敗は避けられない。失敗を避けて何にも挑戦しなければ、そのこと自体が失敗だ。このように「失敗」が不可避なものなら、そのことを見つめてよく知ろう。分析することで成功に転じる方法が分かる。この本はそう言っている。私にも異論はない。

 最後に。「失敗の分析」と言えば、先に「失敗の本質」という名著がある。本書での言及は少ないけれど、著者はその解説本である「「超」入門失敗の本質」を記している。これがとても分かりやすい本で、著者はここからも本書のヒントを得たに違いない。 

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«AI vs. 教科書が読めない子どもたち